個人の意志ある挑戦を、全力で応援する文化が育まれています。
そのイベントの名は、「Beyondミーティング」(ビヨンドミーティング、以下BM)。
組織や立場の垣根を超えた化学反応を楽しみながら、予期せぬ出会いとアイデアで新しい未来を創っていこうと、毎月実施されています。企画運営はand Beyond カンパニー(*)、現在までに24回開催され、1000名以上が参加しています。
(*)ロート製薬、ヤマハ発動機、セイノーホールディングス、 マネックスグループ、アビームコンサルティング、江崎グリコ、竹中工務店、PwCコンサルティング、住友生命、フェリシモ、YUIDEA、東京感動線(東日本旅客鉄道)、ETIC.で構成されるバーチャルカンパニー(順不同)
さて以前DRIVEでは、BMの7月開催レポートをお届けしました。
本記事は8月開催レポートです。8月のBMは「特別版」と名付けられ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と認定NPO法人ETIC.(エティック)が推進する「Hack The World」(*)との連携により実現されました。
(*)With/Afterコロナの世界のありかたを誰も見いだせない今、2030年までの世界の風景を次々にHack=書き換えようという、思考実験型のプロジェクト。「Hack The World」についても以前にDRIVEで取材しておりますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
Hack the Worldでは、「自らのビジョンで、現在や未来の世界の風景を書き換えようとする人」を「Vision Hacker」と定義しており、そんなVision Hackerたちが今回のBM特別版でアジェンダオーナーとして登壇。
今回、Vision Hackerに焦点を当てながら開催レポートをお届けします。今の時代まさに、私たち一人一人の挑戦や応援の力が求められているかと思いますので、読者のみなさんにとって、少しでも刺激になれば幸いです。
<目次>
- 時代を切り拓こうとするVision Hackerたち
- 【全文公開】アジェンダオーナー・金森さんの3分ピッチ
- 【ブレスト会議】人も動物も健康で幸せに暮らせる社会へ
- 【事後インタビュー1】アジェンダオーナー・金森万里子さん
- 【事後インタビュー2】応援コーディネーター・小檜山歩さん
- BM第二部の開催レポートとして、後編に続きます!
BM特別版についての紹介
■タイトル:
Beyondミーティング特別版 feat. Vision Hackers
■概要:
東京オリンピック・パラリンピック開催年となるはずだった今年。世界中で猛威をふるう新型コロナウィルスの影響を受け、私たちがそれぞれ目指し思い描いていた「明るい未来」は遠ざかってしまったようにも思えます。ウイルスに"Hackされた"とも例えられる世界を前に、私たちは今、ただただやり過ごすしかないのでしょうか。
そうではなく、「自らのビジョンで、現在や未来の風景を書き換えようとする"Vision Hacker"」として、私たちひとりひとりの挑戦が、今まさに求められているのではないかと考えます。
すでに歩みを進める若き"Vision Hacker"をアジェンダオーナーとして迎え、先駆者として時代を切り拓き、今もなお最前線で活躍中されている経営者の方々をお招きし、様々なバックグラウンドをもつ参加者のみなさんと共に、めいっぱい創造的なBeyondミーティングにできればと思っています。
※本企画は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と認定NPO法人ETIC.が推進する「Hack The World」との連携により実現しています。
■プログラム:
17:50~18:00 開場
18:00~18:30 オリエンテーション
~第一部~
18:30~18:50 アジェンダオーナー(Vision Hacker)連続ピッチ
18:50~18:55 グループ分け(休憩)
18:55~19:00 ブレスト作戦会議の楽しみ方
19:00~19:30 ブレスト作戦会議
19:30~19:35 応援アクション入力
~第二部~
19:35~20:30 クロストークセッション&Z世代社員ショートピッチ
20:30~20:50 クロージング
■当日の参加者数:
約200名
■企画運営:
and Beyondカンパニー事務局(NPO法人ETIC.)
ロート製薬、ヤマハ発動機、セイノーホールディングス、 マネックスグループ、アビームコンサルティング、江崎グリコ、竹中工務店、PwCコンサルティング、住友生命、フェリシモ、YUIDEA、東京感動線(東日本旅客鉄道)、ETIC.
