リモートワーク、副業、兼業、複業…etc. 働き方が多様化するなか、「自分がどう働きたいか」「どんな仕事でどう生きたいか」への関心がより高まっています。
新しい仕事への関わり方も選択肢が増えています。例えば、今の仕事を続けながら、「興味・関心」のある仕事に「期間限定」でチャレンジする。最も大事なのは、ワクワクするかどうか。
そんな、スキルではなく自分自身の感覚や思いを大事に、まだ世に生まれていない事業やプロジェクトに3か月間メンバーとしてお試しで飛び込む「Beyonders(ビヨンダーズ)」が、3月10日にリリースされました。
今回、「新しい働き方を模索していた」ということで「Beyonders」のトライアル(旧名称:Beyondワークβ)にご参加いただいたロート製薬株式会社の宮崎智子さんに、「Beyonders」での経験や自身の変化などをお聞きました。
みんなの視点を持ち寄ったら、自分たちの方向性が見えてきた
ロート製薬で知的財産を管理する部門でマネージャーとして働く宮崎さんが「Beyonders」に挑戦したのは、昨年の約3ヵ月間。宮城県気仙沼市にワーケーションスポットを立ち上げるプロジェクトに参画しました。
メンバーは、気仙沼市在住のグラフィックデザイナー・志田淳(しだ あつし)さんをプロジェクトオーナーに、NPOの職員など宮崎さんにとって新鮮な顔ぶれ。期間中は、全国のワ―ケーション情報の収集、隔週のオンラインミーティングでの議論を中心に、気仙沼市内で「デザイナーが自然と集まってくる」ワーキングスポットをいかに実現するかを探っていきました。
「一人ひとりの興味の観点が異なって、また、気になったスポットの運営者にコンタクトを取ってオンラインで話を聞くこともあって、普段の仕事とはまったく違うことが刺激的で楽しいです。一見、みんなの視点はバラバラだけれど、情報を持ち寄る中で、少しずつ自分たちならではの方向性が見えてくるところも興味深いです」
セカンドキャリアや今後の人生につながる可能性を発見
宮崎さんが、今回のプロジェクトでワ―ケーションスポットを選んだのは、自身の働き方に対する“もやもや”が背景にありました。
「旅が好きで、1週間くらい有給を取って旅行に行くのが楽しみなのですが、その前後が仕事に追われてとても忙しくなっていたんです。『休みたいけれど休むとしんどい』状態をなんとかしたいと思っていました」
最初は「ロート製薬で働き方の選択肢が増えるきっかけになれば」と参加した宮崎さんでしたが、このプロジェクトに携わるうち、「考え方が変わってきた」とも。
宮崎さんが想像していたワ―ケーションは、リゾート地に行き、開放感のなかで仕事をしながらプライベートも楽しむスタイルでした。でも、多くの情報に触れ、メンバーたちと議論するなかで、「最近、地方での関係人口づくりに主眼を置いたスポットが多いなかで、自分も役に立てるのでは」と思うようになったといいます。
「会社員歴が長いと、『自分は、会社の仕事しかできないのではないか?』と不安に感じる場合があると思います。でも、地域の人たちに知的財産の知識など自分ができることを提供して、「助かった」と言ってもらえることで、誰かの役に立てる幸福感や自分でも気づかなかったスキルの発見を実感できるかもしれません。
例えば私ならセカンドキャリアの視点で、もう少し若い方なら将来を見据えた、自分の新しい可能性を見つけるきっかけとなるかもしれないと思っています」
「こわかった」選考への気持ちがラクになれた一言
薬学部出身の宮崎さんがロート製薬に新卒入社した理由は、「ロート製薬の薬は、仕方なく使う薬じゃなくて、いつでもほしい時に『買おう』と選べる、お客様の顔が見えやすい薬だから」。ものづくりへの関心も高かった宮崎さんは、入社後は約10年、開発部門で経験を重ねた後、産休・育休を経て、20年ほどは現在の知的財産を扱う部門でキャリアを築いてきました。
「ロート製薬の良いところは、人の垣根が低くて、年齢や立場に関係なく意見を受け入れ合えること。そういったフラットな社風が私には合っていたと思います」
