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メルカリ寄付が「サーキュラー・エコノミー」に取り組む団体を募集する理由~担当者2人に想いを聞きました~

2021.06.10 

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フリマアプリ「メルカリ」には、「誰かにとって不要なモノが必要な誰かに受け継がれる」という、モノを無駄にしない循環型社会を実現しようという想いが根底に流れているそうです。メルカリのミッションは「新たな価値を生みだす、世界的なマーケットプレイスを創る」と位置づけられているなど、グループ全体としても、必要なモノが、必要な人に、必要な量だけ届くような循環型社会を目指しているといいます。

 

そんなメルカリが、2020年に「メルカリ寄付」を開始しました。アプリから売上などの一部(※1)を自治体やNPOなどの団体に寄付できる仕組みで、お客さまを巻き込んだ新しい寄付のカタチになっていくのではないかと期待しています。2021年6月からは、「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」に関する団体や活動を寄付先として支援することとし、NPOなどの団体とともに循環型社会の実現を目指していこうと、新たに50団体の寄付先団体を募集開始したそうです。

※1:売上金等からチャージされたメルペイ残高のみ利用することができます。有償/無償ポイントは利用できません。

 

>>メルカリ寄付寄付先団体応募概要はこちら

>>募集要項はこちら

 

この「メルカリ寄付」の運営には、行政やNPOなどで経験のあるメンバーや行政から出向しているメンバーも参加しています。これまでのように企業や自治体などの行政、NPOなどが縦割りで活動するのではなく、それぞれがシームレスに連携し取り組んでいくようなことがこれからの社会にとって重要なのではないかと話していたことが、非常に印象的でした。今回の公募はサーキュラー・エコノミーに関する団体や活動に限定していますが、こうした「メルカリ寄付」の取り組みが、「新たなプレイヤー」を生みだすとともに、企業がこうした取り組みを行うことが一つのきっかけとなり、他の企業の取り組みにも広がっていけばといった想いも話してくれました。

 

今回は、そんな「メルカリ寄付」のプロジェクトを主導する会長室政策企画参事の高橋亮平さん(以下、敬称略)と岐阜市から研修派遣でメンバーに加わった今井田浩嗣さん(以下、敬称略)にお話をうかがいました。

 

「メルカリ寄付」でなにを実現したいのか、自治体職員から見えてきたサーキュラー・エコノミー実現の鍵はなにか。お二人の率直なお話から、社会課題に対応する想いが浮き彫りになりました。

 

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高橋 亮平 さん

メルカリ会長室政策企画参事兼merpoli編集長。1976年生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、国立大学法人滋賀大学講師。大学時代にNPOを立ち上げ18歳選挙権を実現。中央大学特任准教授、松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。

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今井田 浩嗣 さん 

メルカリ会長室政策企画。1985年生まれ。岐阜県出身。2009年に岐阜市役所に入庁後、税務や広報に従事。その間、県庁、観光協会への出向を経て、2021年4月より民間企業メルカリへ出向中。岐阜市公式インスタグラム「ギフスタ!」上で地元の伝統工芸品である和傘を活用したアートキャンペーンを手掛けるなど官民連携のイノベーションに情熱を燃やす。

サーキュラー・エコノミーを広げて日本をアップデートし盛り上げていきたい!

━━ 最初に「メルカリ寄付」の仕組みや実現にいたった背景について教えてください

高橋:「メルカリ寄付」は、2020年の9月からスタートしました。アプリを通じて、メルカリで役目を終えたものを売って、その売上金(メルペイ残高)を自治体やNPOなどへ寄付できる仕組みで、現在23団体に参加してもらっています。実は、このメルカリ寄付、構想自体は僕がメルカリに参加した2018年から始めました。当時は、各地で自然災害が頻発し、被災地への寄付が多くの企業から寄せられている状況の中、メルカリもなにかできないかと模索しました。その際に議論したのはメルカリらしい社会貢献とはどういうことなのかということでした。

