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DRIVE転職者ストーリーVol.6 自立支援の仕事を通して、マイノリティの方の声が社会に届く場をつくりたい(認定NPO法人ビッグイシュー基金・永井悠大さん)

2018.03.26 292view 

DRIVEを通じて、未来をつくる仕事と出会った人たちを追うインタビューシリーズ、「DRIVE転職者ストーリー」第6弾!

今回ご紹介するのは、認定NPO法人ビッグイシュー基金の永井悠大さん。故郷の広島で福祉社会学を学び、2016年9月、ビッグイシュー基金に就職。貧困問題に向き合うことを「おもしろい」と表現する永井さん。永井さんの思う支援のおもしろさ、奥深さについてお話をうかがいました。OLYMPUS DIGITAL CAMERA

認定NPO法人ビッグイシュー基金・永井悠大さん

認定NPO法人ビッグイシュー基金

「ホームレスの人々の救済ではなく、仕事を提供し自立を応援する」ことを目的に活動する有限会社ビッグイシュー日本を母体に、2007年に設立された非営利団体。「誰にでも居場所と出番のある包摂社会の形成を目指し、ホームレスの人たちが自立し、再び社会に復帰できるように」、ホームレスの自立支援、ホームレス問題解決のネットワークづくりや政策提案などを行っている。2012年、認定NPO法人となる。

海外では貧困について考えるのに、日本で考えないのはなぜだろう。

─永井さんは広島の大学ご出身とのことですが、福祉社会学を選択したのはどんな理由からなのでしょうか。何かきっかけがあったのですか?

はじめのきっかけは、大学時代に世界17か国を旅した経験ですね。大学2年が終わった段階で一年間休学をして、はじめの半年はアメリカ語学留学、残りの半年はバックパッカーで世界一周航空券を使って旅をしていました。その時、インドや途上国で子どもたちから物乞いをされた時に大きな衝撃を受けました。

日本にも路上で生活されている方や生活に困窮されている方はいるけれど、物乞いをされることはほとんどないですよね。だからこそ当事者の方から直に「恵んでください」と言われた経験はインパクトがありました。同時に、日本の路上生活の方のことを認識はしているのに、特に関心をもっていなかったという事実をつきつけられた気がして、自分自身に対してもショックでした。

なぜ海外に行くと「貧困」について考えるのに、日本では意識すらしないのだろうと。それで国内の貧困について勉強してみようと思って、大学3年で復学した時に福祉社会学という、国内の貧困問題を扱うゼミで学ぶことになりました。そうしたら、それがすごくおもしろくて。

─どういったところがおもしろかったのですか?

まず、純粋に自分の知らない世界に触れること自体が新鮮でした。そのうち、自分と国内の貧困問題の関係性について考えるようになったのですが、それまで貧困問題については自然災害のように思っていたんですよ。たまたま不運が重なってそうなったといったような。

でも、実際は、困窮状態にある方たちの生活を土台にして自分の生活基盤がある。間接的に関係し合っている。そのことを理屈で学んでいくうちに貧困状態にある方に対して自分がもっている責任みたいなものを意識するようになったというか、「居心地の悪さ」を感じるようになりました。それで、ちゃんと研究して知っていって、世間に問いを投げかけたいと思うようになったんです。

P1110763 (2)

世界一周旅行中の永井さん

自分と路上生活者の方は、構造的につながっている。

─永井さんのように、しかも学生時代、貧困問題を自分の問題として捉えられる人はあまりいないのではないでしょうか。今までの生い立ちに何か関係があるのでしょうか。

特にこれといった関係はないと思います。生活に困窮されている方と意識的に触れ合ったこともなかったですし。家族はサラリーマンの父親と教師の母親、それに兄がひとりという家族構成でした。今思えばミドルクラスの一般家庭で、自分が進学の時に経済面でどうしようかと考えた記憶はなくて、逆に好きにやらせてもらったという感覚の方が強いです。

僕のように生い立ちのなかで当事者との直接的な関わりがなくても、貧困問題に興味を持ったり活動をする人も多いと思います。

一方で、現場で当事者と直接的に関わった時、興味を持ち続けるかどうかの境目には、自分と当事者との関係性への理解があるのかな~と思うことがあります。

─それはなぜでしょうか。

相談業務にのっていると、大変な生い立ちや環境で苦労されてきたような、社会の責任が見えやすい困窮者もいれば、言動から「この人は共感を得にくく『(貧困状態になっているのは)自己責任じゃん?』と多くの人から言われてしまうだろうな~」と感じる方にも当然出会います。

だけど、僕自身の支援のモチベーションはどちらのケースでも全く変わらない。前者の人を特別“かわいそう”だと思うこともなければ、後者の人に関わることも馬鹿ばかしく思うこともないんです。

なぜなら、今その人が困窮している理由が本人の努力不足であれ社会の不作為であれ、僕自身が当事者と構造的に関わり合っているという事実からは逃れられない。そうである以上、「自己責任だ」と切り捨ててしまったところで、問題は何も解決しないですし、「私たちがその人を間接的に困窮状態に置き続けている」という居心地の悪さしか残らない。これが、僕が支援をする際のモチベーションです。

話が少しそれますが、学生時代に、大学の先生から聞いた「支援に向いていないと思う2タイプの人」という話を今でも時々自戒をこめて思い出します。

1つは、優しすぎる人。優しすぎて、相手と関わっているうちに心労をもらってしまう。もう1つは、熱すぎる人。想いが強すぎると、当事者に対する「こうなってほしい」という願望も強すぎて、相手を追い込んでしまうことにもなりかねない。人間ってそんなにうまくいかないし、「うまくいく」の定義も人それぞれ違う。だから、あまり支援者の願望が強すぎると、当事者は無理に期待に応えようとするし、支援側は「これだけ関わっているのになぜうまくいかないの!」とお互いしんどくなってしまう。

──永井さんはそのどちらでもないタイプですか?

