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#ローカルベンチャー

チャレンジの種を育てられる風土が町の未来を創る。循環する森林の町・北海道下川町でコーディネーターが求められる理由とは?

2017.11.03 

地域の素材や資源を活用し、新しいビジネスや事業を立ち上げる動きが、盛り上がりつつある昨今。生まれ育った土地へUターンして、地元のために活動する人もいれば、まったく地縁のない地域に入ってゼロから新しいことを始める人もいて、そのスタイルは様々です。

北海道下川町は、人口たった3,400人の町。夏は35度近くまで上がり、冬はマイナス30度まで下がるような決して生易しい環境ではない地域です。それでも、チャレンジの場所として下川町を選ぶ若者が、少しずつ増えてきました。

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新しい挑戦には不安やリスクはつきもの。けれど、どんなバックグラウンドであれ、地域に魅力を感じて集まってくる若者に対して寛容であればあるほど、地域は活気付いていくような気がします。挑戦したいという人のチャレンジの種を潰さずに、地域で応援して大事に育てていく風土が何よりも重要なのかもしれません。

下川町でも、その風土をより耕そうと、盤石なサポート体制の準備を始めています。中でも「下川町ふるさと開発振興公社クラスター推進部(以下、クラスター推進部)」では地域で興る産業の支援や、町内で新規事業を立ち上げる人達のサポートを10年以上続けてきました。

そうした受け入れ体制の整備の結果か、森林が町面積の9割を占めるこの町に、新しい風を生み出すプレイヤーたちが続々と集まってきています。地域の魅力に引き寄せられて集う人々を、クラスター推進部はどのように支えているのか。また今後どのようなサポートが必要になってくるのでしょうか。

>>下川町では現在、事業立ち上げの支援をするコーディネーターを募集しています。詳細はこちらから。

>>下川町ではコーディネーター以外にも、下川を舞台にやりたいことを実現する挑戦者「シモカワベアーズ」の仲間を募集中! 詳しくはこちらから。

産業・社会・自然。これらを網羅した事業か?

 

下川町のクラスター推進部は、平成10年に発足した「下川産業クラスター研究会」が元になっている組織です。半官半民の立ち位置で、平成14年には財団法人として再スタート。以降、町内の新規事業計画の相談に乗ったり、補助金を申請するための書類の書き方をアドバイスしたり、企業に必要な人材を会社や大学から繋いだり……最近では空き家を活用した新規ビジネス立ち上げのための仕組み作りをしています。

 

「事業を立ち上げる際、そのお手伝いをするのが私たちの仕事です。けれど、新規事業であればなんでもいいというわけではありません」と話すのは、クラスター推進部・部長の相馬秀二さん。クラスター推進部はあくまで黒子であり、主役は事業者、町民だと話します。

 

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「新しいことを始める上での初期のリスクは、個人事業主や小さな会社だとどうしても負いきれないことがあります。そこをサポートするのが私たちの役目で、最初の立ち上げでポンっと背中を押すことができれば、あとはみなさんの力で自走していただく必要がありますし、今までも、そういう気概のある方のお手伝いをしてきました。ただ一儲けしたいとか、町の文脈とかけ離れたビジネスをしたいというご相談があっても、対応は難しい。何かにチャレンジしたくて、でもどうしても自分一人じゃうまくいかない、資金が足りない、という方の力になりたいと思っています」

 

クラスター推進部がサポートした町内の事業の例として、手延べ麺の新商品開発があります。

 

現在の下川町の特産品である、うどん「手延べ麺」。今は町内の小麦を使った手延べ麺を販売していますが、それまでは町外の小麦を使って製造していました。ですが、地産地消の商品としてブランディングを再考し、平成17年に北海道産小麦を使用した「奥蝦夷白雪(おくえぞしらゆき)」という新ブランドが誕生。さらに、下川町産の小麦「ハルユタカ」を使った手延べうどんが食べられる「手延べうどん・炭火焼き みなみ家」も開店しました。

 

「みなみ家」の天ぷらうどん

「みなみ家」の天ぷらうどん

 

