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「これからのNPO・ソーシャルビジネスの働き方の話をしよう」 社会起業家・NPO人事担当者が語る座談会レポート(後編)

2014.03.11 474view 

前編「NPO・ソーシャルビジネスの”採用基準”」に続き、社会起業家&NPO人事担当者の座談会からの示唆をダイジェストでお送りします。後編のテーマは、「NPOの人材育成」と、「これからのはたらき方はどうなっていくか」です。ファシリテーターであるNPO法人NEWVERY山本繁さんによる締めのお話、「世界最強のNPOはサンタクロース」も必読です。

■ファシリテーター 山本繁氏(NPO法人NEWVERY理事長)

■ゲスト 石井正宏氏(株式会社シェアするココロ代表取締役) 工藤啓氏(NPO法人育て上げネット理事長) 辰巳真理子氏(フリーランス/NPO法人ETIC.) 山元圭太氏(NPO法人かものはしプロジェクト 日本事業統括ディレクター)

NPO・ソーシャルビジネスの”人材育成”戦略

前編では、狭き門である上に、どこに門があるのかわからず、さらにはハードルが高いというNPOやソーシャルビジネスの採用について、社会起業家や採用担当者など「中の人」が存分に語りました。ここでは、「採用したとして、どう育成する?」とう議論の中身をまとめます。

リーダーの方針や事業の特性によって、人材育成のあり方も千差万別です。これからNPOで働く人へのメッセージとしては、組織によって様々な方針があることを理解し、就職・転職前に、しっかりとトレーニングや評価の仕組みについて質問し、納得しておくことが重要だということになるでしょう。

山元:即戦力人材であっても、NPOでの働き方やカルチャーに対応するのに半年はかかります。目標に関する考え方や、多様なステークホルダーとの関わり方、組織の経営資源の使い方に慣れる必要がある。だから、新職員には「半年は結果をだそうと思わなくていい」と繰り返し伝えています。採用側として、半年たったらひと通りのことに慣れて、実力を発揮できるように業務やトレーニングを設計していくことが大切です。

辰巳:どれだけ理想的なマッチングだと思っても、採用後に何らかのギャップが現れるものです。それを共有してお互いに歩み寄ることができるように、コミュニケーションのプロセスを設計しておくことが重要だと思います。

山本:採用したスタッフに、「自分(経営者)が、どう考え意思決定しているか」を、時間をかけて丁寧に説明するようにしています。そうして育成したスタッフは、どうしても迷って答えがでない時以外は、相談しにこなくなります。事業の展開スピードと少数精鋭であることを考えれば、各スタッフが担当範疇で迅速に意思決定でき、即アクションできることが重要です。毎回100点の意思決定でなくてもいいから、自分で決めきること。経営者や人事担当者がその環境を用意することが大切だと思います。

僕はNEWVERYのスタッフがプロボノ(スキルを活用したボランティア)で他事業に関わることを妨げません。むしろ、どんどんやってほしいと思っています。そうすることで、NEWVERYでの仕事にも、活かせる知見や体験を得ることができるからです。例えば、大学生と関わる仕事をしているスタッフがプロボノで小中学生を対象としたNPO活動に携わることから、大切な気づきを得ることがあります。

山元:クレド(明文化された行動規範・経営理念・指針のこと)を作成し、日々の業務に活用しています。かものはしプロジェクトには、450名を超えるボランティアスタッフが関わっていますし、職員同士は年齢が近く、教え・教えられるという関係の人材育成が難しい。ですから、クレドを作って方向性を示し、価値観を共有しています。例えばクレドのひとつに、滅私奉公ではなくて「活私豊公」というものがあります。これが日常の打ち合わせにおいても、使われるフレーズになっています。決まった仕事を繰り返しているわけではないため、研修してOK、ということがほとんどありません。だから、人材育成だけでなく、組織文化をつくることが大切だと思っています。

各スタッフに、複数の外部メンターをもつことを奨励しています。先ほども言ったとおり、内部で人材育成を進めることが難しいので、外部の専門家なり先駆者と、自分で関係性を築くことで成長してもらう、という仕組みです。

寄付型NPOと、事業型NPO(前者は収入の多くが寄付によるもの、後者はサービスや商品の対価として収入を得る)では、人材採用・育成の戦略が異なってくると思います。寄付型NPOでは、雇用するスタッフに限らず、関わり方に濃淡のあるボランティアスタッフのマネジメントまで人材採用・育成のスコープに入れる必要があります。寄付型NPOは、「成果が出ているから人件費をあげる」ということが難しい。それは、寄付をベースに事業を展開しているので、なるべく現地での活動に経費をかけるというプレッシャーがかかるからです。かものはしプロジェクトに多くのボランティアスタッフがいるのも、これが理由です。事業型NPOでは、ボランティアスタッフが皆無というケースも少なくありません。

