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100年生きるから、若い世代に残せるものって何だろうと考えた。NPO法人グリーンズ・高橋奈保子さん(前編)

2017.10.23 883view 

仕事を“つくる”女性のライフストーリーを届ける連載、「彼女の仕事のつくり方」。5人目は、NPO法人グリーンズ/学校・事業部マネージャーの高橋奈保子さんです。

NPO法人グリーンズは、「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」をめざす非営利組織です。ほしい未来をつくる人々の姿・取り組みを届けるウェブマガジンgreenz.jpを通して、ご存知の方も多いかもしれません。でも実はメディアだけでなく、一歩を踏み出し、ともに学び、かたちをつくっていくための学びの場として、「グリーンズの学校」も主催しています。 そんな未来をつくる学びの場づくりを担っているのが、高橋さんです。自然体で人々と学びに向き合う姿には、次の世代へギフトを残したいというあたたかな願いが込められていました。

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「学びの場づくり」を軸に

桐田:本日はお時間いただき、本当にありがとうございます。まず高橋さんの普段のお仕事についてお聞かせいただけますか?

高橋さん(以下、高橋):NPO法人グリーンズで、仕事や暮らしのつくり方を学ぶ「グリーンズの学校」のマネージャーをしています。地域プロジェクトのつくり方など具体的なテーマも色々と扱っていますが、テーマを決めるもっと手前の段階で、漠然とテーマは見えているけれど動き方や一緒に動く仲間を探している人々が集う場所にもなっています。ここで同じ関心がある仲間たちと仲良くなり、講師の話を聞いて自分でできることを考えていくという、仕事づくりのスタートの一つのかたちになれているのかなと思っています。

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この「グリーンズの学校」の原型は、5年前に生まれました。当時「green school tokyo」というものがあって、前編集長の兼松佳宏や、プロデューサーの小野裕之が中心となってマイプロジェクトを考えるクラスを中心に運営していたんですね。ちょうどソーシャルデザインやマイプロジェクトという概念が生まれ始めた時代で、当時は大きなテーマだったんです。

ただ最近は、取材先もテーマ性がそれぞれ出てきて、読者の方の関心もより細分化してきていて。あれも気になるしこれも気になるという方もいれば、ピンポイントでゲストハウスが気になるという方もいらっしゃる状況です。そこで、合わせてクラスも細分化して、例えば具体的に地域で繰り広げられている状況を学んだり、やりたいことをやるためにどんなものが必要なのかを知ったり、そもそももう一度振り返って自分は何がしたいのか考えたりと、広く次の一歩をつくるお手伝いをするという気持ちでクラスをつくっています。

原宿にあるグリーンズオフィスにて

原宿にあるグリーンズオフィスにて

桐田:高橋さんはこれまでに何度か転職されているそうですが、現在のお仕事とこれまでのお仕事に共通点はあったりするのでしょうか?

高橋:実は、最近振り返って考えていたら、一貫している気がしていて(笑)。最初は、自分が卒業した武蔵野美術大学の研究室で助手をしていて、よい学びの場をつくるということをテーマに、学生の成績や一年間のクラスのスケジュール管理をしていたんです。そういった事務的な仕事と、学生の相談にのる仕事が日々の中心でした。その助手の任期が終了したあとは、色々な行政にありますけど、ある地域のボランティアセンターに転職して、ボランティア活動の支援を始めて。具体的には、ボランティア団体を立ち上げるのにどんなことが必要で、人を集めるのにどんなことが必要かという講座を開いたりしていました。その後、グリーンズに転職しています。 学校か地域かとか、年齢や何をテーマにしている人かとかが変わるだけで、学びの場づくりということは変わっていないんですよね。それ以外、あまりやりたいことがないんです。

長生きするはずの生命線だから、若い世代に残せるものって何だろうと考えた

桐田:最初から、はっきりと「学びの場づくり」がしたいと自覚されていたのですか? それとも、何となく見えてきたという感覚でしたか?

高橋:美大生だったとき、順当にいけば広告をつくったり書籍のデザインをしたり、何かしらのデザインをする仕事についたと思うんです。けれど、あまりそこでの競争に興味が持てなくて。

桐田:競争、ですか。

高橋:はい。苦手なんですよね、とにかく。負けず嫌いなはずなんですけど。

桐田:そうなんですか?

高橋:たぶん。そこも自信が持てないですが(笑)。

桐田:あはは(笑)。別にそこのテーマでは競いたくないと思われていたとか?

