未来の学校の形とは、どのようなものでしょうか?
ETIC.が進める大学生・大学院生・高専生向けの私塾「MAKERS UNIVERSITY」は、未来の起業家・イノベーターのための学校として、2016年に開校しました。"教える"・"教わる"から、関わる全ての人が"共に挑み、共に学ぶ"学校へ。多様な挑戦者が集い、"学び合い"を超えて、イノベーションが生まれる"ラボラトリー"へ。未来の学校のあるべき姿を追求しています。
現在、MAKERS UNIVERSITYでは第三期の塾生を募集中!10年後の世界の主役になる未来のイノベーター達が集い、未来を描くために、共に挑み共に学ぶ、挑戦者のための学校に、あなたも参加してみませんか?
そんなMAKERS UNIVERSITYの2期生として参加し、ロボット研究開発チーム「Roman Technology」(以降、「ロマンテクノロジー」)として活動をはじめた渡辺凌央さんと沖野昇平さんにお話をうかがいました!現在「ロマンテクノロジー」のチームは、会社名を「株式会社Algoroman」(アルゴロマン)として2017年12月に登記をしています。
この対談は、渋谷のコミュニティラジオである渋谷のラジオで毎月1回、DRIVE編集部がホストになって放送している「渋谷若者部」という番組で行われました。原稿には収まりきらないおもしろい話もたくさん!
つくりたいのは、人間とロボットが共存する未来。
ーお二人は、MAKERS UNIVERSITYをきっかけに「ロマンテクノロジー」というチームを作られたと聞いています。どんな活動なのかお話を伺えますか?
沖野:僕たちは、人間とロボットの共存を目指してパートナーロボットを作っています。"ロボットと人間が一緒に存在している状態"を共存と呼ぶのではなくて、一緒にいることでそれぞれが「らしく」いられる存在がパートナーというものだと思っています。たとえば、家族のためにロボットを作ったとして、そのロボットが家族の一員に置き換わるのではなく、家族らしさを守るロボットを作っています。
ー当初のチーム名の「ロマンテクノロジー」という名前も素敵ですね。
渡辺:「ロマン」には意味が二つあって、一つは「ロボット」と「ヒューマン」の掛け合わせなんです。もう一つは、ロボット漫画の「ロ」と「マン」。漫画の世界を作りたいんです。
ーなるほど!その「ロ」と「マン」だったんですね。「株式会社Algoroman」の方はどのような由来なのでしょうか?
2017年12月に登記した「株式会社Algoroman」の名前は、RomanTechnologyとAlgorithmの組み合わせです。"Algorithmには、情が入るのか。コードには情が入るのか。情、つまりRomanは入るのか。Romanが入るコードとはなんだろう。アルゴリズムは何かを解決するために必ずある。解決するプロセスにRomanがあってはいけないのだろうか。より面白く、よりあったかく、よりRomanある社会にするためには、表面だけでなく内面からワクワクできるようなRomanがある解決方法があってもいいんじゃないか。"そう考えて、Algorithm x Roman → Algoroman という名前をつけました。
ー株式会社Algoromanの活動を通して、どんな世界をつくっていきたいですか?
渡辺:たとえば「ベイマックス」や「ドラえもん」、「鉄腕アトム」。その中では、人間とロボットがいい会話をしているのに、今のロボットはそうじゃないなって。
ー現在も、自分たちの身の回りにいろいろなロボットが存在していますが、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」と人間との関係との違いはどんなことだと思いますか?
渡辺:今のロボットと、ドラえもんやベイマックスなどのロボットとの決定的な違いの一つに「信頼」があります。人間は信頼がある上で、物を特別扱いし始める傾向があるなーと。これは多くのロボットと人間の関係を見てきた中で気づきました。ロボットを信頼し、もはや愛しているかのような知人がいますが、逆に全くロボットを信頼せず、話す価値がないとおっしゃる人もいます。ロボット漫画の世界は、完成されたパズルだと思っていて、だから期待値も高いです。僕はそのパズルの1ピースを一つ一つ埋めていきたいと思っています。その1ピースとして信頼関係があると思いますね。
ロボットに興味をもつようになったきっかけ。
ー渡辺くんは、子どもの頃からロボットが好きだったんですか?
