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石巻市とコンソーシアムハグクミが取り組む、石巻版ローカルベンチャーの可能性 鼎談:亀山紘(石巻市長)×松村豪太(ISHINOMAKI2.0)×宮城治男(ETIC.)

2018.02.21 596view 

地方発のベンチャー「ローカルベンチャー」の発掘・育成を推進する北海道から九州までの全国10市町村により2016年9月に発足した「ローカルベンチャー推進協議会」。2011年3月11日の東日本大震災により、死者・行方不明者ともに最大の被害を受けた宮城県石巻市も、協議会の参加自治体のひとつだ。「ローカルベンチャー推進協議会」は、自治体の首長のコミットメントに加え、各自治体が独自のローカルベンチャー推進プログラムを立案し、地域の民間パートナーと協働で実施していくことが参加要件である。石巻市の民間パートナーは、一般社団法人ISHINOMAKI2.0、合同会社巻組、一般社団法人イトナブ、一般社団法人石巻観光協会の4団体による「コンソーシアム ハグクミ」が担っている。

東日本大震災から間もなく7年、ローカルベンチャー推進事業開始から1年半、現在の石巻とは。どのような視点で、ローカルベンチャーの発掘・育成を行っているのか。石巻市長の亀山紘さん、コンソーシアムハグクミを代表してISHINOMAKI2.0代表理事の松村豪太さん、ローカルベンチャー推進協議会事務局を務めるNPO法人ETIC.代表理事の宮城治男が、語り合いました。

地方だからこそ面白い事ができる

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松村豪太(コンソーシアム ハグクミ/一般社団法人ISHINOMAKI2.0代表理事、以下松村):本日はどうぞよろしくお願いいたします。石巻市も参加しているローカルベンチャー推進協議会、全国10自治体で2016年度に発足して、1年半が経過しましたね。

亀山紘(石巻市長、以下亀山):はい。地方ではこれまで、仕事は「儲かる/儲からない」という尺度で決めるところが強く、仕事の意義は重要視されませんでした。そういった中で、中心市街地は東日本大震災の前から商店街が年々衰退していたんですね。そこに震災後、たくさんの若い人が入ってきて、新しい風を吹かせてくれました。さまざまな縁でローカルベンチャーを立ち上げ、今では数十団体以上が活躍をしておられますので、我々もやはり仕事というものの価値観や、あるいはビジネスを起こすことの考え方の尺度を変えていかないといけないと思っています。

多くの飲食店が開業し、うち3店舗が新店舗を借りて巣立っていった復興商店街「橋通りCOMMON」。2017年11月に閉場し、新たなコンセプトでの再開準備中。

多くの飲食店が開業し、うち3店舗が新店舗を借りて巣立っていった仮設商業施設「橋通りCOMMON」。株式会社街づくりまんぼうが運営。2017年11月に閉場し、新たなコンセプトでの再開準備中。

宮城治男(NPO法人ETIC.代表理事、以下宮城):ローカルベンチャーというのは一つのスローガンでもあり、コンセプトです。地域資源を活用して地域発の新しい事業を作り、その事業が成長し、雇用創出にも繋がっていくということだと捉えています。今まで、地方を、新しく事業を立ち上げる場だと意識する人は多くありませんでした。地方というと、都会の生活に疲れた人や、家を継がなければならない人が仕方なく帰る場だとか。また地方での仕事も、選択肢が限られていると思われてきました。しかし、これからはむしろ、「地方だからこそ」面白いことができたり、応援してくれる人たちがいるから、「積極的に地方を選ぶ」という発想の転換ができるのではないかと思っています。

外から見れば、街の弱みも強みに見える

亀山:「天地人」という言葉がありますが、石巻でいえば、「天」は自然豊かな地域、「地」は地元の資源、「人」は人材。この3つを活かしていくということ。日本三大漁場でもある石巻は、水産加工のまちではありますが、まだ活かしきれていない部分を活かし、次世代につながる人材育成をしていきたいと思っています。

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宮城:ローカルベンチャーは、若い世代が自分のやりたいことで新規創業するだけでなく、地元の中小企業の変革、いわば第二創業も大事だと考えています。今までの産業構造ではなかなか未来が見えない所に、新しい価値観で商品やサービスを開発して、直接消費者へ届けてゆくようなスタイルです。

石巻の中心市街地は、古き良き街並みや地域の方々の絆が残っています。実はそこが石巻のローカルベンチャーの土壌になっているのではないかと思います。ハーバード大学ビジネススクール(*1)の学生さんが、石巻を6年連続で訪れていますが、スクールの中で最大の人気で最長のプログラムだそうです。自覚できていなかった石巻の価値や、弱みだと思っていたところを、外の人が発見したのですね。

