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イノベーション都市・ボストンと日本をつなぎ、起業家精神を拡げる。Binnovative主宰・米NY在住 西本会里子さん

2022.04.01 

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アメリカ・ボストンを舞台に、現地の人々と日本人のコラボレーション機会を作り、アントレプレナーシップと異文化理解の向上に努めている日本人がいます。

 

NPO Binnovative(ビノベイティブ)代表の西本会里子さんです。2000年に米国に移住し、日系企業等での就業を経てコンサルタントとして独立。現在はデザインシンキングを軸としたコンサルティング会社Blank Slateの経営に携わる傍ら、ニューヨーク・マンハッタンでインド人の旦那様と2歳、0歳のお子さんと共に暮らしています。2019年には、社会起業家の世界大会であるハーバード社会起業大会日本人女性として初めてパネル登壇も。

 

ボストンといえば、世界的なスタートアップハブとして知られるCIC(Cambridge Innovation Center)が立地している他、近郊のケンブリッジ市を中心にハーバード大学やMIT、ボストン大学、アントレプレナー教育の分野で世界的に名高いバブソン大学等、世界有数の大学・研究機関も多数集積するイノベーション都市です。

 

ライフワークとしてボストンと日本をつなぎながら、アントレプレナーシップを拡げる活動に取り組む西本さんに話を聞きました。

アントレプレナーシップを学ぶため、ボストンのバブソン大学に

 

――はじめに、西本さんが渡米することになったきっかけやこれまでのキャリアを教えてください。

 

日本で大学卒業後、東京のIT系企業に勤務し、システムエンジニアから始まってITビジネスコンサルタントとしてキャリアをスタートさせました。その後、アップル・ジャパンなどを経て、2000年に渡米し、日系商社でプロジェクトマネジャーや社内システムのオペレーションマネジャーとして働き、一貫してIT畑を歩んできました。

 

アメリカに移住してつくづく感じたのは、日本のサービスや品質の素晴らしさです。世界に誇れるものがあると実感したのですが、反面日本人が海外にそれらを十分に紹介しきれていないことが常々もったいない、いつの日か、この問題を解決するために貢献したいと思っていました。

 

2007年に米国グリーンカードがとれることになりました。それまでは就労ビザにどうしても縛られていたのですが、今後キャリアで変化をつけていくとしたら、アメリカの学位があったほうが良いですよね。またアメリカで色々な働き方を目にして、アントレプレナーシップを学びたいと思って2012年にバブソン大学(MBA)に入学しました。

 

大学痔トリミング後

バブソン大学在学中にウガンダの学生にアントレプレナーシップを教えに行ったときの様子

 

MBA就学中の2013年に、Binnovative を立ち上げるきっかけがありました。 MIT Media Labで在ボストン日本領事館主催にて開催された”The Japan-Boston Joint Entrepreneurship Forum”に出席する機会があったのですが、たまたま「How Boston Can Play a Critical Role in Fostering Innovation and Entrepreneurship in Japan(ボストンは日本でイノベーションと起業家精神を育む上でどのように重要な役割を果たすことができるか)」というテーマだったんです。このテーマへの自分なりの答えとして、団体を立ち上げることになりました。以来、Biinovativeの活動は、領事館にも応援・サポートしていただいています。

 

MBAのクラスでは、生徒同士がたくさんディスカッションする機会があるのですが、色々な国や文化の人が集まっているバブソン大学では、議論する中で私もすごく刺激を受け、価値観を揺さぶられました。特に様々な国のバックグラウンドを持つ人から、日本人としては思いつかないような考え方が当たり前のこととして論議が進んだりすることで、自分の視野の狭さを実感したりしました。

 

距離的に離れたチームメイトとオンラインミーティングでプロジェクトや課題を協働して進めることでもそういった刺激や達成感を得ることができたので、「オンラインだと場所に関係なくコラボレーションの良さを活かせる」と思いました。そこで、「アメリカ人と日本人が異文化の中で共創する過程で、お互いに無いものを学び取る」ことを通じて「日本人に欠けている起業家精神を育てること」につなげられるのでは、という思いが沸き上がり、2014年に活動を始めます。

 

具体的にはハッカソンやビジネスプランコンペ等に、日本人とボストンローカルのメンバーが混成でチームを作って、プロジェクトを共創する機会を作るということから始めました。また、「共創」して最後に達成感を味わうこと、これが意識を改革する上でのキーポイントだと思っています。

 

