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メルカリ小泉会長とクロスフィールズ小沼代表理事が考える 「イノベーションを実現する”事業家人材”の条件」<後編>優れた「事業家人材」になるために求められる経験

2020.02.13 

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左から小沼大地氏、小泉文明氏、小松洋介氏

「VENTURE FOR JAPAN」を手掛けるNPO法人アスヘノキボウ代表理事小松洋介氏が、日本を代表する若手経営者であり同プログラムのアドバイザー・サポーターでもある、株式会社メルカリ・小泉文明会長とNPO法人クロスフィールズ・小沼大地代表理事に行ったインタビューの後編をお届けする。

 

前編では、小泉・小沼両氏の20代の過ごし方を聞いた。2人の話から見えてくるのは、20代のうちに成長できる環境に身を置き仕事に一心不乱に打ち込んだことが、日本を代表する若手事業家となり得たベースにあるということだ。後編では、20代の若者が優れた事業家になるために、どのような経験が必要なのかを探る。

 

インタビュイー

小泉文明氏

大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業を上場に導き、その後複数のベンチャー企業を支援、株式会社メルカリ取締役社長兼COOとして同社を牽引し、2019年に取締役会長兼株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長に就任。

 

小沼大地氏

NPO法人クロスフィールズ代表理事。日経ソーシャルイニシアチブ大賞新人賞やハーバード・ビジネス・レビュー「未来をつくるU-40経営者20人」などの受賞歴を持つ、日本を代表する社会起業家の一人。

青年海外協力隊を経て、ビジネスを学ぶためマッキンゼー・アンド・カンパニーで勤務した後、NPO法人クロスフィールズを創業。日本企業の社員と発展途上国のNGOや社会的企業をつなぐ「留職プログラム」などの事業を運営している。

聞き手

小松洋介氏

NPO法人アスヘノキボウ代表理事。株式会社リクルートを経て、東日本大震災の被災地である宮城県女川町で復興支援に関わる。その後、NPO法人アスヘノキボウを設立し、データ事業(地域課題の見える化)、予防医療事業(医療費対策)、活動人口創出事業(人口減少対策)等を実施。”就活”の画一性故に事業家人材が育ちづらい我が国への危機意識から、2019年「VENTURE FOR JAPAN」事業を開始。2014年 AERA「日本を突破する100人」、2017年 Forbes Japan「ローカルイノベーター88人」等受賞。

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━━優れた事業家人材とはどのような人材だとお考えでしょうか?

 

小泉:なかなか難しい質問ですね。社会課題を解決することも売上を上げることも、どちらも優れている事業家の要素と言えます。特に、企業のミッションに直線的に動いている事業家が優れている人だと思います。会社の延命のためにミッションと関係のないところで売上を上げるようになるなど、逃げてしまっているケースが何と多いことか。企業とはミッションを解決するためにあるわけですので、売上が小さかろうと、ミッションから逃げず正面から向き合っている事業家は凄いです。メルカリもミッションドリブンな会社です。メルカリの社員はメルカリのミッションを達成するために人生の時間の一部を使ってくれていると思っているので、僕ら経営層はそれに対して直線的に動かなければならないと思っています。

 

━━私、小松も、経営者としてミッションから逃げないというのは実は本当にしんどいことだと感じています。その点、お二人は、どのようにミッションに向き合っているのですか?

 

小泉:ミッションを山に例えた場合、山の登り方は自由じゃないですか。だからいろんな登り方をどんどん試してみる。手数をどれだけ増やせるか、つまりいろいろな仮説・検証のスピードをどれだけ上げることができるかが経営者の腕の見せどころなのではないかと僕は思っています。メルカリのミッションは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」ことです。ある人にとって価値の無いものでも、実は別の人には価値があったりします。そういった差を世界的に埋めるためのマーケットプレイスを創るというわけです。

 

小沼:ミッションに関しては、株式会社とNPOでは少し異なる点もあるかなとは感じています。例えばいま注目を集めているWELgeeやLearning For AllといったNPOのリーダーたちを見ていると、彼らは強烈な原体験を持っていて、課題解決をしないと死んでも死にきれないという想いを持っています。加えて、彼らは常に当事者の目線でいるという点が特徴です。社会課題解決のために、自分たちの成長とかいったことよりも上位に、当事者の問題解決を置いている。これは我々の業界の中では極めて重要なことで、この意識がある事業家のもとには多くの支援も集まります。

一方、社会課題解決に重きを置くあまり、ミッションに対して頑なで溺れてしまうケースも多々あります。ミッションに忠実であるべしというのは然りなのですが、どこかでアップデートしていかなければならない局面もある。自分が「これだ!」と思った時に、そちらへ向かうことのできるしなやかさを持った人は、この世界では強いと思っています。

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━━事業家として活躍したい、あるいは既に起業したがもっと成長したいという20代の若者がさらなる成長を遂げるためには、どのような環境と経験が大切だと思いますか?

