2014年11月8日、東京都中野の中野コングレスクエアで「地域仕事づくりコーディネーター戦略会議~地域を選ぶ若者たちと新たな仕事が生まれる仕掛け~」が行われ、全国から地域おこしに関わっている方、学生さんなど、さまざまな背景の方が集まりました。
地域において求められているのは、新たな仕事や価値を生みたしていく人材です。そして、その人材を外部から呼び込み、育て、定着させていくには個人の努力だけでなくそれを支える土壌が必要となります。
地域仕事づくりコーディネーターとは、日本各地でそういった土壌をつくっている方々のこと。その形態も、株式会社、NPO、商工会議所、大学の教職員、地域の金融機関など多岐にわたります。
今回のイベントでは、「若者」にスポットをあて、若者と共に取り組んでいる新たなチャレンジを紹介。若者が入ることで地域にどのような効果があったのかを共有し、地域の中で彼らが活きる仕掛けを探りました。そして、各地で行われている、異なるもの同士を繋ぎ地域に新しい価値を生み出すコーディネートの技や仕組み、そこから地域に生まれてくる新たな可能性や、地域が変わる兆しについて共有しました。
このレポートでは、その中で行われたショートプレゼンテーション「クラウドファンディング活用の最前線」のお話のまとめをお送りします。 ファシリテーターは一般社団法人ワカツクの渡辺一馬さん、登壇者はFAAVOの田島実可子さん、飛騨信用組合の古里圭史さん、一般社団法人アスバシ教育基金の毛受芳高さんです。
“出身地と出身者をつなげる” FAAVOのクラウドファンディング
渡辺:ファシリテーターの一般社団法人ワカツクの渡辺一馬です。まず最初にFAAVOの田島実可子さんからクラウドファンディングについて、次に飛騨信用組合の古里圭史さんから飛騨信用組合でのクラウドファンディングの取り組みについて、最後に一般社団法人アスバシ教育基金の毛受芳高さんから資金集めについてお話しいただきます。
田島:FAAVOの田島です。クラウドファンディング*はアイディアを実現するために必要な費用を、アイディアに共感した人から少額ずつ集めるというものです。その中でもFAAVOは購入型クラウドファンディングという形態で、支援額に応じて特典を受けられます。FAAVOは“出身地と出身者をつなげる”というコンセプトで、2014年11月時点では29地域で展開していています。
*クラウドファンディング:物を購入することで支援する「購入型」、金銭リターンが伴う「投資型」、金銭リターンのない「寄付型」がある。期限内に集める目標金額を設定し、それに満たない場合は全額返金となる。
一般社団法人ワカツク・渡辺一馬さん
FAAVO成功のポイント――島根県石見神楽プロジェクトを通して
田島:成功事例をお話しします。島根県石見の、“国府海岸での石見神楽夜明け舞を、若者の力で存続させたい!”というプロジェクトで、目標金額は20万円、掲載期間20日間というものでした。 成功のポイントは二つ。一つ目は、起案者さんの周りの人に刺さるストーリーを作ったこと。
二つ目は、起案者さんがクラウドファンディングの目的、意義、仕組みを理解していたことでした。 ストーリーの部分では“高齢化・過疎が進む町”として現状を分かりやすく写真で紹介し、“祭りと町を守る為に立ち上がった若者!”として話し合っている写真を載せてアピール。クラウドファンディングの理解という点では、地域への熱い想いや、目標金額に達しない場合には全額返金になってしまうことを支援者に伝えました。起案者側では、遠方に住んでいる方にもご支援いただけるように、遠方の方にも嬉しいリターンを用意しました。
結果、支援者47名、21万5千円で目標金額達成。支援者は、島根県出身者が58%、島根県在住者が50%でした。祭り当日は若い来場者も多く、祭り自体が若返ったと実感できる結果となりました。また、祭は同窓会のような雰囲気でもありました。 今後は、まだ進出していない地域で展開すること、どんな人でもクラウドファンディングができるような土壌を作ることを目指していきたいと思います。
FAAVO・田島実可子さん
信用組合がクラウドファンディングをする理由とは
古里:飛騨信用組合の古里です。金融機関の中で一番小規模なものが信用組合という業態で、営業エリアの制限があります。当組合では高山市、飛騨市、白川村が営業エリアとなっています。人口は減少傾向、高齢化も進んでいます。魅力的な資源もたくさんありますが、活かしきれていない状態です。