チームワーク

ボストン参加者と日本の参加者がビデオコールでチームワーク中の様子

 

ちなみに、私の中での「起業家精神」の定義は、多くの人が理解しているような「起業すること」では必ずしもなく、「自分がやることを自分で決めて、オーナーシップを持ってやり遂げる」ことです。人から言われたからではなく、自分でやることを自分で決めてやるということ。これはバブソン大学に行ってから気づいたことです。起業教育で有名なバブソン大学ですが、起業をしたいと思って入学して、卒業する頃には起業しないことにした、という人も実は多いのです。

 

自分が本当にやりたいこと、やるべきことを見つけて、それを実現する方法を考えたら起業という答えではなく別の方法だったという人や、イントレプレナーとして、企業の中でイノベーションを起こすと決めた人等様々ですが、ポイントは、起業、就職などは手段であり、やりたい事そのものではないということ。また、周りがするから、言われたから、ではなく自分のやりたいことを自分で決めて、やり遂げること。これを普通に実行出来る日本人がもっと増えれば、日本のイノベーションは増えるはずだとも思います。

 

イノベーションが起きないのは社会の仕組みに原因があるとか、教育の問題ではないか、とか色々言われていますが、まずは個々人のマインドの醸成、これが大事で、その部分を育てるための、共創の場を作れたらと思っています。

 

ハーバードのスクール

Binnovative主催 NASA ISAC Boston(ハッカソン) 2016 ハーバードデザインスクールで開催した時のスタッフの皆さんの様子

 

NASAが主催するハッカソンで、日本人の小中高校生チームがグローバルアワードを獲得

 

――コロナ禍の今でこそオンラインでのコラボレーションは当たり前になりましたが、当時はそうした取り組みはほとんどなく先進的だったと思います。どのように取り組んでいったのでしょうか。

 

最初にアイデアを思いついた時にまず、当時の武藤総領事に相談に行きました。そこで、「いいじゃん、是非やりましょう!」と、背中を押していただいたのを覚えています。

 

2014年にマサチューセッツ州のNon profit incorporation(非営利法人)として登録しました。2014年設立後最初に着手したプロジェクトは、NASA International Space Apps Challenge (ISAC) ボストン大会のオーガナイズです。NASAが主催する世界最大のハッカソンで、毎年日本を含む世界100拠点以上でローカル大会が開催されているので、日本でもご存知の方もいらっしゃるかと思います。ボストンからは2014年に初参加し、その後毎年ボストン大会を主催しています。

 

Binnovativeのミッションである「Collaborate to Innovate – Binnovative は、協創体験の提供を通じて、日本及びアメリカのアントレプレナーシップの向上を目指す」ことを達成すべく、日本人とボストンローカルの参加者が同じチームでハッカソンに参加することで、先程述べたとおり共創と達成感を得る機会を作りました。

 

このNASAのハッカソンでは、NASAから呈示される様々な問題から自分の関心のある、解決したいチャレンジ(問題)を選び、同じチャレンジに興味のある人でチームを作り、48時間で解決策をつくります。チャレンジは、宇宙に関連するもの、地球や環境問題などと多岐に渡ります。

 

――最近のご活動についても教えていただけますか。

 

2021年のNASA ISACでは、世界162カ国・323か所から28,000人以上参加する中(参加チーム総数は4,534)、10のカテゴリーでそれぞれに優勝チームが決まるのですが、ボストン大会を勝ち抜いた日本人の小中高校生チームが、10のうちの「Art & Technology」というカテゴリーで優勝しました。28,000人参加するイベントで、世界トップ10チームのうち一つとして選ばれたのです。

 

ナサ

Binnovative NASA ISAC Boston 優勝チーム Jimmy in the Box が作った、James Webb Space Telescopeの模型

 

このチームは、呈示されたチャレンジのなかから、”Webb Origami Design Challenge”に取り組みました。

 

折り紙とコンピュータを使ってJames Webb Space Telescope (赤外線観測用宇宙望遠鏡)を手のひらサイズに再現して、そのコンセプトや作り方の手順を紹介しました。 日本の伝統文化である折り紙の技術を存分に発揮しテクノロジーとの融合を見せつけました。ちなみに、James Webb Space Telescopeは、昨年末に打ち上げられた、宇宙誕生ビッグバンの約2億年後以降に輝き始めたとされるファーストスターを初観測することを任務とした宇宙望遠鏡で、折り紙のように折ったり広げたりしながら宇宙に行くというとてもユニークな方法をとっています。

 

