平成の大合併を拒み、2008年に村として自立することを宣言した岡山県西粟倉村。
他の過疎地域と同様に課題先進地域でありながら、合併を拒んでからの10年間で起業数は30を越え、これらの事業があることで村に生まれた総売上は10億円以上、移住者数は現在人口の1割を占めるなど、地域資源を生かした事業が多く生まれ続ける先進的な地域です。
現在、西粟倉村役場でプロボノやインターンシップ等、業務委託で働く人を募集しています。
働く場所は、西粟倉村役場内にこの4月から立ち上がった新しい部署「地方創生推進室(以下:推進室)」。この推進室では「地方創生」の切り口で生まれる事業を取りまとめ、縦割り組織を越えて価値創造に取り組みます。さらに、役場職員だけでなく、外部の方も入れて構成されるチームになるとのこと。特に今回募集するのは推進室の室長である上山隆浩(うえやま・たかひろ)地方創生特任参事の直下のポジションです。いわば村の地方創生におけるトップの右腕というポジションで働く経験が積めるということになります。
上山さんは、「私は、この推進室で取り組むことでもっと世界は面白く出来ると感じています。」と話します。
推進室とはどんな組織なのでしょうか。また、推進室を通じて西粟倉村役場はどんな挑戦をするのでしょうか。さらに、上山さんは右腕の方に対して、具体的にどんな仕事をしてほしいと思っているのでしょうか。続けて、上山参事に詳しくお話を伺いました。
推進室で働く、それは既存の枠を超えた「価値創造」に挑むということ
-今回は「地方創生推進室」で上山さんの右腕の方を募集するということですが、前身として「地方創生推進班」があったと伺っています。今回、班から室という形に変化した経緯や目的について伺えますか?
上山さん(以下、敬称略):3年前、村長が地方創生により力を入れて取り組もうと生まれたのが、「地方創生推進室」の前身、地方創生推進班(以下:推進班)です。この班は、役場の課を超えた地方創生に取り組む横断チームです。メンバーは、私を含め12名でした。西粟倉村が地方創生に取り組むことの象徴としてのチームでもあります。
地方創生とは地域の資本価値を上げることです。地域資本といえば西粟倉でいえばまず山、農になるので、それを管轄していた産業観光課が推進班の取り組みに対して軸を持って進めることになります。当時私は産業観光課の課長でもあり、兼任で地方創生特任参事として推進班のリーダーになりました。
当時は、課や室ではない「班」という横断チームで立ち上がったことにまず可能性を感じていました。こういった取り組みは初めてでしたから。ただ「地方創生に取り組む」ことはとてもふんわりしてて、何を議論して何を作るのか見えないなど、手探り感もあり悩みながら取り組んでいましたね。
地方創生推進班の取り組みが始まった最初の年、チームのメンバーと
この推進班の活動は、メンバーも戸惑いがあったと思います。その中でも初年度に、村のこれからの旗印となる「生きるを楽しむ」というキャッチコピーを生み出し、その実現に向けて3年間プロジェクトの企画、事業の立ち上げ、仮説検証を重ねて実践してきました。
ここから生まれたプロジェクトは、例えば、企業と連携しながら地域資源を活用する事業創発に取り組むプロジェクト「むらまるごと研究所」や、教育にアプローチする「あわくら未来アカデミー」、一時託児をはじめとする子育て支援で、今現在も動いています。
推進班のメンバーは、この2年間を通じて村のリソースを活かした事業プロデューサーになっていく実践的なプロセスを踏んできたと思います。
推進班の取り組みで生み出したキャッチコピー
総職員数43名(うち幼稚園教諭5名、保健師3名、看護師2名)の約1/3の職員が推進班として関わり、また各課長たちとの議論も重ねながら全庁で取り組んできた西粟倉村役場が、地方創生において次のステージに進む時が来て、立ち上げたのが地方創生推進室です。
-なるほど。新しい室を作るには職員数の少ない西粟倉村役場では大きな決断のように思いますが実際はどうでしたか?
上山:いえ、とても自然な流れで立ち上がった、必要だから立ち上がった推進室だと思っています。
まず、地域がこれからまた一歩二歩進むための新しい価値観の創造には、既存の仕組みではないかたちでアプローチする必要があります。
そして、推進班の取り組みをはじめ、西粟倉村には、役場の既存事業からスピンアウトして生まれた事業がたくさんあります。これらは今の縦割りの組織体系の中では、どこかの課1つで担当できないものばかりです。
例えば、1つの事業が健康にも、観光にも、産業にも関わってきています。展開次第では教育にも関わります。そうなると役場では、保健福祉課か、産業観光課か、教育委員会か、どこが担当するのか判断しにくくなります。
これらに「地方創生」という大きな傘をかけて誰かがハブとして見ながら、事業、人、リソースを有機的に繋ぎ合わせて、効果が最大に出るようにファイナンスも含めて仕組みにしていく必要があります。
ここを推進室が担うことになるわけです。そのために、推進室は各課のひとつ上に位置付けられます。すべての事業を把握し、地方創生という横断的なテーマのもと、仕事を進めていくことになります。
ーこれから推進室で挑戦していきたいことについて教えていただけますか?