そんな中、当組合では日本で唯一、投資型、購入型、寄付型のクラウドファンディングメニューを取り揃えています。お客様の事業を支援するという考えのもとに、購入型のクラウドファンディングについては当組合が一定のコスト負担をし運営しています。そこまでするのは、地域の経済状況が悪くなり、マーケットがシュリンクしていく場合であっても、当組合はこの地域以外では営業を行うことができないからです。
飛騨信用組合・古里さん
地域金融機関として、地元のお客様に提供できる資金調達メニューの拡充を
古里:他の金融機関が購入型クラウドファウンディングに取組みにくいのは、さまざまなハードルがあるからです。当組合でも起案者が持ち逃げをした場合の信用リスク、社内での調整、プロジェクトマネジメント能力を持った人材の確保の3つのハードルがあり大変でした。
成功事例の一つとしては、ミュージックセキュリティーズ株式会社さん(投資型クラウドファウンディングを運営)とのものがあります。投資型は元本の返済があるため、プロジェクトに奇抜性がなくても大きなお金を集めることができます。そして、資金調達と同時にPR効果による売り上げ増加や、経営者のモチベーションUPにも貢献しました。
今後はクラウドファンディングに関わらず、まず地域金融機関として地元のお客様に提供できる資金調達メニューの拡充を図っていきたいと思っています。地方で新規事業者が資金調達を行うには、融資か補助金、助成金などの手段しかないため、資金調達の選択肢が増えることは新規事業者や起業者にとって、有益となるでしょう。
若者の心に火をつけるような体験を
毛受:高校生向けのインターンシップに対するファンドレイジングを行っている一般社団法人アスバシ教育基金の毛受です。現在、企業の若手の人材不足と若者たちの就職難が同時に生まれている。少子化で子どもが減っているにもかかわらず、貴重な若者資源の浪費で大きな損失です。
一人の若者が定職につけないことで、1年で約26万円、40年で社会は納税額で約1千万円損をするのです。ひとりの若者が成長し、きちんと仕事につくまでの教育整備が必要で、そのための資金は「投資」です。従来の教育のようにただ教えこむのではなく、心に火をつけるような体験を提供し、その後、自ら動き出し、目標に向かって挑戦していくような体験教育への投資が必要です。
一般社団法人アスバシ教育基金・毛受さん
思考錯誤の資金調達と地域拡大
毛受:1年目はクラウドファンディングも使って500万円、2年目は企業の協賛金もあり1,000万ほど集めました。3年目に680万、70名のインターンを500万円で行いました。そしてエリアを、大阪、東京へと広げていきました。 Challenge for Challengeという学生のチャレンジを全面にたて、寄付を集めるという取り組みも行いました。
最初はクラウドファンディングも使っていましたが、考えに共感した身近な方々からの直接寄付のほうが集まりやすいと気がついたため、途中からは会を開催し、その場で「現金寄付封筒」を配って対応しました。 その方法で1年目はうまく行きました。しかし2年目は大変でした。1年目は、危機感や新しさで押せましたが、個人の善意に頼っている方式では、継続的に大きな金額を集めることは難しかったのです。そこで企業協賛を一口6万円とし、一口が高校生一人分の支援になることをアピールしました。現在はこの方法で300万集めています。
現金寄付封筒
地域でお金を循環させる
毛受:「お金」というものは何回使っても、物理的に消えてなくなることはありません。お金は「消費」するものではなく、人から人へと手渡され、人の間で回るものです。私たちは、このお金が、地域のお金の回し手を育てるという教育に使われていく仕組みづくりが、今後、若者たちをひとり残らず、地域の担い手を育てていくために不可欠であると思います。
どんな社会的課題が解決できるのか伝えていくこと
渡辺:資金調達のプラットフォームごとに色が出てきているのだと思いました。そのために、使う側は何を選ぶのかが大切になってきています。
自分のやりたいことに共感性があることは大前提ですが、それを行うことでどんな社会的課題が解決できるのか、やりたいことのうわべだけを説明するのではなく、根底にあるものを説明することも大切です。資金調達のプラットフォームはすでに揃っているので、それをうまく活用していきましょう。本日はありがとうございました。
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