2014年からNASAハッカソンを毎年主催してきて、ファイナリストに選ばれたことは数回ありましたが、優勝は初めてで、またグローバルアワードとしては最年少チームとのことで、私も主催してきてよかったなと、本当に嬉しかったです。また、このハッカソンの成果を評価されたことからくる達成感は、参加者の意識改革にもいい意味で大きく貢献すると思います。

 

実はこの優勝チームの中高生は、Binnovativeで一年ちょっと前から開催している子供向けのIoTワークショップの参加者とボランティアのチームでした。コロナの最中に、 ボストン地区の日本人の子供たちを中心に、自宅からオンラインでプログラミングとハードウエアとクラウドを使ってIoTを初心者から学べるワークショップを始めたのですが、そこで学んだ子供たち向けに継続して小規模でハッカソンを行ったり、プログラミングのワークショップを行ったりしてどんどん自信をつけていってもらい、最終的にそこから数人の参加者がNASA のハッカソンに出場しました。

 

私は、「テクノロジーは人を幸せにするために存在する」と信じています。最近便利なツールが普及してきてツールの使い方を学ぶことそれ自体が目的となってしまいがちです。

 

このため、自分のコンサルティングの方の活動でも、問題解決ドリブンの考え方を身につけてもらうための活動も行ってきています。デザイン思考はまさにそれを可能にするフレームワークで、バブソン大学時代に学んで、また2019年にMIT Sloanのコースを履修して学びを新たにしたのですが、そのデザイン思考のワークショップをこのIoTワークショップの継続アクティビティの中に取り入れたりしています。今学んだテクノロジーは誰の何の問題を解決するのか、という考え方を子供の頃からできるようになることには、とても大きな意味があると思っています。

 

NASAのハッカソンで評価されたことも、きっとそういった包括的な問題解決の考え方ができるようになっていたことも少なからず功を奏していると思っています。

 

日本チームの子どもたち

「Art & Technology」部門で優勝した在ボストンに日本人チームの子ども達

 

――日本の子ども達が世界的な大会を舞台に素晴らしい成果を挙げたというのは嬉しいニュースですね。これまでの経験を生かして今後どのように活動を発展させていきたいか、西本さんの展望をお聞かせいただけますか。

 

今、ものがあふれ、便利なツールもそこら中にある中で、みんな本当に自分がやりたいことがわからない、という状況に陥りがちではないかと感じています。日本社会の場合は特にそれが顕著で、「まわりも~してるから、しなくちゃ」「~~しろ」と言われて真面目にそれをこなしてきた人が多く、優秀でいろいろな才能があってもやりたいことが結果的にできていない、という人に多く出会ってきたように思います。私が育ったのは熊本だったのですがとても厳格な親に育てられ、「いつかやりたいことをやるぞ」と心に決めて育ちました。

 

でも、いざ社会に出てみると、自分で決めて実行にうつすことがどんなに難しいかということにも直面しました。

 

Biinovativeでの活動でもコンサルティング事業でも、結局アプローチが違うだけで同じことを目指しているのだと思います。デザイン思考で言われている「人間中心、問題中心」を軸にして、「今どんな課題を解決しようとしているのか?」「自分(または対象の人)は何がしたくて、何はしたくないのか?」ということに自覚的になることがキーポイントだと思っています。 学んだこと、身につけたこと、また目の前にあるツールで、誰のどの問題を解決できるのか、という考え方ができるようになって、学ぶことや身につけたツール自体が目的になってしまわないようにして欲しいです。

 

また、「今やっていることは自分が本当にやりたいことじゃない」と気づいているなら、自分やまわりが幸せになっていくために、新しいことに挑戦するために今あるものを捨てると決める勇気を時にはもっていってほしいですね。

 

私はBinnovativeの活動と、コンサル事業の両側面から取り組むことで、アントレプレナーシップマインドが広がることに少しでも影響を与えることができればと願っています。

 

――ITキャリアやそこで培われたデザイン思考をベースに、アメリカから日本社会を見つめてきた西本さんにしかできない活動を続けてこられたことが伝わってきました。今日はお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

 

 

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この記事を書いたユーザー
田中 多恵

田中 多恵

1983年千葉県出身。大学卒業後、㈱リクルートマネジメントソリューションズで組織/人材開発のコンサルティング営業を経て、2009年よりETIC.横浜ブランチ立ち上げに携わる。主に大学生のキャリア支援や起業相談を担当。プライベートでは、横浜在住で2児の母。

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