月曜日は英会話、火曜日はピアノ、水曜日は水泳、木曜日は…毎日のお子さんの習い事の送迎で疲れてしまうという親御さんは多いのではないでしょうか。送迎だけでも誰かにお願いできたら少しでも自分の時間が増えるのに…今回は、そんな課題を解決する事業を開発するhab(ハブ)株式会社の豊田洋平さんにお話を聞きました。
豊田 洋平(とよだ・ようへい)さん
hab株式会社代表取締役社長兼CEO/TOKYO STARTUP GATEWAY2022ファイナリスト
大手公共交通事業会社でモビリティのDX業務に従事。子どもだけが乗車可能な「子ども専用相乗りタクシーアプリ」を提供し子育て層の送迎課題を解決することで、子育て層の社会進出支援や子どもの体験格差是正に挑む。
スクールシャトルシェアリング「hab」公式サイト:https://habshuttle.com/
聞き手:栗原 吏紗(NPO法人ETIC.)
お子さんの送迎課題を解決することで、子育て層の社会進出支援や子供の体験格差是正に挑む。
ー今取り組んでいる事業について教えてください。
私は、MaaSや自動運転の領域でアプリ開発を行ってきました。起業当初は、東急株式会社に所属し、副業制度を活用してhab株式会社を設立して、サービス開発をしていました。
共働きの親御さんが、お子さんの習い事の送り迎え・買い物・食事の準備等で忙しくて正社員になれなかったり・自己実現ができなかったりという課題を解決するため、相乗り送迎アプリの開発を行っています。
具体的には、習い事に行く子どもたちが相乗りできる送迎サービスを提供しています。送迎による親の疲労を軽減し、自己実現をサポートすることで、社会進出を支援していきたいと考えています。
15社によるコンソーシアム「こどものみらい共創プラットフォーム」を立ち上げ、横浜市スタートアップ社会実装推進事業2022に採択され、2023年3月から実証実験を始めています。
自身が子どもの頃、習い事送迎で疲れていた母親の姿。職場で目にした同じ光景がビジネスアイデアに。
ー事業のきっかけは?
子どもの頃、共働きの親が習い事の送迎で疲れている姿を見てきました。前の職場でも、かつての自分の親と同じように送迎に課題を持っている家庭が数多くあるということが分かりました。
その課題は、モビリティで解決することができるのではないか。公共交通事業に携わってきた自分自身のキャリアを踏まえ、それを事業にしたいと思いました。
まわりに起業家がいて、すすめられたこともあり、サラリーマンのキャリアでこのままいくのかという葛藤もありました。会社の新規事業畑にはいたけれど、自分で決定権をもつ事業をやりたいと思ったのも理由の一つです。
また、売上が自分の収入にダイレクトに影響する仕事をしたいという想いもありました。起業アイデアを探す中で、自分と社会のニーズが合致したのが「送迎」でした。
※送迎のルートや時刻表など
自分と向き合い、お客様のペインと向き合い続け、改善をしながら価値ある事業を作り出す
ー今後実現したい世界やビジョンを教えてください。
子育てに関わる様々なペイン(痛みや課題)を解決して、日本を世界一子育てしやすい国にすることが私のミッションです。そのために、多様なステークホルダーと連携しながら、まずは子供の移動課題解決のため、取り組んでいます。
ービジョンを実現するためのステップは?
ユーザーに使ってもらうことが一番大事だと思っています。
この1年は、横浜市でのコンソーシアム事業「こどものみらい共創プラットフォーム」に力を入れてきました。公共交通やタクシー関連事業者、学習塾、医療・スポーツ、保険業界などと、行政の交通政策を担う方々と一緒に進めていて、この地域でじわじわと広めていきたいと考えています。
まだまだサービスとしては不完全だと思うので、実証実験を繰り返しています。
その中で、教育関係者とも繋がることができ、小学校の校長会に参加して情報交換をさせていただくなど、関係する人の幅が広がっています。
時間も資金も自信もなくても大丈夫!無駄な時間を減らして事業推進。副業時代の土台が今に生きている。
ー事業を進めていてぶつかった壁、大きな課題はありましたか?それをどのように乗り越えましたか?もしくは乗り越えようとしていますか?
