「社歴が長くなると、課題を突破していくため次の事業づくりに向けた一歩を踏み出す必要がでてくると思います。YUIDEAに(ユイディア)ともトライ&エラーを重ね、今は新しい事業の可能性を私たちが拡げ、時にぶつかる壁を突破することで私たち自身が見たい新たな未来をつくろうとしている段階かなと思っています。」
生活協同組合などを含めた、生活者視点を大事にした「食とくらし」のダイレクトマーケティングやステークホルダー視点のESG(サステナビリティ・CSR)情報開示支援を中心としたコーポレートブランディングを事業領域としてきた株式会社YUIDEAで、サステナブル・ブランディング事業の事業推進責任者として新しい仕掛けづくりに携わる内藤真未さんは、この事業が組織に与えている影響についてこう話します。
今、世界では企業や投資家を中心とした経済資本主導の時代から、2030年の達成に向けたSDGsを視野に入れた社会と文化の「持続可能性」を表す「サステナビリティ」に関心が集まっています。さらに、生活者や市民視点でありながらも、企業の強みを活かし事業と社会の課題解決を両立させ、価値創造モデル視点のブランド価値向上へとつなげる「サステナブル・ブランディング」への取り組みに挑戦する企業が増えています。
かねてから生協などを含む生活者視点のコミュニケーション支援も手掛けるYUIDEAでは、数年の模索、準備期間を経て、満を持して2021年にサステナブル・ブランディング事業を立ち上げ、2021年10月にはWEBメディア「サステナブル・ブランド・ジャーニー」をローンチしました。
「創業の精神から過去にも社内活動を含めて社会貢献を視野に入れた活動は行ってきましたが、時代背景を踏まえて事業として進めることで、新たな価値創出に向けたイノベーションを追及したい」という想いとともに、「バーチャルNPO」(※)やand Beyondカンパニーへの参画、実践的挑戦としての商品開発・販売など、進化への実験を続けるYUIDEA。今回事業化した「サステナブル・ブランディング」は、事業や組織にどんな変化を与えているのでしょうか。内藤真未さん、チームメンバーの野矢優里奈さん、吉田凪沙さんにお話を聞きました。
※「変革期の組織を進化させる『バーチャルNPO』とは?実践型の企業を目指すYUIDEAの挑戦」参照
「サステナブル・ブランディング」をビジネスとして成立させる
――サステナブル・ブランディング事業部はどんな経緯で始まったのですか?
内藤さん(以下敬称略) : YUIDEA では、新規事業開発を目指した挑戦と応援の文化づくりを行うため、2019年に「バーチャルNPO」を始め、2020年には初めて商品の開発・販売を行ってきました。それらの取り組みに手ごたえを感じて、第三の柱として正式に事業化に踏み切りました。私はサステナブル・ブランディング事業が本格的に始動するタイミングで参画しました。
チームでミーティングをする内藤さん(写真左)
この事業のミッションは、「事業価値と社会課題解決を直接的につなげ、YUIDEAの伝統であり価値である生活者視点とステークホルダー視点以外に、それらをつなぐコミュニティの視点を取り入れ、事業として社会や地域の価値創造に持続的に貢献することです。YUIDEAはこのサステナブル・ブランディングを事業の第三の柱として確立することを目指しています。
そのためのコミュニケーションの起点として、多様なステークホルダーがつながりあう場として、オウンドメディアの「サステナブル・ブランド・ジャーニー」を運営、活用しています。もちろん私たち自身がサステナブルであるためにも、収益を上げる仕組みを確立し、サステナブル・ブランディング事業の実績を増やしていく。しっかりとビジネスとして成立させていくことが重要であると考えています。
YUIDEAが運営する「サステナブル・ブランド・ジャーニー」のトップページ
――具体的に「サステナブル・ブランド・ジャーニー」ではどんなことを展開しているのですか?