高橋:そうそう。あまり自分が何かしらのデザイン分野で上手くなる予感がしなくて、できる人がいるならその人がやればいいと思ったんですね。あとは、それよりも面白いものを見つけちゃったというか。

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大学に入学した当初は、広告をつくりたいなと思っていて。駅のホームにどんと貼ってあるような綺麗な広告をつくって、「ああ、綺麗だな。今日も頑張ろう」と思ってもらえればいいなと思っていたんですけど、そんな綺麗なものを私は好きだけれど自分ではつくれないなということにやりながら気づいて。一方で書籍の文字組みは好きだったけれど、それにもそこまでマニアックになれない自分がいて……。

これも違うな、あれも違うなと思って、一つだけ残ったのが学級委員的なことだったんです。ワークショップをやるときに、進行したり皆に声をかけたり、誰もやらないのでやっていたら、それが意外に楽しめた。やっていて、そんなに苦じゃなかったんです。それで選んでいった感じですね。

「人が好きなものを好きであり続けられる環境」をつくりたい

桐田:それは、意外に楽しめるなと思いつつ、ゆっくりその道へ進んでいったのでしょうか。それとも、「わたしにはこれだ!」と思えた、具体的な瞬間があったのでしょうか?

高橋:そうですね、大学のある地域で、おじいちゃんおばあちゃんと一緒にワークショップをするようになったことは大きなきっかけとしてあります。環境保全の地図をつくるというプロジェクトが地域の中であって、絵を描ける人は誰かいないの? ということで所属していた研究室の先生に相談がいき、学生だったわたしがそのプロジェクトに参加することになったんですね。それで絵を描いたんですけど、むしろわたしはそこに集う人たちに惹きつけられてしまって。

だって、昼は皆別の仕事をしていて、夜に公民館に集まって、あーだこーだ打ち合わせをしているんですよ。そして、皆それぞれ関心があることに対する“オタク度”がすごかった。町内の橋と鳥の名前を全部言えたりするんです。好きじゃなければ、そんなことできませんよね。そしてなぜか、そういった好きなことで人が楽しそうにしている瞬間を見ることに、すごく喜びを感じてしまって。その瞬間をつくれたら、私のつくりたいことつくれるなって。真正面からデザインをつくることよりも、そっちの方にピンときたんです。

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桐田:例えば広告などの目に見える成果物というよりは、瞬間をつくるという感じですか?

高橋:そうですね。例えば写真の方が近いかもしれない。写真はプロセスの一瞬というか、連続する中の一つという感じがします。

わたし、手相の生命線がすごく長くて、100歳くらいまで生きると思っているんです(笑)。だからこれから60年くらいは生きるだろうと仮定して、自分が何をつくっていけるのか、若い人たちに何を残していけるのかって、ずっと気になっていて。そうして、この世に残していける唯一のものって何なのだろうと考えてみたら、「文化」なんじゃないかと。

じゃあ文化をつくるのは何かというと、人が「何かを知りたい」とか、「何かを考えていきたい」と思って学ぶ瞬間だと思うんです。そこから、人が学び考える時間・空間を絶やしたくないという気持ちが生まれました。きっと、あの公民館でも、「人が好きなものを好きであり続けられる環境」をつくりたいと感じたのだと思います。

「何だか分からないな」と思うことに関われる心

桐田:文化って何なのでしょう?

高橋:“何だか分からないな”って思うことに関われる心を、文化度が高いと思っています。答えが用意されていたり、考えなくても物事が進むんだったら、私たちに脳はいらないじゃないですか。より良くすることを目的に人間の社会が作られているのではないかなと思っていて、じゃあより良くなるために何が必要で何がいらなくなるかと皆で考えたとき、「これはよく分からないな」というものが出てきたとして、それをちゃんと議論したりできるかどうかって、すごく文化水準の高さに関わる気がしています。

そして、それができない場面も増えてきているのかな……とも感じていて。肌感覚でしかないのですが、ちょっと怖いなというか。0か100かみたいな判断だけになってしまって、間がなくなるというのは、その分そこに生きられる人がいなくなっちゃうということだと思うので。そして、グリーンズの周りにいる人たちはその間の人たちが多いと思うので。

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でも、特にこういう場を作っていると、自分ができる側のように思ってしまうこともあるんですけど、全然そんなことないよって常に自分に言い聞かせています。分からないことを流しちゃっても生きてはいけるんですけど、本当に大事なことなら素直に向き合ったほうがいいよなと思っていますね。

