多くの方にとって「ファンドレイザー」という職業や「ファンドレイジング」という言葉は、聞きなれないものだと思います。
僕もNPOへの転職当初(2009年)はこの職業を全然知りませんでした。「資金調達担当者」だと知り、最初は「NPOに転職したのにまた営業か…」と思ったこともあります。
しかし、調べてみると、アメリカでは人気職業ランキングの上位にもランクインしており、欧米の非営利組織間ではヘッドハンティング競争の的になっている職業だということも分かりました。 あれから5年、僕はかものはしプロジェクトのファンドレイザーとして活動してきました。その間に、日本ファンドレイジング協会が設立され、認定ファンドレイザー資格制度が始まり、16名の「認定ファンドレイザー」と約300名の「准認定ファンドレイザー」が日本に誕生しました。
また、認定NPO制度の改定やクラウドファンディングの登場、社会的投資の広まりなど日本の寄付文化も急速に進化してきました。 そして、あまり知られていませんが、あしなが育英会の玉井義臣会長が、2012年10月に開催された第32回世界ファンドレイジング大会(International Fundraising Congress)で、The Global Fundraiser(世界募金活動家)大賞を受賞されました。日本人初の快挙です。
でも、それでも日本での「ファンドレイザー」の認知度はまだまだです・・・。 僕は「こんなにおもしろくて意義の感じられる仕事はそうそうない!」と思っています。まだまだ未熟ではありますが、僕なりに「ファンドレイザー」の魅力を皆さんにお伝えできればと思います。
1. ファンドレイザーはNPO経営者の右腕である
日本ファンドレイジング協会によると、
- 団体や活動の魅力の発信力を高めて、外部から経営資源を集めることができる人
- 組織や財源の強化を通じて、活動や組織を成長させることができる人
- 倫理を守って寄付市場全体を成長させることができる人
というのが「ファンドレイザー」の定義です。
つまり、「経営資源を集め、活動・組織を成長させ、日本のソーシャルセクター全体を活性化できる人」と僕は捉えています。
以前、過去のコラム、「今、あなたが必要です!NPO経営者の右腕"プロ番頭"の条件」でも書きましたが、日本のソーシャルセクターには、社会起業家やNPO経営者と同じくらい、その「想いをカタチにできる」人材が必要だと思っています。その最たるものの一つが「ファンドレイザー」ではないでしょうか?
「ファンドレイザー」は単なる「集金係」ではありません。というか、そうであってはならないと思っています。「資金調達担当者」と訳すからややこしいことになると思っているのですが、前述の定義にも「経営資源」と書かれているように、その組織の社会的使命を達成するのに必要なあらゆる「資源」を集め、解決すべき問題の壁に効果的効率的にぶつけるのが役割です。まさに「想いをカタチにできる」人材です。
2. ファンドレイザーになるには今がチャンスである
最近、ファンドレイザーの諸先輩方からのお話を伺ったり、自身の経験から、感じることがあります。それは、今後の日本社会においてファンドレイザーという職種が重要な存在となる可能性が高いということです。
ファンドレイザーが貢献できる場所がNPOだけでなく、国や地方行政・プロスポーツチーム・楽団・美術館・博物館・大学・病院などに広がり始めています。つまり広義の意味での非営利組織にまで広がっているのです。 その背景には、
- 税収の減少(今後の予測含む)によって財政的な自主自立を求められているから
- 様々な多様性に対応するには、従来の中央集権的な仕組みだけではなく、機動性のある組織も重要だから
- 国内市場の縮小傾向によってより戦略的・効果的・効率的なファンドレイジングノウハウが必要になってきたから
- 法律の改正などにより、これまでの財務状態では組織が継続できなくなるから
などがあるように思います。 これらの構造は今後の日本社会においても、基本的に変わらない傾向かと思います。ますます「ファンドレイザー」に期待される役割は大きくなるでしょう。
しかし、それらの「需要」に対して、あまりにも「供給」が少ないというのが現状です。だからこそ、「プロファンドレイザー」を目指すなら今がチャンスなのかもしれません。
3. ファンドレイザーはどこの組織でも求められている
ファンドレイジングはどの非営利組織にも少なからず必要な活動です。ということはそれを任せられる「ファンドレイザー」はどこにでも必要とされる存在となります。だから、少し検索するだけで、たくさんの団体が常に募集していることが分かります。
ソーシャルセクターで働くことを考えた時、「でも仕事としてずっと続けていけるのかな」という不安を持つ人は少なくありません。 確かに、どんなに高い専門性や技術を持っていたとしても、それが「その組織でしか活かせないスキル」だとしたら不安は残ります。
しかし、「ファンドレイジング」は「トランスファラブル・スキル(転移可能な知見)」である部分が多いので、非営利セクターに限らず、他の職場でも活かしやすいのではないでしょうか。
以上、簡単にではありますが、今回は「ファンドレイザー」の魅力を簡単にお伝えしました。一人でも多くの方がちょっとでも関心持って頂けたのであれば幸いです。 またファンドレイジング関連の勉強会やイベントでお会いできることを願っています!
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