2020年8月、株式会社ガイアックス、NPO法人ETIC.(以下、エティック)の共催で、挑戦をはじめる人を応援するオンラインコミュニティ「NEXTA(ネクスタ)」 がスタートします。
起業家のプレゼン動画のYouTube配信と、毎週木曜日の夜に開かれるオンラインイベントが主なコンテンツ。オンラインイベントでは、動画に登場した起業家とのトークセッションや参加者同士の交流会を実施します。
「NEXTA」のモットーは、「誰もが起業家になれる」ということ。YouTubeで語り手になる起業家は、起業したばかりの大学生から百戦錬磨の方まで様々ですが、一歩を踏み出す勇気から、世界が拓けることを知る人たちです。
最初は「何かやってみたい」と漠然とした想いで参加した参加者が、「NEXTA」に集ううちに、起業の一歩を踏み出し、YouTube動画の語り手側に回る。それをみんなで応援する。そして、また誰かが挑戦する。そんな挑戦のサイクルと応援のコミュニティをつくりたく、立ち上げに至りました。
NEXTA開始に先立ち、共催団体の代表2名と挑戦者に伴走してきたREADYFOR株式会社の代表 米良はるかさんに、今感じている社会の変化や、これからの時代における「NEXTA」の意義について語ってもらいました。
挑戦に対する「心のハードル」を下げる応援文化
宮城:今日はこの3名で話せることを楽しみにしています。今回のNEXTAという企画のきっかけは上田さんの着想からでした。コロナの影響でイベントがどんどんオンラインにシフトしていく中で、そこで生まれている現象をもっと効果的に世の中に伝えられないか。特に、起業家やチャレンジしている人たちが毎晩のように出ている番組があったら面白いってことでしたよね。
上田:そうですね。例えば、ビジネスマンは夜10時になったらビジネスニュースを見ますが、行動パターンとしてそれに近いもの生み出せればと考えました。マスメディアが限られた放送枠を使って流すニュースよりは、もっと身近な人たちが仕掛けている身近なニュースを、ライブ感を持って届けたいと思っています。
宮城:本日同席いただいている米良さんも、新しいチャレンジを応援することにおいて、我々二人と想いを同じくしている方だと思っています。米良さんから見て、コロナが起きてからの変化や、今後こう変わっていくかもと予感していることはありますか?
米良:新型コロナウイルスの感染が拡大し、影響が出始めた2月下旬頃、クラウドファンディングへの問い合わせは増えていますが、現時点で申請されるプロジェクトの内容は新しい挑戦をというよりは、飲食店やスポーツやアート業界などでは、現状を何とか乗り切るためにクラウドファンディングを活用いただくほうが多い気がします。しかし、コロナとの付き合いは数年単位ですし、もし事業が現状のままで乗り切れなくなれば、新しい事業への挑戦が必要になってきます。
READYFOR「新型コロナウイルス 私たちが今できること」特設ページ
その一方で、自分が変わることや、新しいことに踏み出すには勇気が必要で、そうした時に、挑戦に対して「心のハードル」をなるべく下げてあげる、例えば「仮に失敗しても、挑戦することは素晴らしい」と讃える文化が、これからの社会により大切になってくると思います。新しい価値観や挑戦、前例のないものこそ、周囲がとやかく言うのではなく、面白いからやってみなよという後押しで、世の中にも徐々に拓けていくのではないでしょうか。
これまでにない現実感と本質的な問い
上田:とても共感しますね。是非そうした応援文化を一緒に根付かせたい。僕の周りでもREADYFORでクラウドファンディングをやっている人は多いですが、ここ1~2年のスパンで米良さんから見て、社会が変わってきている実感はありますか?
米良:クラウドファンディングの事業を始めたのが東日本大震災直後の2011年3月29日だったので、自分の利益だけではなく、社会の利益になる取り組みに挑戦する人や、ソーシャルセクターに興味のある起業家は増えてきている印象があります。今回のコロナ禍は、自分が当たりまえに生きていく上で、社会の様々なプレーヤーに支えられていることが、改めてリアルに感じられた機会だったと思います。自分たちが取り組むことがどう社会に役立つかを考える人は今後もより増えていくと思いますね。
上田:よくわかります。私もこれまでSDGsというものが上手くイメージできなかった。例えば、地球環境って今日何かやってもリターンが返ってくるのがずっと先ですよね。しかし、コロナ禍における外出自粛では、2~3週間後には確実に結果が出てくる。一人ひとりが頑張れば確実なリターンがくるし、さぼれば残念な結果になる。そして、自社の努力だけでどうこうできるレベルじゃない。コロナは地球環境とは時間軸は違えども、本質的には一緒だと思いました。つまり、長期的な目標に向かって一人一人が主体的に行動しないといけない。コロナはよくも悪くも「地球が一つの生命体」であるということを感じさせてくれます。
宮城:そうした状況に向き合った時は、自分は何をしていたか、何がしたかったかという根源的な部分を問い直す機会でもありますね。流されているだけの生き方、働き方をしてきた人もはっと我に返るというか。
そして、大富豪だろうが、学生だろうが、外出自粛中は家から出られなくて、散歩に行くしかないという状況に直面して、社会に与えられる影響は誰もがそんなに違わないのではという「フェアな感覚」にもなったと思うんです。このNEXTAではそうした中で、新しい挑戦を始めたとか、生き方を見出した人たちが、次々に登場する場にしたいと思っています。
つながりをつくり、オープンに伝え、カジュアルにスタートできる場
上田:いいですね。ちなみに、米良さんはどんな感じでREADYFORを立ち上げられたんですか?