 

小沼:20代は「甚だしさ」のレベルを決める時期なのかな、と思っています。つまり、「あれくらいならいつでも働ける」とか「あの時のようには働けないな」とか、自分自身の力の限界の基準をつくるということです。30代になると家族ができるなどライフステージが変わってくるので、本当に集中して取り組むことのできる20代でないと「甚だしさ」を知ることは難しいです。加えて、頑張るだけでなく「挑戦の結果こんなどん底を経験したけれど、それでも生き抜くことができた」というような経験をすることも大切だと思うのです。

例えば、僕は23歳の時、青年海外協力隊でいきなり日本語や英語はおろか標準的なアラビア語も話されていないシリアの村に行ったのですが、初日の夜に家で眠るべく電気を消したところ、百人くらいの現地の子供達に囲まれて石を投げられる経験をしました。「ああ、俺はここで後2年間も過ごすのか」と絶望したのですが、その経験があるからこそ、「あの絶望に比べたら大丈夫だ」と、今でも困難にぶち当たっても安心している節があります。このように「甚だしさ」の閾値を上げるということ、厳しい環境へ積極的に飛び込んだり、耐え忍ぶ経験をやり切ったりすることが自分が生きていく上でのエンジンになるのではないかと思うのです。

 

小泉:「甚だしさ」という点では、僕は1年目に自殺しかけたことを印象的に感じています。仕事ばかりしていたら鬱・不眠症になってしまい、そんな中でも書類を作成していたら、本当にどうしようもないミスを犯してしまいました。本当にそのミスが悔しく、社会人として終わっているなと思いながら涙を流して六本木通りを走っていたとき、衝動的に車に飛び込みそうになったのです。でも、パッと赤信号となり車が停まって飛び込めませんでした。その瞬間、「死んでも何も解決しないな」と思い直して、覚悟を決めてミスを謝りに行きました。すると、先方は「はーい」と5分で直してくれたのですね。後日、改めて謝罪したところ、「小泉くんいつも頑張っていたから、これくらい何とも思っていないよ」というようなことを言ってもらえました。そこから再度、一生懸命働こうと思うに至ったのです。自分で死を選ぼうと思ったくらい自分を追い込んで働いていたこの体験はかなり強烈です。若いうちに脳や気持ちの筋トレをしておくのが大切だと思うのです。あとから追い上げるのは辛いですよ。

 

― お二人共、20代から凄い修羅場を経験されていたのですね。私も修羅場経験は事業家にとって極めて重要な要素だと思っています。VENTURE FOR JAPANの「新卒・第二新卒でいきなり経営者の右腕」というプログラム構成も、まさに修羅場を経験してもらうためのものです。20代のうちに、困難な状況にぶつかりながらも死に物狂いでそれを乗り越えるという経験を積んでおくと、その後の人生、特に事業家として生きるにあたって、必ずや自分の心の支えになると確信しているからです。

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━━さて、20代に戻れるとしたら何をなさいますか?今この時代ならではの何か別のことをやりますか?

 

小泉:20代に戻っても、僕はB2C(BtoC)のサービスで起業するための準備をすると思うので、今までと違ったことをやるわけではないと思います。ただ、振り返るとSNSがあまり発展していなかったこともあり仲間づくりにあまり取り組めなかったので、仲間づくりをすると思います。自分と感覚の違う人と仲間になりたい。事業をする上では感度の違う人からフィードバックをもらうことが大切だからです。

 

小沼:もし2019年に20代前半だったら、辺境からのイノベーションが多発していて次のイスラエルになると言われているルワンダや、今混沌として次に何が起こるかわからないような状況になっている香港に行くと思います。青年海外協力隊も悪くないと思っています。協力隊は残念ながらいま人気が下がっており、10年前と比べて応募者が半減しているそうですが、だからこそ行くことに希少価値があると思う。人と違うユニークな経験を積めればと思います。

 

━最後に、事業家を目指す20代の若者に気合いの注入をお願いします。

 

小沼:自分自身について自信を持って語れる人生を送ることが非常に大切です。世間から見てどうかではなく、自分がどう思っているかが肝心です。私も、自分が納得した道、胸を張って語れる道を選んできました。世界に価値観はたくさんあります。最後は自分が胸を張れるのかが大切ではないでしょうか。

 

小泉:学生はテストの点数や成績という同一の評価指標で他者と比較・評価されます。とは言え、どれだけの人が他人に関心を持っているでしょうか。実はみんな他人にはそれほど興味がないのではありませんか?だとすると、自分の人生なのですから、他人の評価など気にせず自分の道を行った方が良い。自分に正直に前へ進んでいけば良いと思うのです。

 

━━素晴らしいお話をありがとうございました!

 


 

インタビュアーを務めた小松洋介氏が代表理事を務める特定非営利活動法人アスヘノキボウでは、「近い将来起業したい。そのための準備を今したい」「自分の力で人生を切り開いていきたい」「世の中に良きインパクトを与えたい」という若い人々のために、「ステップアップ起業」を応援するプログラム「VENTURE FOR JAPAN」を2019年より開始しています。

新卒・第二新卒の若者に、地方の中小企業・ベンチャー企業の一流事業家の「右腕」という経営ポストで2年間働いてもらうことを通じて、優れた事業家人材へ飛躍してもらうことを目指しています。優れた事業家になるためには、一流の先駆者から直接学び取るのが最短コースです。イノベーションが多発している地域にて一流の事業家の右腕として濃密な時間を過ごし、優れた事業家への第一歩を踏み出しませんか?詳しくはウェブサイトをご覧下さい。

「VENTURE FOR JAPAN」

http://ventureforjapan.or.jp/stepup

 

>>前編はこちら

メルカリ小泉会長とクロスフィールズ小沼代表理事が考える「イノベーションを実現する”事業家人材”の条件」<前編>事業家人材に求められる20代の過ごし方

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この記事を書いたユーザー
太田和彦

太田和彦

一橋大学商学部卒。新卒で住友不動産に入社。人事(新卒採用担当)・営業・台北事務所副所長・上海事務所所長等を経て退職。コーネル大学ジョンソン経営大学院でMBAを取得した後、英・L.E.K.コンサルティングを経て、現在デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー勤務。同社スポーツビジネスグループにて、スポーツx地方創生の業務を中心に従事。

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