内藤 : Webメディアとしては、サステナブル・ブランディングに取り組む企業にとって参考になる記事を発信しています。それだけでなく、 メディアの枠組みを超えてYUIDEAと社会の接点の場づくりとしても、パートナーと共に事業を共創する入り口としても、サステナブルな活動に取り組む企業や団体と直接コンタクトを取り、独自取材を行っています。
記事の執筆だけでなく、サービス開発やマーケティングの一環としてのセミナー企画など、「こんなことをやってみようか」とチームでディスカッションしながら、様々な展開を模索しています。たとえばサービス開発においては「YUIDEAが提供すべきサービスは何だろう」という問いから始めて、プログラム開発や商品開発のアイデアを出し合っています。
――「サステナブル・ブランド・ジャーニー」は事業のマーケティングとしての役割もあるのですね。
内藤 : そうです。理想は、「サステナブル・ブランディングといえばYUIDEA」というイメージを確立し、企業から相談が寄せられるような信頼感や関係性を築けること。そのためにどんな仕組みを作るかをチームで議論しています。
また、企業に「こういうことを一緒に考えてみませんか?」と持ち込み企画を提案して、「それいいですね。もっと話を聞かせてください」と話が深まっていくことも目指しています。受託型の仕事や制作業務が中心となるこれまでのYUIDEAでは実現が難しかったアイデアや思考も、企業と共に考え、取り組みながら、サステナブル・ブランディング事業を通して形にしていけたらと思っています。
職域や職責を超えた多様なチームメンバー。新しい事業づくりの文化をつくった
――内藤さんは、入社当時、「サステナブル・ブランド・ジャーニー」の責任者として立ち上げに携わっていましたが、その後、業務の幅が広がっていますね。
内藤 : はい。今は、YUIDEAの中で新規事業の立ち上げを進めることに軸が移っています。正直、私も何度か面接を重ねた後に「採用が決まりました」と告げられた時は意外だったんです(笑)。
――そうだったんですか。
内藤 : 私の中のYUIDEAのイメージは、専門性が高い人材の集団だったんです。でも、私はどちらかというと浅く広くいろいろな業務に携わっていたので、最初はどこが評価されたのかわかりませんでした。
「サステナブル・ブランド・ジャーニー」が新規事業づくりの初めの一歩であると理解した時は、前職での新規事業立ち上げで大変な思いもしたのでそこを評価していただけたのだと腑に落ちました。
――野矢さんはサステナブル・ブランディング事業が立ち上がる前から関わっていたそうですが、たとえばこの半年で何かチームや組織に変化を感じたことはありますか?
野矢さん(以下敬称略) : 私はすごく感じていて、以前からプロジェクトごとに部署を横断してチームがつくられることはあったのですが、一つの事業としてはあらかじめ専従ユニットをつくるのではなく、所属ユニットの枠を越えて、職種や職責、男女や年齢、時には社員か外注先か、という契約関係をも超えて、事業づくり・多様なチームづくりを考え、育む文化がサステナブル・ブランディング事業から生まれたように感じています。
吉田さん(左)と野矢さん(右)
あとは、自分自身の興味の幅が広がったし、周りの人たちと話しやすい雰囲気になったのは大きいです。「こんな記事が載っていました」「こういう商品が話題になっていますよね」など。私も売り場を見ると気づくことが増えました。
たとえばフェアトレードを知ることで、お店にその商品が並んでいることに関心を持って観察するし、以前よりも売り場が広がったり、予想外の売り場に置かれていたり発見できることがうれしいし、そういう日常を楽しんでいる自分がいます。
顕在化していない課題が多いから、自分で探しに行く
――「社員には自発的に動いてほしいけれど実際は難しい」と、多くの企業で経営層が試行錯誤していると思うのですが、サステナブル・ブランディング事業では自然と主体性が伸ばされているようにも思います。何か理由はあるのでしょうか。
野矢 : サステナブル・ブランディング事業の領域で求められることは、まだ顕在化していない課題が多いので、自分から探しにいかなければ見つけられないことが理由として大きいと思います。能動的な姿勢でどんな小さな動きにも気づけるように、普段から意識することで行動も変わったと思います。
内藤 : 「サステナブル・ブランド・ジャーニー」では記事の大半を社員が書くことにもこだわっています。というのは、記事を作るための取材をきっかけに、自分たちが実際に社会の変化を感じることがとても大事だと思っているからです。そうした積み重ねが、お客様への提案の豊かさにもつながっていきます。自分事として記事を発信できなければ、このメディアの意味はないと思っています。
メディアの立ち上げ当時は、コンテンツ作りはすべて外注する話も出ましたが、そういった意識を変えていくことからこの事業の役割は始まっていると思って取り組んできました。
一つの事業の為、自主的なマネージメントに取り組む旅路
――仕事のクオリティを維持することも大切になってくると思うのですが、その辺りはいかがですか?
