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#経営・組織論

右腕とどう出逢う? 手放したものはなに? 社会起業家のホンネとシッパイをぶっちゃけて聞いてみた①

2018.05.15 277view 

素晴らしい事業内容や成功体験だけが語られがちな起業家にも、その裏でたくさんの失敗や裏側で密かに工夫している点があるもの。今、事業や活動を行っている起業家にとっては、そんなリアルな話こそが参考になるのでは…!?そんな想いを元に、普段はなかなか話せない、失敗談や、ヒトモノカネの話までを語りつくしてもらう会、社会起業塾ぶっちゃけナイトVol.1 ~“ヒト”に関するあれこれ~ の様子をレポートします。


今回”ぶっちゃけて”くださったゲストは、クリスマスのサンタボランティアを組織するチャリティーサンタの清輔夏輝さん、障害のある人とともに働く農場を運営しているつくばアグリチャレンジの伊藤文弥さん、民間学童の世界を切り開くChance For Allの中山勇魚さんの3人。お三方のプロフィールはこちら。

右から、チャリティサンタ清輔さん、つくばアグリチャレンジ伊藤さん、Chance For All中山さん

右から、チャリティサンタ清輔さん、つくばアグリチャレンジ伊藤さん、Chance For All中山さん

●清輔夏輝(きよすけ なつき)さん / NPO法人チャリティーサンタ

NPO法人チャリティーサンタ:2008年設立。全国23都道府県でスタッフ数は約400名(うち有給スタッフ2名※パート含む)。日本最大級のサンタクロースの団体。メイン事業の「サンタ活動」では、保護者から「プレゼント」と「子どもの良いところ&応援するメッセージ」を預かり、独自のサンタ研修を受けたボランティアが、直接子ども達の元へ訪問する。2017年のクリスマスまでに、1万人以上のボランティアサンタによって、2万人以上の子ども達にプレゼントを届けている。2014年にNPO法人化。2015年度花王社会起業塾生。

・清輔夏輝さんプロフィール:千葉生まれ福岡育ち。国立高専卒業後、ITフリーランス&ブロガーとして独立。ヒッチハイクで日本を3周し、2007年にマイ箸から始めた「エコわらしべ長者」(物々交換)で風車にする社会実験プロジェクトを様々実施。2008年「チャリティーサンタ」を立ち上げ、途中、人生修行のために(株)サイバーエージェントでビジネス修行を行いつつ全国組織に成長させる。チャリティーサンタをはじめたのは、6歳の時に軽トラに乗ってサンタが来たことが原体験。また旅行中、たくさんの人にやさしさをもらい、恩が返せないことに体がモゾモゾしていると、道中の本能寺の和尚さんに「恩は返せない、次に渡せばいい」と言われ、これがチャリティーサンタの活動に繋がった。

●伊藤文弥(いとう ふみや)さん / NPO法人つくばアグリチャレンジ

NPO法人つくばアグリチャレンジ:2011年設立。スタッフ数45名(うち社員38名)、障害のあるスタッフ100名。「障がいのある人とごきげんな社会を作る」を理念とし、障がい者支援のプロフェッショナルが集まる、地域に開かれたごきげんファームを目指して活動を開始。2011年に特定非営利活動法人の認証を取得し、障がいのある人が働く「ごきげんファーム」を開き、1.6haの畑を借りて8名の障害のあるスタッフと事業をはじめる。地域の農家さんにお手伝いにいく農業ヘルパー事業、地域の方向けの体験農園やベビーリーフ、ミニトマト、モロヘイヤの契約栽培などを行う。2013年に雇用型の就労支援、就労継続支援A型、2014年には地域の方に向けた野菜セットの直接配達を展開。2014年度花王社会起業塾生。

・伊藤文弥さんプロフィール:1988年生まれ。筑波大学在学中より当時つくば市議だった五十嵐立青氏(現つくば市長)の下で議員インターンシップを行い、農業の問題、障害者雇用の問題を知る。農業法人みずほにて研修を実施。ホウレンソウ農家を中心に農業の専門知識を学ぶ。同時に障害者自立支援施設でも勤務し、障害者福祉についても実地で現状を学び、つくばアグリチャレンジを五十嵐氏とともに設立、副代表理事に就任。第一回いばらきドリームプランプレゼンテーション大賞受賞。2012年公益財団法人日本青年会議所主催の人間力大賞にてグランプリ受賞、2013年世界青年会議所主催の「世界の傑出した若者10人」選出。