歩いて楽しめるローカルベンチャーのまちづくり

亀山:石巻の弱みという点では、「集積していない」ところもあるのかもしれません。例えば、「寿司の街・石巻」とは言いますが、街なかに分散しているお寿司屋さんをマッピングできていない。そんななかで、石巻に若い方々がボランティアなどをきっかけに入りローカルベンチャーを立ち上げていることは、街なかの賑わいをある程度集中するという役割に繋がっていると思います。

宮城:「集積」というのはつまり、街の魅力が分かりやすく伝わることですね。例えば、お寿司屋さん一つ一つの個性が発信されれば、足を運びたくなる魅力的な街になるかもしれません。また、歩いて楽しめる街の地図をつくると、すき間が見えてきます。「ここには店がない」とか、「元気のないこのあたりに、ちょっとテコ入れしたら流行るんじゃないか」とか。それを改善する資金や空き家・空き店舗の提供を市がサポートして、ローカルベンチャーの活躍の場をつくると面白そうです。

2005年にハリケーン・カトリーナで被害を受けたアメリカのニューオリンズでも、空き店舗や空き地を役所が管理し、新しい担い手のチャレンジの場として提供した政策が上手くいきました。

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亀山:それはいいですね。歩いてもらう工夫。歩いて魅力を感じられるまちづくりは、いい。街づくりのコンセプトをしっかりと市民に伝え、「そのためにここに店が欲しいんだ」と呼びかけて、ローカルベンチャーに入っていただくのは、とても面白い考えですね。私は街づくりについては3つのキーワードを掲げています。クリエイティブとコミュニティ、そしてコンパクト。できるだけ歩いて暮らせる、歩いてもらえるようなまちづくりを、ぜひ進めていきたいと思っています。

新しい尺度をもった「なぞベン」が石巻を変える

松村:ローカルベンチャーは、まちづくりにも活かされるというところも鍵だと思っています。自分の会社だけが儲かればいいというのではなく、街全体が幸せになるという考え方も、ローカルベンチャーの要素ですね。とはいえ、持続可能であるためにはどうしたら良いと考えますか?

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宮城:20世紀の資本主義の時代、効率化が重視され、結果的にまちが面白くなくなっていったという経緯がありました。稼げることは望ましいですが、一方で、石巻では「なぞベン」(*2)と呼べるような、全く違う尺度で街を楽しむ若者たちが出てきていますね。彼らは、どうやって稼いでいるかという点では「なぞ」ですが、楽しそうに生きているベンチャーです。シェアハウスなどに住み、本業はアートだったり、農作業や水産のお手伝いをしたり、夜はバーで働いたりしています。その生き方に憧れて、若者が都会からやってくるという循環さえ起きています。従来の資本主義的な価値からすれば不可解な動機や背景で生きているんですね。私からすると、アーティストの小林武史さんも、ある意味で従来とは価値の尺度が異なっています。リボーンアート・フェスティバルを石巻で開催したのも、単に被災地の中で中心的な場所であるという理由だけではなく、石巻の哲学や生き様みたいなところに惹かれたのではないかと思います。

Reborn-Art Festivalで牡鹿半島に設置された名和晃平さんの作品「White Deer(Oshika)」

Reborn-Art Festivalで牡鹿半島に設置された名和晃平さんの作品「White Deer(Oshika)」

松村:小林さんは「風情」という言葉をよく使うんですよね。豪華できれいとか、便利だとか、単純な経済合理性を越えた価値をリボーンアートでは大事にしているのだと思います。また、このフェスティバルでは街なかから半島部まで広範囲にアート作品を配置しました。マップをみながら作品や拠点を巡ることでアート以外の街の魅力にもアクセスできる。さきほど市長のおっしゃったマッピングというのは、点在する拠点や素敵な人をつなげ、有機的に街の姿を浮かび上がらせる大事なキーワードだと思います。

亀山:生き甲斐を持ち、「儲かる/儲からない」の尺度を越えたところで仕事をするということは分かります。私も若い頃から化学に没頭していて、寝ることも食べることも忘れて入れ込んでおりました。ただ、行政としてはやっぱり心配をしてしまうんです(笑)。食べていけなくなるのではないのかと。好きなことに対して没頭しながらも、食べていける生業も立てることも、やはり重要視しなければいけませんね。ボランティア活動支援なども含め、検討委員会をつくって議論をしていきたいと思います。

尺度の違う石巻の風土がブランドとして価値を上げる

 

宮城:「なぞベン」は道なき道を進みますから、経済性はなくともブランド価値が生まれることがあります。例えばフィッシャーマンジャパンが考えた漁師によるモーニングコールサービスは、そんな石巻の尺度の違う風土から生まれた典型的なもので、漁師の印象を変えましたね。あえて石巻はそういったことをやる。そういう存在を役所として応援していくことができれば、ローカルベンチャーのひとつのスタイルになるのではないかと思いますね。

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亀山:フィッシャーマンジャパンはすごいですね。これまで漁師の格好良さを売り出すという感覚はありませんでしたから斬新で素晴らしい取り組みです。

松村:コンソーシアムハグクミとして、そういった面白いアイデアをどのように応援していくのがよいでしょうか?

