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"猟師"をキーワードに若者と集落をつなげる。東海若手起業塾出身、郡上市起業家インタビュー前編

2018.02.26 212view 

日本のほぼ真ん中に位置する、岐阜県郡上市。城下町として発展した歴史があり、今でも職人町・鍛冶屋町・桝形町などの地名が残る、伝統文化を守り続けている地域です。

今、そんな郡上の街は、移住希望者や起業を志す人があとを絶たない地域となっているそう。そんな郡上とブラザー工業の繋がりは2008年から。高度経済成長期に、郡上では豊富な自然を生かしたレジャー施設を多く作ったもののその後衰退し、森林環境への影響が懸念されていました。そんな現状をどうにかしようとブラザー工業が立ち上げたのが「ブラザーの森 郡上」での植樹活動。また、ブラザー工業が進める事業支援プログラム「東海若手起業塾」出身生のなかには、郡上の街で活躍する方々も多く、地域を盛り上げる一手を担っています。

東海若手起業塾はブラザー工業の創業100周年記念事業として始まり、今年で10周年。2018年3月11日には、これまでの10年を振り返り、これからの10年を考えるイベントTokai Innovators Ecosystem Summit for 2027 ~若者のチャレンジが続々と生まれる生態系を育むために~」を予定しています。(会場:名古屋大学)

今回は、東海若手起業塾出身起業家でもあり、現在は郡上市を拠点に活動を進めるNPO法人メタセコイアの森の仲間たちの元代表で、現在は郡上里山株式会社代表取締役の興膳健太さん(以下、興膳さん)と郡上木履代表の諸橋有斗さんにお話を伺いました。前半では、郡上の豊富な森林や川などの資源を生かした子ども向け自然体験プログラム、猟師の人材育成などの「猪鹿庁」を展開している興膳さんにお話を伺いました。

興膳健太さん(左)と諸橋有斗さん(右)

興膳健太さん(左)と諸橋有斗さん(右)

冬に仕事がなくなる?!郡上で「仕事」をつくるには?

ーまずは、子ども向け自然体験事業を中心に行うNPO法人メタセコイアの森の仲間たちと、里山保全組織「猪鹿庁」長官を務める興膳さんにお話を伺います。それぞれ、どのようなことをする活動なのでしょうか?

子ども向け自然体験教室の様子

子ども向け自然体験教室の様子

興膳さんNPO法人メタセコイアの森の仲間たちでは、主に子ども向けの自然体験事業をしています。市内外の小中学生を対象に、子どもたち自身で遊びのスケジュールをつくるフリーキャンプ事業を行なっています。もう一つの猪鹿庁は、狩猟体験の場として"狩猟学校"を進めていて、ひとつの事業として成り立っています。あとは、全国的に見ても農家の人たちが獣害にものすごく困っているので、市内の集落を回って罠をかける方法を教えるなどの支援に力を入れています。歴史を遡って調べてみると、郡上の人たちは猟で生きている人が多かったみたいなんですが、今は猟師では食っていけません。しかも若手がいなくて高齢者ばかり。猪鹿庁では、猟師という存在を魅力的に伝えて、猟師が増える・食える、という状態にしたいと思っています。」

猪鹿庁メンバー

猪鹿庁メンバー

ー東海若手起業塾に入ったきっかけを教えていただけますか?

興膳さん「原点にあるのは、"冬の仕事をつくりたい"ということですね。もともと、NPO法人メタセコイアの森の仲間たちには4月から10月までの季節雇用職員として入り、林間学校に来る子ども向けの自然体験のインストラクターをしていました。ただ冬の間は契約を切られるので、僕のような季節雇用の職員たちは、スキー場や地元のスーパーで働きます。そんな仕組みのままだと、当たり前ですが地域に全く人材が残りません。どうにか冬の仕事が作れないかと、ずっと悶々と考えていました。団体に入って三年目のある日、NPO法人メタセコイアの森の仲間たちの代表にならないか?と当時の代表に声をかけられました。"やった、もう冬に解雇されないで済む!”と喜ぶと同時に、”いよいよ本当に冬の仕事をつくっていかないとな・・"と本格的に考えたタイミングでもありました。そこでちょうど3期生の募集をしていた東海若手起業塾に応募をしたんです。」

