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都市と地域をつなぎ、次々に事業を創る会社員・フェリシモ三浦さんに聞く、ニューノーマルな働き方

2020.10.05 

105年後の正式オープンを掲げる「和牛メゾン」や、地場産品を活用した商品開発、コロナ禍の中、横浜駅内に新規オープンした地域密着型の飲食店……などなど、都市部と地域をつなぐ多様な案件に会社員という立場から関わっているのが、「株式会社フェリシモ」の三浦卓也さんです。

 

三浦さんは、企業に所属しながら地域で仕事ができる、総務省の「地域おこし企業人」という制度を活用して、2017年4月より3年間、大手通販会社のフェリシモから北海道厚真町役場に派遣されました。会社の資源を活用しながら地域を豊かにする事業を創る、ニューノーマルな働き方をご紹介します。

 

三浦様トリミング後2

三浦卓也(みうら・たくや)/株式会社フェリシモ 地域共働部部長、株式会社hope for取締役

株式会社フェリシモにて新規事業開発を担当する傍ら、総務省の「地域おこし企業人」プログラムを活用し2017年4月より3年間北海道厚真町に出向。地域資源と人材を活用した企業コラボレーションや商品開発に取り組む。2018年9月6日の北海道胆振東部地震に被災。震災から3ヶ月後の12月6日、地域発で日本の希望を生み出す事業を支援するフェリシモの100%子会社、「株式会社hope for」を現地に設立。地域発の新規事業開発に臨む。

都市部と地域をつなぐ「ミツバチ役」が仕事に

 

――普段はフェリシモの本社がある兵庫県神戸市で働かれているということですが、そもそもなぜ北海道の厚真町と関わることになったのでしょうか?

 

三浦さん(以下、三浦):妻の実家が厚真町のお隣のむかわ町というところで、結婚した2002年頃から帰省で訪れるようになりました。牧場を抜けて出社し、温泉につかって帰ってくるという義父の通勤スタイルに憧れて、「いつか北海道に住んでみたい」という思いはあったのですが、直接的なきっかけは2016年に「厚真町ローカルベンチャースクール」(以下、厚真町LVS)に参加したことです。

 

フェリシモは「しあわせ社会学の確立と実践」という経営理念を掲げているのですが、僕自身の「しあわせ」を見つめ直していた時期に厚真町LVSのことを知り、衝動的に応募してしまいました(笑) 会社を辞めることも検討したのですが、地域おこし企業人という仕組みがあることを知り、僕から会社に提案して、これまでの仕事もきちんとやることを条件に派遣してもらえることになったんです。

 

写真2_厚真町の風景

厚真町の風景

 

僕の場合、厚真町には月に1週間ほど滞在する、神戸との2拠点生活というスタイルでした。当初は厚真町での活動と会社の事業をなかなか結び付けることができずに苦労したのですが、厚真町の特産品であるハスカップを使った「GOTOCHI SOAP」の商品化を皮切りに、町のコンテンツを活かしたツアーの企画や、厚真のジンギスカン居酒屋の期間限定神戸出店など、都市部と厚真町をつなぐ、いわばミツバチのような仕事が形になっていきました。

 

そんな中で起きたのが、2018年9月の北海道胆振東部地震です。僕も厚真町にいて被災しました。被害も大きく、この先どうなるかもわからない。そんな中でも、あちこちでもう一度立ち上がろうとする人達がいた。どんな状況にあっても、人は未来を想像し、希望を創造できるんだということを目の当たりにしたんです。希望と未来をデザインする会社を厚真に作りたいという思いから、フェリシモ100%出資のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)「株式会社hope for」が生まれました。もともとフェリシモの方で、将来性のあるベンチャー企業に投資する子会社を作りたいという計画があったので、それとうまくかみ合った形です。現在はこちらのhope forで取締役としても活動しています。

 

オープンマインドで密じゃない、「開疎」なまちとしてのブランディングを

 

――三浦さんはコロナショックをどのように受け止められたのでしょうか?

 

三浦:コロナ禍が深刻になってきた3月で地域おこし企業人の任期が終わったのですが、送別会などもできませんし、新年度からスタート予定だった事業も止まってしまい、3月末はとても寂しい状況でした。

 

ただその間にも、コロナ禍を受けて今後社会がこんな風に変革していくんじゃないかということで、畜産ベンチャーの「GoodGood合同会社」代表の野々宮秀樹さんから、次に仕掛けたいことの提案を受けていました。GoodGoodは兵庫県内に拠点があり、フェリシモの本社と近かったこともあってご縁が生まれた会社です。記念すべきhope forの第1社目の出資先で、商談もできる滞在型の牧場「和牛メゾン」を厚真町に作り始めています。リゾート開発が頓挫した土地を活用しているのですが、牧草作り・土作りからやると、全て現地のもので循環できるよう変えていくには1世紀以上かかるんだそう。というわけで、グランドオープンはなんと105年後を予定しています。今の関係者はおそらく誰も生きていないでしょうね(笑)。

 

写真3_和牛メゾン建設予定地

「和牛メゾン」建設予定地

 

こんなユニークな発想をもつ野々宮さんから提案を受けたのが、厚真町を「開いた疎のまち」=「開疎」のまちとしてブランディングできないかということです。コロナ禍を経験して、本格的に地方に拠点を移すことを検討する個人や法人もこれからどんどん出てくるんじゃないでしょうか。そんな中で、空港から30分で行けて、北海道の大自然がある厚真町はかなりアドバンテージがあると思っています。僕達は「エクストリーム出勤」と呼んでいるんですけど、朝7時に厚真町を出れば、11時には神戸で仕事ができちゃうんです。

