札幌の会社員から、江別を拠点にノマドワーカーへ。「ひとり働き方改革」を実現。
グラフィックデザイナーとして、札幌を拠点に活躍する山崎氏は、クリエイティブな発想や技術によって、次の社会・未来を創ろうとする人たちが交流する「NoMaps」のロゴデザインなども手がけている。今回は、山崎氏の「ひとり働き方改革」に注目し、現在の働き方に至るまでの経緯についてインタビューを行った。
山崎氏/グラフィックデザイナー
大学卒業後、印刷会社に入社し、デザイナーとしてのキャリアをスタートさせた山崎氏は、27歳の時にデザイン会社プリオンデに転職。訳あって、2018年から同社の経営を引き継いだ。
「経営を引き継いだことをきっかけに江別市(札幌市に隣接)に本社を移転して、自宅兼事務所という形にしました。とはいえ、自宅に一日中いることはほとんどなく、常に出先で仕事をしている感じです」
その言葉の通り、現在は働く場所はあえて決めず、カフェや友人の事務所、書店や商店街のゲストハウスなど、札幌と江別を行き来しながら、打ち合わせの合間やその時の気分に応じて仕事場を選んでいるのだとか。
「それぞれの場所に友達や知り合いがいるので、そこからまた仕事が繋がったり、いろんな企画が生まれたり…。働き方は大きく変わりましたね。忙しい時は自宅で作業をすれば通勤時間はかかりませんし、1人なのでスタッフの管理も必要ありません。土日も関係ないので、以前に比べて時間は作りやすくなりました。この取材の前にもイベントのフライヤーを入稿してきたところです。」と語る表情は穏やかだ。
ともすれば締め切りや時間に追われ、常にある種のプレッシャーを抱えて走り続けなければいけない職業であるにも関わらず、彼がまとう空気はとてもポジティブで余裕さえ感じられる。どうやら現在の働き方が彼には合っているらしい。
「江別を盛り上げたい!」から、とりあえず動く!「えべつセカンドプロジェクト」を立ち上げ、代表に就任。
札幌から江別に移住をしたのは、2011年のこと。
「当初は札幌市の実家(厚別区)近くで土地を探していましたが、なかなか条件に合う場所が見つからなくて。結局、ハウスメーカーさんの提案で江別市の文京台の土地を購入することになったのですが、地価は札幌市内の約半分。アクセスもよくて、求めていた理想に近かったため決めました」。
マイホームを手に入れて、新しい暮らしのスタートラインに立った山崎氏。ところが期待に胸を膨らませていた矢先、江別市が深刻な少子高齢化の問題を抱えている現実を目の当たりにする。「子どもたちが通っている小学校が、合併でなくなるかもしれないという話もあり、これはどうにかしなくてはと思いました」。
「どうしたら、このまちに人が集まるのか?」について考えた山崎氏は、江別市をあらためて盛り上げるため、まちの魅力を発信する活動を開始した。とりあえず動いてみよう……とシンプルに体と心が動き始めていたと言う。
こうして2016年、「えべつセカンドプロジェクト」は始動した。彼は“言い出しっぺ”という理由で、代表に就任。さっそく活動のコンセプトを象徴するロゴのデザインも手がけた。
市役所と表彰台、そして自分の立ち位置を示すフラッグをイメージして作られた「えべつセカンドプロジェクト」のロゴ
「江別市役所がまちを盛り上げるファーストプロジェクトなら、ぼくたちはセカンドプロジェクト。えべつセカンドプロジェクトは大好きな江別をぼくたちなりに表現し、サポートしていく非公式なプロジェクトです。」
ロゴにはそんな思いが込められている。
「活動は、地域おこし協力隊の“協力隊”的な立ち位置でいろいろと活動しています。江別市のPRを勝手にいろいろやりました(笑)」と山崎氏。
江別のPR動画を作ってチカホ(札幌駅前通地下広場)で流したり、市内のバーを会場に江別在住のエキスパートを講師に招いた学べるトークイベント「先生はBARにいる」をBarのマスターと一緒に企画したり、子どもから大人までみんなが楽しめるDJイベント「BRICK PARTY」も開催した。
江別市で不定期に開催しているという「BRICK PARTY」。参加者はもちろんのこと、山崎氏をはじめ、運営スタッフもこのイベントを楽しんでいる様子。
「僕自身はデザインの部分を手伝ったり、江別に移住したばかりで知り合いがいないという人には必要な人や場所を紹介したり……」と、これまでの仕事経験が生かされるものから、ほとんど趣味的なものまで幅広い。さまざまな取り組みについて語る彼はとても楽しそうで、地元愛と「面白い」ことに真剣に取り組むパッションに溢れていた。
江別を勝手にPRしてまちの価値を高めることによって、人が集まり、住むようになれば、子どもたちにたくさん友達ができる!そんな父としての思いがいろいろな人の心に触れ、響き、やさしい波を作り出した。「地道に活動してきたことが最近はメディアなどでも取り上げられるようになって、ありがたいなぁと思っています」。
そして、この活動を機に、また新たなプロジェクトが動き出すことになる。
インタビュー後編はこちら
>> ローカルベンチャー最前線: 株式会社プリオンデ 山崎啓太郎さん(後編)
この特集の他の記事はこちら
>> ローカルベンチャー最前線。地域資源を活かしたビジネスの“今”を届ける。
現在、自分のテーマを軸に地域資源を活かしたビジネスを構想する半年間のプログラム「ローカルベンチャーラボ」2021年5月スタートの第5期生を募集中です!申し込み締切は、4/26(月) 23:59まで。説明会も開催中ですので、こちらから詳細ご確認ください。
ローカルベンチャーPROFILE
会社名:(株)プリオンデ
所在地:北海道江別市文京台46-11
設立年:1999年
事業内容:グラフィックデザイン・企画
(取材・文/市田愛子(Studio Mercato)、インタビュー撮影/伊藤衝)
あわせて読みたいオススメの記事
#ローカルベンチャー
「地方を見ていることが、未来を見ることになる」〜塩尻市のMICHIKARAプロジェクト仕掛人が語る官民連携の最新型
#ローカルベンチャー
「やる」と決めるから仲間が集まる。釜石で地域と都市の橋渡しをするパソナ東北創生・戸塚絵梨子さん
#ローカルベンチャー
原発事故で避難した障がい者一人ひとりが夢や希望を持てる、持続可能な地域をつくる しんせい・富永美保さん〜311をつながる日に(6)
#ローカルベンチャー