*DRIVE過去記事:「障がいを持っていても“ごきげん”に地域で生きる仕組みを」 認定NPO法人つくばアグリチャレンジ副代表理事・農場長 伊藤文弥さん

● 中山勇魚(なかやま いさな)さん / 特定非営利活動法人Chance For All

特定非営利活動法人Chance For All:2013年設立。スタッフ数22名。『生まれ育った家庭や環境でその後の人生が左右されない社会の実現』を理念に掲げ、2013年に民間学童CFAKidsを開始。現在は足立区を中心に8箇所の学童保育を展開。2015年度花王社会起業塾生。

・中山勇魚さんプロフィール:

早稲田大学教育学部卒業。18才の時に家庭の事情で家族が夜逃げ。東京都内のホテルやウィークリーマンションを転々とする。環境によって人生が大きく変わってしまう経験を経て「家庭や環境で人生が左右されないためにはどうしたらよいのか」を考え始める。大学在学中に様々な環境のこどもたちや教育のあり方について学んだり、学童保育の指導員として現場で勤務する中で放課後の可能性に着目。卒業後は保育系企業にて新規園の開発に従事。その後、IT企業でシステムエンジニアとして勤務しながら学童関係者とともに「こどものたちのための放課後」を実現するための準備を開始し、2014年に民間学童が進出できないと言われた足立区で初の民間学童CFAKidsを開校。

 

Q:”右腕”となる存在にどう出会いましたか?

司会:米田(ETIC.社会起業塾担当コーディネーター):本日はお集まりいただきありがとうございます。今日のテーマは“ヒト”や組織、ということでたくさんお話したいテーマはあるのですが、まずは、起業家からよく聞くニーズとして、「右腕が欲しい」というものがあります。ミッションや課題の解決にいっしょに取り組んでくれる経営メンバーが欲しい、というニーズです。皆さんはそれぞれそういう”右腕”がいらっしゃると思うのですが、そういう人材とどう出会うのか? また役割はどう分担しているのか? お聞かせいただけますか。

清輔夏輝さん(以下”清輔”):うちの場合は結果的に、長く残ってる人が中枢になってくれています。10年くらいですかね。一人は、週に1日だけチャリティーサンタで働いていて、あとの4日は岡山のNPOで働いています。NPOの法務とビジョンに関わる部分をやってくれています。もう一人は、福岡からオンラインで助けてくれてるんですが、団体の中では中枢の存在。働き方的にもいわゆる”右腕”という感じではないですが、かなり先までいっしょに走れるパートナーであり、右腕的な存在です。

米田:お二人ともフルタイムのコミットではないのが面白いですね。伊藤さんいかがでしょう。

伊藤文弥さん(以下”伊藤”):僕も右腕になる人が居たらなあと思っていましたね。そういう存在ができたきっかけは社会起業塾で、社員といっしょに社会起業塾に参加したら、その社員が右腕的存在になっていったんです。また、新しい農場の起ち上げの時、経営目線のあるメンバーが欲しいということで、DRIVEで求人を出したことがありました。何人も優秀な方から応募いただいたんですが、一人、子どもがいるため時短でしか働けないという方がいらっしゃって。時間の制限はあるものの、うちの組織で活躍してもらえそうだだと感じて、その方を採用しました。その経験からの思うんですが、なんでもやってくれそうな人をイメージして「右腕が欲しい!」と言っていても、そんな人はなかなか見つからない。自分が弱いところを何人かで担ってもらおうと考えたほうが現実的だと思いますね。

中山勇魚さん(以下”中山”):ぼくの団体には右腕と左腕がいます。団体を立ち上げる5年前から確保していました。一人はどんな状況でも文句を言う、指摘してくれる人。これはぼくの性格的に、経営がだんだん独裁的になっていくことがあらかじめわかっていたからです(一同笑)。もう一人は、キツい職場になることもわかっていたので、ストレスフルな職場で人と人を繋いでくれる人。スタッフや社員とうまくコミュニケーションをしてくれる存在ですね。この2人を探すために、キッザニアで1年バイトをしました。2人を口説いて、学童起ち上げの準備をしていた5年間、一緒に部屋を借りてともに生活しました。一人ではできないとわかっていたので、事業計画より前に創業メンバーをどう巻き込むかを考えました。

Q:組織の成長に伴って手放してきたことはなんですか?

