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#ローカルベンチャー

新しい仕事を地域でつくる、グローバルな視座の持ち方と問いの作り方

2018.12.07 40view 

年齢もバックグラウンドも異なる者同士が切磋琢磨し、半年間で地域で新しい仕事をつくるための事業プランを練り上げる「ローカルベンチャーラボ」。第2期の開校式が2018年6月に行われました。当日、全国から集まった55人のメンバーへ向けて株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さんが講義した「地域に入る視座の持ち方」の一部を特別にお届けします。

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正解がない時代、新しい仕事をつくるチャンスがある場所こそ地方

「一人ひとりの中に、一つひとつの会社や組織の中に、社会と世界をもっと豊かにしていける知恵や経験、様々な資源が眠っている」。そんな想いを持って、資源が公に“持ち寄られる”ことで新しい価値を生み出していく仕組みと場をデザインするために設立された株式会社エンパブリック。「誰もが新しい仕事を始められるような社会を目指している」と語る広石さんは、まずこんな問いを参加者に投げかけました。

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「アメリカの小学校に2011年に入学した子どもたちのうち、今はない仕事に就く割合は何パーセントだと思いますか? 答えは65%です。たとえば小学生でもゲーム実況やyoutubeで稼ぐような時代ですから、人々の仕事観を変えていかないといけない。そして、地方こそ変えていくチャンスがある場所なんです」

では一体、何をしたらいいのか? それを誰かに教えられて、正確に対応していけばいいという時代ではないとも広石さんは続けます。

「その代わり、社会のニーズに合わせて仕事を変えていき、生き延びていけばいいんです。先が“ない”時代、どのように新しい仕事をつくるのかが問われています。そしてそれが、社会を変えていくということです」

大切なのは、ソーシャル・キャピタルをどう培っていくかということ

地域で新しい仕事を生み出すためには、発起人の存在だけではなく、フォローしたい人が集まり多様なつながりが生まれる場が必要だと広石さんは語ります。困っている人と、できる人。先輩と後輩。リーダーとフォロワー。「どれだけのつながりがあればいいのかをデザインすること」が、何より大切なのです。

「起業家が優れたビジネスプランを持っているだけではダメで、地域資源と結びつく必要があります。私たちはビジネスの感覚で何事もお金で解決しようとしがちですが、地域では関係性で解決できます。一人ではビジネスプランは作れても事業は作れないように、大切なのは、ソーシャル・キャピタルをどう培っていくかということです」

例えば、地域とのつながりを失っている高齢者が多いならば、これまで培ってきた経験を生かして地域に関わってもらうということもソーシャル・キャピタルを培っていくことに繋がります。「一括りに見られがちな高齢者も、一人ひとりを見ていくと様々な経験を持った人ばかりで、地方は資源だらけ」と、広石さんは続けます。

「地域で仕事をつくるには、『コレクティブ・インパクト』という意識が大切なんです。『コレクティブ・インパクト』とは、個別にアプローチするだけでは解決できない社会的課題を、同じ課題を抱えている別々の組織が協働することで解決する試みのこと。地域において、『どのようにつながりを作れるのか、コレクティブになれるのか』という視点が、新しい仕事を生み出す鍵になります」

2030年が世界の大きな転機になる。SDGsの流れを意識した戦略を

そしてたとえそれが東京でもローカルだったとしても、「コミュニティの課題は普遍的」だと広石さんは語ります。

「たとえば東京の大企業でも新規事業は中々難しいと言われますが、積極的に取り組んでいるところでは、自社とパートナー企業で考えた新規事業をまずはお客様に持っていって相談するということをしていますよね。そのように、新しい仕事を生み出すには現場に行くことが一番大事で、現場での観察、会話を通して出てきたもので試作品を作り検証し、お客様に提供するという流れが必要だと思っています。つまり、現場と顧客の背景に着目する必要があるということなんです」

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日本全体が落ち込んでいるという背景がある中で、地域で新しい仕事をつくろうとするとグローバルを知る必要があると続ける広石さん。そういった意味で、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げられたSDGsという目標があるのだと続けます。

「例えば2017年3月、米アップルは半導体パッケージ関連製品を供給している岐阜県のイビデン株式会社のアップル向け製品の製造を、100%再生可能エネルギー発電電力で賄うと発表しました。そして2018年現在、アップルは再生可能エネルギーで世界的に自社の電力を100%調達することを実現させています。

ここでポイントなのは、アップルという1社はそれを達成できていても、サプライチェーンでは行えていないということ。このように、地方に行ったときには世界で何が起きているのか、それが地方にどう繋がっているのかを理解することが大切になります」