野矢 : 今までのビジネスは基本的に受託型のため、お客様からの相談に対してプロジェクトごとにチームが作られて、委託内容として自分たちのできることを提案してきました。一方で、サステナブル・ブランディング事業はどちらかというと自主提案型で、私たちの方から提案するスタイルになっていて、これは大きな変化だと思っています。
通常の組織的な職責とは別に、事業環境を自主的に作っていくための一員として私も事業マネージメント会議に参加していますが、上司から指示された業務をやるだけではなく、メンバーが自律的に動くための大事な意思形成の時間だと思っています。事業の意義や目指す方向性を、マネージメント層と一緒に考え、ともにつくる場があることは、さまざまな業務やコンテンツ作りのクオリティの向上につながっていると思っています。
内藤 : 共有される情報がまったく違いますよね。大事なのは、「必要なタイミングで、必要な業務を担う」理由を一人ひとりがしっかりと把握して、考えながら動くことだと思います。
YUIDEAは「生活者視点」、言い換えると「当事者であること」を仕事において大事にしています。付加価値によってクリエイティビティや事業の継続性を高め、当事者視点から生まれるコミュニケーションが生活を豊かにするという発想がベースにあると感じています。
たとえば、外部パートナーの吉田さんも事業マネージメント会議に参加し、同じ情報を共有したうえで別の視点から意見を発言してくれています。私自身も組織のマネージャーを兼ねていますが、こうした吉田さんの姿勢は、今後私たちが組織のマネージメントを行う上でも普段の行動を見直して変化させる刺激になっていると感じています。
――もともと「将来の柱になりうる事業をつくりたい」と新規事業づくりを望んだマネージメント層の思考や行動にも変化を与えているのですね。
内藤 : マネージメント側に立って考えると、やはり立場上、保守的な殻を破れない場面は出てくると思うんです。それを今、ぺりぺりと剥がしながら挑戦しているタイミングのような気がしています。私たち自身が固い殻をコツコツとたたいたり柔らかくしながら、拡げられたかな、飛び出せたかな、と。
野矢 : 内藤さんにはそういう見方もあったんですね。もっと頑張ろうと思いました(笑)。
「新規事業だから仕方がない」ではなく、「自分たちの仕事には価値がある」へ
――こうした自主的な動きは、「能動的に動くにはどうすればいいのかを考える」という一人ひとりの姿勢も働いているように思うのですが、ベースには、内藤さん自身の経験や考えが活かされているのでしょうか。
内藤 : 前職の経験はとても活かされていると思います。いろいろ経験しましたが、大きかったのは、新規事業を立ち上げることが決まった後、コロナ禍のために思うように進めず、メンバーのモチベーションが一時期下がってしまったことですね。
そういう時は、ややもすると「なぜ自分がやらなければならないのか」と意義を見失ったり、メンバー以外の人を「いいなあ」とうらやんだりする気持ちが大きくなることも起きるかもしれません。
どこかの記事で、「新規事業が直面する死の谷」といった言葉を目にしましたが、新規事業には、努力していることがなかなか実りにくい、売り上げが上がらなければ「新規事業だから仕方ない」とみられるなどネガティブな要素もあります。一方では、「もっと頑張らなければいつまでもこのままの状態ではいられないよ」と発破をかけられることもあると思います。
少なくとも、「今、自分が取り組んでいることには価値がある」と確信を持って仕事をすることがクオリティを高めます。だから、前職ではメンバーのモチベーションを上げることを一生懸命考えました。それが今、活きていると実感しています。
――上層部は「新しいことに挑戦してほしい」と思っていても、実際に動くメンバーが「死の谷」と思っていたら、なかなかバランスが取れないですよね。本当にやってみないとわからない。
内藤 : そうですよね。他の企業でも、新規事業あるあるだと思いますが、「イノベーションを起こしたい」とマネージメント層が新規事業の立ち上げを決めても、実際に走り出すと、「なぜ売り上げが上がらないのか」「どうしてこうなるのか」と、短期間で成果を求められることが起こりがちなのかなと思います。
