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U25世代が構想する未来の東北とは? ーみちのく共創キャンプ2021レポートー

2021.02.09 

michinoku

 

2021年3月、東日本大震災から10年の節目を迎えます。復興に向けて、これまで数多くの革新的な取り組みが生まれてきました。当メディアを運営するNPO法人ETIC.(以下、エティック)では右腕プログラムみちのく復興事業パートナーズ等の取り組みを通して、東北のたくさんのプレイヤーの皆さんに伴走してきました。

 

これからの10年は、「応援」される東北から、次世代をつくる東北へ。そんな思いから、さらに未来の東北を考える「みちのく共創キャンプ」が開催されました。今年は初のオンライン開催となり、約50名が参加。東北で活動する人同士の「事業相互応援会」、25歳以下の若者による「U25世代ピッチコーナー」の大きく二つのプログラムが実施されました。

 

今回の記事では、「U25世代ピッチコーナー」の登壇者7名の活動をご紹介します。震災当時小中学生だった彼らは今の東北になにを感じ、これからの東北のためにどのようなアクションを起こそうとしているのでしょうか?

漁網のアップサイクルを通して、気仙沼から世界に発信!

 

一人目は、地域おこし協力隊をきっかけに宮城県気仙沼市に移住した加藤広大さん。気仙沼の使い終わった漁網でTシャツをつくる廃漁網のアップサイクル事業の準備を進めています。

 

「漁網」は、魚を捕獲するために欠かせない道具のひとつ。使い終わった漁網を適切に捨てるためには、環境省の「漁業系廃棄物処理ガイド」に基づいて処理を進める必要があります。ただ、そのためには専門業者との契約など手間や費用がかかるため、加藤さんによると適切に処理しきれなかった「ゴミ」としての漁網の山があちらこちらで見られるそう。

 

海

漁網(加藤さんご提供)

 

そんな光景を目にした加藤さんは「気仙沼にとって漁業は大切な基幹産業。その大事な道具が“ゴミ“になってること自体がもったいない。考え方ひとつで資源として見ることもできるのではないか?」と考えるようになり、プロダクト化の構想が生まれたそう。

 

気仙沼の図

加藤さんの発表資料より抜粋した図

 

Tシャツなどにアップサイクルする上で大切にしたいことは「ストーリーを編む」ことだと言います。「気仙沼は世界有数の天然良港として古くから世界と交流がありました。そんな海と共に歩んできたストーリーを産業廃棄物になった漁網に編み、この街だからこその環境問題へのメッセージを世界に発信したい」と意気込みます。気仙沼でモデルをつくれたら、他地域での展開も考えたいとのこと。そんな加藤広大さんとのコラボレーションにご関心のある方は、ぜひFacebookを通じてご連絡してみてください!

(参考)「漁業系廃棄物処理ガイド

 

子どもや若者が地域とつながり、未来をつくる「まちぐみ大学」

 

青森県八戸市在住の木村優哉さんは、実践型インターンシップのコーディネーションを行う株式会社バリューシフトと、まちを面白くする市民集団「まちぐみ」で活動をしています。

 

木村さんは、以前参加した東北オープンアカデミーをきっかけに訪れた八戸市島守での風景が活動の大きなモチベーションになっていると話します。

 

木村さん

登壇中の木村優哉さん

 

「島守で見たのは、こどもと大人が一緒に田植えをし、ごはんを食べ、休みの日には綱引きなどのレクリエーションを楽しむ、地域全体でこどもを育み支え合う社会のあり方でした。こどもや若者が地域ともっとつながるきっかけをつくることで、世の中を少しでもよりよくしていけるのではないか、と考えるようになりました」と木村さんは話します。

 

木村さんは、そんな思いがつまった地域の学びの場「まちぐみ大学」の創設準備を進めているそう。

 

まちぐみ大学

まちぐみ大学公式サイトより

 

「まちぐみ大学」とは、地域住民自らが「先生」となる自由な学びの場。いろいろな得意分野を持つ地域の方々が講座を持ち、開かれた学びの場として運営する予定なのだとか。

 

「地域で活動する中で、学校に行けていないこどもや、自分が何者がわからず悩む若者がたくさんいることに気づかされました。そのような課題に対してできることを考えた時、“本当に好きなことや熱中できることを見つけ、学んでいける場所”をつくりたいと思ったのです。自分の興味関心を深掘り、地域をフィールドに発信していくことのできる場所としてまちぐみ大学を準備しています」と木村さんは話します。そんなまちぐみ大学の詳細は公式サイトからご覧いただけます!