時代を切り拓こうとするVision Hackerたち
はじめにBMの概要を紹介します。DRIVE過去記事から抜粋しました。詳細については過去記事も併せてご覧ください。
BMは、「所属も年齢も性別も、あらゆる垣根を越えて、妄想をぶつけあえる場所」。
この場のルールはたったひとつ、「応援しあうこと」。
参加者のみなさんが行なうことは、「意志ある個人を、全力応援!」。
BMに参加することで体験できることはたくさんあります。その中でもやはり象徴的なのは、「アジェンダオーナーのピッチを聞くこと」「ブレスト会議でアイデアを出し合うこと」。
「社会課題や新しい価値創造に挑む人」(=アジェンダオーナー)のプレゼンを聞き、刺激を受けることができ、「ブレインストーミング(*)(=略してブレスト)の手法を用いるグループワーク」(=ブレスト会議)でアイデアを出し合うことで、その挑戦を応援することができます。
(*)集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法《Wikipediaより》
◆
続いて、アジェンダオーナーとして登壇した6名のVision Hackerを、それぞれのアジェンダとともに紹介します。
1. 石井佑充さん(東京医科歯科大学 博士課程 / 一般社団法人Liaison)
官民学とデータの力を生かせ!グローバルヘルス版『メディアラボ』構想
2. 竹下友里絵さん(タベモノガタリ株式会社 代表取締役社長)
『形はワルいが、味はイイ。』規格がないローカルな農産物流通を創り出す。
3. 牧浦土雅さん(Degas株式会社 CEO)
サブサハラアフリカ6億人の小規模農家の生活を、持続的に発展させるインフラ作り
4. 竹田和広さん(一般社団法人ウィルドア共同代表理事)
“わたし“からはじまる学びを、一人ひとりの高校生に
5. 上尾透眞さん(株式会社Saola 代表取締役CEO)
日本に居ながらあまり目を向けない日本語教育をDX化し、最高の留学体験、そして多文化共生を!
6. 金森万里子さん(獣医師/公衆衛生修士/東京大学大学院医学系研究科保健社会行動学 健康教育・社会学分野博士課程/ストックホルム大学Department of Public Health Sciences客員研究員)
人も動物も健康で幸せに暮らせる社会へ
【全文公開】アジェンダオーナー・金森さんの3分ピッチ
さて、ここで読者のみなさんにも、“まるで当日イベントに参加していたかのような”体験をしていただきたいと思います。
アジェンダオーナーの一人、金森万里子さんの発表について、「3分ピッチの様子を全文公開する形」でお届けします。
金森さんの活動やその背景、ブレスト会議のお題など、具体的なイメージをお持ちいただけるかと思います。
◆
『私のアジェンダは、人も動物も健康で幸せに暮らせる社会づくりへ貢献していくことです』
『私は北海道で、牛の獣医として働いていました。仕事の中で農家さんと話す機会も多かったのですが、牛が病気になると、人は経済的負担のみならず、看病するための労働の負担も増え、精神的なショックも受けます。人と動物の健康が繋がっていると強く感じました。
今は人に視点を変え、兼ねてから問題だと感じていた、自殺や社会格差についての研究をしています。より住み良い地域づくりに貢献することで、動物や自然とのより良い関係にも繋がるのではと考えています』
『私が動物から人への視点を変えたように、今日はみなさんにも、人から動物へと視点を変えてもらえたらと思います。意外かもしれませんが、狩猟分野におけるアニマルウェルフェア(動物福祉)について今日はお話したいと思います。
いわゆる有害鳥獣の数が増えたこともあり、新規狩猟免許取得者は10年間で2.5倍に増えています。しかし狩猟者を囲む教育体制や情報共有体制は不足しているという指摘があります。
銃を持っても、いきなり野生動物を仕留めることができるわけではなく、たくさん練習が必要です。一撃で仕留めることができなかった時、撃たれた動物は長い時間苦しむことになります。また人にとっても、そういった姿を見ることは精神的にもショックになり得ます』
『狩猟におけるアニマルウェルフェアにおいて、スウェーデンと日本に共通点を見つけました。
スウェーデンのハンターは、「撃たなかったことを、決して後悔しないこと!」。つまり、しっかり準備をして確実に仕留められる時にしか引き金を引かないなどという戒(いまし)めがあります。
同じように、北海道むかわ町の有害鳥獣駆除ハンターの本川(もとかわ)さんは、鹿に対する尊厳を大事にしていて、鹿を苦しめないために、殺しきることが動物たちとの約束だとおっしゃいます。
人間が生態系のバランスを崩したことの責任を取るような側面があるからこそ、動物に対して敬意を払う必要がある。そういった誓いが、狩猟者の心の健康やグループの秩序を保つのに役に立っているのだと思います』
『スウェーデンでは動物と共存するための、マクロな社会制度・文化・価値観があります。日本にも小さな伝統的な狩猟者グループは共通する点がきっとたくさんあります。
そういった日本にあるアニマルウェルフェアの価値を見直し、仕事や地域に誇りの持てる、守りたくなるルールを軸とすれば、狩猟事故の防止、他部門連携、ジビエ活用の促進など、結果的に持続可能な地域コミュニティの鍵となるのではと思います』