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"なぜ?何のために?" 問われ続けた自分の根本

ーそうだったのですね。東海若手起業塾ではどんな経験をされたんでしょう。つくろうと考えていた冬の仕事についても教えてください。

興膳さん「とにかく、東海若手起業塾では考え方を根本的に改められました。入った当初は、冬に食える仕事としてイノシシラーメンを作って売ろうと考えていたんですけど、"そんなに甘くねえよ!"ってボコボコに問い詰められました(笑)。一応、試作や試食会なんかもめちゃくちゃしたんですけど、そもそも1頭あたり取れるスープの量が10杯分くらいだったりとあまり現実的でもなく(笑)。

じゃあ昔は、郡上の人たちは何して生きてたんだろう?と調べてみると、そこで猟師にたどり着くんです。調べれば調べるほど、猟師ってめっちゃ格好いいなと。猟師を核にしたことならやりたい!と強く思いましたね。でも例えば、"猟師"で何かやりたいと思っても、東海若手起業塾に行くと、”猟師を増やしたいのか、冬の仕事作りたいのか、どっちなの?"ということをとことん詰められるんです。そうすると、また戻る。考えて、進んだと思って、また問い詰められて、また戻る。そういうやり取りをすると、これ以上ないってくらい深く考えることができて、本当に大事にしたい軸を確認できる。ここまで戻ればもうぶれない!というところまで。猪鹿庁のアイデアが生まれたばかりの時にエントリーして、そこで考え方や方向性、輪郭ができました。今、僕の仕事に一貫していることは、"郡上に仕事をつくる"ということです。その軸を持つきっかけになったのは東海若手起業塾ですね。」

ー印象的な東海若手起業塾の思い出はありますか?

興膳さん"社会に良さそうなことをしたいのか、本当に社会を変えたいのか、どっちだ?!"と川北さんに言われたことですかね。これはめちゃくちゃ印象に残ってますね。"良さそう"なことじゃなくて、"本気で"変えていきたいよなあ、とやっぱり思いました。改めて、目的をしっかり定めることの大切さを感じた、ということですかね。」

やるなら、源流から。正面から課題に挑む。

ー出身は岐阜でも東海でもなく、九州の福岡ということですが、どうして郡上を選んだのでしょうか?

興膳さん「大学時代から、研究テーマとして"持続可能な地域社会を作るにはどうしたらいいか?"ということをずっと考えていました。どこかの地域に根を張ってやりたいなあとはずっと考えていて、郡上でならできそうだ!と思いやってきました。

いろんな田舎を見たんですけど、田舎の人たちって普通、"こんなところ何もないよ、どうしてこんなところきたの?"とよく言うんです。よそ者からすると、"そんな蔑まなくても!飯はうまいし自然は綺麗だし!"って思ってたんですよね。それに対して郡上の人たちはとにかく郡上が好き。”郡上はいいところだろう!”って言うだけじゃなくて、"これうまいぞ"って土地の食べ物をくれたり、”ついてこい”って川に連れてかれてその場でうなぎを獲ったり(笑)。もう、とにかく格好いいんですよ、郡上のおっちゃんたち。"こんな大人になりたい!"って強烈に感じましたね。」

ー大学から地域のことやまちづくりを学んでいたんですね。

興膳さん「僕のまちづくりの核にあるのは、"自分の街が好きなら自分の街のために何でもする"ということなんですけど、"環境やばい!"、"地球やばい!”とかじゃなくて"好きだからやる"、"好きだから守る”の方が続きますよね。街にもそういう人たちが多ければ、どんな社会課題でも解決できるって思ってるんです。

ずっとそういう地域を作りたい、と思っていたら、郡上がすでにそうだったんです。ここは相当楽しいな!と思いました。ここの仲間に入れて欲しい、と思いました。アイデンティティを郡上に感じている人が多い、って言うのが他の地域とは違うのかなと。」

子ども向けに猟師の仕事を伝える活動も。

子ども向けに猟師の仕事を伝える活動も。

ーNPO法人メタセコイアでの自然体験や、猪鹿庁の活動を通して、郡上の街でどのようなことを実現していきたいですか?

