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「ソーシャルビジネスの泥臭さを知り、覚悟を持って飛び込んできてほしい」高齢先進国モデル構想会議・土屋香奈子さんインタビュー

2014.01.24 

高齢者をコミュニティで支える包括的なサービスモデルの構築を行う一般社団法人・高齢先進国モデル構想会議。現在は、宮城県石巻市において、在宅診療所(祐ホームクリニック石巻)の開設に始まり、コミュニティ創りや、医療・介護分野における情報連携に取り組んでいます。

DRIVEで人材を募集し、10月に飯田佳孝さんが参画することになりました。今回は、採用側だった土屋香奈子さんと事務局長の園田愛さんにお話しを伺いました。 石巻に来て1年になる、土屋香奈子さん

<石巻に来て1年になる、土屋香奈子さん>

きらびやかな部分だけじゃなく、泥臭い部分も募集要項に書く

田村:土屋さんご自身も、もともとは民間企業にいたのを、右腕派遣プログラムを通してこのプロジェクトに飛び込んで、ちょうど1年ほどという状況ですよね。転職者でもあり、採用者でもあると思うので、いろいろお聞きできればと思います。まず、高齢先進国モデル構想会議は、どういった体制で運営しているのでしょう?

 

土屋:現在は某民間企業と共同でプロジェクトを行っており、全体で10名程度の規模で、自立した高齢者を支援するグループと医療介護事業者と関わりながら支援するグループの大きく2つに分かれて活動しています。私や飯田さんは後者を担当しています。実証実験が始まることもあって、一緒に担当してくれる人材を募集するにあたり、今回DRIVEを使わせていただきました。母体の祐ホームクリニックで今後も様々なプロジェクトを行うことを見据え、できればそのまま働いてくれる方をという観点で、人材を探していました。

 

田村:一緒に働く人材を探す上で、募集要項を出される際に意識したことはなんでしょう?

 

土屋:私たちの仕事の内容は、社会にあったら役立つことであると信じて取り組んでいる反面、うまくいくかは不確定で難しいことでもあります。だから、一緒に考えながら働いてくださる人に来てもらいたいという気持ちがあり、それが伝わるように心がけ、募集要項を書きました。ソーシャルビジネスは、ともすればきらびやかなようにも見えてしまいますが、泥臭い部分も多々あるということもわかって頂ければ、と思っていました。

 

田村:そこをきちんと伝えておくことはすごく大事ですね。特に、知名度がある団体さんであるほど、どうしてもきらびやかに見えてしまいがちです。DRIVEからエントリーがあったのはどういった方々でしたか?

 

土屋:20~40代の方々で、秋田・仙台・山形など東北の方たちからのエントリーもいただきました。志望動機として、活動に共感くださったという方や、高齢化する社会に問題意識を持っていらっしゃって一緒に取り組みたいという方など、思いがある方たちがエントリーしてくださいました。面接させて頂き、飯田さんは実際のご自身の体験などもあって、具体的に話せたこともあり、ぜひ一緒に働いてみたいと思いました。

形がない中で動けるように、全体観や現場感覚を持ってもらう

田村:組織内の人材育成についてお聞きしたいのですが、新しく仲間を迎える上で、入社の時に気をつけていることはありますか?

 

土屋:ひとつの組織にいろいろな団体が関わっていて複雑なため、飯田さんが新しくチームに加わるにあたって、改めて整理しなおしました。あとは、現在行っている実証実験も大きな仕組みで、対象者や実施していることが複雑なため、最初のオリエンテーションでできる限りお伝えするようにしました。活動の現場はどこもそうだと思いますが、形がない中で、わかりにくいものにチャレンジしながらやろうとしているという全体観を持ってもらうことを意識していました。

 

田村:土屋さんが1年前にチームに加わった際も、そういったオリエンテーションがあったんですか?

 

土屋:私が入った頃は詳しい説明はなかったです(笑)。 その時も組織として仕事が決まっている状態ではなかったので、説明のしようがなかったのではないかな、と今となっては思います。私自身は、高齢者の方の家に直接訪問に行かせてもらったり、現場の活動を見させてもらったりして、地元の人のことを少しでも理解したいと思いながら働かせて頂いていました。そのため「現場に行きたい、知りたい」と自分から伝えるようにしていました。今、飯田さんも医療介護事業者のところに積極的に行って、現場を見てくださっています。

 

田村:私も震災後にETIC.に参画したのですが、てんやわんやで同じような状況でした。事業のスタート時はどうしてもカオスになりがちなので、そういう状況を楽しめる人じゃないと大変かもしれませんね。組織としての人材育成のフローはこれから作っていく感じでしょうか。

 

土屋:そうですね。必要だなとは思っているのですが、現在はまだないんです。何年後に何を目指しているか、そこで自分は何をしたいかということは、これから組織として作っていかないといけないだろうなと思っています。

<高齢先進国モデル構想会議の事務局長を務める、園田愛さん>

「自分の人生に自分で責任を持つ」という覚悟でキャリアを選ぶ

田村:土屋さんご自身も、民間企業から1年前に東北に飛び込まれたと思います。同じように転職やキャリアチェンジを考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

 

土屋:「飛び込まない理由は、何なんだろう?」という部分をよく見つめることが大事だと思います。不安なのかもしれないし、本当は飛び込みたくないのかもしれません。不安は確かにどこにでもあります。なんで飛び込みたいのか、あるいは飛び込まないのか。考えてみて、飛び込みたいという気持ちが消えないなら、飛び込んでみたらいいのだと思います。

現状維持したいという不安は、動けばすぐに忘れてしまうものですし、「とにかくやってしまえ!」という感じです。自分自身飛び込んだ身として、チャレンジは遅いより早いほうがいいと思いましたし、仮に失敗するとしても早いほうがいいのではないかな、とも思います。

 

田村:高齢先進国モデル構想会議の事務局長である、園田さんにもお聞きしたいなと思います。飯田さんや土屋さんのように、あえて小さい組織に飛び込んで、現場で社会課題を見つめながらこれまでにないことを立ち上げていこうという人たちが増えていると思います。そういった、チャレンジしたいという人たちに向けて、「こういうマインドで挑むといいよ」というメッセージはありますか。

 

園田:自分の人生を自分でつくっていくことを選ぶこと、自分の人生に自分で責任を持つこと、その清々しい覚悟を持つことはすばらしいなと感じています。

飛び込んでくださった飯田さんも土屋さんも、その力を持たれている方たちだと思います。自分の内部にそういう力を感じた時は、自分で自分の人生を選ぶべきタイミングなのでしょう。残る、あるいは動く。残るという選択でもいいと思うんです。でも、そういう覚悟をもって、自分の人生を見つめるのがいいんじゃないかなと思います。残ると決めても、その日からの日々への向き合い方は違うでしょうから。

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高齢先進国モデル構想会議/土屋香奈子

東京都出身。東京の大学を卒業後、ITコンサルティング会社で8年間働く。システム開発、英文財務諸表の作成支援、業務改善、新人の海外研修支援などに取り組む。2012年夏に宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市でボランティア活動に参加。同年11月から右腕となり、活動の体系化、評価・分析、企画提案を担当。2013年4月からは、NPOの活動や自主活動、民間サービス等の活用による高齢者の生活支援の仕組み創りに取り組んでいる。

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田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。