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“いい会社”の条件とは?-鎌倉投信新井和宏さん×MAKOTO竹井智宏さん対談「会社と地方の幸福論」vol.1-

2016.09.21 1,672view 

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連載対談「会社と地方の幸福論」は、一般社団法人MAKOTONPO法人ETIC.ローカルイノベーション事業部の共同企画です。この秋、わたしたち2団体は、東北で生まれている移住・起業の火種を東京で体感するイベント「TOHOKU IGNITION」を、4回にわたって開催します。初回のテーマは「リノベーション」。9月28日(水)19:00からアーツ千代田3331を会場に、東北のリノベーション、エリアマネジメントの最前線を知るパネルディスカッションと、懇親会を予定しています。起業・移住・東北・リノベーションというキーワードにピンと来た方は、ぜひご参加ください! 詳細・ご応募はコチラから。

わたしたちは、仕事を通して幸せになることができているでしょうか。

現代の日本は、ストレス社会だと言われます。少し前の調査ですが、2008年に内閣府が行った調査によると、20代から50代では日頃ストレスを感じている人が6割を超えているそうです。(内閣府『国民生活選好度調査』2008年)

ストレスの大きな要因となっているのは、お金や仕事に関する悩み。同調査では、ストレスを感じる理由として「収入や家計に関すること」(39.9%)、「仕事や勉強」(38.3%)、「職場や学校における人間関係」(34.4%)が大きな割合を占めています。

いったいなぜ、お金や仕事がストレスの原因となってしまうのか。これらとどう付き合えば、わたしたちは幸せに近づくことができるのか……。そんな疑問を持ったわたしは、それぞれ仙台と鎌倉を拠点に“いい会社”をふやすことに取り組む、一般社団法人MAKOTOの竹井智宏さん、鎌倉投信株式会社の新井和宏さんに話を聞くことにしました。

二人の対談から見えてきたのは、“地方で働く”“いい会社をふやす”“価値観のものさしを変える”といったことが、仕事を通して幸せになるための鍵になる、ということ。そんな対談の内容を、5回に分けてお届けします。

初回は、二人がこれからの社会に必要だと考える“いい会社”について。聞き手はETIC.の山中康司です。

竹井智宏さんのプロフィール

一般社団法人MAKOTO 代表理事

1974年生まれ。東北大学生命科学研究科博士課程卒。仙台のベンチャーキャピタルにて、ベンチャー企業への投資に従事していた際に東日本大震災が発生。震災後の2011年7月に一般社団法人MAKOTOを設立し独立。日本初の再チャレンジ特化型ファンド「福活ファンド」を組成し、起業家の投資育成活動を展開。2015年、日本ベンチャーキャピタル協会より「地方創生賞」を受賞。起業家育成の環境作りにも力を入れ、東北最大のコワーキングスペース「cocolin」を仙台市内で運営。東北随一のクラウドファンディングサービス「CHALLENGE STAR(チャレンジスター)」も展開。2016年、日本財団「ソーシャルイノベーター支援制度」によりソーシャルイノベーターに選出。東北大学特任准教授(客員)。

新井和宏さんのプロフィール

鎌倉投信株式会社創業者・取締役・運用責任者

1968年生まれ。東京理科大学工学部卒。現・三井住友信託銀行、ブラックロック・ジャパンに在籍し、ファンドマネージャーとして数兆円を運用する。2007年、大病を患ったこと、リーマン・ショックをきっかけに、10年近く信奉してきた金融市場・投資のあり方に疑問を持つ。2008年、同志と、鎌倉投信株式会社を創業、以降投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。経済性だけでなく社会性も重視する投資哲学の下、「結い2101」は、個人投資家1万6千人以上、純資産総額230億円超(2016年8月時点)の支持を集め、2013年には第3者評価機関の最優秀ファンド賞も獲得。特定非営利活動法人「いい会社をふやしましょう」理事も務める。

会社というのは、手段です

--今回なぜ、竹井さんと新井さんに対談をお願いしたかというと、お二人とも「いい会社をふやす」取り組みをしているという点で、共通しているんじゃないかと思ったからなんです。

