TOP > ビジネスアイデア > コロナ禍・産後うつを乗り越えて、国内外に伝統文化「三味線」を未来に繋ぐ。株式会社TOKYO SHAMI 齋藤佳奈さん

#ビジネスアイデア

コロナ禍・産後うつを乗り越えて、国内外に伝統文化「三味線」を未来に繋ぐ。株式会社TOKYO SHAMI 齋藤佳奈さん

2024.05.14 

三味線をもっと気軽に多くの人に楽しんでもらい「衰退している日本の伝統文化である三味線を未来に繋げていきたい」そんな想いで30代で起業し、外国人向けに三味線ワークショップをスタートさせた齋藤さん。

コロナ禍や産後鬱を乗り越えて、三味線だけでなく、将来は女性が豊かに幸せになれる手助けをしていきたい、と嬉しそうに語る齋藤さんにお話をうかがいました。

 

この記事は、現在エントリー受付中の東京都主催・400字からエントリーできるブラッシュアップ型ビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」出身の起業家を紹介するWEBサイト「TSG STORIES」からの転載です。エティックは、TOKYO STARTUP GATEWAY(以下TSG)の運営事務局をしています。

齋藤 佳奈(さいとう・かな)さん

株式会社TOKYO SHAMI 代表取締役/民謡三味線師範/TOKYO STARTUP GATEWAY2018ファイナリスト

4年の海外生活後、素敵な日本文化を海外の方に体験してもらいたい!と訪日外国人向け三味線ワークショップを開催し、これまで100名近くの方が受講。 全員が星5つをつけてくれる高評価レッスンに。 2023年から日本人向け事業を開始。自分でつくる三味線キットとマインドフルネスと三味線を混ぜた独自のオンラインレッスンは継続者多数。受講生からは曲の弾き語りができるようになるだけでなく、気持ちが前向きになった、夢が叶ったなどの定評がある。 2024年、女性からのビジネスの悩み・ご相談が増え、自由に心地よく、楽しくしあわせに自分らしい起業を目指す、新ビジネス講座をスタート。1児の母。

E-mail: tokyoshamiweb@gmail.com

Web site: https://tokyoshami.com/

Blog: https://ameblo.jp/kana-magic/

Instagram: https://www.instagram.com/kanasaito.0125/

 

聞き手:栗原 吏紗(NPO法人ETIC.)

三味線の敷居を下げ多くの人に興味をもってもらうための「ミニ三味線」づくり

 

齋藤さんと海外のお客様たち、三味線をもって集合写真

 

ー事業立ち上げのきっかけは?

 

TSGをきっかけに起業し、会社を設立しました。

IT企業の会社員を辞めワーキングホリデーで4年海外に住み、帰国した後に偶然Facebook広告でTSGの応募ページを見つけました。

締切が今日か明日という時だったのですが、ピンときたらのっかるタイプ。瞬時に「エントリーしないと!」と思いました。エントリー時は30代前半でしたが、ワーキングホリデーから帰ってきて社長になった珍しいタイプだと思います。

 

ー齋藤さんの三味線ワークショップのなかで最もユニークな点は何でしょうか。

 

私のワークショップの最大の特徴は「ミニ三味線」をつくれることです。

マイ三味線をつくることで、音がでる仕組みやチューニング方法も知れるので簡単な曲から「さくらさくら」など日本の伝統曲まで3曲をすぐに演奏できるようになります。自然と深い愛着もわきますよね。

 

帰国後に参加者から「家族に披露した」など、コミュニケーションを深めたエピソードも寄せられて嬉しいです。

 

ー事業を通して解決したい課題はありますか。

 

三味線文化は高齢化により後継者不足に陥っています。

でも先祖から受け継いできた大切な日本文化。敷居を下げて多くの人に興味をもってもらいたい。

だから起業直後に身近な外国人向けの三味線ワークショップにトライアルしました。 「楽しい!」と参加者から評判で、訪日外国人向けの予約サイトにも掲載され、2020年1月にはロサンゼルスで三味線ワークショップや講演を行いました。

でも帰国した翌月2月には日本にもコロナの波がきて、外国人の入国が制限されてしまいました。

 

海外にて現地の方に体験してもらった三味線ワークショップは好評だった

 

三味線ワークショップの様子

顧客激減・産後うつの2重苦から脱却できたのは、事業の原点・原動力に立ち返ったから。

 

入国制限により仕事が途絶え落ち込む日々が続いた中、翌年3月にコロナ禍で出産を経験しました。 妊娠中は切迫早産で入院生活を送り、産後は夫が忙しく育児に一人で奮闘する日々が多かったです。

 

仕事の喪失や子どもが早産でNICU/GCUに入院しコロナの影響で全然会いに行かれず、どん底に落ちてしまい、産後うつになりました。

 

ー大変でしたね。どのようにして苦境を乗り越えましたか?

 

私の事業の原動力は、一貫して「三味線を未来に繋いでいくことと、私と関わってくれた方が笑顔になってくれること」です。

そのためには、自ら一歩を踏み出さないといけない。 コロナ禍で対面の教室は難しくても、日本人にこそ三味線の魅力に気づき理解を深めて欲しい、そんな想いから日本人向けにオンライン三味線教室を立ち上げました。

 

ー「オンライン三味線教室」という新しい取り組みで、工夫した点はありますか?