 

フリマアプリに対して「お小遣い稼ぎができる」「不要品のマーケットプレイス」と思っている方がいますが、経営陣がビジネスに込めた想いは少し違うところにあります。そもそもメルカリは、CEOが世界を旅するなかで、モノが不足する地域がある一方でモノがあふれている地域がある「格差」を目の当たりにし、限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたいと感じたところから始まっています。

 

ある人にとっては役目を終えたものでも、ほかの人にとっては価値のあるものが多くあり、それぞれを循環させることでものを大切にする社会にするとともに、格差の解消につなげたいーーこのような新しい経済循環を促進することがメルカリの使命であり、ビジネスの仕組み自体が社会貢献の形に近いのがメルカリの特徴ともいえます。

 

「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というのがメルカリのミッションで、テクノロジーの力によって、世界中の個人と個人をつなぎ、誰もが簡単にモノの売り買いを楽しめるようにすること。それにより資源を循環させる豊かな社会、個人がやりたいことを実現できる社会をつくっていきたいと思っています。

 

「メルカリ寄付」については、メルカリらしい寄付を検討する過程で、より多くの社会課題の解決に貢献するためには、多くの人を巻き込みながら「寄付の輪」を広げることが重要だと考えました。メルカリの進めるモノの循環だけでなく、さらに善意の循環をも促進したいという願いも込めています。

メルカリ寄付画面

━━ 2020年開始当時は、自治体が主な寄付先でした。今回(2021年6月)新たにサーキュラー・エコノミー団体に絞って募集をされることになりましたが、どのような背景があるのでしょうか。

 

高橋:「メルカリ寄付」は、2020年9月に2つの自治体からはじめ、その後も自治体の皆さんに加わってもらっています。2021年2月にはいわゆる寄付先として知られるような大手の慈善団体にも加わってもらいました。今回は第3弾として、具体的に活動するNPOや大学などに加わってもらおうという取り組みです。

 

先程もお話したように、メルカリは循環型社会の促進を目指す企業であり、メルカリのサービス自体が二次流通市場をつくりリユースを促進しています。こうした二次流通市場の拡大を牽引することで、サーキュラー・エコノミーの一翼を担ってきたわけですが、今後はこうした二次流通市場の拡大だけではなく、一次流通市場における商品企画や生産・販売の最適化にも働きかけることや、NPOや大学など様々な団体と協力していくことで、さらにサーキュラー・エコノミーの実現を加速させていきたいと考えています。

 

残念ながら、日本ではまだまだサーキュラー・エコノミーに関する理解は深まっていません。世界に目を向けると、ヨーロッパでは資源循環を中心にサーキュラー・エコノミーが広がりつつありますが、日本ではやっと最近になってメディアで取り上げられるようになってきた状態です。まだまだサーキュラー・エコノミーの活動をしている団体も多くはありませんが、こうした新しい取り組みは、付加価値の高い日本の成長戦略になる可能性があると信じています。

 

少し大きな話にはなりますが、サーキュラー・エコノミーにチャレンジする団体が、「メルカリ寄付」を通じてもっと増えれば、日本がアップグレードしていくのではないかという期待もしています。

 

今回の募集は、すでにサーキュラー・エコノミーに関する取り組みをしている団体だけに限定していません。新たな事業として取り組もうとしていたり、一部の活動にサーキュラー・エコノミーの仕組みが取り入れられたりしていれば、応募することができます。

社会課題に対応するには“しがらみ”を外して。シームレスにつながり新しい解決策を模索していくことが必要

━━ 現場にいますと行政とNPOの連携には課題があるなと感じる一方で、どのように連携するのか具体的にわからない場合もあるかと思います。

 