コロナ禍で生まれた、教育大学の学生がつくる、すべてのこどもに寄り添うオンラインの学びの場

 

宮城教育大学の中野柊一郎さんは、学生ボランティア団体「manaco」を運営しています。manacoでは、すべてのこどもに寄り添うためのオンライン上のこどもの居場所を提供しています。

 

設立のきっかけは、2020年春の新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言による一斉休校措置。私たち大人の日常生活はこれまでにない変化を迎えることとなりましたが、学校に行けなくなったことで、当たり前の暮らしがなくなったのはこどもたちも同じです。そんなこどもたちを見て、教育大学に通う自分たちにできることはないだろうか?という着想から団体を開始したそう。

 

manaco

manacoメンバーのみなさん

 

活動を進めるうちに、新型コロナウイルスの影響だけでないこどもたちの現状が見えてきたと中野さんは話します。「不登校の子、障害のある子、経済的理由で学校に行けない子、いろいろなこどもたちと出会いました。様々なバックグラウンドを持つこどもたちを支えたいという思いが強まり、緊急事態宣言が終了したあとも団体の継続を決意しました。」

 

主な活動内容は3つ。ひとつは日々の無料の学習支援。教育学を学ぶ学生がこどもに合った学習を一緒に考えます。2つめは「トークルーム」と呼ばれる、ちょっとした雑談から悩み事の相談まで気軽に話せる場所の提供です。また、教育について学び、考え、共有する機会を提供する学生・社会人向けのイベントも主催しているそう。

 

SDGs

manaco主催のイベント

 

設立したばかりの団体ということもあり、認知度、資金面、組織運営などの悩みもあると言います。今後もいろいろな方々とのコラボレーションを通してより良い団体にしていきたいとのこと。日々の活動は公式サイトやSNS(インスタグラムツイッター)をご覧ください!

100%の自信を持っておすすめできる「福島」をつくる!キッチンカープロジェクト

 

福島県川内村や田村市を拠点に活動を進めている大島草太さんは、そば粉ワッフルを販売するキッチンカープロジェクト「Kokage Kitchen」を主宰しています。その活動に至ったきっかけは、一年間カナダで働いた経験が大きいと話します。

 

「カナダで一緒に働いていた同僚に福島から来たことを話したら、『そんなところに人が住めるの?』と怪訝な反応をされたことがありました。それがすごくショックで悲しくて。出身でもない、大学を卒業しただけの福島に思っていた以上に誇りを持っている自分にも気が付きました。100パーセントの自信をもっておすすめできる福島にしたい!と思い、現在の活動を始めました」

 

トラック

クラウドファンディングで資金を集め購入したキッチンカー

 

帰国後、大学の活動で関わりご縁のあった川内村での活動を開始します。川内村は東日本大震災後に一度人口がゼロになった地域。現在も放射線量の問題をはじめ多くの課題を抱えていますが、だからこそ安心して住める場所を目指し、たくさんの前向きなプロジェクトが動いている地域でもあります。

 

大島さんはそんな川内村について「とにかく人のエネルギーがすごい場所です。自分がやるべきことは、そんな村の魅力を発信すること、そして、気軽に来てもらえる場所をつくること。川内村を面白がってもらう人を少しでも増やしたいのです」と話します。

 

クラウドファンディング

クラウドファンディングの様子

 

そのために川内村の特産物を使用したそば粉ワッフルを開発し、クラウドファンディングでキッチンカーの準備資金を募り、活動を開始。キッチンカー以外にも、地域で気軽に楽しめる居場所をつくるためのマルシェを企画するなど、地域内外のいろいろなプレイヤーと連携した取り組みを進めています。今後もよりコラボレーションを加速していきたいと話す大島さん。そんな様々な活動内容はインスタグラムでご覧いただけます!

