大学在学中に、岐阜でNPO法人G-netを創業し、今現在、愛知県岡崎市の「岡崎ビジネスサポートセンター・Oka-Biz」のセンター長をされている秋元祥治さんが、先日本を出版されました。タイトルは、『20代に伝えたい50のこと』。
岡崎ビジネスサポートセンターは、売上げアップをサポートする公的な中小企業相談所です。開設から4年間で8,000件を超える相談が寄せられ、全国から視察がやってくる「行列の出来る中小企業相談所」となっています。この本は、今38歳の秋元さんが、様々な困難を経て至った気付きを、自分が20代の頃に伝えたかった事として、まとめたものです。
私は、今現在、NPO法人ETIC.で働く35歳、2児の母です。秋元さんに最初に出会ったのは今から13年前の22歳の頃でした。秋元さんの人生訓を読みながら、自分の13年間も振り返りました。そして、改めて。私は秋元さんに出会っていなかったら、全く違う人生だったと思いました。
人の出会いが人生を変えます。幸運は人が運んできます。
私はこの幸運をもらった一人として、秋元さんに出会ってない世界の誰かに、このラッキーバトンを渡すべく、本の感想を書かせて頂きます。
私の人生を変えた、秋元さんとの出会い
大学4年生の時、ゼミで”地域活性”をテーマに調べる事になり、岐阜県の明宝村にフィールドワークに訪れました。明宝村では、地域のお母さん達がトマトケチャップを作って販売しているのですが、その取り組みを冊子で知った事がきっかけでした。何で明宝村を選んだのでしょうね。思い出せません。でも、NHKのテレビ番組『プロジェクトX』みたいで格好良く見えたんだと思います。東京から新幹線に乗り、岐阜からレンタカーを借りてのプチ旅行でした。 当時の私は、”地域活性”の言葉に、漠然とワクワクしていました。学生時代の文化祭みたいな印象です。互いに助け合い、面白いことをやろうと、皆で力を合わせて活動している感じ。
しかし、実際に現地に足を運ぶと、イメージとは異なりました。人がまばらで、とても静かだったからです。誰かに尋ねて活動を深掘りすることもせず、表面だけさらーっと見て、「何もないところだなぁ」と思って帰ってきました。明宝村を否定したい訳では決してありません。私の未熟の致すところです。
その明宝村から帰ってきて数週間後のこと。友達が「岐阜の地域活性を調べるならG-netがいいよ」と、私に資料を渡してくれました。その資料には、 「面白い事がなければ、自分で作ればいい」 と書かれていました。 ページをめくる手が止まり、しばし目が釘付けになったのを覚えています。資料には、自分達で立ち上げたイベントやフリーペーパーの情報が載っていました。
奇しくも私は、「何もないから面白くない」と思って岐阜から帰ってきたばかり。 自分との違いが衝撃でした。発想が根本から違う・・! その後、インターネットでG-netを検索し、代表の秋元さんを知り、秋元さんが参加するイベントをリサーチ。トークイベント後の秋元さんに「名刺交換させて下さい」と声をかけたのでした。そこからG-netの活動に巻き込んで頂いて、人生が急カーブしていきました。 G-netは、首都圏で育った私に、地方の面白さを教えてくれました。
そこからNPO法人ETIC.で『好きな町で仕事をつくる』という本の作成に携わらせて頂き、就職先に愛知を選び、その後鹿児島へと移住していきます。 今、再びETIC.で働いていますが、秋元さんに出会わなければ、私は今の職場にいなかったかもしれないですし、鹿児島にも行かなかったと思いますし、鹿児島で出会った主人とも結婚していなかったと思うのです。 本著に「会いたい人がいれば、調べてみたらいい。連絡をして会いにいけばいい」とありますが、思えば、私はコレを秋元さんに対して実行し、まるっと人生変わってしまったのでした。
30代の私が読んでも、心に刺さったこと
『20代に伝えたい50のこと』は、簡単にまとめるならば、世界的名著『7つの習慣』をとても分かりやすく現代風に噛み砕き、今すぐ実践できるスモールステップに落とし込んでくれている内容でした。 「これは出来ているな」と思うものもあれば、「これは最初気をつけていたのに最近やってないな」と思うものも「あ〜〜〜これ、全っ然出来てないわ」と思うものもありました。
それは、数学の基礎ドリルを解いているような感覚でした。問題自体は知っている。見たことがある。でも出来ない。やってない。 また、今直面している課題が解けない原因に、気付かされた事もありました。 その今の課題とは、同じ景色が見える場所を無限ループしている気がする、という事。 踊り場で足踏みしている感覚でしょうか。この景色はもう見たから、次のステージに行きたい。でも、行けない。周りの環境が変わっても、自分が変わっていないので、見える景色が一緒に感じるんです。一通りの事が出来るようになった後、もう一段上に上がるにはどうしたらいいのか。そんなジレンマ。
きっと、この課題解決の処方箋は、本著に書かれていた「メンターと言える存在を身近に持ち、師匠の再現をすべく完コピする」や「1日の終わりにほんの10分でよいから振り返り時間を作ってみる」「目の前の仕事を自分じゃなきゃ、今やらなきゃと思えるように果たそう」に、ヒントがあるのではないか、と思いました。
”自分のやりたい事を見つける”というステージはクリアできても、目線が自分に向いている限り、その先に行けないのです。自尊心を粉にするように、他人から学んだり、また、自分自身を第三者のような目線で客観的に振り返ったり、視点を自分から離して仕事の成果にフォーカスするような経験が、きっと私には必要なんだろうと感じました。 書かれている50個は、いづれも難しいことはなく、心がければ出来ることばかりです。身の周りにメンターがいない!という方は、この本を読んで秋元さんを完コピするつもりで、ひとつずつ実践してみると良いと思います。
20代でこの本に出会うと、どう変わる?インターン生に聞いてみた
さて、私は35歳ですが実際に20代の子が読むと、どんな感想なのでしょう?