これまで転職することなく、ロート製薬で働き続けてきた宮崎さんですが、「途中、このままでいいのだろうかと思ったときもあった」といいます。実際、副業にチャレンジした時期もあったそう。薬剤師の資格をもちながら仕事に活かす機会がないことで、2016年にロート製薬が副業を解禁した後、薬局で薬剤師として働きました。
「やってみたかったことだし、来店される方とのお話も楽しくて、仕事自体は充実していたのですが、本業に加えて働くことの難しさを痛感しました」
宮崎さんが薬局で働いたのは週3日、平日の夜と週末をその時間にあてたそう。専門的な知識など常に覚えることは山ほどあったものの身に付けようと努力を続けました。しかし、結果的に求められる時間帯と自分が働ける時間帯の相違が埋まらず、2年で薬剤師の仕事を辞めることに。
その後、興味のある地域の事業に参画できる兼業プログラムにも挑戦しましたが、自分のスキルと求められるスキルが合わないことで実現は叶わず。そんなとき、会社から紹介されたのが「Beyondes」でした。「面白そう」と応募した宮崎さんが可能性を感じたのは、参画メンバーを決める面接時で言われたこの一言でした。
「スキルではなく、仲間として一緒にやっていけるかどうか、を大切に選考します」
それまで選考で苦い経験をしていた宮崎さんは、今回、「こわい」という感情を抱いたものの、この言葉で「気持ちがラクになった」と話します。
「仲間になるには興味・共感が必須条件でした。ここからチャレンジを始められると思ったら、心理的なハードルが大きく下がったんです。プロジェクト参画後は、やりたいことがあれば、スキルにこだわらなくても、意外と飛び込んでいけるのかもしれないという気づきももらえました」
気になったスポットのことを知りたくて、現場に足を運んだ
宮崎さんが、プロジェクトを通して「積極的になれた」と思えたのは、実際に気仙沼に行ってみたり、魅力的に感じたスポットを知るために行動を起こしたことでした。
「都市と地方の共創モデルづくりで先進的な取り組みを行っている京丹後市の『丹後リビングラボ』の方がトークショーに登壇されると聞いて、大阪から行ってきました。それがすごく楽しくて。気仙沼市でもこういうスポットや取り組みが実現できたらいいなと思いました」
「Beyonders」に並ぶプロジェクトは、宮崎さんが参画した気仙沼のワ―ケーションスポット作りだけでなく、事業として未完成の、いわゆる“生煮え”の状態のものが中心。宮崎さんが参画するプロジェクトのオーナー・志田さんは、当初、「まだ何もまとまっていなくて…」と申し訳なさそうにしていたそう。それに対し、宮崎さんは「そういう何もない状態から関われてすごく良かった」と前向きです。
「みんなであーだこーだ言いながら、全然違う意見も『たしかに面白そうだね』と納得できる雰囲気が、他にはないものづくりにつながるような気がしています」
お金のためでなく、興味関心から地域の人たちと関係づくりをしたい
「何年か先が想像できない自分のキャリアにも焦りを感じていた」という宮崎さんは、最後に、一つチャレンジを起こせた自身の今後をこう話してくれました。
「今までは、60歳まで仕事を続けられたとしても、その後は社会とのつながりがぷつっと切れてしまいそうな不安をもっていました。50代の前半のうちに次の足掛かりとなることを見つけられればと思っていました。
今は、自分が仕事として向き合ってきた知的財産に関する知識やスキルが、誰か困っている人のために少しでも活かせて、楽しく仕事ができればと思っています。今回のプロジェクトでたまたまつながった気仙沼ですが、地域ともこんなふうに関わっていくことができると思えたことが大きな収穫です」
「将来は、大阪と地域の2拠点生活ができれば」と、新しい未来にも触れてくれました。
「お金のために副業をするのではなく、自分の興味・関心の延長で、地域の人たちと関係づくりができたらいいですね。いつか地域との関係作りのプラットフォームみたいなものが社内にも導入できたらいいなと思っています。
気仙沼とロート製薬のそれぞれが抱いている課題感がうまく交差するところが見つけられれば新たな可能性が広がるとも思っています。時間をかけて探っていきたいです」
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