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旅先でのマーケットのような、ワクワクした出会いを日常に。イベント型オンラインマーケット「新・夜市(β)」開催レポート

2020.07.09 

旅先で、偶然足を踏み入れたマーケット。思いがけず素敵な商品に出会い、お店の人とも仲良くなり、その旅を振り返ると必ず思い出すような買い物をしたことはありませんか?

 

そんなワクワクとした期待感とともに偶発的な出会いが生まれるマーケットを、日常に生み出そうとスタートしたイベント型オンラインマーケット「新・夜市(β)」。参加者は全員見知らぬ人でも、まるでマーケットでの出会いのように出店者と商品をオモシロがり、「どうしたらもっと世界に受け入れられるのか?」を顧客目線で出店者と一緒に考えていく実験的な市場です。

 

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主催:認定NPO法人ETIC.

社会の未来をつくる人を育むNPO法人。1993年の創業以来、実践型インターンシップや起業支援プログラムへの参加を通して、1000人以上が起業しました。企業・行政・NPOといった多様なセクターを巻き込みながら、挑戦したい人を支える仕組みづくりを続けています。

パートナー:東日本旅客鉄道株式会社(東京感動線)

JR東日本では、グループ経営ビジョン「変革2027」に掲げる「都市を快適に」及び生活サービスビジョン「CITY UP!」(駅から、街から、未来をつくろう)の実現に向け、山手線を起点にまちの個性を引き出し、まちや人が有機的につながる、心豊かな都市生活空間「東京感動線」を創り上げていく取り組みを推進しています。

一般的な市場では出会うことのできない、生まれたての商品と起業家の熱量に出会えるマーケット

仕掛け人は、認定NPO法人ETIC.(以下、エティック)と東日本株式会社 東京感動線(以下、東京感動線)。

 

これまで1000人以上の起業家を支援してきたエティックは、素晴らしいアイディアの種を持ちながらも、世に出す前に本を読み漁ってビジネスモデルの確立に心を砕き、先輩起業家らに相談しながら商品クオリティを磨いていくことに必死になり、その中で段々と自信を失ってしまう起業家の卵たちと多く出会ってきました。そこでこの「新・夜市(β)」は、「まず、世界(市場)にぶつけてみよう」という合言葉のもと、ユーザーと直接コミュニケーションを重ねながら事業をブラッシュアップしていけるような場として設計されています。

 

一方で買い手としても、インターネットで買いものをすればサイトのレコメンドで続々と見知らぬ商品に出会える今、「新・夜市(β)」では、一般的な市場では出会うことのできない生まれたての商品と出会うことができ、売り手の熱量を受け取り商品の成長過程に関与しながら購入体験ができます。さらに参加してみて「自分もやってみたい」と思えたら、次回以降のイベントに出店できる可能性も。商品だけではなくマーケットも参加型で育てていく、イベント型オンラインマーケットです。

10-30代の若手出店者9チームに、参加者総勢70名でスタート

初回は、5月のある夜ZOOMで開催されたオンラインマーケット。出店者、顧客ら合わせて総勢70名でのマーケットがスタートしました。

 

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出店者は、以下9チーム。

1.瀬戸内の工場と連携し、大学在学中に兄弟で起業したデニムブランド「EVERY DENIM」/山脇耀平さん

2.働く多忙な人たちに“空白の時間”を届けるキャンドル「TIME CAPSULE」/永易黎於さん

3.大田市場の果実専門店で働くフルーツアドバイザーの、季節のおすすめフルーツセット/原詩織さん

4.人生を楽しむためのミュージックプレイリストのオーダーメイドサービス/今井瑠々さん、簾颯人さん、高橋遼大さん

5.ネット上にオープンした喫茶店で楽しむ、水出し紅茶と見知らぬ“誰か”からのボトルメッセージ。心休まる時間を届ける「海辺のまほろば喫茶店」/魚住晴香さん、平田直大さん、王翔一朗さん