上山:推進室では、より新たな価値創造に挑戦したいと思っています。それは、既存の考え方の枠を超えた「価値」を生み出していくことです。既存の考え方では、「そこにある価値をどう引き出すか」「どう最大化するか」でしたが、これからは新たな仕組みや視点、考え方を取り入れて「価値」を再定義していく必要があります。推進室ではここに意識を持って取り組んでいきます。
例えば、これまで西粟倉村では「百年の森林(もり)構想」という木材生産のプロジェクトを推進してきました。森林資本の価値の最大化のために、川下や川上の整備に取り組んできました。しかし、これからは森林という場所をスギ・ヒノキだけでなく短期間で収益性のあがるモノの生産拠点にしたり、健康や教育などのコトによる価値を出すなど、新しい森林ローカルベンチャーが生まれる場所として活用することができるのではないかと考えています。
このような俯瞰した視点を持ちながら価値を再定義していくことは、推進室だからできることだと思っています。
外部の方が入ったチームで仕事はもっと面白くなる
―推進室で取り組む事業は具体的に決まっていますか?
上山:全国の自治体と広域連携を組みながらローカルベンチャーの動きを推進する事業(自治体広域連携によるローカルベンチャー推進事業)、推進班の取り組みから生まれた、企業連携を通じて地域に様々な事業を起こしていく「むらまるごと研究所」、SDGsの普及啓発事業と森林を通じた持続可能な地域づくりを目指したSDGsモデル事業の推進が現在決まっている活動です。また、総合振興計画・総合戦略も担当することになります。
ただ、これ以外にも「地方創生」という切り口で生まれる事業が今年度も生まれてくると思います。
様々な事業のように見えるかもしれませんが、どの事業も共通点があります。地方創生であることはもちろんですが、それは「もう1つ先の未来をどうつくるか」に取り組んでいくことだと思っています。
そしてその取り組みは、行政だけでなく様々な分野の方々と共に行っていくということ。これが地方創生推進室の業務であり、面白さだと思っています。
―地方創生推進室はどのようなチーム編成でしょうか?
上山:室長に私、そしてもうひとり梶並くんという職員がいて今は2名体制です。ここに今回募集する方を含めて3名ほどの外部の方にも加わっていただいて、総勢5名くらいのチームを作ろうと思っています。
職員じゃない方を入れて新たな事業を創り上げることも新たなチャレンジです。このスキームがうまくいけば、西粟倉村役場はさらに新たな事業に取り組みやすくなります。
―外部の方を加えようと思ったきっかけはどんなことでしょうか?
上山:ただ人手が足りないからほしいということではなくて、外部の方に入ってもらうことで面白い化学反応も起きることを期待しているからです。
推進班時代にも、外部の方を入れて事業を作り動かしていました。コーディネーターとなってもらったり、企画検討会議に入ってもらったり、立ち上がったプロジェクトの実働を担ってもらったりしながら、様々な事業が進んできました。
私自身も多様な分野の方と関わり、事業を立ち上げ進めてきました。当たり前のように東京や都市部の方々とやり取りしてきた経験もあるので、推進室では外部の方を入れて事業を立ち上げ加速させていくやり方を積極的に取り入れたいと思っています。
上山参事とともに推進室に所属している梶並塁土(かじなみ・るいと)さん
新しい事業をつくる面白さ
-なるほど、役場には外部の方を受け入れる土壌が出来ているんですね。次に、この募集に関心を持たれた方は上司、上山さんについて知りたいと思うので上山さんご自身について伺わせてください。これまでどんなお仕事をされてきたんですか?
上山:役場に入庁後は、すぐに、村の宿泊施設の「あわくら荘」で結婚式場を作る担当になりました。その後役場に戻りましたが、すぐ「道の駅あわくらんど」の企画から、建設、営業開始まで関わった後、今度は「あわくら荘」の経営立て直しを担当しました。さらにその後、観光施設に出向し総支配人を4年間務めました。
平成21年からは役場に戻り、産業建設課(産業観光課の前身)で百年の森林事業やローカルベンチャー、SDGsの担当を担ってきました。
-とても民間企業に近いお仕事をされてきたんですね。上山さんの感じる、仕事の面白さとはどのようなことでしょうか?