そういった視点から、2030年が1つの転機になると続ける広石さん。電気自動車の割合が増えるなど、2030年を境に産業が大きく変わっていくと語ります。

「例えばハイブリッド車のみ製造している、北欧スウェーデンの自動車メーカーVOLVO(ボルボ)という企業があるように、これからさらに再生可能エネルギーで産業を作っていくという流れが加速します。その流れの中で、グローバルの話が突然自分の地域に降ってくるという時代なのです。

また、貧しい地域の支援は今までのようなヒューマン的な支援ではなく、先端技術を使った支援に切り替わりつつあります。協力とは何か、世界とは何かを改めて問い直す必要があるのです」

大事なのは、「問い」を見誤らないこと

最後に、最も大切なこととして「地方創生」「地域活性化」という思考に未来はないと語る広石さん。同じように、「貧困のない世界をつくる」「エネルギーを節約する」「SDGsに対応する」……これらの考え方に未来はないと続けます。なぜなら、それでは現状の裏返しだから。「ではどうなっていくのか?」を示していないと語ります。

「『この現状をなんとかしなければ』と言っておけば、人々はいい気分になって合意形成を取りやすいですから。現状の地方創生も一緒で、『どんな地方をつくりたいのか?』をまったく語りません。けれど大切なのは、『どんな地方をつくりたいのか、何をつくりたいのか』ということなんです。

まずは、理想のすすめ方を共有することです。その際に重要なのは、現状の理解がない中で進めてはいけないのだけれど、現状の延長線上で理想を描いてはいけないということ。それこそ地方に行く人ほど、理想を描いていく必要があると思っています」

フェスを開催して地域に200人集めたけれど、その日以降は人がこなくなったのでは意味がないと続ける広石さん。「村を元気にしたい」ではなく、「村を元気にするというのはどういうことなのか?」を問うことが大事だと語ります。

「その目標に向けてどうやって進めていくのか、皆がその理想の状態になっていくためにどんな体験が必要なのか、何を起こしたくてそのために何が不足しているのか。そういったことを考えることが、とても大切になってくるんです。大事なのは、問いを見誤らないことです」

誰かの未来を考えるのは、もったいない。自分の未来を実現するために問いを分かち合おう

SDGsに対しても、「それをなんとかしないといけない」ではなく、誰がその問いをつくっていて、誰と話していく必要があるのかを考えることが必要であると語る広石さん。必要なのは「自分はどう思うか」ということであり、それは自らが持つ理想や知識に左右されるものであると続けます。

「正解がない時代、正解をつくっていく時代だからこそ問いが必要なんです。例えば日本の理科の実験は、実験ではなく演習ですよね。教科書通りの対応をすることで、答えがあることを演習しています。けれど本来の実験というものは、失敗から学び新しいことを見つけていくことです。答えがないから、意見を持ち寄る必要があるんです。だから対話が必要で、関わり合うことが必要なんです。

皆さんにはこれから、自分の考える未来をつくってほしいと思っています。そうしたとき、きっとその未来は現状とのギャップがあります。そうして問いかけが生まれ、問いを分かち合うことから新しい仕事が生まれます」

ソーシャルとは“社会にいいこと”だと言われているが、「そもそも社会にいいことって何なのか?」という問いを分かち合って、一緒に“何がいいことなのか”を考えていくことが大切ではないかと続ける広石さん。

「誰かが未来を考えているから今があります。でも誰かの未来を考えるのは、もったいない。地方に行って地方の人たちの言うことを聞いてだけいたら、悲惨な結果になることもある。だから、自分の考える未来を描くことを何よりも大切にしてください。自分の考える未来を実現するために、問いを分かち合うんです」

ただ地方に行って作業を手伝うわけではない、なにか変化を起こしたくて行くのだから。そう続けた広石さんは、その変化を起こすための場所として「ローカルベンチャーラボ」は可能性のある場所だと思っていると締めくくりました。

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「ローカルベンチャーラボ」のフェイスブックページでは、ここでご紹介したような視座のもとで地域で新しい仕事をつくっているメンバーのチャレンジを日々お届けしています。気になった方は、ぜひチェックしてみてください。

株式会社エンパブリック代表取締役/広石拓司

東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク勤務後、2001年よりNPO法人ETIC.において社会起業家の育成に携わる。 2008年株式会社エンパブリックを創業。慶應義塾大学総合政策学部、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科などの非常勤講師も務める。

この記事を書いたユーザー

ライター・桐田理恵

ライター・桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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