石川県・能登半島は、2024年1月1日の大地震によって大規模な被害に遭い、さらに9月21日には豪雨による被害が発生しました。
震災直後に現地の団体を中心に発足した能登復興フットワーク(愛称 : いやさか)は、9月26日に活動報告会をオンライン開催しました。当日は、全国の中間支援組織ネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(以下、チャレコミ)」(事務局 : NPO法人ETIC. [エティック]) の関係者をはじめ能登に関心を寄せる人たち140名以上が参加。輪島市、珠洲市、七尾市に拠点を置いて活動する団体らから現状が語られました。その一部をご紹介します。
<登壇者>
森山 奈美(もりやま なみ)さん 株式会社 御祓川 代表取締役 (七尾市/能登復興ネットワーク事務局長)
前原 土武(まえはら とむ)さん 災害NGO結 代表 (能登全域)
山本 亮(やまもと りょう)さん 株式会社 百笑の暮らし / のと復耕ラボ 代表 (輪島市)
今井 健太郎(いまい けんたろう)さん sien sien west 代表 (七尾市)
坂井 理笑(さかい りえ)さん ひなさぽ (珠洲市)
伊藤 紗恵(いとう さえ)さん 合同会社CとH 代表 (珠洲市)
※記事中敬称略
※記事の内容は2024年9月26日時点のものです。
震災直後に発足した能登復興ネットワークを法人化
森山 : 実は、今回の活動報告会は、1月1日に発生した地震後から開催していた活動報告会の6回目として、8月から企画していたものでした。能登半島地震からの復興に向けて、能登の新たな情報を地域外の方に伝える趣旨で内容を企画していました。しかし、今からまだ6日前ではありますが(9月26日時点)、豪雨という災害が能登を再び襲いました。
そのため、今回は、今、能登がどういったことに立ち向かっているのかを伝えるための会として開くことになりました。現在も状況が刻々と変わってはいますが、今の能登を知っていただく機会として、当初予定していた内容を少し変更してお送りします。
能登復興フットワーク(愛称:いやさか)のホームページより
また、1月1日の大地震発生の翌日から活動している方々と毎晩行っていた情報共有会議から発足した能登復興ネットワーク(愛称:いやさか)は、先日登記を終えて、10月1日、一般社団法人に法人化します。みなさまのご支援を受けながら、外部人材派遣、地域のニーズと支援をつなげるコーディネートなどを行ってきましたが、今後もさらなる活動に向けてご支援のほどよろしくお願いいたします。
震災で心が折れかかったところに水害が襲った。地域の課題解決をどうサポートしていくか―災害NGO結代表 前原土武さん
各地で支援活動をしてる団体から活動報告をしていただきます。まず災害NGO結代表の前原さん、災害・支援状況をご報告ください。
前原 : 能登には1月2日から入っていますが、9月の豪雨後も、各地で被害がグラデーション化していると感じています。奥能登をはじめ、輪島市の町野でも大きな被害が起きていますが、半島の外周に近づくほどに被害の大きさを感じています。家屋や建物の倒壊も目立ちます。
地震については、大きな特徴の一つとして、能登地方でも高齢化率の高い奥能登の地域に大きな災害が起きてしまったことが挙げられます。しかも、海に囲まれた半島で起きてしまった。地震で港が隆起してしまい使えなくなったり、地すべりや道路損傷で、たくさんの集落が被災・孤立し、多くの産業が大きなダメージを受けてしまいました。
今回、9月に水害が起きて改めて思うのは、コロナ禍でも、災害後でも、やるべきことは同じだということです。たくさんの人を集めて、泥水をかき出しながら、廃棄物を出さない限り、困った状態は雪のように溶けることなく残り続け、さらに課題を大きくします。まずは廃棄物を出す作業を業者に委託するのか、ボランティアでやるのか、住民自身でやるのか、この選択をどうするかなのです。
瞬発的に人を集めて片付けていくのか、長期で根気よく続けていくのか、そのどちらかになる状況は、僕自身、コロナ禍でも経験しました。長期間日数をかけるのであれば、まちの片付けをしながら、まちづくりをする必要があります。
地震後、高齢者の方々の中には、次の世代のことを考えて、自宅を解体することを選んだ人がたくさんいます。子どもたちがいなくなったからと、自分たちの家を閉じることを決めた方々で、復興住宅で余生を過ごそうという方も少なくありません。そうなると何が起きるか、将来、能登に移住したいと思ってくれる人が入れるスペースがなくなるのです。
5年前、10年前に移住された方々の中には、空き家を借りてリノベーションしたという方が多いと思います。しかし、これからは空き地が広がることが予想されます。もし万が一、その土地の価値が下がるとなると、能登半島に土地を購入して家を建てて住みたいという人がどれだけいるか、想像すると実際にはハードルが高いチャレンジになると思うのです。そういった意味では、状態の良い家を少しでも残して、そこを誰かが借りてゲストハウスにするなど、こういった取り組みをこれから数年で形にしていかなければ、誰も移住者がいない10年間がこれからきてしまうかもしれないと少し心配しています。