上山:振り返ると、「役場」と聞いてイメージする仕事ではなくて、いつも新しく事業が展開するところ、産業や経済が回るところにずっと携わってきました。
どの事業もリスクはありましたが、自分で創造した世界をつくる、従来ないものを創ることはとても楽しいことでした。
西粟倉の取り組みをモデルとして人が集まってくることもまた面白いです。集まってくる人たちがまた挑戦されて、更に新しいことが連鎖する。この循環が起こっている西粟倉村というフィールドはとても面白いと思っています。
新規事業のプロフェッショナルのもとで働く右腕の仕事とは?
-今回新たに働くことになる方の仕事内容について詳しく教えてください。
上山:基本的には私の直下で、推進室全体の業務に関わり参謀として活躍してくれると嬉しいです。プロボノやインターンシップなど、業務委託としての働き方を想定しています。
最初はまず私の横に付いて様々な会議や議論に加わり、推進室で取り組む事業をはじめ、「地方創生」の傘の下で動く取り組みを理解していってほしいです。そして事業の現状と未来に目を向け、私と一緒にその事業がより良くなる選択肢を探求し、村にとっての価値を見出していただければと思っています。
あわせて、「むらまるごと研究所」にはしっかりと関わってほしいと思っています。推進班から生まれたこの事業は、村全体をフィールドとして企業連携を通じた事業創発に取り組むものです。
今は、検討チームで6月に「むらまるごと研究所」の名称で立ち上がる財団法人の準備や村の課題感やリソースを洗い出している状況です。この事業でも、右腕の方には役場側の担当者として状況の把握と、村のリソースを理解し様々な企業と繋げ事業を生み出すことに携わってほしいと思います。
「むらまるごと研究所」は、色んな知識、技術が集まってくる場所になっていきます。そこから新しい政策も生まれてくると思います。道筋はこれからですが、この立ち上げは本当に楽しいと思いますよ。
-参事の直下ということなら、事業の立ち上げ方においては本当に力を付けられるポジションですね。「むらまるごと研究所」も本当に面白そうですね!どんな方がこの業務に向いていると思われますか?
上山:「むらまるごと研究所」には限りませんが、推進室の業務は庁内、村の方々、村内外の事業者の方との色々な情報交換が発生するのでコミュニケーションが好きな方が向いていると思います。
また、ここで働く上ではクリエイティビティも大切になります。例えばある企業に「私たちはこんな事できます」とプレゼンされた時、「あ、それならあそこと繋げると面白いかもしれない」と想像できる方は面白い仕事になると思います。ただ、ここは経験も関係するので、必須な条件ではなく、クリエイティブな力を身に付けたいという方でも嬉しいです。
この仕事が面白そうだと感じてもらえる方なら大歓迎です。ここから3年、修行のつもりできてもらってもいいと思っています。
もちろん、仕事を進める中で村や仕事に面白さを感じて残ってもらえるととても嬉しいですが、ずっと居なければいけないと思わず、まずは目の前にある仕事に真剣に取り組んでくれる方に来てほしいです。
-最後にメッセージがあればお願いします。
上山:自治体としてはすごく新しい世界観でやっていこうとしています。価値を再定義していきたい、縦割り組織じゃない、職員だけのチームじゃない、それらの先に想像を超える世界があると思います。
それに、地方創生はやらなければいけないことではありますが、“課題を埋めていく作業”“大変でもやらなければいけないこと”というイメージではなくて、もっとポジティブで、クリエイティブでワクワクすることだと思います。
西粟倉は、各地で10年先に取り組むことを今年からやっていくぐらいの気持ちです。学びながら一緒に頑張りましょう。
西粟倉村役場で働きたい人、募集!
西粟倉村役場では、上山参事と一緒に働く方を募集しています。今回の記事でご関心を持たれた方は、ぜひ詳細をご確認のうえご応募ください。
<西粟倉村役場 募集概要>
- 募集ポジション
「地方創生推進室」のリーダー上山参事の右腕
- 雇用形態
業務委託
- 給与
年額300万円~
(スキルやキャリアに応じて応相談)
- 勤務地
岡山県英田郡西粟倉村大字影石2
- 応募資格
高卒以上の方
Facebookページ「ローカルベンチャーラボ」、Twitter「ローカルベンチャーサミット」では、ここでご紹介したような地方でのチャレンジに関する情報を日々お届けしています。ぜひチェックしてみてください。
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