NPOワーク・シフト:「NPOで働く」のこれから

NPOに関わる方法って、何も職員になるだけじゃない。「独創的な社会の課題解決に携わる」ことは、これから社会起業家やNPO職員だけの特権ではなくなっていくだろう、というお話です。企業にいても、(もちろん)行政にいても、ボランティア・プロボノだけでなく本業を通しても、関わる機会が増えていくことが期待されます。

辰巳:「職員になる」という以外にも、NPOに関わる方法はたくさんあります。インターンやボランティア、もう一歩踏み込んでプロボノなど、様々な選択肢がある。会社員のように雇用されるかそうでないか、というゼロイチじゃなくて、長期休暇だけ関わるとか、一時休職して関わるとか、色んなバリエーションがうまれてきています。会社を辞めずとも関わることのできる機会は増えつつあります。

山元:NPOへの関わり方は多様化しつつあります。僕が転職した5年前は、まさにゼロイチしかないような状況でした。2010年に「プロボノ」という言葉が出てきて、それ以来、片足を突っ込む色んな機会がうまれてきたように思います。もしNPOではたらくことに興味があるならば、まずは片足を突っ込んでみて、何が自分に向いていて、何がそうでないかを理解することが大事だと思います。それで納得した上で、両足を突っ込んでみればいい。いい時代になったものです。

工藤:世間一般では正社員化を求める流れが強くなっていくでしょうが、一方で逆の流れが生まれつつあります。極端に言えば、週5日をそれぞれ別の組織のために働くというスタイルだってある。だから、NPOの人材戦略や採用のあり方も、それにあわせて変わっていったら面白いのではないかと思っています。例えば、5つの組織で月に5万円ずつだして、25万円でひとりのスペシャリストの力を借りる、ということも可能でしょう。力を発揮する方法に選択肢が生まれているのはよいことだと思います。ただし、あくまでも“そういう働き方”を志向するひとにとっては、なので“仕方なくそうしなければならない”というのとは異なります。

辰巳:分野全体で人材を共有していく仕組みができれば、新しい人も参入してきやすいだろうし、NPOの事業展開の幅も広がっていくと思います。また、企業からNPO、あるいはNEWVERYが先駆的に始めているNPO間での出向みたいな仕組みも、すこしずつ生まれています。今後、もっとこういった機会が増えていくとよいと思います。

石井:少し注意が必要なことは、今回集まって話しているメンバーは、NPOのトップアスリートみたいな人たちだということ。だから、NPOの人たちがみんなこうだと思わないほうがいいと思います。NPO全体でみれば、もっと草の根で活動している人たちがたくさんいて、ここで議論されているような革新的な仕組みや考え方がすぐに普及していくわけではない、ということは理解しておくべきです。

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結びに:最強のNPOはサンタクロース

NPO・ソーシャルビジネスのゴールは、「世の中の課題を解決すること」であると言われます。そのためには、問題を全てカバーできる社会的インフラとなるか、より根源的には社会を取り巻く課題の構造や、社会がそれらをみる「目線(=認識)」を変える必要があります。そのためには、ひとつの組織でできる範囲のことをしていても、限界があります。どうやって「テコの原理」を効かせていくか。山本繁さんによる絶妙な喩え話です。

山本:今日僕はサンタの格好をしていますが、それにはちゃんと意味があります。この場でこのコスプレによって伝えたいことは、サンタクロースこそ最強のNPOだということです。北欧のどこかに事務局があるのでしょうけど、もちろんそこから全てのサンタクロースを供給しているわけではありません。世界中のパパやママが、それぞれの家庭や地域のサンタクロースになるのです。つまり、ノーマネジメントなのに世界中にサンタクロースが出現するという最強の仕組みです。超少人数で、極めて大きなインパクトを生みだしています。「世の中を変えたい」と本気で思うなら、働いている人たち以外が、自然にサンタクロースの格好をしだすようなことがないと、変わっていかない。そういう視野をもって、これからのNPOの人材戦略をかんがえていきたいと思っています。

2016年9月現在、山元さんの株式会社PubliCoで、コンサルティング等人材募集中です!

撮影/田村真菜

1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、芸能活動や野宿での日本一周を通して、社会をサバイブする術を子ども時代に習得。大学在学時は、ポータルサイトのニュース編集者を務める傍ら、日本ジャーナリスト教育センターの立ち上げに従事。311後にNPO法人ETIC.に参画し、震災復興事業の情報発信や事務局などを担当。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。

この記事を書いたユーザー

石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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