ここまでは順調に来ているので、大きな壁は感じていません。振り返ってみると、最初は副業で始めましたし、たしかに時間も資金も自信もありませんでした。
それでも、時間確保は、無駄な時間をなくしたら意外にできなくはない。土日や、平日も朝と夜を使ってひたすら事業に邁進していました。それでも1日7時間の睡眠時間は確保していました。
資金確保のためには、苦手だった資料作りやピッチは、ベンチャー起業家コミュニティでお互いに磨き合って進めました。基本的な労務スキルも、コミュニティの中で学びました。
コンソーシアムでの補助金獲得は、当時はまだ副業としてやっていたので、自分一人で、15社のコンソーシアム組成のために動き、規約をつくり、毎月の定例会含め運営しながら事業開発をしていくのは大変でしたが、なんとかできました。その後に独立し、8月にも国交省からの補助金を獲得できました。
事業開発のスキルは、必要な知見は前職で蓄えていたので活かせました。小さいアクションプランの変更はしています。事業を推進していく中で、保護者のニーズによる習い事の送迎だけではなく、学童や歯医者さんのニーズも見えてきました。ニーズが見えてくると色々なアイデアが生まれ、それを実装しながら進めています。
自信は、今もあるとは言えませんが、それはもうやるしかない。ニーズがあるという事実でメンタルを保っていますね。
ースイッチを切り替える時、気分転換したい時は何をしますか?
寝ることですね(笑) 睡眠不足だと余計なことを考えてしまうので、しっかり寝ます。 他には、走ったり、ベンチャー起業仲間とバスケをしたり、体を動かすようにしています。
起業の同志・同期をつくりたかった。今では悩みを相談しあえる貴重な存在に
ー豊田さんはTOKYO STARTUP GATEWAY2022で半年のコンテスト期間を経てファイナリストに選ばれました。エントリーした時のことを教えてください。
起業アイデアが固まった段階でエントリーしました。
起業したいと思っていたので、起業同志・同期を作りたかったですね。同じスタートラインに立つ仲間がいる環境を作れました。
起業同期は悩みの目線が一緒なので、相談事がスムーズで、壁打ちするときでも共感できるのがよいところです。
ファイナリストの皆さんとは定期的にやり取りをしていて、2・3か月に1回程度会っています。お互いに悩みを相談して、関係する人を紹介したり。Facebookのグループチャットで連絡をとりあっています。
ー最初の400文字を書いた時の気持ちは?
あまり深く考えていなかったですね(笑)
アクセラレーションプログラムやビジコンに出しまくる必要があると思っていました。どれか一つにすがるのは良くないと思っていたので、とにかくアクションしまくった一つがTSGでした。
最初にTSGを知ったのが4・5年前。有志団体Dream on代表(旧 有志団体CARTIVATOR)の中村翼さんがファイナリストに残った頃、渋谷でのファイナリストのトークセッションにふらっと立ち寄りました。
その時、自分もアイデアを見つけたら応募してみようと思っていました。それを5年越しに思い出してエントリーしました。あのイベントがなかったら応募していなかったですね。
ー最初の起業アイデアはどう進化・深化していきましたか?
アイデアが深まるという意味では、サービスを開発していた時の、メンターからの指摘がありがたかったです。先輩起業家や親御さん独自の目線で、お客様に対する安心安全機能について、特にバス停での配慮などは、サービスに反映できました。
※横浜市にて行われた実証実験の様子
ーこれからTSGにエントリーする方へのメッセージ
自分がやりたいことも大事ですが、お客様が価値を感じてくれるサービスを提供することが必要です。自分と向き合い続けることと、お客様の声を丁寧に聞くことで価値のある事業になると思います。
自分が受賞できたのは社会的な価値、ニーズがあると評価されたからこそ。ニーズがないと事業にならないので、ペインと向き合うことが必要だと考えています。
TSGは、自分のアイデアを人に知ってもらったり、フィードバックをもらえるすごく良い場。自分のアイデアについて、まわりに聞ける機会ってあまりないですし、普段会っている友達が適切なフィードバックができるわけではない。
その点で、起業同期は、自分も起業したいと思っているのでよいフィードバックをもらえます。お客様に聞くのが一番いいけれど、お客様に聞いたうえで、更に起業同期にフィードバックをもらえるのが良い。その環境が一番良かったです。
400文字なので、さっと気楽に応募できるし、選考に通ったら嬉しいし、自信にもなる。自分も覚悟しないと起業は続かないので、TSGを通して応援してもらえることにもつながるし、2次選考を通るだけでも自信になります。
アイデアがある人は絶対に出した方が良いし、アイデアがなくてもよいと思います。なんとなく書いて1次選考に通っちゃったという人もいました。
自分の内なるものを絶やさないために参加したという人もいましたし、30分前に見つけたという人も、色々な人がいました。自分が何か事を起こしてみたいと思う人であれば、1回出してみたらいいです!
「TOKYO STARTUP GATEWAY」に関する記事はこちらからもお読みいただけます。
様々な起業家たちのチャレンジをぜひご覧ください。
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