渡辺:はい、僕はロボットが大好きで、20歳になったときにドラえもんが出てきたら買おうと思っていたんです。ですが、誰も作らないので、自分で作ろうと思ったんです。
ーそうなんですね。ものづくりは昔から好きだったんですか?
渡辺:はい。子どものときから、ずっとレゴブロックやプラレールで遊んでいました。高校生の授業がきっかけで、組み立てからプログラミングまで行って初めて四足歩行ロボットを作りました。今構想しているような"パートナーロボット"では全くないのですが。理論も何もわからないまま、ロボットを歩かせたり、できるはずもないバク転をさせようと無我夢中だった記憶があります。今では無理をさせたロボットに申し訳ない気持ちでいっぱいですが(笑)。
ーロボットを初めて作ったときはどうでしたか?
渡辺:特にプログラミングを書くのが面白かったです。レゴやプラレールも同じなんですが、自分が想定している通りに動いているところが、すごく好きでした。
ーそういうところが気持ちいい、ということですね。
渡辺:最高です!
ー一方、沖野くんは、文系だと聞いています。どうしてロボット制作に関わることになったんでしょうか?
沖野:専門は心理学です。特に、心のケアを学んでいます。 今はロボットやスマートフォンなどのテクノロジーが普及していますが、いいところだけではなく、人間らしさを失うリスクももっていると思っています。テクノロジーと人間の関係がよりパートナーシップに近いものになれば、人間がより人間らしくなり、同時にテクノロジーもよりテクノロジーらしくなれると思うんです。そこで、渡辺くんと出会って、二人でロボットと人間の新しい関係をつくっていこうとしています。
ーそういう風に考えるようになったきっかけはどんなことだったのでしょうか?
沖野:僕の原点は、東日本大震災です。2012年から毎月1回ボランティアに通っています。復興に向かう大変な状況だからこそ出てくる"人間らしさ"を感じました。もちろん経済発展や技術開発は大切です。しかし、その中心には人間らしさが必要だと感じています。それは、テクノロジーで失われやすいものであると同時に、テクノロジーが守っていけるものでもあると思います。今は、その人間らしさを守れるテクノロジーを自分たちでつくりたいと考えています。
ーテクノロジーにはもともと関心があったんですか?
沖野:ひらめきですね。人間とテクノロジーとの関係性についての課題意識は、突然降りてきた感覚があります(笑)。
ーそうなんですね、突然(笑)。どんなシチュエーションで降りてきたかは覚えていますか?
沖野:電車の中で、降りてきました。目の前にスマートフォンを使っている親子がいたんですが、親と子の間にスマートフォンが入ることで、本来あるはずの親子のつながりがなくなってしまうように感じました。親がスマートフォンに夢中になりすぎたり、忙しいときに子どもにスマートフォンを与えたり、テクノロジーが子どもに良くない影響を生む可能性もあるなと思いました。
ーそういうシーンは、よくありますよね。
沖野:悪いことではないんですが、もしスマートフォンが人間と人間を繋いでくれるようなデザインになっていれば、むしろ親子の関係をより幸せなものにできるかもしれません。人間の関係性をより豊かにするようなテクノロジーの形を実現させたいです。
ーなるほど!ただスマートフォンを子どもに与えて終わりではなく、関係性をより良いものにしてくれるスマートフォンの形があれば、とてもいいですね。
沖野:人間らしさを邪魔するのではなく、むしろ人間らしさを守ってくれる存在ですね。
「あれ」が「あいつ」になる瞬間。
ーお二人は実験的にロボットと暮していると聞きました。どんな感じなのか興味がありますね。ロボットに感情移入しちゃうこともあります?
渡辺:僕はありますね。作ったロボットの一つにてるてる坊主型ロボットがあるんです。このロボットは正直できることは少ないのですが、明日雨が降るか、晴れるかを教えてくれます。ただ、それを言葉を喋る能力はなく、動作で伝えてくれます。上を向くか、下を向くかなんです。それくらい機能を削っています。
ーてるてる坊主くんの名前はあるんですか?