宮城:地方に必要な人材のマッチングと育成という面で、NPO法人ETIC.では、震災直後から「右腕プログラム」として、被災地で活動する団体の代表者の「右腕」となる人材を送り出し、石巻には最大規模の50名以上が入りました。例えば、「愛さんさん宅食」の小尾さんや「りぷらす」の橋本さんは「右腕」としてやってきて、石巻で起業し、さらに「右腕」を受け入れています。最近では、優秀な人材をの地方の中小企業に送り出す「YOSOMON!」という仕組みもつくりました。現在、人材募集している「今野梱包」さんは、地元の子どもたちに夢を与え、段ボールの新しい可能性を追求するという経済的にも社会的にも価値あるローカルベンチャーです。だからこそ、社長の右腕として働きたいという人材が集まるのではないかと思います。

松村:ベンチャーの支援という面では、ISS(石巻産業創造)さんなど、市内ですでに起業家支援を実践している団体との連携も大切ですね。

亀山:はい。市としても外部委託も進めていきますし、多くの関連団体の皆様にも、社会貢献、インパクトを出すための支援をしていただければと思っています。

コンソーシアム ハグクミによる石巻のローカルベンチャー情報発信サイト「NEXT HERO ISHINOMAKI」(http://nexthero.jp/)

コンソーシアム ハグクミによる石巻のローカルベンチャー情報発信サイト「NEXT HERO ISHINOMAKI」

松村:石巻市とコンソーシアムハグクミによるローカルベンチャー支援や、市内で活躍中の担い手についても、もっと情報発信していきたいと思っています。

ローカルベンチャーを担う人の可能性に賭けたい

亀山:一堂に介してシンポジウムをしたいですね。国際シンポジウムとして開くのもいいと思います。私は、人の可能性を信じています。震災以降、多くの地元の方、ボランティアの方々に街づくりに関わっていただきました。その方が事業を立ち上げて、可能性に向かっています。地方創生に大事なのは人材。人の可能性に賭けたいと思っています。

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宮城:新規の事業があること。そして中小企業がローカルベンチャー化するという流れがあること。そこに「なぞベン」というキレのある存在という、幅広いコンセプトを持ってローカルベンチャーを掲げる。さらに住環境の整備などの側面支援で行政も積極的に関わり、地元金融機関などと連携してバックアップしてゆくという全体像を、石巻市とコンソーシアムハグクミとで描くことで、石巻はローカルベンチャーのモデル自治体となるのではないかと思います。

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松村:復興という文脈では、中心市街地だけでなく、雄勝、北上、牡鹿など中山間地域の動きもありますね。北上地区では、「ウィーアーワン北上」や、「イシノマキ・ファーム」のような動きもありますね。

亀山:はい、そうです。北上では4団体が立ち上がり、まちづくりに協力していただいています。まだまだ立ち上がるのではないかと思います。

宮城:ローカルベンチャーは中山間地域とも相性が良く、全国的に中山間地域が好きな若者がローカルベンチャーを多く生み出しています。意志をもって情報発信することで、石巻は、ローカルベンチャーだけでなく、復興や中山間地域のモデルにも、なっていけるという可能性を感じました。

石巻発のローカルベンチャーに出会えるイベント「ローカルベンチャー・イニシアティブ」が2018年2月24日(土)が東京・永田町GRIDにて行われます。

また、2018年2月23日(金)から、3月11日(日)まで六本木ミッドタウンにて行われる「地域×デザイン展2018」でも、3月1日(木)20時~、石巻のローカルベンチャーが登壇するトークセッション「石巻次世代英雄発掘作戦『NEXT HERO ISHINOMAKI』リリース記念イベント~君は、ヒーローに会いに来るか~

」が行われます。ぜひご参加ください。

>以下は本文中に登場した用語の解説です。

*1 ハーバード大学のビジネススクール:ハーバード大学経営大学院。授業の一環で東日本大震災の被災地におけるフィールド・スタディを実施した。

*2 なぞベン:謎のベンチャーの略語であり造語。震災後、石巻に自然発生的に生まれた一見するとどうやって生計を立てているのかわからない若者=ベンチャーたちのこと。独自の価値観で DIY精神を尊重しクリエイティブなまちの空気をつくっている。

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