米良:私は経営したいとか起業家になりたいと思ったこともなくて、クラウドファンディングがやりたいという想い、それだけで始めました。このサービスでどういう風に社会を変革させたいかというのは、やりながら学んできたと思っています。
自分がよかったと思うのは、宮城さんとの出会いもそうですが、早い段階からステキな経営者にお会いできたこと。先輩起業家の方が、こういう世界をつくりたいんだよね、こうやって社会を良くしたいんだっていうのを言っていて、その人たちがいろいろと教えてくれて、情報をもらって、できたら報告して、というのを繰り返して今に至りました。こうした少し先を行っている先輩とのつながりはとても貴重です。
上田:NEXTAではまさにそうしたつながりを作り出そうとしています。
米良:何かやってみたいという小さな想いだけでも尊いし、最初からダメ出しするのではなく、もっとオープンに自分のアイデアを世の中に伝えられて、もっとカジュアルに新しいスタートが踏み出せるのはいい社会なんじゃないかと思います。その際、必ずしも会社をつくる必要もなくて、やってみたいことを過度な負担なく始められたらいい。READYFORも「第一歩を踏み出しやすくする」ことが基本コンセプトです。
一人一人の個人の可能性を解き放つ
宮城:オープンに想いを伝えられ、カジュアルに始められる仕組みの重要性、まさにその通りだと思います。想いの原点でいうと、上田さんも創業期から振り返って、どうですか?
上田:創業したのはインターネットの黎明期でしたが、世の中のことを理解すればするほど、資本主義社会はあるカテゴリーの問題は解決できるが、必ずしも全員が幸せになれるわけではない、ということを実感します。つまり、プラスをつくる横で莫大なマイナスを出しているけれど、そのマイナス部分は誰もみていないと感じています。
特に貧富の格差は、今は最悪だと思っています。そんな中、オンラインのコミュニティできちんとつながれば、必ずしもお金が介在しない家族のような関係になり、みんながもっとハッピーになれるという想いは今も昔もありますね。
宮城:人類の歴史を振り返っても、インターネットはもともと「パワートゥーザピープル」のツールといわれたように、従来の権力や資本力という尺度ではなく、パワーが一人一人にシフトしていく、一人一人にパワーがあることをフェアに感じられる――そういう時代の訪れを早めてくれたインパクトがありましたが、今回のコロナでもその意識変化は格段に加速したのではないでしょうか。
私も米良さんと同じく、みんなが起業すべきだとは思っておらず、自分が大事だと思うことに正面から向かい合うこと――自分で自由に挑戦できる時代に生まれてきたにも関わらず、自分で自分を制限している状況から、個人の可能性をいかに解き放てるか、いかに個人の力を最大化できるかをテーマに、これまで25年以上エティックをやってきました。
力を入れずに踏み出す「等身大の第一歩」
米良:READYFORではプロジェクトオーナーのことを「実行者」と呼んでいますが、それは、何かしたい想いをネクストアクションにつなげられる人って非常に少なくて、実行にうつす人を増やすことが大切だと思っているからです。アイデアは色々あっても、それを形にして、世の中にどう受け入れられるか試してみなければ何も変化は起きません。もし仮に受け入れられないことがわかっても、その実行したこと自体は、その人の人生を豊かにしてくれると思います。
私たちのクラウドファンディングは「購入型」と「寄付型」でやっていますが、出資や融資とは違って、最初にやるといったことを実現すればプロジェクトは一旦終わりなので、その後も事業を発展させるかどうかは、その時点で決めればよいと思っています。私も起業時に「人生かけてやるのか?」と問われましたけど、最初からはわからないと思っていました。でも、ちょっとやってみたらすごく楽しいし、今でもやり続けていられるのは最初の一歩があったからです。
宮城:エティックを始めた90年代半ばと比べたら、クラウドファンディングの登場は信じられないことです。当時、資金調達って銀行からの借り入れくらい、あとは親からの借金しかなかった。
上田:そうですよね。僕も、クレジットカードを7~8枚作ってから、会社を辞めて起業しましたよ(笑)
米良:今は手段が増えてきていて、それだけ色んな形での挑戦が可能になりました。もちろんクラウドファンディングも人さまからご支援をいただいた挑戦なので、その人たちにきちんと報告し誠実に対応していただく必要はありますが、必ずしも自分の身をすべて犠牲にしてといった悲壮な覚悟が、最初からなくてもいい。まず小さく実行してみて、更にやりたいと思ったら、もっと力強くやっていけばいいのではないでしょうか。
挑戦者と支援者のフェアな関係性
米良:最近もうひとつ気が付いたことは、実行者に加えて、それを支えたい寄付者・支援者もすごい勢いで増えていることです。今回のコロナですごく辛い思いをされている方は多いと思いますが、自分が大事にしたいもの、例えばよく行く飲食店が閉店されるとか、応援したい興行が開催されないとか、自分にとって大事なものは何だろうと考えて、その為に協力したいという気持ちがこれまでになく可視化されたと思っています。
これまで私はプロジェクトの「実行者」の挑戦を中心にみていましたが、支援する人たちが主体的に社会を選んでいくこと、自分にとって大事なものを応援していこうという気持ちが、加速度的に増大していることを感じています。
上田:応援側と挑戦側がよりフェアな関係性になったということですね。宮城さん、NEXTAでも、視聴者と登壇者の距離を限りなく近づけていく構想ですよね?