6.ストレスによる不眠を解消。特別に設計された日記とそれぞれの思い出を塗り絵にして届ける「不眠解消日記」「思い出ぬり絵」/関口航さん、伊井理紗子さん、高塚遼さん

7.過去の自分からの手紙が届く。人生の味わいをもたらすサービス「拝啓」/上田蓮さん、金光茂さん、川北愛恩さん

8.特注の木箱に手紙やギフト、香りを込めて贈るギフトサービス「ふみてばこ」/荒井啓さん、白浜美夏さん、竹入悠渡さん

9.大切な人への、手作りフラワーキャンドルのギフトサービス/青山晃広さん、中西一貴さん、廣瀬未来さん

 

出店者それぞれに商品やサービスについて紹介する時間が設けられ、参加者は特に興味をくすぐられた2出店者のブレイクアウトルーム(※小規模のグループに別れるZOOMの機能)に参加して商品のブラッシュアップに参加できます。

 

各出店者が商品についてプレゼンしている最中は、チャットで参加者は自由に発言。毎回ほぼ全員が発言するくらい盛り上がり、「これは欲しい!」など商品へのカジュアルな感想から「想定している販路は?」などビジネス寄りの質問までが活発に飛び交いました。

 

いざ2出店者を選ぶタイミングでは、チャットで「選べない!」の声が続出。取材者も悩みに悩み参加したサービス2つについて、今回の記事ではご紹介したいと思います。

爽やかな水だし紅茶とボトルメッセージで心を整える、インターネット上の喫茶店/「海辺のまほろば紅茶店」

 

コロナ禍で日常/非日常が曖昧になり心休まる時間を持てない人たちへ向けて、WEB上に「海辺のまほろば紅茶店 」をオープンしたのは、現役大学生の魚住晴香さん、王翔一朗さん、そして現在沖縄で移住促進の仕事をしている平田直大さん。3人は、エティックと、スペイン・バスクを拠点に置き10年間で世界8ヵ国500名を超えるチームアントレプレナーを輩出してきたMTA JAPANがプロデュースする、チームでプロダクトを作ることを学ぶ「774(NANASHI)」プログラムに1期生として参加しています。

 

海辺のまほろば紅茶店

 

出身地域も住んでいるエリアも違う一度も会ったことのない3人が、オンラインでコミュニケーションをとり、共通点である「紅茶が好き」「手触り感」「余白」を大切にしたいという思いを中心にプロダクト開発を進め、「海辺のまほろば紅茶店」をスタートしました。

 

「海辺のまほろば紅茶店」では、オリジナル水だしアイスティー“苞”(つと)を味わい、誰に届くかわからない手紙をしたため、誰からか分からない手紙を受け取ることで、心を整えることができます。具体的には、「あなたが思う、あなた自身の好きなところを教えて」という店主の問いにメッセージを送ると、購入したオリジナル茶葉とともに他の誰かが同じくしたためたメッセージが手元に届く仕組みです(※5月26日時点のサービス内容です)。

 

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「海辺のまほろば紅茶店」サービスイメージ

 

 

このサービスの背景にある思いを、「相手と比べて自分のこれまでを見下してしまって、SNSで自分がすり減っている気がする」と語ってくれたのは王翔一朗さん。「自分自身の“こだわり”を再発見して、誰からか分からないけれど自分の心に素直なメッセージを受け取ることで気持ちが暖かくなる時間を届けられたら、皆が幸せに自分のことを好きになっていけるのではないか」と全員で考えたそうです。

 

ブラッシュアップタイムでは、「なぜ喫茶店なのか」という問いに、「外出が難しいこの時期、飲みものを楽しむ時間が減っていると感じた」という背景や、水出し紅茶のベースとなるアールグレイの魅力が共有され、参加者からは「メッセージだけではなく、例えば紅茶に関してでも誰かのおすすめが知れたら面白いですね」といったアイディアが生まれるなど、ブレストのように参加者が声を出す積極的なコミュニケーションが生まれていました。

瀬戸内の職人技術を次世代につなげる商品開発/「EVERY DENIM」

2つ目は、大学在学中の2014年に、岡山の大学に通っていた実の弟・島田舜介さんとともにデニムブランド「EVERY DENIM」を立ち上げた山脇耀平さん。瀬戸内の工場と直接連携して商品開発をし、素材の良さとつくり手の誇りを感じられるデニム製品を生み出し続けています。

1 EVERY DENIM 山脇氏

 