今回、さらに水害が起きたわけですが、今回の水害の特徴は、地震で被災した状態にさらに水害が重なっていることです。例えば、解体する家を持っている方は、その家に土砂が入っている状態です。泥かきをするのかどうか、解体の費用はどうするのかなど新たな課題が発生しているように思っています。
また、地震で孤立した集落ですが、大雨によって再び孤立してしまいました。地震で道路が崩れてしまった場所は、応急的に復旧したものの、大雨によってまた道路が崩れてしまっています。地盤の弱い場所に住む人たちは地震、大雨と二重の打撃が起きて、孤立してしまっている現状があります。
土砂崩れによって電気や水道が止まったところも多く、輪島市内の地盤が比較的低いところでは浸水水害が起きてしまっています。しかし、半島であるがゆえに余分な土地がない、そのために地盤の低い場所に仮設住宅を設置してしまって二重被災してしまっている人たちがいます。そのため、罹災証明が再発行されるかどうか、保険はどうなのか、という課題も多くの人に発生している現状があります。
様々な状況があり、能登の人々は、この1年間、避難生活で大半を過ごしてしまっている方が多いです。僕たちや自治体は、住民一人ひとりが、被害に遭っているのか、どんな被害に遭っているのか、把握することも難しい状況です。
また、やっと施設が復活したのに、そこに水害が起きたことでもう再建を諦めようとしている福祉施設や業種もいくつかあると思っています。地震後、やっとの思いで再建をして頑張っていこうとしていたところに水害が起こり、泥水が屋内に入ってきているのです。輪島市では、高齢者施設がその一つですが、ここに入居されようとしていた方々の暮らしを今後どう支えていくのか、そういう課題もあります。
最近、県から40名ほどのボランティアが連日入り、仮設住宅の災害廃棄物を処理しています。その廃棄物を最終的にどこでどう処理するのか、そういった課題もあります。
能登の美しい景色(能登復興ネットワークのホームページより)
震災で折れかかった心に今回水害がやってきたという特徴があるため、それを私たちはどうサポートしていくのか、地域内外の人が一緒に考えていく必要があります。今日、社会福祉業議会で打ち合わせをしましたが、社協もこれからどう支えていくか、ボランティアをたくさん受け入れることから始まり、被災者の再建、被災者の未来につながっていくことを思いながら、活動を本格的に始めようと思っています。
これまで僕はエリアコーディネーターとして能登でいろいろなことをしてきましたが、体力的に厳しさを感じています。今後は水害被害の大きかった輪島市に集中し、輪島市の社協の運営サポートもしたいと思っています。主に行政との交渉やサポート、県とのつなぎ役などコーディネーターとして様々な支援活動を推進していきます。
能登での新しい活動報告をリアルタイムで更新中です。ぜひご覧ください。
NPO法人ETIC.では、能登半島豪雨のための緊急ボランティア募集を行っています。
■実施概要
・日程 : 2024年12月までの毎週土日を予定(金曜前入りを推奨)
・集合場所 : のと鉄道 穴水駅
・集合時間 : 毎週土曜日 8:00
・主な活動場所(想定) : 珠洲市・輪島市・能登町等
・宿泊場所 : 能登ボランティア・キャンプ(石川県能登町 やなぎだ植物公園内)
・費用 : 宿泊費・交通費・保険代等は各自ご負担ください
・申し込み方法 : 以下のボランティアガイドを事前にご確認の上、所定のフォームからお申し込みください。
※今回の緊急ボランティア募集は、あくまでETIC.がこれまでご縁を頂いた方々へのご支援を中心とした、民間団体としての取り組みとなっています。
【問い合わせ先】NPO法人ETIC.(担当:森本、鶴ヶ野、瀬沼)
こちらのフォームよりお問い合わせください。
■ご寄付のお願い
今回のような取り組みを今後も推進していくため、ご寄付でのご支援も引き続き受け付けています。ぜひ一人でも多くの方が能登に心を寄せていただけることを願っています。
>> SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付
■発災後半年間の活動報告書はこちらからご覧いただけます。
>>「能登半島地震復興支援 活動報告(2024.1.1-6.30)」を公開しました
フルタイムスタッフとして能登地方で支援活動推進に携わることにご関心ある方はこちらをご覧ください。
>> DRIVEキャリア「復興を支え、能登の未来をつくる仕事」
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