でも、本当はマネージメント層も「どうすれば売り上げが上がるのか」を一緒に考える当事者として、想いや方向性、事業としての目標自体もすり合わせていくことが新規事業の成否を分ける重要なポイントだと思っています。
だから、誰が聞いてもわかるような自分たちの共通言語をマネージメント層と一緒に作ることが大事だと思っていて、今話し合いを重ねています。
――こうした内藤さんの思考や行動のベースには、何か譲れない想いのようなものがある気がします。
内藤 : 特に大きなこだわりはないのですが、時間はすごく貴重なもので、人生と結びついていると思っています。誰もが人生においては死に向かって限られた時間を生きていて、その貴重な一分一秒を有意義なものとするために、「この仕事をやっていてよかった」と自分自身が思えるような仕事にその時間を費やしたい 。関わる人たちにもそうあってほしいなと思っています。
吉田さん : 私は外部メンバーとしての関わりですが、チームのメンバーの方たちは、自分の興味ややりたいことを業務に活かしやすいのではないかと感じています。新規事業なのでどうなるかわからないという不安もありつつ、それぞれが持てる知識や経験を存分にだしつつも、関わることすべてを学びに変えて自らの糧にし、業務に活かすことのできる環境が、自分自身を高めることにつながっていると思います 。
サステナビリティが当たり前の社会に欠かせない存在になりたい
――サステナブル・ブランディング事業の取り組みから、今どんな未来が見えていますか?
内藤 : サステナブル・ブランディングは、これから浸透していく言葉だと思っています。近い将来、「サステナブル・ブランディングといえばYUIDEA」という認知を獲得したいですし、そのためには今、社会課題となっていることをいろいろな人を巻き込みながら一緒に考えるための情報発信や仕掛けを作っていきたいです。
たとえば、エシカル消費がなかなか浸透しない背景には何があるのか。フードロスをなくしていくために生活者としての一人ひとりが今できることは何か。企業で働くひとりとして、企業という組織として地域や社会でできることは何か、そこで必要となるコミュニケーションとはどのようなものか、など。
いつかサステナビリティが当たり前の社会になることが理想ですが、そこにたどり着くために、私たちもできるだけ多くの取り組みに関わっていきたいと思っています。そして、YUIDEAをサステナブルな社会に欠かせない存在にしたいです。
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株式会社YUIDEAでは、一緒に働く仲間を募集中です。
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株式会社YUIDEA/内藤真未
広告代理店クリエイティブを経て、事業会社のハイファッションEコマース事業部のディレクターと編集に長く携わる。並行して、コーポレートサイト・EC・オウンドメディア等あらゆるWebサイトの運営に従事し、広報を経て新規事業開発マネジャーを務めた。 2021年にYUIDEA入社後はサステナブル・ブランディング事業推進責任者として、オウンドメディア『サステナブル・ブランド・ジャーニー』運営の他、プログラム開発やコミュニケーション設計の提案などに取り組んでいる。
株式会社YUIDEA/野矢優里奈
大学進学を機に上京。大学時代のインターンを経てYUIDEAに新卒入社。コミュニケーション及びサービスに関わるプランニングを主導するチームにて、Webサイト制作のディレクション、プロモーション企画・提案などを実行。現在は、サステナブル・ブランディング事業を推進すべく、マーケティング施策やクライアントへの提案を務めている。
株式会社YUIDEA/吉田凪沙
住宅デベロッパーにて商材のリブランディングを行ったのち、外資化粧品ブランドにてコミュニケーション、デジタルマーケティング、Eコマースに従事し、右脳と左脳を並行して鍛える。ファッション、ビューティ、ウェルネスなど、情緒的要素を含む分野が得意。好奇心によりさまざまな人種・国籍の人に接し、考えに触れてきた背景によりダイバーシティ思考が基本。日本人らしさとフリーダムを併せ持つ。
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