渡辺:「TellTell坊主」です。そいつが机の上にいて、動きで明日の天気を教えてくれるんです。「ツバメが低く飛ぶと雨」ということわざがありますが、実際に天気が当たるのはそれくらいの確率です。「想起はできるけど、絶対ではない」くらいのギリギリをあえて狙っています。しかもたまにイジワルをするので逆転するときもあるので、たまに外出先で雨でビジョ濡れになることもあります。(笑)
ツバメが低く飛んだら「絶対に」雨ではないですよね、面白いのはここからで、人間は次の日それを理由に傘を持って外へ行き、たとえ快晴であったとしても別にツバメに怒ったりはしないです。少し技術的な話をすると、WebAPIを叩けば、今では簡単に明日の天気がわかります。でもうちのロボットは気分で嘘をついてきます(笑)本当は明日の天気を知っているのにも関わらずたまに嘘つくんですよね。スマホが嘘ついたら人間怒るじゃないですか、でも不思議なことにロボットが嘘ついていても怒らないんですよね(笑)たまに、外出先で雨でビジョ濡れになることもあります。
ーしかも「降水確率何パーセント」と表示するのではなくて、「上を向くか・下を向くか」というデザインにしているんですね。
渡辺:そこに愛着が出てくるんです。忙しくても、机の上にいると、ちらっと目に入ってくるんです。あいつ、何やっているんだろうって見てみると、下を向いている。そうすると、"明日は雨だな"って想像しています。
ー「あいつ」って、感じになるんですね。
渡辺:僕の中では、「あいつ」なんです。名前を忘れ始める。ただのモノとしての呼び名である「あれ」が、愛着を持ちはじめて「あいつ」になる瞬間がおもしろい。
ー沖野くんは、ロボットへの愛着についてどう思いますか?
沖野:僕は、人間がロボットへの愛着を持つには、まずロボットが人間のタスクを処理するかが必要であると思っています。以前二人で、人の動きに反応して「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と挨拶してくれる玄関ロボットをつくりました。知人宅にロボットを1週間泊まらせてみたのですが、ロボットがいくら挨拶をしても、大人はただ苦笑いをするだけで、ロボットに挨拶を返すことはしませんでした。
ー人による部分もあるんじゃないかな。僕はきっと挨拶しますよ。
沖野:そうですね。でも、たいていの大人にとっては、ただ挨拶しかできないロボットはパートナーにはなり得ないんじゃないかと思ったのです。人に挨拶したり、おしゃべりしたりすることは一見無駄なこととも思えますが、相手との関係をつくるきっかけになります。誰かとの関係性をつくっておくことで、たとえば仕事が一緒にできたり、古代ならマンモスを一緒に狩ったり、何かのタスクを一緒に処理することができます。でも、この時に制作したロボットは挨拶ができるだけで、家事ができるわけでも一緒に何かタスクを処理できるわけでもありません。パートナーになるには、愛着や存在感と同時に、人の役に立つということも両立させる必要があるのではないかと気がつきました。
肩に乗せるロボットを開発。まわりの反応は…?
ー他にはどんなロボットを開発したんですか?
渡辺:初代のロボットは、肩に乗せるロボットでした。肩に乗っていたら絶対おもしろいと思って、ゴールデンウィークのまっただ中に、世田谷の公園にロボットを持って行ったんです。そしたら、周りの人がガン引きで、警察に通報されるんじゃないかってくらい…(笑)。時代が10年早かったなと思いました、
ーそうだったんですね。肩に乗る以外の機能はあるんですか?
渡辺:どういうところに行ったか、ライフログをとれます。あとは、コミュニケーションが多少とれます。おもしろいものを見たら、"オフィ"って鳴き、人間がロボットの方を向くと、ロボットもこっちを向いてくれて、すごくかわいいんです。
ーそれでも、周りの人たちの反応はだめでしたか?
渡辺:ダメでした。つけている本人たちは、ロボットが体にすごくフィットして安心感があるんですが周りから見ると「何か乗ってる。ちょっとやばいな。」」と感じるみたいで・・
ーではそのロボットのアイデアはお蔵入りですか?