『こういうことにはトップダウンで誰かがルールを決めるのではなく、様々な立場の人が社会の仕組みづくりに関われることが大事だと思います。
そこでお題です。「動物や自然と人間が共存していくためには、どんな社会の仕組みが必要だと思いますか?」動物の視点で今日は考えてみてください。よろしくお願いします。ありがとうございました』
【ブレスト会議】人も動物も健康で幸せに暮らせる社会へ
6名の連続ピッチが終わると、参加者も交えた「ブレスト会議」が行なわれます。
冒頭紹介した6名のVision Hackerが、オンライン上でそれぞれの部屋に分かれます。そして参加者も自分が興味あるアジェンダの部屋に移動し、ブレストがスタートします。
先ほどに続き、「人も動物も健康で幸せに暮らせる社会へ」をアジェンダに掲げた金森さんの、ブレストの様子をお届けします。
◆
私は狩猟を主にやっています。狩猟だけではなく、たとえばロードキルの問題や犬猫の殺処分など、どれも法はあるけれども、人と動物にもう少し寄り添ったものになるといいなと感じたことはあります。当事者はなかなか声をあげづらいですし、そもそもとして、「法律にならないと守れないのか」と思うこともあります。
私は、子ども達と一緒に、馬とセラピーをやっています。動物を中心に考えて活動することで、発想や価値観が変わってきます。その一つのアイデアとして、小学校で馬を飼うようになれば、自分中心では回らないことを身をもって体験できるのではないでしょうか。
よく「害獣」という呼び方をすることがありますが、それは人間から見た呼び方です。野生の動物が人里に降りてきて畑を荒らすことがありますが、その理由を考えてみると、動物は動物で生きるのに必死なわけで、テリトリーが害され、食べ物がなくなっているからです。人間と動物とお互いの生活を侵入しないような開発だったり、動物の立場も考慮した人間の生活方法を考えることも大切だと思います。
動物が里に降りちゃうのは、里山がどんどんなくなって、人の気配がしないからだとテレビで見たことがあります。限界集落で人がいないところに、人の手を入れていくと、テリトリーみたいなものが動物的にも分かって、降りてこないかもしれないですよね。また人間と動物とが共存しているグレーゾーンをあえてつくることも必要だと思います。
など、様々な意見・アイデアが出てきました。《上記は一部抜粋》
◆
ちなみに読者のみなさんは、動物や自然と人間が共存していくためには、どんな社会の仕組みが必要だと思いますか?
もしよろしければ、BMに参加している気分で考えてみてください!
【事後インタビュー1】アジェンダオーナー・金森万里子さん
さて今回の記事では、アジェンダオーナーの金森さんにフォーカスし、BM特別版の様子をお届けしてきました。またイベント終了後、金森さん(以下敬称略)にインタビューを実施しました。
◆
──金森さん、BM特別版おつかれさまでした。アジェンダオーナーとして登壇されて、いかがでしたか?
金森 私はアカデミアの人間です。BMは、私がいつも発表している場とは少し違う雰囲気でとても新鮮でした。みなさんポジティブにたくさんコメントくださり、応援しようという雰囲気が伝わって嬉しかったです。多くの方が興味を持ってくださり、少し自信がつきました。
普段動物の話をすると、日本社会って結構センシティブになったりバッシングを受けることも正直あるなと感じています。しかし、そういう雰囲気にもならず、みなさん私の話を聞いてくださいました。BMは、自分が思うことや感じることを素直に表現できる場所だったので、すごく安心しました。
──ご自身の活動について、どのようなビジョンをお持ちですか?
金森 今回のBMで一番大きかったのは、「今回のテーマを社会にもっと問いかけていってもいい」と思えたことです。私は今、公衆衛生学という分野で研究をしていて、動物のことが背景にありつつ、メインは人の健康の研究をしています。もう少しで卒業ですが、それに向けて、動物と人の視点を向けた研究プロジェクトを立ち上げていきたいと強く思いました。
そんな中、色々な現場の方の思いを聞いたり、企業とコラボできるところを探していきたいです。今回のアジェンダのような話題を、もっと気軽にできればいいなと思いますので、そんな雰囲気づくりの力になれたら嬉しいです。
【事後インタビュー2】応援コーディネーター・小檜山歩さん
続いて、金森さんの応援コーディネーター(*)を担当された小檜山さんにも、イベント事後にお話伺いました。小檜山さんはアビームコンサルティング株式会社に所属し、BMを企画運営しているand Beyondカンパニー事務局のメンバーでもあります。
(*)BMではアジェンダオーナーひとりひとりに対して、応援コーディネーターという「伴走役」がつきます。事前準備の段階からサポートに入り、当日のブレスト会議のファシリテーションも担当し、ディスカッションを盛り上げます。その名の通り、アジェンダオーナーの挑戦を全力応援するメンバー。
◆
──小檜山さん、BM特別版おつかれさまでした。金森さんの応援コーディネーターとして参加されて、いかがでしたか?