職人たちの一心不乱に働く姿に魅せられ岡山・児島のデニム工場に兄弟で通い、最初は彼らの姿を取材・発信し始めた2人。そこで国内生産率3%という日本のデニム工場が抱える課題を知り、工場と直接連携した商品開発を行う「EVERY DENIM」が生まれました。2年間店舗は持たず、各地で販売会を行ってきましたが、2018年の春からクラウドファンディングで購入したキャンピングカー「えぶり号」で全国47都道府県を巡る旅をスタート(旅の様子はこちらの連載から)。2019年7月にはその旅を終え、「自分たちも人を暖かく迎え入れ、地域のことを紹介できる場所がほしい」と、拠点である児島に初の直売店でもあるゲストハウス「DENIM HOSTEL float」をオープンしました。

 

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当日の目玉商品の1つ目は、オーガニックコットン本藍100%ジーンズ「Spoke」。

 

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デニムの一大産地広島県福山市で、120年以上に渡り糸を染め続けてきた老舗染め工場による世界で初のロープ染色機による天然藍で染められた糸。それを用い、同じく福山で明治時代から生地織りに関わる老舗工場が織り上げた、独特の厚みと柔らかさを持つデニム生地で作られています(商品詳細・購入はこちらから)。

 

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これまで「EVERY DENIM」では、自社での商品開発を大きなアパレルや百貨店での商品化のためのテストマーケティングの機会として捉えることで“新しさ”を追求し、自らベーシックな定番商品を作ることはありませんでした。今回はオーガニックコットン、そしてインディゴの染料は天然のインド藍と素材にこだわり、生産過程での環境負荷が極めて少ない商品を開発し、その意味で“新しい”定番商品を生み出したのだと山脇さんは語ります。

 

2つ目の目玉商品は、ナイロンデニムシャツ「Pride」。

 

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新素材を生み出し続ける創業78年のテキスタイルメーカーが開発した、ナイロンデニムを用いたシャツです。たて糸のナイロン素材をインディゴに染めるという、これまでできないとされてきた独自の技術を約3年かけて開発したのだそうです。部屋干し3時間で乾く速乾性と、1日中着ていても疲れにくいほど軽く、ストレッチ性を兼ね揃えた1着(商品詳細・購入はこちらから)。福島の農家さんと企画して生まれた、同素材のワークウェアも販売しているとのことでした。

 

 

ブラッシュアップタイムでは、「履き続けて傷んだ際には修理してくれるのか?」という声に、公式サイトから連絡をもらえれば修理を承れるというやりとりや、外国人の参加者の方から「海外展開は検討していないのか?」といった質問など、顧客目線でサービスをブラッシュアップするやりとりが生まれました。

“手触り感”のある出会いを通して、新しいアイディアが生まれる

 

最後、出店者の若手キャンドラー永易黎於(ながやす れお)さんからは、「キャンドルの新商品のコンセプト、例えば『失恋した夜のためのキャンドル』などのアイディアを募集したのですが、人生経験の数だけアイディアがあるのだなと感じることができました。オリジナルの文言で作りたい方に向けては、3,000円の商品を選んでいただいて備考欄にコメントを入れてもらえるようにしたいと思います」という感想が。

 

9 永易氏

キャンドルの商品一例 https://timecapsule.official.ec/

 

また、過去の自分から手紙が届く「拝啓」サービスのチームからも、「アナログであることに価値があると進めてきましたが、デメリットも明確になりました」という感想が共有されました。

 

参加者からも、「想像もつかないようなことを考えている人がいて、世の中には様々なアイディアがあるんだと実感することができました。そして何より、それを実現されていてすごい!」といった起業に対する感覚が変化したという声が。さらに具体的に一つのサービスに対して、「海にボトルメッセージを投げてそれが届くことは実際は難しいので、ウェブでやってしまうという発想がすごい」と予想もしなかったサービスとの出会いを楽しんだ声が共有されました。

 

普通のお店では出会うことができない、カテゴリーにはまらない手触り感のある商品やサービスに出会える「新・夜市(β)」。作り手とのコミュニケーションを楽しみながらビジネスアイディアのこれからに関わる楽しみとも出会える“マーケット”に、ぜひ迷い込んでみてはいかがでしょうか。

 


 

>>「新・夜市(β)」の最新情報はこちらから。(出店申込ページにとびます)

 

この記事を書いたユーザー
桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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