渡辺:はい、でもきっと10年後はみんなの家にいますよ!
実験と失敗を繰り返して、チームは強くなる。
ー二人はMAKERS UNIVERSITYで初めて会ったんですよね。最初から、お互いのことは知っていたんですか?
沖野:渡辺はMAKERS UNIVERSITYのはじめのプレゼンテーションで、ロボットが好きということと、人間に合わせられるロボットを作りたいと話していました。人間だけでなく、環境などのその場の全ての情報をプロファイルできるようなロボットを作りたいと言っていたことが印象に残っています。
ー渡辺くんの話を聞いていて、どう思いました?
沖野:渡辺は人に寄り添うロボットを作ろうとしていましたが、僕は、ロボットとともに生きられる人間をつくろうとしていました。僕は、ロボットには「人を傷つけてはいけない」「人の命令に従わなくてはいけない」というルールがあるのに、なんで人間はロボットに対してルールをもっていないんだろうという疑問を持っていました。
渡辺:僕はロボットが頑張ればいいと思っていたんです。でも、沖野は人間が頑張ればいいと考えていました。まったく違う考え方で、僕はそう考えたことがありませんでした。
ー初めは少し違う感覚を持っていたように思ったのですね。そうした違いを知って、どう思いました?
沖野:対極なようで、二人のコアにある世界観は近いなと思いました。僕と渡辺が共通していたのは、人間が人間として、ロボットはロボットとして幸せに、という世界観です。ロボットは人間に寄り添えるし、人間はロボットに配慮することができるはずです。スタート地点は違っていても、実現したい世界は重なっていました。
ーなるほど、いいですね。それで、一緒にやろうということになったんですね。
沖野:そうですね。僕らのやり方のベースには実験があります。実験によって、理想を理想で終わらせずに、現実にぶつかります。現実に向かい合って、挑んでいくことを繰り返していくことで、チームが強くなっていきます。
ロマンテクノロジーが目指す未来。
ー実験と失敗を繰り返して、ロマンテクノロジーも強くなっているんですね。これからの目標はどんなことですか?
渡辺:一般的にロボットは「こういうことをしてほしい」という期待する役割が固定されることが多いと思います。すでにゴール、達成してほしい目的があるんです。僕はそれを裏切りたい。僕たちはロボットを作っているようで、実は新しい無機質なものを作っているんだろうなって考える時があります。無機質な中に新しい生命的なものを作りたいと思っています。2025年にくらいには、それを子どもが一人1台くらい持っていたらいいなと。
ーいいですね。子どもは先入観がないですからね。
渡辺:子どもが持つと、それを持った子どもは、そのまま大人になります。100年後はみんなが持っていることになります。
沖野:これから既存の価値観が通用しなくなるときに、新しい価値観をつくっていくのは子どもたちです。その子が自分らしくいられるような価値観を生めば、それが新しい価値観になる。そのベースをつくりたいと思っています。
ー二人は本当に楽しそうに活動していますが、子どもたちはどうしたらお二人みたいになれますか?
渡辺:僕は好きなことをずっとやって死にたい。子どものときからそう思っていました。 沖野:師匠の存在は、すごく大切だなと思います。大切なことを教えてもらい受け継ぎつつ、反抗したときに新しいものが生まれると思います。
MAKERS UNIVERSITYという場の力。
ーMAKERS UNIVERSITYも、先輩や師匠的な関係もありますよね。
沖野:ゼミという制度があって、先輩起業家のもとに何人か集まって対話します。報告してボロクソに言われたときの悔しさたるや・・・。次回は見てろよって。
ー参加者同士も、分野は違っても、仲が良さそうですもんね。
渡辺:みんな何かつくりたい、変えたい。新しい価値観をつくりたいというベースが一緒だからかなと思います。
沖野:共通点は、今の現実を変えたいと思っているところ。そのエネルギーを感じます。内容ではなく、エネルギー量です。 <株式会社Algoromanの詳細・お問い合わせはこちらから>
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