米田:ありがとうございます。「右腕」の捉え方も出会い方も様々ですね。では次にお聞きしたいのは、「手放してきたことはなんですか?」という質問です。組織の成長と拡大に応じて、自分でやり続けることと、スタッフに任せて手放すことがあると思うのですが、その分け方はどう決めているのでしょう?

中山:手放したのは、「質」ですね。「こどものために人生を捧げる」、「10万時間働いて99点を取りにいく」、「仕事は遊び、遊びは仕事」、というのが僕個人としての考えだったんですが、それだと先生たちの人生が成り立たないので。以前は8月の労働時間が400時間とかでした。組織としてはそれは捨てて、90点でいい、と手放しました。これは施設が8校舎になって組織が大きくなってきたのでぼく一人で全家庭を見切れなくなったというのもあります。任せたのか、諦めたのか、どっちなんでしょうか(笑)。一昨年までは100家庭近くのすべての家庭の保護者面談に僕も同席して、メールの返信もすべてチェックしていました。

伊藤:ぼくは逆で、割とすぐに任せちゃうタイプですね。違うなと思うことがあっても、任せている分冷静にフィードバックできます。

清輔:ぼくは、「できないことはできない」と言ったほうがいいと思ってます。そしてできないなら早めに言ってくれ、という。幸いなことに組織に、「じゃあやるよ」という人がいるというのもあります。あとはお金が絡むことや、致命傷になる可能性があることは自分でやることにしています。

米田:自分で全部やっていた状態から任せていくのが難しいというのは、起業家あるあるな悩みですよね。ありがとうございました。会場にいらっしゃってる皆さんからの質問に移らせていただきます。

Q:ビジョンをチームにどう浸透させればいいですか?

(会場参加者からの質問):病気の人の家族のサポートを株式会社としてやっています。社員は自分だけで、あと数名のプロボノスタッフがいるんですが、組織のビジョンを浸透させていくところに課題を感じています。ビジョンがぶれないように出来る限り徹底しているつもりですが、やはりずれることがあるんです。

清輔:悩んだときにみんなが立ち返ることができるフレーズ、一つの文をつくるのはいいと思います。明文化ですね。合宿をしたり、すこし時間をかけてみんなでつくる。

伊藤:そういう意味でいうと、ボランティアやインターンよりも、お金を払うほうがマネジメントはラクです。規模が大きくなっていくときにボランティアだと難しくなっていくことはある。

清輔:長く続けてくれているとても優秀なボランティアの女性がいるんですが、つい先日彼女に「どうして続けてくれているの?」と聞いたところ、「”あなたが必要だから今年もやってくれない?”と毎年言われるから」と言ってました。「あなたが必要だよ」と面と向かって言うことは、金銭の有無に関わらず大切なことだと気付かされました。

会場の様子

会場の様子

Q:スタッフが意欲的に働いてくれるためのコツは?

(参加者からの質問):より意欲的に働いてくれるためのコツはなんでしょう?残業とか休みなしで働けと言いたいわけではないんですが、やっぱりサービスの質や理念にコミットはしてほしい。それをどう伝えたらいいんでしょうか?