桐田:学び続けられる場が育つということが、文化が育つということだと思っていらっしゃるのですね。

高橋:そうですね。それは仕事の中だったり暮らしの中だったり、どちらでも可能なことで、「分からない」を言えるか言えないか、言える場所かどうかというのでまったく変わってくると思います。

そのあり方や、具体的な時間のつかみ方を学ぶ中で体感として覚えてもらえたら、けっこう人生で使っていけるんじゃないかなと勝手に期待しているのですけれど。そういう意味で、文化を育てていっているのかな、とも思います。

桐田:決められた文化を伝えていくのではなくて、個人が学び続けていくことを文化と呼ぶのだよと。

高橋:はい。態度って、けっこう伝播しますよね。一人ひとりの存在って大きいんですよ。自分が思っているよりも。そこを肯定し続けたいなって思います。私も自分のことをあまり高く見れない、下げがちに見ちゃうんですけれど、そんなことないって。他の人もそう思います。

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有名無名関係なく、人間一人ひとりがすごく面白い

桐田:そして高橋さんが向き合いたいのは、“教育”ではなく“学び”なんですね。すごく自律的な印象があります。

高橋:そうなんです。誰でも何かの専門家であるし、だからこそ声に出すことで共感って広がるし、有名無名関係なく人間一人ひとりがすごく面白いなって思っていて。

桐田:その、有名無名関係なくという心持ちが、誰にとってもすごく大切なことのように感じます。わたし自身もそうですが、「わたしが言ってもどうせ…」と思ってしまうときはあるかもしれなくて、でも信じて発言することで生まれた共感が、きっと色んな人やことを素晴らしい方向へ導いてくれるのかもしれないと思ったりもします。

高橋:グリーンズの学校に来てくださっていた方で、勤めていた大きな会社を辞められて、自分の地元で親子で自然を感じることができるプロジェクトを始められるという方がいらっしゃったんですね。彼は自分のSNS上でそのことを報告するとき、すごく勇気がいったって教えてくれました。皆にどう思われるんだろうと怖くて、マイナスの反応ばかり想定していたと言っていて。でも蓋を開けてみたら、会社の人含め、今まで繋がりはあったけれど声をかけ合っていなかった人たちからも、「すごく共感する、何か手伝えることはないか」などの声をもらったそうです。

自分の声を発するって、社会や周りの人を信頼するという意思表示だなと感じるんです。すごく緊張するし怖いんだけれども、言ってみると思っていた以上に皆受け入れてくれるというか、社会には本来そういった土壌があるんじゃないかなって思う。言うことで生まれる希望や、登れる次の階段があると思うんです。だからこそ、グリーンズの学校でも、どうしてやろうと思ったのかという自分の想いは、ゆっくり時間をとって話してもらったりしています。

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次の一歩は、他者・他所から学んだ要素を自分の日々に入れてアレンジすることから生まれる

桐田:発言を受け入れる土壌の話ですが、土壌が育っているとかまだまだの場所とか、差はあるんだろうなと思っています。グリーンズさんは、良い土壌が育っていそうですね。

高橋:土壌もあったし、加えてグリーンズの学校みたいにプログラム化されている場所だと話しやすいという感じでしょうね。正直、ここで訓練してもらえればいいかなって思っているんです。学び場って、やっぱり多少現実逃避的なものでもあるんですけど、伝えることへの姿勢や考え方のクセは最初の学びの場で身につくものだと思っていて。それが何より大事なことだと思うんです。

桐田:考え方のクセというと、マイナススパイラルに陥りやすい考え方だとか、プラススパイラルにしていける考え方だとかのことでしょうか。

高橋:そうそう。なるべくプラスに捉えるクセであるとか、立ち止まっているときにはなぜ自分が立ち止まっているのかを俯瞰して考えるクセとかのことですね。日々淡々と仕事をこなしていると、その仕事のルーティーンにいつもの自分の思考回路が染み付きすぎていて、違う視点から考えることができずに泥沼みたいになるものなんですよね。そうなったときに、普段自分がいない場所で取り入れた考え方・ものの見方とか、これはいいなと思ったものをそこに入れて、次の一歩を踏み出していけるかというのがすごく大事なことだと思うんです。

>>「あなたが好きならそれは正しい。NPO法人グリーンズ・高橋奈保子さん(後編)」はこちらから。

この記事を書いたユーザー

ライター・桐田理恵

ライター・桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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