竹井さんは、一般社団法人MAKOTOで、東北のベンチャーを支援をしていますよね。

竹井:そうですね。わたしは震災直後の2011年8月1日に、仙台で一般社団法人MAKOTOを立ち上げて、主に3つの軸からベンチャーの支援に取り組んでいます。

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ひとつは、オフィス・資金調達・イベント・コミュニティなど、起業家育成のための環境づくり。もうひとつは、ファンド事業。たとえば「福活ファンド」という、一度失敗した経験のある起業家を対象にした、再チャレンジに特化したファンドの運用などです。

あともう1つは、地方創生事業。たとえば、宮城県の丸森町という、人口15,000人ほどの町で、丸森CULASTA(クラスタ)という起業家支援のプロジェクトをしています。

--一方新井さんは、鎌倉投信で「いい会社」を応援する投資信託の運用に取り組んでいらっしゃいます。

新井:はい。僕らは「いい会社をふやしましょう」を合言葉に、「結い 2101(ゆい にいいちぜろいち)※」という、公募の投資信託を運用・販売しています。投資先は、現在全国に約60社あるのですが、その1割ぐらいが社会的な事業に取り組むソーシャルベンチャーです。

※鎌倉投信が提供する、これからの社会にほんとうに必要とされる会社に投資する公募投資信託の名称。

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--今うかがったように、拠点も事業内容も違うのですが、お二人とも独自の視点でいい会社を見つけ、応援しているのだと思うんです。そんなお二人が考える“いい会社”とは、どんな会社なのでしょう?

竹井:そうですね。そもそもなのですが、わたしは、「会社というのは、手段です」とよく言っているんですよ。

--「会社は手段」というと?

竹井:一般社団法人MAKOTOが目指しているのは、「人が幸せに生きられる社会をつくる」っていうことなんですね。

問題意識として、やっぱり世の中がだんだん、人が幸せにならない方向に向かっているんじゃないかと。だから、誰もがより幸せに生きられる社会にしていきたい、という目標がある。そのための手段が、いい会社をふやす、ということなんです。

だから、わたしたちが応援する“いい会社”を定義するなら、「人が幸せに生きられる世の中をつくるために、社会課題の解決に取り組む会社」ですね。

いい会社がふえれば、幸福感が拡がる

新井:鎌倉投信の“いい会社”の定義も、竹井さんの考えと近くて、「これからの社会に必要とされる会社」です。いい会社がふえれば、社会に様々な価値が創造されて、雇用が生まれて、その会社に関わる多くの人の幸福感も拡がると思っています。

竹井:だから、会社はあくまでも、社会を良くするための手段でしかないんですよね。

新井:ええ。それこそ、上場だって手段でしかない。僕は鎌倉投信の投資信託の仕組みによって、いい会社が上場しないまま成長できる形をつくっていきたいな、と思ってるんです。

--上場は目的ではない。

新井:はい。上場が目的になることによって、いい会社がいい会社じゃなくなっていくことがありますからね。ほんとうに大事なのは、「上場を経て何をするか」、でしょう? それを見失ってしまうんですよ。

確かに、上場というプロセスを経るべき事業もありますよ。設備投資の資金が必要な製造業とかね。でも、たとえばIT企業は、上場して資金調達する必要がない会社もたくさんある。それなのに上場を目的にすることは、「お金を稼ぐ」ことを目的にするってことですよね。

僕たち鎌倉投信が考えるいい会社、つまり「これからの社会に必要とされる会社」にとって、目的はお金を稼ぐことじゃないよね、と。

竹井:いい会社の目的は、社会をより良くすること。そのためにお金を稼ぐことが必要で。その順番を間違えちゃいけないですよね。

新井:ええ。よく「儲かってる会社だから、社会貢献するんだろう」って意見を聞きます。それ、違うんですよ。ほんとうのいい会社は、儲かってない頃から社会貢献をやってるんです。社会をよりよくする取り組みが、会社の存在価値そのものになってるんですね。

共創社会での「本業」は、業種や業態のことではない

--これからの社会に必要とされる会社が“いい会社”、という話がありましたが、具体的にどのような会社が社会に必要とされるのでしょうか?

新井:僕はよく、“本業の拡大解釈”ができる会社だということをいっています。つまり、「自分たちの本業はこれだけです。自分のところだけ儲かればいいんです」ではなくて、本業の視野を広げている会社だと。

たとえば、鎌倉投信の投資先ではないですが、長野県伊那市にある伊那食品工業なんて、信号を作りましたからね。食品の会社なのにですよ?

竹井:食品の会社が、なぜ信号を?

