2004年からETIC.が実施しているチャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(通称:チャレコミ)では、全国42地域のパートナーNPOや企業と連携しながら、地域における新しいチャレンジを創りだしてきました。
そのチャレンジを後押ししてきたのが、日本各地の「地域コーディネーター」。彼らの手によって、大学生や20代から30代の若手社会人と、地域で活躍する企業をつなぐ新しい仕事が、日本全国で生まれ始めています。今回は、彼ら地域コーディネーターの、仕事内容や魅力を紹介します!
大学生が地元の中小企業で実践型のインターンシップを実施する事例が全国で増加中
大学のない地域に若者がやってきた!既存のまちづくり会社が「長期実践型インターンシップ事業」を開始
人口57000人弱、能登半島の中心に位置する石川県七尾市。この市にある株式会社御祓川は、10年以上続くまちづくり会社です。代表取締役を務める森山奈美さんのお父様の世代が、まちのシンボルである御祓川の浄化活動から始めた会社です。現在は、「まち育て、ひと育て、みせ育て」という3つを中心に事業を展開しています。
今でも川を中心として祭りなどの文化が残る、石川県七尾市
その中の一つ「ひと育て」として、御祓川は長期実践型インターンシッププログラム『能登留学』を実施しています。2007年の能登半島地震をきっかけに始まったこの活動は、能登に外部から若者が入り込む流れを生み出すきっかけとなりました。 能登留学をはじめた理由を、森山さんはこう語ります。
「地震で大切な文化財がなくなってしまったり、建物が壊れたり。もともと人口が減っていたことも明らかになったんですね。そこで、『まずは事業をなんとかしましょうよ』とまわりに言っても、『うちにはやる人がいない』『若い人がいればねえ』という声が多い。『だったら外から若者を呼んで来よう!』と思いました。」
株式会社御祓川の代表を務める森山奈美さん
一般的に「インターンシップ」というと大学生が就職活動前にお試しで企業に体験に行くものというイメージが強いかも知れません。しかし、ここでいう「長期実践型インターンシップ」は、大学生が半年から一年間にわたって地域の企業に入り込み、地域の中小企業の事業推進に貢献することを狙うもの。こうすることで大学生も、短期間の職業体験以上に、より多くのことを学ぶことができます。
大学のない七尾市に金沢市や首都圏の大学から若者がやってくる。それだけでもまちにとっては大きなインパクトですが、単なる観光や体験にとどまらず、意欲を持った学生たちが少しでも事業に貢献しようと、懸命に頑張ってくれる。その姿を見て、企業も地域も元気になっていきます。こうした動きをプロデュースしているのがコーディネート団体である御祓川の役割です。
パンフレット作りの打ち合わせをする学生と受入企業の専務。インターン期間中は真剣な議論が日々交わされました
例えば、七尾市内にある和ろうそくの製造販売を行う高澤ろうそく店。和ろうそくの販路のほとんどはお寺や寺院ですが、一般のお客さんに和ろうそくの魅力を伝えたいと考え、金沢市内や東京の雑貨店などへの卸売りを進めていました。
しかし、雑貨店では、洋ろうそくと和ろうそくの原材料や作り方などの違いを正しく伝えられていないという課題がありました。 そんな相談を受けた森山さんは、雑貨店の販売員に向けたパンフレットの製作を手掛けることにしました。通常業務で忙しい高澤ろうそく店の社員に代わって、金沢大学のインターン生がその仕事に取り組んでいきます。
森山さんは、インターンシップの期間中、企業の方との打ち合わせや進捗確認を行い、学生がうまくいかない時には励ましたり、叱ったりしながら企業と学生をサポートされていました。結果、新しく制作したパンフレットは雑貨店からの評判もよく、以前よりも売りやすくなったとの声もいただいたそうです。さらには、海外向けの資料もインターン生が作成しました。
商工会議所プロデュースの住み込みインターンシップに、全国から学生が集まる
また、三重県の尾鷲商工会議所に勤務する伊東将志さんは、尾鷲生まれ尾鷲育ち。もともとは商工会議所から出向していた先の企業で、実践型インターンシップの学生を受入れたことが、コーディネート業務に携わるきっかけでした。
尾鷲商工会議所でインターンシップ事業を運営する伊東将志さん
「自分が生まれ育った、愛する地域は過疎高齢化の先頭を走っていて、将来がみえません。そんな中で大学生が地域に入り込み、地域のために働く企業のプロジェクトに、涙を流しながらチャレンジする様子を見て、これこそ、都市部から遠く離れた尾鷲にこそ必要なことだと確信しました。」
そんな思いから、伊東さんは商工会議所に戻り、インターンシップ事業部を新設しました。大学生の住み込み型インターンシップとして、東海圏はもちろん全国から大学生が入り込むプログラムとなっています。
尾鷲ではいろいろな場所で若者と地域の関係性が繋がっています
尾鷲に大学生が来る、それだけで地域の新聞に取り上げられるくらい大きな出来事なのですが、なんと尾鷲にインターンシップに行った大学生のうち、5人が尾鷲の企業に就職しているのです。
彼らは尾鷲出身でもなければ、インターンシップ以外の地縁があったわけでもありません。インターンシップを通して、企業の大人とつながり、地域の様々な大人や、そこに住む人たちとつながることで愛着を感じて、就職を決めていったそうです。
人口20000人弱の尾鷲という小さい地域だからこそ、一人一人の活動が地域にとっては大きな出来事となって帰ってくる。東京でチャレンジする人はきっと他にもいる。でも、尾鷲でチャレンジするのは自分しかいない。そう思える環境が尾鷲にはあるのではないでしょうか。
地域にチャレンジを生み出す
御祓川の森山さんや尾鷲商工会議所の伊東さんのように、地域の課題に向き合い、地域の仕事づくりや次世代の担い手育成に取り組む地域コーディネーター。地域の活動を発信して多くの人に知ってもらうことで、他の地域の人たちが「よし自分たちも!」と感じてもらいたいと、彼らは思っています。
すべてのまち・会社・人にある可能性を信じ、一緒にチャレンジしていく。地域から日本を変えていく存在が地域コーディネーターなのです。
地域コーディネーターは学生と企業だけでなく様々なセクターをつなげる役割です
現在は42の地域で活動している地域コーディネーターたちですが、こうした活動をする人が100人・1000人と増えていけば、日本はもっと面白くなると思いませんか?あなたのまちにそんな人がうまれたら、地域の可能性をより多くの人が知り、地域で挑戦しようとする人が増えていくかもしれません。
ETIC.では、「若者 X 経営者 X 地域 = 挑戦が生まれる日本へ」という想いのもと、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトが生まれて10年が経ちました。通称"チャレコミ”と呼ばれるこの活動では、地域の経営者と若者が連携してプロジェクトに取り組み、地域に新たなイノベーションを起こしています。地域にチャレンジを生み出すことに興味のある方は、ぜひ"チャレコミ”のイベントなどに一度足をお運びください! 連続セミナー開催中 地域に若者を呼び込む「政策」を考えるセミナー
あわせて読みたいオススメの記事
#ローカルベンチャー
報酬は「魚払い」!?―新しい副業のカタチ「GYO-SOMON!」に迫る!
#ローカルベンチャー
地域自治の実現を「食」から仕掛ける「コミュニティ栄養士」とは?人口2,550人の地区で模索のなかから生まれたビジョン
#ローカルベンチャー
#ローカルベンチャー
#ローカルベンチャー