小檜山 BMで応援コーディネーターを半年ほどやってきました。普段のBMにアカデミアの方があまり登壇されない中、今回新しい可能性を感じました。
金森さんのような柔らかい物腰で、学術的なバックグラウンドもある中で、「こういうことなんですよ」と参加者に伝えると、センシティブなテーマであっても、BMでディスカッションができるという新しいヒントをいただきました。
──応援コーディネーターとして、今後の展開などございましたらお聞かせください。
小檜山 弊社はコンサルティングファームで、コンサルティングを事業にしており、「人が資本」です。BM全体という観点ですと、我々が事業やプロジェクトにお試しで入らせていただいて、推進のお手伝をする。たとえばファシリテーションや資料づくり、タイムスケジュールの提案など、「伴走者」としてチャレンジを応援していくことは、今後も引き続き行なっていければと思います。
BM第二部の開催レポートとして、後編に続きます!
以上、BMの第一部の開催レポートでした。
Vision Hackerのプレゼンやブレストの様子、そして事後インタビューをご覧いただきながら、BMに集う「未来を創っていく、個人の意志あるチャレンジ」についてお届けできればと執筆しました。読者のみなさん、いかがでしたでしょうか?
◆
さて実は、イベント当日は第二部として、この続きがありました。
第二部では、先駆者として時代を切り拓き、今もなお最前線で活躍されている経営者の方々が特別ゲストとして登壇し、「コロナ禍に伴う時代の変革期、企業や組織はどう進化すべきか」をテーマに、トークセッションが行なわれました。
<特別ゲスト>
- 山田 邦雄さん(ロート製薬株式会社 代表取締役会長)
- 田口 義隆さん(セイノーホールディングス株式会社 代表取締役社長/一般財団法人ソーシャル・ビジネス・プラットフォーム 代表理事)
- 松本 大さん(マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEO / マネックス証券株式会社取締役会長)
- 矢崎 和彦さん(株式会社フェリシモ 代表取締役社長)
また、企業に所属しながらもユニークなビジョンを持ち、アクションを起こしている若手”Z世代”社員たちの60秒ピッチもありました。
◆
そんな第二部の開催レポートは、後編と題して、近日公開予定です。「今後の組織のあり方、そして企業に集う個人のあり方」について新たな兆しを感じていただけるかと思いますので、ぜひお楽しみに!
《後編、公開されました!》 ※2020年11月26日追記
未来を担う若者が、組織の垣根を超えて仕掛けていく時代へ―Beyondミーティング特別版 feat. Vision Hackers【後編】
※本記事の掲載情報は、2020年09月現在のものです。
獣医師/公衆衛生修士/東京大学大学院医学系研究科保健社会行動学 健康教育・社会学分野博士課程/ストックホルム大学Department of Public Health Sciences客員研究員/金森 万里子さん
北海道大学獣医学部卒業後、北海道別海町にて牛の臨床獣医として勤務した経験を活かし、牛の健康から人の健康へ視点を変えて研究を行っている。専攻は公衆衛生学・社会疫学。農村地域の自殺の社会的決定要因について、国際学術誌に複数の原著論文を掲載。日本学術振興会特別研究員。現在、人と動物のより良い関係について研究するという幼少期からの夢を叶えるため、試行錯誤中。動物ブログ「犬曰く」にて、スウェーデンの狩猟文化とアニマルウェルフェアについて記事を執筆。
アビームコンサルティング株式会社 P&T Digital ビジネスユニット HCMセクター 兼 CSRユニット マネージャー/小檜山 歩さん
ITベンチャーでの営業企画を経て、2013年10月にアビームコンサルティングに入社。メーカー・大学向けに制度/業務改革計画策定・人事基盤構築、トレーニーとしてDMS導入のグローバルPJを経験し、現在は総合商社の次期人事基盤構築のPMOを担当中。社内研修講師として研修を実施することもある。社会課題の解決を目指して、CSR・SCI(Social Contribution Initiatives)にて本業を活かした社会課題解決の形を模索している。
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