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#ワークスタイル

自分自身のあり方が波紋になって、世界が変わっていく。ネパール発オーガニックコスメブランドLalitpur(ラリトプール)代表・向田麻衣さん【中編】

2016.10.26 

「彼女の仕事のつくり方」シリーズは、ライフスタイルの変化に女性が自分を合わせるのでも流されるのでもなく、自分が心地よい・楽しいと思う働く状況を「つくる」ことができるのではないかという思いから生まれてきました。自分らしい生き方をつくっている女性たちの世界観に触れることが、みなさんの自分らしい生き方をつくるヒントになれば嬉しいです。

第2回目は、ネパール発オーガニックコスメブランドLalitpur(ラリトプール)代表の向田麻衣さん。前編では、向田さんがどのようなことを大切にしてLalitpurという事業を生み出したのか、そして向田さんにとっての「行動すること」についてうかがいました。後編では、世界の手触りを感じることについてうかがいました。

向田さん

Lalitpur代表・向田麻衣さん

観察して、直感を大事にして、五感を研ぎすます。

向田:自分で体を動かして、そこにいる動物や人間たちと同じ息を吸って、吐いてということは、ものすごい情報量です。だから、ネパールに行くことも想像していたのと実際行くのでは、全然違いました。

 

桐田:どのように違いましたか?

 

向田:着いた瞬間にタイムスリップするくらいに空気が変わるので、その時間の流れ方が自分の中に入ってきて、だんだん自分もペースが変わっていって。そこに生きる人たちとお喋りしながらプロダクトをつくるので、日本に持って帰ってきたときにその時間の流れを伝えるには、やっぱり自分がそこを体験していないとできなくて。 向田さん 桐田:たぶん、日常とは桁違いに五感を使われていますよね。

 

向田:使っていますね。すごく危険なこともいっぱいあるから。本当に研ぎすませていないと崖から落ちて死んじゃうとか、いろんなことがあるので、すごく観察するし、直感も本当に大事にしています。

 

桐田:「五感を大事にする」というフレーズを届けただけで、動ける人ようになる人は多くなるような気がします。普段、頭で考えたことだけで生活することに慣れてしまっているから、自分に手があるとか、足があるとか、鼻があるとか、直感や第六感があるということを忘れちゃうんですよね。

 

向田:そうですよね。東京にいるとそうだったと思います。道はまっすぐだから、スマホをみながら歩けますし。ネパールの道で同じように歩いたら、穴に落ちたり、ドブに落ちたり(笑)。道に危ない鉄の棒とか出ているから、絶対よそ見しながら歩けないです。日本にいると安心だし、安全だし、清潔だから、そういう意味ですごく鈍ってきちゃうかもしれないですね。

手触りを確かめたいかどうかが大事。自分にとって切実なことは何か。

桐田:向田さんは、手で触ったり、実感したりするということを大事にしてこられたように感じます。

 

向田:そうかもしれないですね。でも、香ったり、触ったり、口に入れてみたいなことは、子どものときはみんなやっていて。大人になると、変な人だと思われるからやらないけれど。 異文化に触れたときも、1度自分で全部飲み込んでみる、みたいな感覚があります。始めから拒絶しないで1回飲み込んでみて、食べ物とかも1回食べてみる。そこからまずいのか、美味しいのか、まずくも美味しくもないのか。いろんなことが分かるから。

 

桐田:そうすることで自分にとって切実な出逢いがあるかもしれないですしね。

 

向田:普段食べているネパールのご飯も、絞めたばかりの鶏が出てきて、それがぶつ切りなんですよ。小さい骨とかいっぱい入っていて、本当に気をつけて食べないとのどにささるんですけど、ネパールのチキンはすっごく美味しい。 さっきまで自由に駆け回っていた鶏ですから、おいしいにきまっていますよね。 そういうことも含めて体験して。それ自体が楽しい。

 

桐田:日本にいると、それこそ食べ物の味が均等であることに慣れてしまって、異質なものを体が過剰に怖がるという感じがしています。ある意味、体験も食べ物と繋がっていて、そういうのもあるかもしれないですよね。 向田さんのお話を聞いていたら、いろいろ行動したくなりました。なんだか無性に食べたいですし、ネパールに行きたいです(笑)。

 