 

そこで、フェリシモとGoodGood、そして「クーバルグループ」の3社で100万円ずつ出し合って、8月末に「Open Town厚真一般社団法人」を設立しました。クーバルは厚真町LVSへの参加をきっかけに、2019年に厚真町で農業生産法人「株式会社あつマッシュ」を設立して、農場事業を始めようとしている会社です。つまり、厚真町に関わる企業がチームを組んで作ったのがOpen Town厚真というわけです。厚真町を「開疎」のまちにしていくために動き始めたばかりですが、おもしろいことになりそうだなと感じています。

 

具体的な事業はまだこれからですが、僕のように複数拠点をもって働く人や、ノマドワーカーがまちに入り込みやすいような仕掛けを作っていきたいですね。たとえばワーケーション施設を考えてみると、厚真町内でもすでに古民家再生プロジェクトがありますし、町外の企業を巻き込みながら動かしていければと考えています。例えば「夏の間だけ厚真で働く」みたいな企業があってもいいですよね。Open Town厚真では、「つながりを作っていく」ことを軸にした事業を展開していきたいです。

コロナ禍まっただ中、都市部と地域をつなぐワインバルが横浜駅にオープン

 

――新会社の設立など、コロナ禍の中でも新たな事業が生まれているんですね。他にも動いている案件はありますか?

 

三浦:hope forの方では、飲食事業を手がける「株式会社スイミージャパン」と共同出資して、2020年2月に飲食店運営のための新会社「株式会社Antenna」を設立しました。この8月に地域密着型のワインバル「matsu e mon YOKOHAMA」(松右衛門 横浜) が横浜駅構内にオープンしたばかりです。

 

写真4_matsu e mon

横浜駅構内にオープンした地域密着型ワインバル「matsu e mon YOKOHAMA」

 

――「地域密着型」とはどういうことですか?

 

三浦:厚真町周辺の事業者と共同開発したジビエやチーズの商品を横浜で販売したり、逆にお客さんの声を生産者の方へフィードバックしてテストマーケットの場として活用したり、都市部の飲食店という強みを活かして、地域との架け橋になれるような店舗運営を目指しています。

 

――コロナ禍で多くの飲食店が打撃を受ける中での新店舗オープンですが、待ったをかける動きはなかったのでしょうか?

 

三浦:コロナ禍の前からオープン日は決まっていましたし、僕らが何かしたというわけではなく、ひとえに出資先のスイミージャパンの推進力だと思います。ただ、思いを共有できるパートナーと一緒にやれると、プロジェクトにも自然と志が乗っていくので止まらないということはあるかもしれません。「こうあったらいいな」という思いを共有できるのがドライブしていく一番の要因ではないでしょうか。

 

現地で想いを共有することで、まちと人がつながっていく

 

――三浦さんは、企業の方を現地で生産者の方と引き合わせる生産者ツアーなどを実施されています。やはり思いを共有する上では、実際に現地を訪れることが大きく作用しているのでしょうか?

 

三浦:確かに、一方が一方の会社を普通に訪問して話した場合だとなかなか始まらないようなことが、一度は同じ地域に集まった企業同士としてぶつけてみると、全然違う業種ながら「一緒にやってみよう!」となるケースは多いですね。実際に来てもらえるとおもしろいまちだと思ってもらえるし、厚真町で起業してがんばっている人達と一緒にバーベキューなんかをして心を通わせると、何かやろうという話も自然と出てきます。

 

アイディアはあるんだけど、施設もお金もないし……と言っているようなことが、ネットワークがあると意外と実現できちゃったりするんです。実際に厚真の人達の悩みや、こんなことをしたいという願いを都市部の人に聞いてもらうと、具体的な手立てが見えてくるケースがある。

 

写真5_生産者ツアー

生産者ツアーの様子

 

例えば先週も缶詰を作る会社の人をお連れしたんですが、厚真の漁師と一緒に何か作れないかという話が出ています。思いに共感できて、それを実現できそうなスキルやネットワークをもつ人達が地域と出会うことで、開疎な町にしていける実感はありますね。

 

――三浦さんのお仕事には「つなぐ」という言葉がしっくりくる気がします。まちと人をつなぐために、必要なことは何だと思いますか?

 

三浦:「こうあったらいいよね」という願いや思い、実現したい未来を語れるようにしておくということでしょうか。志が見えると、人はつながって動き出します。どうやったらそこに関われるかを考えて、関われる人を見つけようと動くと、また新たなつながりができる。自分自身の願いをもったり、人の願いを聞いたりして、何ができそうかを絶えず考えておくことが大切な気がします。

 

――三浦さん、ありがとうございました!

 

 

地域おこし企業人に関する記事はこちら

>> 勤め先の企業に所属したまま、地域へ。新しい働き方「地域おこし企業人」になって北海道・厚真町で働くということ

>> 「強み×強み」の連携へ。自治体・企業・社員から見る「地域おこし企業人」制度 ~ローカルベンチャーサミット2019レポート(2)

 

この記事を書いたユーザー
茨木いずみ

茨木いずみ

宮崎県高千穂町出身。中高は熊本市内。一橋大学社会学部卒。在学中にパリ政治学院へ交換留学(1年間)。卒業後は株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、DM営業に従事。 その後岩手県釜石市で復興支援員(釜援隊)として、まちづくり会社の設立や、組織マネジメント、高校生とのラジオ番組づくり、馬文化再生プロジェクト等に携わる(2013年~2015年)。2015年3月にNPO法人グローカルアカデミーを設立。事務局長を務める。2015年4月より、東京大学大学院総合文化研究科修士課程に在籍。

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