職場の20代のインターン生、山本さんに読んでもらいました。 一番響いたのは、「生き方やキャリアに絶対解はない、納得解しかないんだ」という文章だそうです。
”高校を卒業し、大学生になってから、毎日が選択の連続です。今、大学2年目の春を迎えて、自分の人生を描いていこうとしています。人によく言われるのは、「夢・目標から逆算して、今何をやるべきか選択しなさい」とか「広い目で見て、キャリアを築くことを大切に」とか「とりあえずスキルの為に大きな会社に」ということ。
みんなから違うアドバイスをもらって、どれを選んだら最善の選択だろうと悩みます。人生の夢を掲げて、その実現のために小さな目標を立てても、夢が途中で変わってしまったらどうしよう、と思います。そもそも夢と呼べるものが無いなら、日々最善の選択なんか取れないのではないか、と。答えなど無い、と分かっていても、絶対解を探してしまいます。心の底で、失敗したくない、失敗して笑われたくないと思っているからだと思います。”
本著の中に「高校までと、大学以降はルールが全く変わるんだ。大学入試までの受験勉強は、1つの答え【絶対解】がある。だけれどもここから先は違うんだよ」というセリフが出てきますが、山本さんの言葉は、まさに【絶対解】ワールドから、【納得解】ワールドに放り出された戸惑いのように感じます。
”周りの目を気にせず、自分に向き合い、納得できる解を見つけることが出来れば、たとえ失敗しても自分で責任を取って、成長することが出来ます。間違ったと感じても、それが自分には合わないと知るチャンスです。多くのチャレンジをし、自分の価値観を形成していく 。「納得解」を日々見つけていき、選び取っていく。その事が、自立し、成長するには必要だと強く感じました。”
納得解を見つける方法については、本の中で次のように書かれています。「やりたいことを見つけるには、知っていることや経験したことをどれだけ増やせるか。そして、それらの中で自身が選ぶモノサシ、つまり基準を持てるかどうかが大事」。だからまずは、「目についたら行ってみる、誘われたら断らない」。
山本さんの”失敗や周りの目を気にせず、チャレンジしてみよう”という気づきは、後から人生を振り返ると、とても大きな分かれ道になるのでは?と思いました。
今できる、小さな一歩をひとつひとつ
秋元さんは、講演や大学でのセミナー機会も多いそうです。そのセミナー後のアンケートには「この話を聞くために、大学に来たんだって思った」「価値観が変わった」「セミナーを受ける前と、後では別の人生になった」という感想が寄せられると言います。 授業やセミナーでは、参加できる範囲が限定的、だから、もっと多くの人に言葉を届けるために、本を出版されたとの事。
時代の変化がとても早く、日々刻々と状況が変わる昨今。ただでさえ迷い多き20代の皆さんは、私たちの時よりさらに、不安と葛藤の渦中にいるのかもしれません。インターンの山本さんが寄せてくれた通り、将来について様々なアドバイスが飛び交い、何を信じてよいか分からないという人も多いのではないでしょうか。そんな中で、秋元さんが歩まれた、東京の大学生→地方でのNPO起業→中小企業支援、というジグザグキャリアは、これからの時代の生き方を考える上で、1つのヒントになりそうです。地図なき時代に、大海に出ようとする若者の先を、煌々と進む水先案内人のようです。
聞いた話は手元に残らないですが、こうして本になったおかげで、本を買った人はいつでも読み返す事が出来ます。出版まで3年かかったそうです。読み終えると決意改まる気がしますが、それだけで終わらせず、是非今できる小さな一歩を、ひとつひとつ。 成長したい、と願うすべての人へ、この本が届きますように。
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