「なんにもない」街のイメージをなくす!地域の中高生のための居場所づくり

 

株式会社クロコカンパニーの松本光基さんは「このまちを若者が挑戦できる、無限の可能性を秘めた舞台にする」ことをミッションに、福島県相馬市で中高生向けサービスを展開しています。起業をしたのは2020年秋とつい最近で、目下サービスの具体化に向けて邁進中とのこと。

 

松本さんが目指しているのは、若者が「相馬だから」を理由に諦めなくて済む地域づくりです。「今の相馬市には、駅前や街中に中高生が気軽にいられる場所がありません。例えば相馬市の中高生にとっては、コインランドリーが親の迎えを待つ場所になっていたり、音を消したカラオケが集中して自習のできるスペースになっているのです」と松本さんは相馬の抱える中高生の課題について話します。

 

中高生の場所

松本さんの発表資料より

 

若者の「相馬はなにもない」という印象は「はやくこの街を出たい!」という欲求を生み、ますます街から若者が減ってしまう連鎖を生んでしまうのではないか?と松本さんは言います。そんな連鎖をなくすため、「この街って面白いかも?」というわくわくした予感を生むような中高生のためのフリースペースをつくりたいと考えているとのこと。

 

構想中のフリースペースは、中高校生が放課後や休日のちょっとした時間に利用することができて、勉強や個人作業、友達との談笑の時間を「だれでも、いつでも」過ごすことができるイメージで準備中なのだとか。

 

第0期

松本さんの発表資料より

 

ゆくゆくは「若者が挑戦できる無限の可能性を秘めた舞台にしたい」と松本さんが話すように、その場をきっかけに中高生が地域や社会について知り、やりたいことを声に出し、形にできる拠点にしたいとのこと。これからの期待が膨らみます!今後の活動は、公式サイトやSNSをチェックしてみてください!

若者と大人をつなぎ、誰もあきらめなくて済む仕組みをつくる

 

あえて唯一の「学生」という肩書きでピッチトークを行なった高橋ひなこさんは、現在岩手県在住の大学生でありながら「若者・学生」と「大人」をつなぐ媒介者としての活動を進めています。

 

商品開発やプロジェクト立ち上げにあたって「若者の声を聞きたい」と思う企業や自治体、個人事業主の方々は多いのではないでしょうか?しかし、いざ若者と大人が出会う機会があっても、なかなか双方のニーズや課題をくみ取りきれず、消化不良になってしまうことも多いのではないかと思います。

 

高橋さんは、そのような現状を「くしゃくしゃになった紙くず」とユニークに表現します。「くしゃくしゃ」とはいろいろな人の「諦め」であり、形になりきらなかった「アイデア」や「想い」でもあります。

 

くしゃくしゃ

高橋さんの発表資料より

 

たとえば高橋さんは、そんな若者と大人のミスマッチを少しでも解消するため、定期的に対話型イベントを主催しています。若者にとって、大人はやはり「目上」の人であり「話しかけにくい存在」です。そんな壁をなくす場として、対話を重視した場をつくっているそうです。「教育」や「政治」などをテーマに、若者から大人までいろいろな立場の人がフラットに話す場をつくっています。

 

飲み会

高橋さんの主催したイベント例

 

また、若者向けに認知拡大を図りたい事業者の「くしゃくしゃ(諦め)」をなくすためのサポートも行なっているそうです。現在はいちご農家さんとのクラウドファンディングを実施しています(2021/2/14に終了)。ヒアリングをもとに若者に刺さる形で会社の思いを言語化したり、周りの学生と発信をするなどして盛り上げているそう。

 

紙屑ボール

高橋さん発表資料より

 

