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「求む、自分の幸せの開拓者」。起業家とともに悩み、ともに幸せになる覚悟をもつ町役場が北海道にあった【Eターン@厚真 前編】

2016.07.27 1,082view 

北海道の南西部に位置し、稲作に加え、ハスカップ栽培にも力を入れる農業や、人工林に加え天然林での林業が盛んなまち、厚真町(あつまちょう)。新千歳空港や札幌市からアクセスが良く、広大な空、大地、海や山といった自然に恵まれています。サーフィンが好きな方なら、北海道有数のサーフィンスポットとして「浜厚真」の名前を耳にしたことがあるかもしれません。

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北海道らしい広大な空と大地が印象的な厚真町。

太平洋に面しており、サーフィンスポット「浜厚真」として知られます。

太平洋に面しており、サーフィンスポット「浜厚真」として知られます。

 この人口4,700人ほどの町は近年、町役場を中心にEターン(起業型移住)者の支援に取り組んでおり、移住する人も増えてきました。2016年には岡山県西粟倉村と協働で、起業を視野に入れた移住を考える方を対象にした「ローカルベンチャースクール」を開校します。

いったいなぜ、厚真町はEターン支援に取り組み始めたのか。また、なぜ移住者や起業家がこの町に集まっているのか。その背景には、町役場の“ある覚悟”がありました。

※厚真町への移住の事例を紹介する「Eターン@厚真 中編」「後編」も近日公開予定です。

●受け身はもったいない!移住&起業が成功するために不可欠な「ある発想」とは?【Eターン@厚真 中編】

●移住の事例から学ぶ!移住成功に不可欠な“ある存在”とは?【Eターン@厚真 後編】

50年後に何を残すべきか。その答えのひとつとしての「起業家支援」

「50年後に伐採する木をいま植えて育てる林業のように、先人がつくり上げたこの町を、次の世代に、より良い形で渡したいんです。」

町でEターン支援が始まったきっかけについて尋ねると、厚真町役場で移住者支援に取り組む宮久史さんは、自身の出身分野である「林業」に例えて答えてくれました。 DSC_5357

「厚真町の主要産業のひとつである林業では、『次世代にどのような木を残し、どのように育て引き継ぐか』がとても大切です。厚真町に多いカラマツの人工林の場合、おおよそ50年ごとに、『次の50年後、どういう森林を残すか』というビジョンを考えることが望まれます。 その意味で、先人たちがカラマツを植え始めてから約50年が経った今は、過去を整理し、次の50年のビジョンを立てる時期です。つまり、50年前の先人たちから僕たちの世代が引き継いだバトンを、次の世代にどういった形で渡していくのかを考えることが必要なタイミングなんです。

厚真町全体にも同じことが言えると思っています。林業や農業、商業といった町の産業、またそれらをサポートする行政の制度なども、次の世代にどういった未来を残すのか、改めて考え直す時期になってきていると思います。」

町役場が「次世代へいかにバトンを渡すか」を考えるなかで、厚真町で農業や林業、飲食業を始める起業家が増え始めたことに伴い、『事業のための助成はないか』『育児を終えて、何か事業を始めたいのだけど、サポートはないか』という相談も、町役場に届くようになりました。

「起業家は、先人たちが切り開いた土地を土台に、自らの思いや希望を練り上げて、未来を作っていく人たち。町としても、何とか支えていきたいという思いがありました。特に町長は、『銀行からの融資を受けるのが難しい起業家達に対しても、町なりの基準と方法で、少しでも起業を後押ししよう』と、Eターン支援に強い思いを持っていました。このような経緯を経ながら、町ではEターン者を支援する機運が高まっていったんです。」

2016年初開催のローカルベンチャースクール

町として、Eターン支援をしていくことになった厚真町。2013年から、厚真町起業化支援事業補助金制度を設け、町の起業家に起業から3年間でかかる事業経費の1/2以内、上限200万円(空き店舗を活用する場合は250万円)の支援制度を開始しました。

この起業支援制度のように人を育てる基盤は整いつつある一方で、厚真町で求められている事業や、厚真町にある様々な資源を活かす事業を「やる人」がまだ足りない、という課題は残っていました。

「起業時に支援を行っても、事業を続けていく段階で苦しんでいる起業家の方もいましたし、そもそも起業しようか迷っている方もいました。そのような事例を目の当たりにするなかで、ローカルベンチャーは起業するための財政的な支援だけではなく、事業を続けていくための支援や、起業の際に不安を感じる点に対する助言といったサポートを必要としているんだ、と気づいたんです。」

しかし、宮さんたち役場の職員が助言できる分野は限定的で、具体的な事業についてのアドバイスをすることに限界を感じ始めていました。そこで厚真町が2016年から、ローカルベンチャー育成事業に取り組むエーゼロ株式会社との協働で始めるのが、「北海道厚真町ローカルベンチャースクール」です。

