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【調査報告】参加者の60%が派遣後に被災地で就業・起業。「復興支援・右腕派遣プログラム」追跡調査

2014.02.20 

近年、「好きな地域で暮らす・はたらく」ことへの関心が高まっています。

 

雑誌の特集や関連するイベントを目にする機会が多くなりましたし、NPO法人ETIC.が運営しているソーシャルベンチャー・NPO求人メディア「DRIVE」でも、首都圏の若手ビジネスパーソンが地方の企業やNPOへ、UIターン(地域への移住のこと。※1)をするケースが増えています。

 

今回ETIC.では、「地域ではたらきたい、けれども何から始めていいのかわからない」という状況に対してどういったプログラムが有効かを検討する一環として、被災地への長期ボランティア派遣制度である「右腕派遣プログラム」の派遣者について、追跡調査を実施しました。

■ 調査結果サマリ

  • 派遣終了者96名のうち、60%が派遣期間終了後も被災地で継続して就業している。
  • うち29%が派遣先での継続雇用、16%が起業し、15%は現地の他事業者(企業・NPO)のもとへの転職である。
  • 派遣期間中の「地域とのつながり」、派遣者間の「横のつながり」、半年経って環境に慣れた段階での「もっとやりたい」という気持ち、そして「地域ではたらくことの手応えと面白さ」が定着を促進している。

 

< 調査概要 >調査方法:ヒアリングによる調査 調査対象:2011年5月から、2013年5月までの間に派遣された96名の社会人"右腕" 実施者:NPO法人ETIC.< 復興支援・右腕派遣プログラム概要 >ひとりでも多くの若者が、活動を通じて東北と関わり続ける、または故郷に帰ることによって、復興が進むことをねらいとしたプログラムです。被災地の地域課題解決型プロジェクトに取り組むリーダーのもとに、その「右腕」となる人材を派遣するプログラムです。主に20代・30代の若手ビジネスパーソンは、原則1年間現地に住み込み、リーダーとともに復興に取り組みます。2011年の事業発足から2014年2月までに、102の現地プロジェクトへ182名を派遣しています。graph4

 

右腕派遣終了後の派遣者のキャリア(n=96)

グラフからは、派遣終了者96名のうち、60%が派遣期間終了後も被災地で継続して仕事をしており、うち29%が派遣先での継続雇用、16%が自ら起業し、15%は現地の他事業者(企業・NPO)のもとへの転職であることがわかります。なお、「その他」には、大学院への進学や他地域への転職、そして無回答が含まれます。 なぜ派遣者が現地に定着する理由を、右腕派遣プログラムの担当者マネジャーであるETIC.山口敏はこう語ります。

 

「右腕派遣プログラムは、受け入れ団体のアセスメント(評価)を丁寧に実施し、右腕が活躍できる場を設計しています。結果として、早期に仕事を始められるだけでなく、地域にとって新入りである右腕が地域の方々とつながり、スムーズに適応できるようになっているようです。また、派遣された右腕同士の合宿など交流があり、そういったことが見えない支えになっているという話も派遣者から聞きます。」

 

また、人とのつながり以外にも、定住が進む上で重要な要素があるようです。

 

「人とのつながりは重要ですが、それに加えて、仕事そのものにやりがいがあるという点が、派遣者の定住につながっていると感じています。地域の人間関係や業務に慣れて、仕事がうまく回り始めるのにだいたい半年程度かかります。でも、それを超えると自分にやれることが増えるし、取り組むべき色んな課題もみえてくる。それに、被災地という地域の社会課題に取り組み、貢献するという仕事自体がとても面白いから、もっとやりたい、ということになるのだと思います。」

 

参考までに、地域へ期間限定で入り込むプロジェクトとしてテレビドラマ化されたことでも知られる、1~3年間の地域住み込み型プログラム「地域おこし協力隊」の派遣後現地定着率は56%(※2)となっています。また、ETIC.が実施している半年間の研究提案型(2度の現地訪問を含む)プログラム「地域イノベーター養成アカデミー」では15%です。(DRIVE参考記事:参加者の15%が移住する地域体験プログラム、その秘密にせまる!)

 

「好きな地域で暮らし、働きたい」という思いを実現するとともに、次世代の地域の担い手が増えるようなプログラムが、今後一層充実していくことが期待されます。

※1:Uターンとは、現住所から生まれ育った故郷への移住・就職のこと。Iターンは、主に都会からそれまで縁がなかった地域へ移住・就職すること。 ※2:平成25年度総務省調査。派遣者366名のうち、174名(48%)が活動地域と同一市町村内に定住、30名(8%)が近隣市町村に定住している。なお、同一市町村内定住者(174名)のうち、92名(53%)が就業、46名(26%)が就農、16名(9%)が起業している。  

 

「地域で暮らす・はたらく」ことに興味があって、どんな仕事があるのか見てみたい、という方におすすめのイベントです。 みちのく仕事マッチングフェア2014 3/2(日)13-18時@東京・溜池山王

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地域おこし協力隊
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石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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