「くしゃくしゃになってしまった紙くずを広げ、適切な人に投げる役割を担い、みんなの諦めをなくしたい。気づき、考え、行動することが得きる社会をつくりたい」と話す高橋さんのこれからの活動にも注目です!自身が発起人となり活動する若者中心のチーム「Us Lab」のnoteで日々の活動をご覧いただけます。

南三陸の土地を守るために。みんなが気軽に楽しめる「農園カフェ」で新規就農

 

最後は、生まれ育った宮城県南三陸町で「大沼農園」を営む大沼ほのかさん。2019年に新規就農したきっかけは、南三陸の農家のみなさんが大好きだったからと話します。

 

「農家さんに話を聞くと、“昔は一次産業に従事する若い人たちがわいわい活動して、その光景がとても幸せだった”と言います。ただ今はどんどん若者が減って、後継者がいないことで辞めていく農家さんも多くいます。この南三陸町の土地は、先祖代々何千年と守られてきた土地です。そんな土地にちゃんと希望を持って農業人生を終えて欲しい。大沼農園をやることで、少しでもこの土地を守り続けるきっかけをつくりたいのです」と大沼さんは話します。

 

青空と畑

大沼農園の様子

 

現在は、栗やさつまいも、桃、ブルーベリーなどの果物、野菜などを栽培するかたわら、両親の育てた自然卵と自分の育てた作物を使ったクレープを移動販売しています。そんな大沼さんが今後実現したいアイデアは「農園カフェ」。

 

「ある程度お金を払ったら何時間でもいていいスペースを農園につくりたいと考えています。カフェでおいしい食べ物や飲み物が買えたり、寝っ転がってお昼寝ができたり、南三陸町のきれいな風景を楽しんでもらったり、こどもから大人まで、いろいろな人が訪れてもらえるスペースを目指しています!」と意気込みを語ります。

 

イラスト

大沼さん発表資料より。農園カフェのイメージイラスト

 

南三陸町には、どうしたら若い人がこの街に来るか?どうしたら生業として農業を選んでくれるか?と考えている農家さんが多いそう。そんな先輩農家さんとともにこれからの南三陸町をつくる大沼農園はSNSなどで日々情報を発信中!ぜひこちらもご覧ください。

みなさんの「これからの10年」をつくるネクストアクションは?

 

全員

今回ご登壇いただいたみなさま

 

これまでの10年間、東北で始まった数々の事業やプロジェクトは、未曾有の災害を経験した東北だからこそ生まれたものばかりです。今回ご紹介した7名のみなさんは、これまでの常識に捉われない視点や価値観がベースになった「新しい東北」で育った次世代のプレイヤーです。

 

「応援し合う東北から、次世代へ」をテーマに開催した今年のみちのく共創キャンプは、そんな次世代プレイヤーと参加者全員が対話し、「これからの10年」への一歩を踏み出すきっかけになればという願いで開催しました。読者のみなさんにとっても、復興のステージを超えて新しい価値観を発信し続けてきた東北の今に思いを巡らせ、「これからの10年」を描くきっかけになれば幸いです。

 

NPO法人ETIC.では、みちのく復興事業パートナーズとの共催で、3月3日(水)にシンポジウム「東北から問い直す。働く、暮らす、生きる。」をオンラインで開催します。

 

第1部では、株式会社ポケットマルシェの高橋博之さんと認定NPO法人カタリバの今村久美さん、合同会社巻組の渡邊享子さんとジャーナリスト津田大介さんの対談、第2部では東北のリーダーや復興支援に携わった方々、今から東北と関わりたい方などが自由に対話できるダイアログを行います。詳細はWEBサイトをご覧ください。

 

NPO法人ETIC.では、未来をつくる人の挑戦を支える寄付を募集しています。

 

Facebookページ「ローカルベンチャーラボ」、Twitter「ローカルベンチャーサミット」では、ここでご紹介したような地方でのチャレンジに関する情報を日々お届けしています。ぜひチェックしてみてください。

 

 

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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