#ビジネスアイデア
社会起業家のインパクト投資、教育プラットフォーム、青森のゲストハウスで多様な交流を…U30イノベーター6名が解決したい課題とは?―ETIC.30周年ギャザリングレポート(4)
2024.02.16
MAKERS UNIVERSITY、TOKYO STARTUP GATEWAY、社会起業塾、ローカルベンチャーラボなど、創業から30年、起業家精神を育むことをミッションとしたNPO法人ETIC.(エティック)から各プログラムを通じて多くの起業家が活動を創り出しました。
現在、世の中で当たり前になっている社会課題解決のサービスも、最初は思いを人に伝え、行動を起こすことから始まると体験から教えてくれる起業家も多く存在しています。
今回、エティックの各プログラムを卒業し、自らテーマを持って活動を始めた30歳以下の社会起業家たちが「ETIC.30周年ギャザリング」に集まり、思いを語りました。2分という限られた時間で、会場にいる人たちにどんなメッセージなら届くのか、それぞれの思考が感じられたトークをダイジェストでご紹介します。
<登壇者>
河合将樹さん(株式会社UNERI)
寺嶋瑞仁さん(日本維新の会 元CuboRex代表)
奥村春香さん(特定非営利活動法人第3の家族)
大場勇弥さん(cas!ca)
河野大和さん(教育長・校長プラットフォーム・文科省有志)
鈴木美朝(八戸ゲストハウス トセノイエ)
「日本初。全ての社会起業家を包括する機会のご提案」河合将樹さん(株式会社UNERI)
河合さんが経営する株式会社UNERIの公式サイト
河合さん : 2021年5月に株式会社UNERIを設立し、社会起業家の育成支援を行っています。
河合さんのプロフィール。河合さんの資料より
我々は、これからの時代は起業家精神のあるすべての人が起業家になる時代になると思っています。そうなると、資金の課題が起業家にとって最も大きなボトルネックになると考えています。多様なお金が増えなければ多様な起業家は生まれません。起業家として上場を目指す人も敢えて目指さない人も、すべての起業家が自分の信じている道を歩める社会をつくっていくために、新しいキーワード「インパクト」をテーマに新しい取組を始めようとしています。ぜひ、ご関心ある方はご連絡ください。
※河合さんは、3ヵ月のお試し社会課題解決プロジェクト「Beyonders」でもオーナーとして仲間を募り、活動をしています(現在は募集終了)。こちらもあわせて参考にご覧ください。実行中のプロジェクト「IMPACT SHIFT」は3月3日に開催されます。
https://beyonders.etic.or.jp/projects/37
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000135708.html
「エンジニアから政治家へ 試せる日本をつくる」寺嶋瑞仁さん(日本維新の会 元CuboRex代表)
寺嶋さんが代表を務めていた株式会社CuboRexの公式サイト
寺嶋さん : 私が創業した株式会社CuboRex(キューボレックス)は、ものづくりの企業です。
寺嶋さんのプロフィール。寺嶋さんの資料より
私自身、もともとものづくりが好きで、CuboRexでは日常生活や農作業などで活用できる機器開発・製造、ロボット開発など、世の中で役に立つものづくりを目指して事業を展開してきました。そのなかで直面したのが、がんじがらめになった日本の規制の状況でした。世の中で活躍するものを作ろうと思えば思うほど規制の壁が立ちはだかり、実際に世の中に出したいものでも提供が難しくなる、そもそも試すことすら難しいことを目の当たりにして悔しさや違和感を募らせていました。
政治家や行政などにスタートアップの事業や目的などが理解されにくいと感じる壁にも直面しました。そこで出た答えが、「現状を変えるには自分が行動した方が早いのでは?」ということです。政治の世界に飛び込み、政治家として自分自身やまた実現したいことに取り組んでいる人たちがやりたいことを試せる日本をつくっていこうと、衆議院議員に出馬することを決めました。 地方出身初ベンチャーの技術者、経営者から今度は政治家として試せる日本をつくります。
「自分の居場所は他にもある〜半無人支援計画〜」奥村春香さん(特定非営利活動法人第3の家族)
「支援のはざまにいる少年少女を何とかしたい」と奥村さんが始めたNPO法人第3の家族の目指す社会。奥村さんの資料より
奥村さん : NPO法人第3の家族では、家庭環境問題の支援の狭間にいる少年少女が、「自分の居場所は他にもある、生き抜ける」と思える社会を目指して活動しています。活動を始めたきっかけは、弟の自死です。自分の経験をもとに、いまだ救われていない多くの少年少女を「何とかしたい」と思いました。今も同じ思いで活動を続けています。
特長は、「寄り添うために寄り添わない」を基本とした2つのアプローチです。一つは、本人が大きく傷ついていることに気づくための表現によるアプローチ、もう一つは大人になるまで生き抜いてもらうためのサービスによるアプローチです。そうして、自分の居場所を自分で見つけてもらえればと思っています。
一方でオンラインでのサービス提供について、彼らの背中を押すような“人ならでは”の支援は難しいのではないかという課題がありました。また、背中を押すといっても、どちらかというと突然背中を押されることを怖がってしまう子が多いため、どうすれば背中を押すことができるのか、もどかしさを感じていました。
今考えているのが、新しい支援プロジェクト「半無人支援計画」です。各サービスのデータを統合化し、少年少女の状態に合わせてパーソナライズすることで、自分で居場所を見つけられる仕組みを作ります。また、任意の対人支援ではデータ活用によって長時間になりやすい支援員のヒアリングを効率化しつつより求められる支援を可能にするなど、ゆとりをもった人材の活かし方を実現したいと思っています。現在は手動で行っていますが、既存にはない有効的なデータが蓄積できていると手ごたえを感じています。