自分ではよくわからないのですが、当事者との関わり自体を“楽しめるタイプ”なのかなとは思います。当事者の方と話をするなかで「そう考えるのか~!」と自分の想像を超える行動や言葉に出会うことも多く、人間の多様性っておもしろいなあと。

先ほどの話にひきつけていうと、「この人もっと頑張れるんじゃないか…」と心のどこかで思う人に出会った時のほうが、自分のなかの「当事者はかくあるべし」といったステレオタイプの存在をつきつけられている感じや、自分の常識をゆさぶられる感覚がシンプルに“おもしろい”な~と感じます。

自分と同じようなバックボーンだったり、学歴だったり、社会の出方をした人たちは、接した機会が多い分、考え方やふるまいも想像しやすいのですが、ホームレス状態の方や生活保護を受けている方たちは、こちらからアクセスしないとなかなか関わりをもてない。だから、話をして関わること自体がすごく楽しい。

販売者相談の様子 (2)

路上生活当事者の方の相談にのっている様子

 

社会的マイノリティな方の声はどうしても小さくなってしまいがちですよね。ホームレス状態の方に関していえば、食べるものがないとか、家がないとかっていうことは認識されているけれど、「実質的な意味では選挙権がない」っていうことについてはあまり騒がれない。民主主義の国としては選挙に行けない人がいるなんて、国家の正当性を揺るがすような大問題のはずなのに。

現状、彼らの声が社会に反映される手段がないですよね。こういう、なかなか意思表示できない方たちがいるという現状が、気持ち悪くてしかたないんです。逆にいうと、そういう方たちの声を聞いて発信するという業務に関われた時は、すごくやりがいを感じます。

人間関係が穏やかな、こわいぐらい居心地がいい職場。

─社会で埋もれてしまいそうな小さな声をすくい上げるということですね。ほかにビッグイシュー基金ならではの楽しさのようなことはありますか?

手前味噌になりますが、この職場って、人間関係がとてもいいんですよ。人が10人くらい集まると、浮いてしまう人、陰口を言う人、言われる人…などいると思うのですが、そういうことがなくて、こわいくらい居心地がいいんです。

これは仕事柄、当事者の方に対する意識がスタッフ同士にも向けられているからかなと思っています。相手の意見を尊重する、自分の意見を押し付けないなど。当事者の方に対して、「今日何か元気ないんじゃない?」「疲れてない?」とか、表情や声の調子からいろいろ読み取ろうと努めるわけですが、それと似たやりとりがスタッフ同士でもされているように感じます。

誰かから教わったわけでも、クレドとして明文化されているわけでもないのですが、ビッグイシュー基金の組織文化としてあるんだと思います。本当に職場の人間関係でいやだなあと思ったことは一度もないですね。

─永井さんは大学院を出た後、ビッグイシュー基金に就職されていますが、NPO法人で働くことに迷いはありませんでしたか?

ありませんでした。ビッグイシュー自体はもともと知っていて、ちょうど進学して研究を続けるか、就職するか、迷っていたときに求人を見つけたんです。

自分の中では、どんなに給料をもらってもやりがいが感じられる仕事でないと続かないだろうなと思っていて、その時は、資金もノウハウもないのに、いっそのこと自分で貧困に関する情報を発信する媒体や団体を立ち上げてしまおうかなどと無茶なことを考えたり。そんな時期だったので、むしろやりたいことにすごく近い仕事で給料がいただけるビッグイシューの条件は、僕にとって魅力的に映りました。

実際、仕事そのものも楽しいのですが、予想以上にマルチタスクで、時々、自分は何屋だろうと思うときがあります。先日はシェルターの階段修理をしていました(笑)。

僕らが伝えるのではなく、直接、語り合える場をつくりたい。

─永井さんの今後について教えてください。仕事を通して、何か挑戦したいことはありますか?

社会的マイノリティの方が話す場をつくることに関心を持っているし、やりがいを感じているので、そういった場を広げていきたいです。昨年の夏、ある非営利団体からの依頼で、日本の貧困を学ぶスタディツアーを実施したんです。大学生十数人に対してビッグイシュー基金の事業説明や貧困問題についてのレクチャーをしたうえで、実際に路上生活者2名をお呼びして参加者とディスカッションをしてもらいました。

スタディツアーSNS

スタディツアーの様子

直接語り合える場をつくったことがすごく楽しかったですね。学生も気になることを直接自分の言葉で尋ねることができるし、路上生活当事者の方も言いたいことがそのまま言える。

僕らスタッフがまとめるのではなく、直接言葉を交わしてもらう。当事者の言葉を、大学生たちに届けられてうれしかったです。

今後はこうしたリアルな場をつくりながら、アウトリーチとして現場にも出かけつつ、週末は問題解決の研究を深める、そんな「現場」と「研究」を両輪で進めていけたら理想ですね。

編集部より

「DRIVEさん経由でごきげんなスタッフが入社しました!」とのしらせを聞いて早1年、ようやく会いに行けました。インタビューの途中でビッグイシュー基金の立ち上げから尽力されている長谷川さんも会話にまざってくださり、いかに彼が組織にとって重要かということを熱く語る場面も。スタッフルームに「みんなちょっと疲れている?」という空気を感じたら、誰彼ともなくお茶がふるまわれ、なにげない会話が始まるというエピソードもうかがいました。同じチームのなかで、互いを尊敬しあい、いたわりあう文化がとても素敵だなと思いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

永井さん(右)と長谷川さん

この記事を書いたユーザー

たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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