 

ターゲットは主に若い日本人女性で、訪日外国人のワークショップと同じように自分でミニ三味線をつくって演奏できるようになります。日本人向けには、時間をかけた丁寧なサポートを心がけ、動画とzoomを掛け合わせてレッスンをしています。

 

動画レッスンではアメリカ人講師の箏奏者の演奏をバックに合奏体験ができるのと、三味線で国際交流オンライン体験レッスンもしていただけます。

ミニ三味線をつくって弾けるようになることと、英語で三味線(日本文化)を伝える体験は参加者にとても好評です。 また、海外の方には三味線の歴史を伝える一方、日本人向けにはマインドフルネスを取り入れています。

 

私自身が海外の瞑想センターに行ったり、ヒーリングドラムのアーティストをしていた経験があり、音楽とマインドフルネスは私の中では密接に結びついています。

「三味線とマインドフルネスの組み合わせを考えている人は私以外にいないんじゃないか?」と感じたんです。

 

現代は競争社会から、内面から湧き上がる感情を重視する時代へと移行しています。この時代のニーズにも合致していると感じています。

 

また、現在子育て中の私は、対面のワークショップは子供の突然の体調不良のことを考えるとあまり増やせないのですが、海外からは三味線って結構人気があり、 三味線を教えられる講師を育成したいと考えていたので、インストラクター養成講座をスタートしました。

 

インストラクター養成講座で育成した講師たちも半年の講座で立派に成長し、先日最終試験に合格し、いよいよデビュー目前です。

三味線だけでなく、女性が「自分自身を生きられる」サポートがしたい。

 

 

ー事業を通して実現したい社会、将来のビジョンを教えてください。

 

2024年4月から、起業したい女性向けのビジネス講座を開催予定です。 私は今まで日本人の継続される三味線の生徒さんへ、日常のお悩みや夢を叶えるアドバイスをレッスン後に「夢コンサル」という形で無料で相談に乗ってきました。すると、日常の悩みって三味線と全然関係ないようで、不思議と演奏の自信がついたり、輝いてきたりするのです。

 

夢コンサルをやる中で、生徒さんたちとの会話から起業したいという願望を持つ人が多いことにも気づきました。でも資格をとってもビジネスの始め方がわからない人もいます。

 

私は社会の要求に応えるだけではなく、自分のやりたいことをまず原点にすることが大事だと考えています。 自分のやりたいことは何か? なぜ自分はやっているのか? を考えて「どんな自分でもOK」と自己受容できれば、どんなときも焦らず、安心して前に進んでいけます。

 

また、女性は結構直感で「やりたい」が出てきたりするのですが、いざビジネスになると、直感で動いてはいけないんじゃないかと思ってしまったりします。直感は大事!

 

また、今は育児や介護など自分のこと以外に忙しい方が多いです。 実体験で得た、育児をしながらでも楽しく仕事を両立するコツも伝えたいです。

 

初めてのビジネス講座なのですが、多くの方に興味を持っていただけて嬉しいです。

20〜30%でもかたちになっているアイデアがあるなら試すのが大事。

 

―駆け出しの時にこうすればよかったと思う教訓は?

 

迷ったときに頭でばかり考えてしまうことが多かったです。完璧主義なところもあって、事業を進められなかった時もありました。

 

100%じゃなくてもいい。20~30%でもいいので世の中に出してみるといいです。

 

世に出すと言っても大げさに考えすぎずに、まずは周りの友達やターゲットに近い人に試してもらう、という小さなステップでいいと当時の自分には伝えたいですね。

 

ーアイデアがまとまらないときにしていたことは?

 

紙に書き出してみて、人に伝える。人と話していく中でアイデアがまとまっていくことも多かったです。

 

私の場合は、次にやりたいと考えている事を生徒さんにも話しますね。

すると、こういうのを聞いてみたいというような意見をもらえるので、自分の中だけでアイデアをためておくのはもったいないです!

 

初めてやることは誰だって怖い部分があります。

 

自分の好きな事だったら、恐れずにどんどんやってほしいし、喜んでもらった対価としてお金を頂く幸せの循環を作っていきたいですね。

 

TSG2018の決勝大会 表彰式後の集合写真

 

ー最後に、齋藤さんの人生にとってTSGにはどんな価値がありましたか。これからTSGに挑戦する方への応援メッセージも合わせて教えてください。

 

TSGは起業の大きなきっかけになりました。

以前私は「変わってる」という印象を持たれることがありました(最初は隠していましたが、途中から隠すのをやめました笑)が、TSGで出会った仲間と切磋琢磨する中で、起業を目指す人は変わってる人ばかり! 自分の道は正しかったんだと信じることが出来ました。 事業もブラッシュアップし、彼らとは今でもご縁が続いています。

 

はじめての挑戦は誰にとっても不安かもしれません。周囲に批判されるかもしれないと心配になるかもしれません。でも、自分が挑戦することで幸せになる人がきっとたくさんいるはずです。

 

20〜30%でもかたちになっているアイデアがあれば、自分のやりたいことから試すことが大切だと思います。 途中で挫折することがあるかもしれませんが、みんな通る道だからこそ、夢は実現できると信じてください。

 


「TOKYO STARTUP GATEWAY」に関する記事はこちらからもお読みいただけます。

様々な起業家たちのチャレンジをぜひご覧ください。

>> 特集「夢みるために、生まれてきた。~世界を変える起業家たちの挑戦~」

この記事に付けられたタグ

起業TOKYO STARTUP GATEWAY日本文化
この記事を書いたユーザー
アバター画像

芳賀千尋

1984年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。 20代は地元と銭湯好きがこうじ商店街での銭湯ライブを開催。 1000人以上の老若男女に日常空間で非日常を満喫してもらう身もこころもぽかぽか企画を継続開催。2018年からETIC.に参画。