北海道厚真町ローカルベンチャースクールのサイト

  ローカルベンチャースクールとは、昨年岡山県西粟倉村で開催された、起業家の発掘・育成を行う起業支援プログラム。西粟倉で開催されたスクールには、200名の延べ参加者数、18件の応募が集まり、最終的に2件の事業が起業型地域おこし協力隊制度を活用しながら採択されるなど、大きな反響を呼びました。

2016年に開催される北海道厚真町ローカルベンチャースクールでは、「Eターン、厚真(あつま)れ!」と題し、2回の合宿を通じて、起業型移住者の事業アイデアのブラッシュアップなどを行います。

こうしたローカルベンチャースクールを実施することで、「移住し、起業して終わり」ではなく、その後の事業の成長まで視野に入れたサポートが可能になりそうです。町の「起業家を支えたい」という思いは、こうしてまたひとつ形になりつつあります。

起業家とともに悩み、ともに幸せになる覚悟

厚真町には、他の北海道の地域と同じく、明治時代に開拓民たちが切り拓いてきた歴史があります。宮さんによれば、現代の「新・開拓民」としてこれから厚真町に来る移住者に、厚真町が求めることがあるそう。

この田園風景も、かつて開拓者たちが森を拓き、長い月日をかけて作り出したもの。

この田園風景も、かつて開拓者たちが森を拓き、長い月日をかけて作り出したもの。

 「それは”自分の幸せを切り拓くこと”です。やると決めたらバリバリ進んで、しっかり稼いで幸せになってくれる人がいい。田舎だから稼げなくてもしょうがないと、諦めるのではなく、好きなことをしながらも、多少ゆとりのある生活をつかんでほしいんです。

”自分を幸せにする覚悟”をもった人に来てもらいたいと思いますし、来てくれた方々が目標を達成するために、町は起業家とともに悩み、ともに幸せになる覚悟を持って、全力でサポートしていきたいと思います。」

“自分の幸せを切り拓く”ことは、未開の土地を開拓することと同じように、骨の折れる作業になるでしょう。自分が幸福を感じることを見つけ、稼ぐことができるアイデアを練り、形にする……。その過程のなかで、移住者は悩むこともあるはずです。

宮さんは、ローカルベンチャースクールを、「悩む期間」と位置づけてもいい、と語ります。

「初めから、やりたいことや事業の進め方が明確に決まっていなくてもいい。『ここで幸せを拓くんだ』という決意があるのなら、まずはローカルベンチャースクールに参加してみてもらいたいです。 簡単には見つからない答えでも、思い切り悩んで、なにか答えを見つける機会になればいいと思っています。そのために僕も、相談に乗ったり、移住者の悩みの解決につながるような人をつないだりしています。

ただ、『来てみたけど、なにも得られなかった』というのでは、本人にとっても町にとっても不幸です。厚真町で過ごす期間を、後悔ないように過ごしてほしいですね。」

町が取り組む、移住者目線に立ったEターン支援

地域おこし協力隊をはじめ、自治体が移住支援をする背景には、「地域課題を解決してほしい」という思いがあります。しかし、厚真町を取材するなかで「こんな課題を解決してほしい」という、地域目線の話はほとんど出てくることがありませんでした。

役場の方が皆口にするのは「挑戦者を支えたい」という思いと、「挑戦者とともに悩み、ともに幸せになる」という覚悟です。

厚真町の多くの部分は明治時代に、開拓民が切り開いた土地です。そんな土地であるだけに、厚真町は「新・開拓民」である移住者の挑戦に寄り添う意識が強い地域なのかもしれません。”自分の幸せを拓く”ことに本気で挑戦したい、そのための場所を探しているという方は、厚真町で新たな挑戦に挑んでみてはいかがでしょうか。

お知らせ

北海道厚真町ローカルベンチャースクールについて 2016年、北海道厚真町はローカルベンチャースクールを開校します。

東京でも、実際に地域の方から話を聞く「利きまち トークライブ」と、ローカルベンチャースクールの事前講習会も予定されているので、西粟倉へのEターンに興味を持った方はぜひ、ご参加ください。

ご応募、詳細は以下から。

「利きまち トークライブ 第一回:西粟倉・厚真編」

2016年 西粟倉村・厚真町ローカルベンチャースクール 事前講習会

この記事を書いたユーザー

山中 康司

山中 康司

働きかた編集者。IT系ベンチャー企業にてオウンドメディアの編集者を経験したのち、現在はNPO法人ETIC.ローカルイノベーション事業部にて、「地方での働き方」に関するプロモーション業務等を担当。立教大学卒、東京大学大学院情報学環学際情報学府修士課程修了。

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