宮城:はい。自分が大切にしたいことを信じて、その人なりのチャレンジを始めている人に登壇いただき、その番組を見た人が触発されて、その登壇者の支援者になったり、また自らも挑戦する存在になったりしていく。番組を見ている人が、次の機会には発信する側にも回れるようにしたいと考えています。
一緒につくる「オープンな秘密基地」
上田:最後に、これから挑戦する人に向けて、皆さんからメッセージをいただけますか。
米良:先が見えないこの状況では、頑張って早く変わらなきゃと焦る気持ちも大きいと思いますが、まずは自分のペースで、自分と向き合って考える時間がとても大事だと思っています。
世の中が大きく変化する中で、自分にとって大切なものを守るため、より良く前進するために、何かやりたいと思うことがあったら、行動につなげていただきたいですし、そういう人たちが一人でも増えれば、確実に世の中はよくなっていくと信じています。
上田:NEXTAの登壇者が、クラウドファンディングも使ってどんどん仲間を増やしていく流れも起こしたいですね。事業を成長させたい方もいれば、支援することで自信がついたり、次の一歩に踏み出そうと思える人もいる。NEXTAではその、双方に機会を提供していけたらと思っていますので、是非ご参加ください。
宮城:先が見えない時代でもあり、もはや「チャレンジしない方がリスク」という時代に突入したと思っています。このNEXTAという場に集う人は、自分の想いを大事にチャレンジできる人だし、その資格がある人なので、たくさんの人たちがつながり、この場が新しい未来をつくる「震源地」であり、これまでにない新しい挑戦を共に企む「オープンな秘密基地」にしていきたいと考えています。
▼8月20日(木)挑戦をはじめる人を応援するオンラインコミュニティ「NEXTA」キックオフイベント開催します。
テーマは、「挑戦をはじめるオープンな秘密基地 NEXTA なぜ必要なのか?」。
「挑戦を応援するコミュニティ」をつくるために、どんなことが必要だろう?どんな企画があったらいいだろう?そんな事をスタッフと一緒に話すNEXTA作戦会議です。ご一緒にこれからこのオンラインイベントを盛り上げていただける方の参加をお待ちしています!
詳細、お申込みは、こちらからどうぞ。
株式会社ガイアックス 代表執行役社長/上田祐司
1974年大阪府生まれ、1997年同志社大学経済学部卒業。大学卒業後は起業を志し、ベンチャー支援を事業内容とする会社に入社。一年半後、24歳で起業。30歳で上場を果たす。ガイアックスでは、「人と人をつなげる」のミッションの実現のため、これまでのソーシャルメディア事業に加え、シェアリングエコノミー事業や関連する企業への投資を強化している。社団法人シェアリングエコノミー協会の代表理事を務める。
NPO法人ETIC.代表理事/宮城治男
1993年より若い世代が自ら社会に働きかけ、仕事を生み出していく起業家型リーダーの育成に取り組み、1500名以上の起業家を支援。97年より長期実践型インターンシッププログラムを事業化。2001年にはETIC.ソーシャルベンチャーセンターを設立、社会起業家育成のための支援を開始し、社会起業塾イニシアティブ等を手がける。04年からは地域における人材育成支援のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを開始。11年から震災復興支援にも注力。
READYFOR株式会社 代表取締役CEO/米良はるか
1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。
あわせて読みたいオススメの記事
#スタートアップ
「雲南ソーシャルチャレンジバレー構想」とは?マンスリーギャザリングレポート後編
#スタートアップ
#スタートアップ
「普通に就活するよりも、いろいろ考えたら会社を立ち上げたほうがいいと思った」株式会社ホープフィールドCOO 嘉数正人 (前編)
#スタートアップ
#スタートアップ
子どもYoutuber × アカデミー?〜大学2年生が起ち上げた「やりたい!」をカタチにする習いごと事業