これまで救えなかった少年少女を救えるかもしれません。福祉業界に革命を起こしたいと思っています。特に子ども若者の支援団体の方々、分析・AIが得意な企業の方々など、力を貸してください。
「エンタメで子どもたちが好奇心を可視化する場作り」大場勇弥さん(cas!ca)
大場さんが代表を務めるフリースクール「cas!ca」の公式サイト
大場さん : 神奈川県の逗子市でフリースクール「cas!ca」を運営しています。小学2年の時の不登校や生き渋りの経験をもとに地元で立ち上げました。
大場さんのプロフィール。大場さんの資料より
僕自身、ADHDといった発達障がいがあります。フリースクールでも、同じような特性のあるお子さんや不登校のお子さんを対象に活動しています。ミッションは、「子どもたちがエンタメで好奇心を可視化できる社会」です。「社会課題をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えていく」ことを大切にしています。
「cas!ca」では、平日はフリースクールを通じて居場所を作り、毎週土曜日は駄菓子屋にして地域に場を開き、また子どもたちがディスクジョッキー(DJ)やビデオジョッキー(VJ)を担当するイベントを開催するなど、「おしゃれに、面白く、かっこよく」をテーマに子どもたちや保護者の方と一緒に場づくりをしています。
子どもたちとのイベント。大場さんの資料より
僕もラップをしていて、今年、日本経済新聞社主催のラップコンテストで準決勝まで進んだので興味がある方は一度聞いてください。
>> 大場さんがコンテストで披露したラップはこちら
「多様な教育関係者が全国から集結して、共に教育・学びの未来を創造する」河野大和さん(教育長・校長プラットフォーム・文科省有志)
河野さんの資料より
河野さん : みなさんは日本の学校教育にどんなイメージをお持ちでしょうか。
教育の構造としては、文科省があって、そこから都道府県、市町村、学校現場があります。例えば、情報は文科省から順番におりていきますが、時間がかかり効率が悪いこともあります。文科省がよく「現場との距離が遠い」といわれていることにも私は強い問題意識を持ち、有志として活動を始めました。
平成30年、文科省、都道府県、市町村、学校、それぞれ学校教育の関係者たちが一つの場に集まり、情報共有をするプラットフォームが設立されました。主な対象者は、文科省の職員、教育長、校長など、学校現場の意思決定をする責任者たちで、「教育長・校長プラットフォーム」としました。特徴の一つは、普段は互いに話すことが少ない様々な属性の人が全国から集まり、話せる場になっていることです。
また、課外活動として行っていることも特徴です。公の仕事とすると本音が言いにくくなりますが、課外活動とすることで個人の経験をもとにしたノウハウやスキルなどを含めて情報共有がしやすくなり、悩み相談もできる場づくりを目指しています。
毎年開催する総会では、全国から教育関係者が200名ほど参加し、みんなが教育の未来について考えるなど、とても盛り上がるイベントになっています。
昨年開催した総会の様子。河野さんの資料より
こんなふうに教育関係者の間で認知が広まっているのを感じているので、次のステップとして民間やNPOの人たちも巻き込みたいと思っています。「社会に開かれた教育課程」といわれて久しいですが、学校現場は学校教育だけでは解決が難しいところにまできていると思います。民間の方々とも協力しながらプラットフォームを発展させていきたいです。
「青森県八戸市で多様な人が集まるまちを作る!」鈴木美朝さん(八戸ゲストハウス トセノイエ)
鈴木さんの資料より
鈴木さん : 私は青森県十和田市出身ですが、縁があって、八戸市に住むひいおばあさん(トセおばあちゃん・曾祖母)の家をリノベーションして、昨年からゲストハウス「トセノイエ」を始めました。田舎育ちですが、上京後に海外へ行き、いろいろな国の人と出会い、特に人生について語り合ったことで自分の人生がポジティブに変わっていきました。
まわりを明るく照らすような鈴木さんの笑顔が印象的。鈴木さんの資料より
自分が受けた良い影響をもとにゲストハウスを作ることで、「地域の若い人たちが自分の人生の外側にいる人たちとつながればいいな」という思いで活動をしています。例えば、青森県にはイタリア人が7人しか住んでいないのですが、ゲストハウスで文化や政治などを気軽に話せるイベントの開催をしています。
「トセノイエ」では、地域に住むイタリア人と若者たちがイベントを通じて交流できる場を作っている。鈴木さんの資料より
また、八戸市の地域おこし協力隊と連携した八戸ワインのプロモ―ション、地域に住む外国人の方と子どもたちが触れ合える体験イベントなど、地域で人と人がつながり、新しい何かが生まれる循環をつくり出せたらと思っています。
私は、八戸市の郷土料理や地域の人が昔から育ててきた文化、人が集まるコミュニティがすごく好きです。これらを継承していくために、これから新しく仲間と喫茶を始めることにしました。ゆくゆくはゲストハウスに宿泊する外国籍のお客さんも食べやすいビーガン対応の食事を提供したいと思っています。
今は一人でゲストハウスを運営していて、団体として運営するノウハウなどはまだ勉強中です。組織づくりなど学びながら活動を推進したいです。ぜひ教えてください。
6名のアイデアや思いが凝縮された言葉はいかがでしたでしょうか。
躍動感のある未来を感じた方もいるのではないでしょうか。
それぞれのイノベーターたちは活動への参加者や応援者を募っています。
ご興味ある方は直接応援メッセージを送るか、DRIVEまでお問い合せください。
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