高橋:社会課題解決に対して、役所には「行政が税金を使ってやるべき」という考え方がまだまだ根強いのではないでしょうか。しかし、社会課題が複雑かつ多様化する昨今では、行政、民間企業、NPOなど多様なプレイヤーがかかわり合いながら解決するほうが効果的だと思っています。欧米では、社会課題について税金での解決だけでなく、寄付によって解決をはかることが文化となっています。

 

これまで私は、20代で政治家、30代で自治体部長職、大学の准教授、コメンテーター、シンクタンク研究員などパラレルキャリアを経験してきました。この経験から、様々な視点を持って課題に取り組むと成果や効果が高くなることを感じてきました。

 

社会課題の対応も「ビジネスは民間企業」「非営利事業は行政・NPO」などの縦割りでなく、それぞれのプレイヤーがシームレスに重なり合いながら対応するほうが高い効果を期待できると思っています。

 

「メルカリ寄付」では、プロジェクトの運営にも岐阜市から派遣研修で来ているメンバーも加わってもらっています。これからの自治体の方には、ぜひシームレスに社会課題へ対応することについても意識してもらいたいと思っていますし、今日も参加してもらっている今井田さんには、ぜひ次の時代の自治体のモデル職員になってもらいたいと思っています。

 

また、民間企業の間でもシームレスなつながりが広まってほしいと思っています。「メルカリ寄付」のような新しい枠組みが注目してもらうことで、こうした仕組みを作ろうという企業や、第二第三の類似例が出てくるとよいなと期待しています。こうしたフォロワーを育て切るためにも、まずは「メルカリ寄付」が”ファーストペンギン”として成功したいですね。

 

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━━ 自治体職員としてメルカリに出向されている今井田さんから見て、民間企業と自治体の連携で感じたことはなにかありますか。

 

今井田:「メルカリ寄付」の活動に参加し、今回の公募にあたり自治体としてサーキュラー・エコノミーにどのように関係できるのかを日々学んでいます。そして、「メルカリ寄付」の仕組みのように社会課題に対応する団体と企業を結びつけることが、今後の自治体の役割ではないかと感じ始めています。

 

高橋:自治体で働く方々は、やはり「社会を変えよう」という高い使命感がある方が多いのでしょうか。

 

今井田:人によるところが大きいですね。私自身、働き始めた当初は「社会課題を解決するぞ!」というような強い意気込みより、地元で働きたいという想いのほうが強かったと思います。

 

一方で、自治体全体でみると、市民との協働や民間企業との連携への意識が高まっており、過去と比べるとその風潮があるのは事実です。ただ、実際はまだまだしがらみが多いのでほぐす必要がありそうです。まずは、具体的な活動を進めることが必要でしょう。

 

高橋:メルカリという新しい環境には慣れましたか?もしくは慣れるためになにか特別なことをしていますか。秘訣などあれば教えてください。

 

今井田:私自身は、自治体職員としては12年程度のキャリアがありますが、そのうち出向経験は3回目です。毎回出向するたびに組織が変わるので慣れるまでは時間がかかります。ただ、今回は、初の民間企業への出向なのでまだ戸惑っていることもあります。

 

新しい言葉や聞いたことがないことはすぐに調べるようにしていますし、極力人間関係も構築しようとコミュニケーションもしています。ただ、性格的に序盤はメンタル的につらくても最後にはよくなっているとポジティブにとらえるほうなので、前向きに取り組むことができていると思っています。

 

高橋:前向きな姿勢は大切ですよね。ポジティブシンキングな今井田さんだからこそ、外部の力を巻き込みながら進められると私は見ています。岐阜市で今井田さんが取り組んだ和傘を使ったシティプロモーションなんかも、先ほどあげた公民連携の好事例だと思っています。

 

今井田:そうですね!岐阜市は、シティプロモーションとして和傘を用いた撮影スポットを設置しました。当時、ポルトガルで傘をさかさまに展示した様子が、インスタグラムで話題となり拡散されていたので、そこからヒントを得たのです。

 