興膳さん「今は猟師の世界にたどり着きましたが、初めから猟師をテーマにしようとしていたわけではないです。もともと考えていたのは、長良川周辺で持続可能な地域社会を作れたらいいな、ということで。長良川の上流が郡上にあたるんですけど、何事も根っこや源から取り組みたいんですよね。下流にいても、課題は変えられない。社会課題の上流、根っこに向き合って、課題を解決していきたいと思っています。

「猟」を介して都市部と集落をつなげる。

ー郡上には移住する人も増えていると聞きましたが、実感としていかがでしょうか?「地域に仕事をつくる」という観点で、何か挑戦したいことはありますか?

興膳さん「"郡上で働きたい"、”猪鹿庁で働きたい”という問い合わせは増えていますね。なんか楽しそう!ってみんな来てくれるけど、食うのも、仕事つくるのも、そんな簡単じゃないぞと(笑)。なので、今僕が担うべき役割としては、とにかく郡上に仕事をつくらないと!ということです。うまい仕組みをつくり実践して、全国にモデルとして提案していきたいと思っています。もちろん猟師もそうですが、田んぼの手入れをしたり、お祭りを継続させていったり、家の管理をするとか、田舎にとにかく人がいない。どんどん若い人たちを受け入れられるようにしていきたいですね。地域で 自立的に獣害対策ができるようになるために人を育てる、という取り組みはずっとやっていて。3年前に、新潟と山梨と千葉にある4団体で一般社団法人ふるさとケモノネットワークを設立して、猟師など地域の集落コーディネーターのようなけものの町医者存在を育てる研修会「けもの塾」を実施して、これまでに100人ちょっとの卒業生がいます。

研修中の興膳さん

研修中の興膳さん

ただ、もはやそれすら限界を感じているのが本音です。例えば、先日は郡上でも一番高齢化が進む小那比(おなび)という集落で研修会をやりました。20人近くの人が来てくれたんですが、平均年齢は70歳以上くらい。来てくれて本当にすごく嬉しいし、しかも、そのうちの半分くらいが自主的に罠の免許を取ったんですよ!それってものすごいことで、感動ものでした。ですが、研修中にも山に登ることがしんどかった方もいたり、彼らが一体あと何年現場で動けるか?といったらなかなか難しい問題ですよね。なので、そういう研修会だけ真正直にやっていてもあんまり意味ないなあと。」

研修会の様子

研修会の様子

ーそこで、外部から若い人材を受け入れる仕組みづくり、なのですね。

興膳さん「そうですね。早く都市部の若い人たちをつなげるために、今年の春からクラウドハンターっていう企画をゴリゴリ始めていきます。都市部の人も、狩猟の場にリアルに参加できるように、まずは集落ごとに、猟師をやってみたい若い人を募集してタッグを組ませます。そして実際に集落に来てもらって、一緒に罠を仕掛ける。集落に免許持っている人はいるので、若い人は免許を持っていたり経験がなくても大丈夫です。免許を持ってる人が一人いれば罠を30台仕掛けることができます。

この時点で、若い人は移住や起業、就職などはすぐに決めなくて良い。罠を一緒に仕掛けた後は、定点カメラで都市部で監視できるようにします。つまり、都市部にいながら集落やそこ住む高齢者を応援できる仕組みです。一気にこれを全国に広めたい。郡上でそのモデルを作り、他の地域でも真似して欲しいくらい。そこから、"もっと通う!なんなら移住する!"という人が増えないかなあと思っています。」

子どもと猟師エコツアーの様子

子どもと猟師エコツアーの様子

ー猟師以外でも展開ができそうなモデルですね!春からの始動を楽しみにしています。

後半では、郡上踊り専用の下駄ブランドをつくりあげた諸橋さんにインタビューを行います。お楽しみに!

>「Tokai Innovators Ecosystem Summit for 2027 ~若者のチャレンジが続々と生まれる生態系を育むために~」詳細はこちら!

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