新井:社員と地域の方々の安全のためです。道路に信号がなかった時に、伊那食品工業にとっては社員や地域の方々がすごく大事なので、事故に遭っちゃいけないと思って、自治体にかけあって、信号をつくるわけですよ。

--すごいですね。そう考えると、「本業」って何を意味するのか、わからなくなってきました。

新井:ほんとうの意味での「本業」はシンプルで、「その会社に関わる全ての人を幸せにする」。ただそれだけですよ。業種とか業態とかではないんです。

鎌倉投信は投資信託の仕事をしていますが、「金融って、お金貸すのが役割ですよね」って言われた瞬間、僕は腹を立てますからね。「ふざけるな」って。鎌倉投信は社会をよくするための手段として、金融をしている。本業は従来の「金融」という狭い定義じゃないんです。

これからは競い合う「競争社会」じゃなくて、いい社会を共に創る「共創社会」なわけです。だからなおさら、「社員、お客さん、地域の人、みんなが幸せになるために活動することが本業」という企業が、これからの社会に必要とされるのだと思います。

竹井:だから、いい会社にとってはみんな「同志」なんですよね。協力者も同志ですし、それから支援先も同志。社員ももちろん同志。「よりよい社会をつくっていきたい」という志に共感して、お互いにいい社会をつくるために頑張る、という関係をつくることができているんです。

やりたいことをやらないまま死ぬって、悲しいと思う

--いい会社を起業できる起業家の資質があるとすれば、ひとつは「志を立てて、伝えることができる」ことでしょうか。

竹井:そうですね。人を集めるためにも、志を持っていることがすごく重要です。

新井:あと、僕はいつも投資するときに「優秀な人に投資する」ではなくて「諦めの悪い人に投資する」って決めてるんですよ。「死んでも諦められない。できなかったらお化けで出てくる」ような人じゃないと。

竹井:いい会社って、経営していく過程で苦しい時期が来ますからね。利益と社会性を両立させなきゃいけないので、特に。

新井:そうなんです。だから、ずっとうまくいってる人って、見てると怖くてしょうがないんです。失敗したときの顔が想定できないんですよね。そうすると怖くて投資できないんですよ。

一方で、逆境になると、ニヤッとするヤツがいるんです。

竹井:わかります。逆境が来ると「よっしゃ!」みたいな。

新井:そうですよね? いつもベンチャーの経営者に言うんですけど、「失敗しない方法は、シンプルだよ。続けりゃいいんだ」って。会社ってつぶれないんですよ。経営者が「もう駄目だ」って言わない限りは。いろいろ外部からいわれるだろうけど、別に続ければいいんですよ。だから、失敗を恐れずにやってしまって、とにかく続けることも、起業家の資質でしょうね。

人生のなかでの失敗は何かといったら、「やらないこと」だと思う。やらないまま死ぬってね、悲しいと思うよ。死ぬときに「ああやればよかった」って後悔する人生だけはやめたほうがいいと思う。

運をつかめる人は、勘違いをしている

竹井:あとは、勘違いできるかどうかも大事だと思いますね。わたしは、「運」ってみんなに平等に降り注いでると思うんですよ。それをつかめる人は、大きな勘違いをしていることが多い。そして、そこに踏み出せる勇気を持っている。

周りから見ると、「いやいや、無理でしょ」ってかんじなんだけども、「いや、できる!」とかね。「もうだいたい、成功が見えた!」みたいなこと言うんです。

新井:そうそう。もう妄想に近いくらいの何かを持ってます。

投資先の、日本環境設計株式会社っていう会社の会長がいます。その方は2007年くらいに映画の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い出して、「ああ、ごみを燃料にして車が動いたらいいなぁ」と思ったらしいんです。

映画の中で出てくる「デロリアン」って、生ごみを燃料に走る、未来の車なんですね。1985年公開の映画で、30年後の未来の車として描かれているから、2015年がちょうどその年だった。なので、「2015年10月までに、ごみで走る車つくろうよ」って会長本人が言い出したんです。

そんなのもう、はたから聞いてりゃちゃんちゃらおかしいでしょ。でも、つくっちゃったんですよ、ほんとうに。

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お披露目されたデロリアン。(写真は日本環境設計株式会社提供)

竹井:それはすごい。

新井:そりゃみんな感動しますよね。要は、「人間が想像できるものは絶対できるはずだ」みたいな、わけのわからん勘違いがあって、それに付いてくるんですよ、人は。そうすると、妄想が実現しちゃうんです。