向田:ぜひネパールで、食べてみて下さい! 対談の様子 やっぱり、手触りを確かめたいって思うかどうかはすごく大事ですよね。どうでもいいことだったらやっぱり行動できない。もしもそれが行動に移らないのであれば、自分にとってはそこまで大切じゃなかったり、切実じゃないことなんだとおもいます。 気づいたらやっていたことは何なのかを思い起こしたり、自分がこれまで何に一番お金を使ったかを考えたりすると、ヒントがあるかもしれないですよね。

 

桐田:そうですね。それに、誰にでもできますね。

 

向田:私の場合は、旅行なんです。高校生のときから、海外旅行のためだったらアルバイトもいくらでもやったし。だから旅行を仕事にしようって思っていました。今の仕事は私にとっては子どものときの理想に描いていた生活スタイルです。

 

桐田:そうなのですね! どういった生活を思い描いていたんですか?

 

向田:いろんな国で暮らして、いろんな人と話をして、いろんな国の言葉を少しでも覚えて、そうしていて、できれば役に立つ仕事。

 

桐田:ばっちりじゃないですか。

 

向田:そう。叶いました。でも、まだ役に立っていないから、これから頑張れば夢が叶うなって。

 

桐田:もっともっと、際限なく自由になりたいってご著書でも書かれていましたもんね。

 

向田:そうなったら、いいことが起きそうで。

 

桐田:そうですよね、本当に、抱えきれないくらいいっぱい起きちゃいそうです! 向田さん

自分を満たして、世界に開く

桐田:自由にありのままに生きるということと、エゴ。この違いは何だと思いますか?

 

向田:話している階層が違うんだと思うんです。自分のやりたいことを我慢して生きるというところから、自分も心を開いて、自分自身に自由を許すみたいなところが一つステップとしてあって。そうして、自分を世界に開くことができるようになる。そのステップの先にまた自分を使ってもらうというか、もっと広い意味で、今生きているこの世の中での自分の役割みたいなことに対して、意識を開くという段階がくる。同じ1本の線の上にあって、ステップとして存在するのかなという感じがしています。

私も自分のことをまず知りたいと感じますし、自分の好きなことをやっていった先に、次に誰かに還元したいとか、もしくは自分のより大きな役割って何だろうかという意識になります。 それは、もっとビジネスしようとか、別の仕事にチャレンジしようとかいうことではなくて、自分自身のあり方を変えていくということです。

 

桐田:まずは自分の「手触り」からですね。今日は、たくさんの気づきをありがとうございました!

>>後編に続きます。

Lalitpur代表/向田麻衣

高校在学中にネパールを訪問し、女性の識字教育を行うNGOに参加。大学在学中は社会学者 小熊英二氏の研究室にて社会学を学ぶ。2008年8月よりトルコにて6ヶ月間のフィールドワークを行った後、2009年にCoffret Project(コフレ・プロジェクト)の活動を開始。 現在までに約5000点の化粧品をネパール、トルコ、インドネシア、フィリピンに届け、延べ1500人の女性達に化粧ワークショップを通じて女性が本来持っている自信や尊厳を取り戻すきっかけ作りを行う。 2010年からは活動の拠点をネパールに絞り、2012年は職業訓練を実施。2013年5月にネパール発のナチュラル化粧品ブランドLalitpur(ラリトプール)をスタートし、ネパールの人身売買被害者の女性の雇用創出と自尊心の回復に取り組んでいる。 エイボン女性年度賞受賞 ソトコト ロハスデザイン賞 ヒト部門 大賞受賞 第4回ユースリーダー賞 受賞 等

聞き手/DRIVEメディア編集部/桐田理恵

NPO法人ETIC. DRIVE編集部。1986年生まれ、茨城県育ち。大学時代は文芸の研究をしつつルワンダ人とのコミュニケーションを楽しみ、2011年より医学書専門出版社にて企画・編集職に就く。精神医学や在宅医療、緩和医療の書籍づくりを経て、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。

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鈴木 まり子

1988年生まれ。大学卒業後、出版社で4年間編集の仕事に携わり、小学生向けの書籍づくりなどを担当。2016年春から、フリーランスとして編集・執筆・企画の仕事をはじめる。三重県尾鷲市と東京都渋谷区の2拠点居住中。

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