岐阜市も、インスタグラムアカウントを盛り上げたいこともあり、このポルトガルの取り組みを和傘でオマージュしてみようということに。実行には、役所だけの力では限界があったので、和傘を制作する民間企業と連携することになりました。おかげ様でインタグラムの「映えスポット」となり、シティプロモーションとしては成功したと自負しています。

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━━ まさに、シームレスにプレイヤー同士がつながることで新たなモデルを生み出した事例といえるのではないでしょうか。組織を超えた新たなつながりの重要性は、社会課題対応でも同じですね。

 

高橋:今井田さんが取り組まれた和傘のプロジェクトは、良い意味で「自治体らしくない」動きだと思います。柔軟に民間企業とつながりながら進めたところが先進的ですよね。今後、今井田さんの成功体験は次に必ずつながると思っています。

 

社会課題への対応でも、部外者が入ってくることが大事だと思います。それぞれの業界で囲い込むのではなく、互いの知見を共有し新しい解決策を見つけることが重要です。

 

シームレスにつながったプレイヤー同士だからこそ、やったことのないことに意識して取り組め、針を進めることができる。新たなモデルができます。今回の日本版サーキュラー・エコノミーの取り組みについても、新しい価値が広がるのではと期待しています。

 

━━ 最後に「メルカリ寄付」への意気込みをどうぞ!

 

今井田:自治体職員として、メルカリが取り組むデータ連携などのDXやオンラインでの働き方といった部分は自治体にも必要であると感じています。そして、この「メルカリ寄付」のプロジェクトに参加し、多様な団体に関わらせていただくことで毎日新たな発見をしています。「メルカリ寄付」の普及を通じて寄付文化が定着し、自治体と地域の活動、企業などがシームレスに連携できる社会になることを期待しています。

 

高橋:「メルカリ寄付」は始まったばかりの取り組みであり、まだまだ金額的にも大きくありません。しかし、将来的には、NPOから「資金調達のインフラ」として価値が高い仕組みであると認識してもらいたいと思います。また、メルカリの月間利用者数は1,900万人を超えますので、これまで寄付やNPOの活動などに関わってこなかった人が、「メルカリ寄付」をきっかけに意識し関わるようになれば、社会に大きな影響を与えられると思っています。「メルカリ寄付」を活用するNPOが増えてネットワーク化するなど、NPOにも社会課題解決にも欠かせない存在にしていきたいです。

 

そうなれば、自然と他団体への利用促進や、個人の寄付者へもアピールがされ、シナジー効果が期待できると思っています。「モノを売って簡単に寄付できる」という新たな仕組みが、この国の寄付文化の醸成にもつなげることができ、振り返った時に、城郭を崩す針の一穴のごとく、「メルカリ寄付」の始まりが社会を変えるターニングポイントだったと思われたいですね。

 

また、今井田さんのように自治体の職員を受け入れているので、出向元の地域のみなさんにはなにかしら還元しなくてはいけません。プレッシャーですが、活動に参加していただくことで、自治体にはない価値観を学んでいただけているはずです。そして、組織を超えてシームレスに働ける人がもっと広がってほしいと願っています。

 

━━ ありがとうございました!

 

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メルカリ寄付の寄付先団体の公募は2021年6月21日まで受け付けています。

サーキュラー・エコノミーに取り組む団体の方はぜひチェックしてみてください!

 

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望月愛子

フリーライター。 アラフォーでフリーランスライター&オンラインコンサルに転身。夫のアジア駐在に同行、出産、海外育児を経験し7年のブランクを経るも、滞在中の活動経験から帰国後はスタートアップや小規模企業向けにライティングコンテンツや企画支援サポートを提供中。ライティングでは相手の本音を引き出すインタビューを得意とする。学生時代から現在に至るまでアジア地域で生活するという貴重な機会に恵まれる。将来、日本とアジアをつなぐ活動を実現するのが目標。 タマサート大学短期留学、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。