中山:前年度、先生が10人増えたんですが、前半はあまりうまくいかなかったんです。以前は、先生たちに対して、「校舎の子の小学校の運動会には、日曜でも行って全力で応援すること」というのを言っていたんです。こどもにとっていい環境をつくりたい、それをやりたくて学童をやっているなら早朝も深夜も土日も関係ないという考え方で。これは労働基準法のことはあまり考えていません(笑)。でも新しく増えた先生たちは公募して来てくれた人たちなので、それをあまり強く言えなかったんですね。そうしたらだんだん「運動会、行く必要あるの?」「プライベートは?」という雰囲気になってきてしまった。これはダメだなと思って働き方や考え方を伝える研修を行い、土日のイベント参加は必須にしました。そしてプライベートを大切にしたい人は基本給を下げる、その代わり残業代をつける、という働き方をつくって、どちらにするかを自分で選んでもらうことにしました。結果としてはプライベート重視を選ぶ人はほとんどいませんでしたね。

伊藤:この質問は、どんな活動をやっていて、どんな人たちが関わっている組織かによりますね。たとえば福祉だと、お母さんたちがけっこう活躍していたりします。そうなるとどうしても子どもたちが戻る時間までには家に帰りますよね。僕は残業はしないほうがいい派だし、理念をサービスに反映するなんてことは一部のマネージメント層ががんばればいいという考え方。中山さんのところは少し特殊かもしれません(笑)。

中山:結婚しているか、子育てがあるかとか、代表の生活スタイルの違いというのはありますよね。

伊藤:そうですね。僕は6時には家に帰ってます。でも8時にはまた仕事してますけれど(笑)。

Q:◯◯◯をしてくれる人を求めているんですが、どうしたら集まりますか?

(参加者からの質問):今は一人で活動していまして、一緒に働いてくれる人が欲しいなと思っています。特にWEBの更新や文章を書いてくれる人を必要としているんですが、どうしたら集まるでしょうか?

清輔:文章を書いてくれる人を集めようとしても集まらないですよね。団体として「こういうことをやりたい」って作りたい世界を伝えるほうが大事。その理念に共感した人が集まってきて、その中に文章を書ける人がいたらラッキー、という順番だと思います。自分が確信を持っていることを訴えていれば、実績とかなくても意外と人は巻き込まれていくんですよね。

米田:ありがとうございます。スキルがマッチしても目指すところが違うと結局マネジメントに苦労されることが多いですよね。それでは最後に組織に関してのメッセージをいただけますでしょうか。

2

清輔:チャリティーサンタの場合はボランティアが多く、給料を出している人が少ないので、ライフスタイルの変化で関わりが遠くなったり卒業したりする人もけっこういます。そういう選択を自然に選べるような状況でいいのではないかと思っています。自分の人生を振り返っても、10年続いたことって実はチャリティーサンタの事業しかなかったりして、ほかのことは自然と続かなかったりします。そういうものだなと。だからピンと来た人とそのタイミングでマッチングする、ということでいいのかなと思います。

伊藤:個人としては気をつけていることが3つあって、1:メールには即レスする。2:お世話になっていることや助けてもらってることを伝える。3:お世話になってるときにがんばって成長する。いろいろなプログラムでいろいろな方から支援してもらっていますが、そういう人たちの期待に応えるのが大事だと思ってやっています。

中山:どういう働き方を自分がしたいのか? スタッフにどう働いてほしいのか? 学童保育のプロとしてご飯を食べられる人を作りたいとか、家族と過ごす時間を大事にしてもらいたいから残業はさせないとか。むちゃくちゃ働くけど給料は通常の倍を出すとかでもいい。そういった理念をしっかり作るのが大事だと思います。それをしないと右腕になる人や深くコミットしてくれる人は出てこないんじゃないでしょうか。

米田:ありがとうございます。三者三様の組織の話、とても興味深かったです。個人的には、代表本人が楽しくやっていると結局人も巻き込まれていく、という話が印象に残りました。

ゲストの3人は、社会起業塾イニシアチブ(以下”社会起業塾”)のOBです。社会起業塾は、セクターを越えた多様な人々の力を引き出しながら、課題解決を加速させていく変革の担い手(チェンジ・エージェント)としての社会起業家を支援、輩出する取り組みで、2002年にスタートしました。

6/4正午まで、<a href="http://kigyojuku.etic.or.jp/apply/">2018年度の募集</a>を行っています。興味のある人はぜひコンタクトを!

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NPO法人ETIC.のDRIVE事務局です。ワクワクドキドキする記事を皆さんにお届け出来るよう、日々駆けずり回っています。

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