いい会社が持つ“個性”

新井:僕は、企業には個性がなきゃいけない、と思っています。いい会社には、今お話しした日本環境設計株式会社のような個性がある。

なぜなら、現在のようにモノやサービスが溢れている中で、価格で差別化するのって難しい。じゃあ何によって差別化するかというと、会社の個性なんです。

たとえば、鎌倉投信の投資先のひとつであるヤマト運輸株式会社は、わかりやすくいうと「われわれは宅急便という荷物を運んでいるんじゃない。依頼者の気持ちを運ぶんだ」という理念があって、社員一人ひとりに共有されている。それって他の会社にはない個性ですよね。個性があると、人が共感するストーリーが生まれるんです。

--東日本大震災の直後、ヤマト運輸のセールスドライバーたちが物資の行き届かない避難所への配送を請け負ったことが話題になりましたね。しかも、本社からの指示ではなく、自ら自治体に協力を申し出たと聞きました。

新井:そうです。そういったストーリーが共感を呼び、「他の会社ではなく、ヤマト運輸にお願いしよう」となる。実際に、ヤマト運輸の売上はどんどん上がっています。

竹井:わたしもずっと、「志がある会社のほうが成功しやすい」っていうことを言い続けてるんです。それはなぜかというと、志を立てたときに、たとえそれが実力以上の目標でも、身を捨てる覚悟でやっていれば、みんなが支えてくれるんです。

特に震災後の被災地がそうでしたね。協力者もそうですし、従業員だったり、経営仲間になるメンバーも、志に共感して来てくれるということを何度も目の当たりにしました。それはまさに、個性とかストーリーが人を惹きつけているんですよね。

東北の会社には、ストーリーがある

新井:鎌倉投信もストーリーを大事にしていますよ。一番わかりやすい例でいうと、うちって実は、ホームページをつくる以外は宣伝広告費を予算計上したことないんです。

--ええ!  本当ですか?

新井:はい。それでも今、全国に16,000人のお客さんがいらっしゃるわけで。それはなぜかというと、「いい会社をふやしましょう」という志に、多くの方が共感してくださっているから。だからこそ宣伝をしなくても、鎌倉投信のことを広めていただけているんだと思います。

--起業してからずっと、「結い2101」という商品しか扱っていないことも、ストーリーのひとつでしょうか。

新井:そうですね。でも実は、鎌倉投信を立ち上げるときに、「結い2101」以外の商品をつくれば損益的にはすごい楽になるということで、別の商品を並行して扱うことも考えたんですよ。

そのとき、ある経営者の方にいわれたことは、「逃げるな」と。「本物になるためには、逃げるな」、なんですよ。本物になるのって、ものすごく苦しいんです。でも、だからといって楽な選択に逃げた瞬間に、ストーリーが崩れるんです。要は、「逃げた会社」になっちゃうから。「それだったら、鎌倉投信じゃなくてもできるよね」っていわれて、終わるんですよ。

「いい会社をふやす。そのためには、楽な選択には逃げません」。そんな姿勢を示したからこそ、多くの方に共感いただけているんじゃないかと思います。

竹井:すごくわかります。あと、ストーリーという意味では、わたしたち一般社団法人MAKOTOが活動をしている仙台をはじめ、東北の被災地にある会社はストーリーがあると感じています。

震災後にアメリカに行かせていただく機会があったのですが、「東北ではなにが起こってるのか」って、現地の方に関心を持ってもらえて。そのとき、「あぁ、東北は世界に対して、価値を提供できる側なんだな」って気づいたんです。

世界中の地域が今後直面するであろう課題に、いちはやく直面しているからこそ、率先して解決策をつくっていける。ゆくゆくは「なんか東北から面白いサービスが生まれてきたよ。それって、震災があったかららしいよ」っていうストーリーが、世界中で語られるようにしていきたいんです。そんな思いで、いま仙台を拠点に起業家の支援に取り組んでいます。

(つづく)

この記事を書いたユーザー

山中 康司

山中 康司

働きかた編集者。IT系ベンチャー企業にてオウンドメディアの編集者を経験したのち、現在はNPO法人ETIC.ローカルイノベーション事業部にて、「地方での働き方」に関するプロモーション業務等を担当。立教大学卒、東京大学大学院情報学環学際情報学府修士課程修了。

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