「支援をする際は新規事業が、下川町の産業、社会、自然──この3つを網羅していることが基本的な条件になります。下川の資源を活かしているかどうか、明確な目標があるかどうか、そして町内の他の企業や産業に良い影響があるかどうかを検討するんです」。

 

地域の事業者さんが何に悩み、何を求めているのかに耳を傾け、その最善策を提案する。そして実行するまでサポートする──そうした体制が整っていることが、新しい起業家や木工作家さんを下川町へ呼び寄せるのかもしれません。

 

ビジネス以前に、土台となるのは人と人とのお付き合い

 

ビジネスをする上で、新しく入ってくる事業者さんと、既存の町内の事業者さんが協力し合う場面は珍しくありません。ですが、ずっと地域で仕事を続けてきた方にとって、見知らぬ新参者を急に紹介されても戸惑うばかり。どんな熱い意思を持っているにせよ、いきなりマッチングするのは逆効果ですし、新しく地域へ入ってきた方とのコミュニケーションの齟齬が起きてしまいかねません。

 

非常に地味で、ほとんど目に見えないような動きですが、実はそうした町内外の人をつなぐ行為は、チャレンジの種を潰さず育てる上で一番重要です。

 

下川町では、地域の事業者さん同士をつなぐコーディネーターのような立ち位置の一部を、クラスター推進部が担っています。

 

「人と人をつなぐ上で、営業マンとしてのテクニックや本に書いてあるようなコミュニケーションの手法が生きるなんてことは稀です。下川町は人口3,400人ですから、顔が見える地域での距離感だからこそ気をつけなければならないこともありますし、話が早いこともあります。クラスター推進部は公平な組織ではありますが、誰を支援するかどうかは事業内容や売上の見込みはもちろん重要ですが、そもそもその人を応援したいと思えるかどうかにかかっている部分も大きいんです。単なるビジネスの世界だけで補助金だとか制度を活用しようと思えば、利害関係でしか物事が進まなくなりますからね」

 

そんな地域のつなぎ目となる、クラスター推進部では、新たなるコーディネーターを募集しています。

「テクニックではなく、目の前の人とどう向き合うか。事業者さん同士の魅力をまずは僕ら自身が理解することが大切です。そうして、つなげる方々を相互に高めあえるかどうか。その引き出し役となるコーディネーターは、人と徹底的に向き合う粘り強さが必要です。そして、誰かを応援することに生きがいを感じる方にとっては、ぴったりの仕事だと感じます」

ローカル事務局の「NPO法人森の生活」。コーディネーターとともに新規事業立ち上げを目指す人をサポートする。

ローカル事務局の「NPO法人森の生活」。コーディネーターとともに新規事業立ち上げを目指す人をサポートする。

 

移住希望者の窓口となっている「下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部」。 就業したい人はもちろんローカルベンチャー事務局として新しい人材を支える。

移住希望者の窓口となっている「下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部」。就業したい人はもちろんローカルベンチャー事務局として新しい人材を支える。

下川町でチャレンジをする人、あえて年間気温差60度の森に囲まれた小さな町へ飛び込んで来る人の多くは、「わたしはこれをやりたい」という明確な目的や目標を持っている傾向にあります。ある意味、個性の強い、芯のあるチャレンジャーたちの熱い意思を汲み取り、実現に向かって支えていく仕事は、簡単ではありません。

 

ですが、この町の規模ならではの風通しのいい人間関係があります。そして、新しいこと・もの・人を応援してくれる風土があります。その風土は、コーディネーター自身がチャレンジ精神を忘れないことで、ますます醸成されるのです。

 

お知らせ

>>下川町では現在、事業立ち上げの支援をするコーディネーターを募集しています。詳細はこちらから。

>>下川町ではコーディネーター以外にも、下川を舞台にやりたいことを実現する挑戦者「シモカワベアーズ」の仲間を募集中! 詳しくはこちらから。

 

この記事を書いたユーザー
立花実咲

立花実咲

1991年静岡県出身の編集者。書籍、雑誌、ウェブでライター・編集者をしつつウェブメディア「灯台もと暮らし」を立ち上げ、現編集部の一人。2017年5月より北海道下川町へ移住し、現在は町の広報をしつつゲストハウス立ち上げ準備中。

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