デジタルネイティブであることを強みに、繋がりを広げていく大学生たち。
2000年生まれの子が18歳になる今年、1990年代後半以降に生まれた若者たちを巷では「Z世代」というそうです。
インターネットやSNS等の恩恵を存分に受け、「絶えず接続される生活」を送ってきたこの世代が、いまどんなことを考えているのか、ある大学でのパネルディスカッションの様子から紐解いていきたいと思います。
人生のテーマは「楽しく生きる」―休場さんの場合。
自分の人生のテーマは「楽しく生きること」と言い切る休場さんは横浜市立大学国際総合科学部に通う3年生です。そんな彼女ですが、大学受験時に自分が思っていた通りにはいかずレールを外れ、かつては生きづらさを感じていた時期がありました。「幸せとは何か?」を自問自答しては悶々と過ごす日々が続き、嫌気がさしていたそうです。
そんな中、大好きな弟が夢に向かって挑戦している姿を見て、刺激を受けて「何のために大学に行くのか」「何のために生きるのか」を高校生のうちから考える場が必要だとの考えにいきつくようになります。
そこから自分でイベント等にも足を運ぶようになり、自分の人生について考える「哲学対話」に出会いました。今では「哲学対話」の手法を用いながら、高校生向けに人生を考えるきっかけを提供する「ジブン2.0」というイベントを企画、主催しています。
きっかけはささいなこと、でも自分の考えを話したりイベントに参加したりしたときに「きっとできる」「いいね!応援してるよ。」というポジティブな声をかけてくれる存在とであったことで、背中を押されたといいます。そこからの彼女は留まることを知らず、様々なイベントに参加しネットワークを広げ続けていきました。さらに未来のヒントを得るべく夏からは留学も予定しているという休場さんは、すべての若者が自分の人生の主人公になることをサポートする大人になりたいと語ってくれました。
目指す生き方は「一生青春」―内田さんの場合。
2人目の登壇者は、横浜国立大学 経済学部3年の内田陸生さん。内田さんは、高校1年生から目指していた横浜国立大学に進学。しかし大学入学後に授業を受けるだけの生活に違和感を覚え、しだいに学外に出るようになったそうです。
そんな中、良く出没していた新宿付近では学生団体はたくさんある、一方地元には無い。それならば作ってしまえということで、愛してやまない地元、湘南から「イケてる若者文化を世界に発信する」というビジョンを掲げて湘南基地プロジェクトを開始。来春に向けては高校生と大学生が一緒になって運営し、夢を語り合える場である「高校生カフェ」を作るために活動をスタートしているとのこと。生産者側に回る活動を高校生と一緒に広げていきたいと語ります。
彼のテーマは「一生青春」。みんなで一つのゴールに向かっていくことや、「原体験」となるような強烈な体験をすることを青春と定義づけています。思いに共感してくれる仲間を募集していると熱い想いも伝えてくれました。
「暫定解」を出してとにかく前に進む―菅野さんの場合。
菅野さんは現在、神奈川大学国際経営学部の4年生。自然が大好きでアウトドアにもよく家族で出かける等、のびのび育ってきました。見つけた好きなことは、とことんやってみる一方、既存の学校生活になじみづらさを感じたり、アルバイトで決められたことを機械的にこなすことに違和感を覚えたりしていたそうです。
そんな大学3年の夏、将来は社長になりたいと思っている仲間4人と協力し、「Seaside Squad」という果汁120%のジュースバーを鎌倉で1か月限定で立ち上げました。多数のメディアにも取り上げられ、仲間と力を合わせ必死で1日22時間も働いていたものの、最終的には100万近い赤字を出してしまったという苦い経験も経て、自分が好きだと思うことをとことんやる、そのことに怖いこと等何もないということに気づいたそうです。
自分らしくあることに素直、何を強制されることでもなく清々しくプロジェクトを立ち上げていく大学生たち
―それぞれに面白い活動をしていますが、どんな思いで活動をし始めたのですか?
内田:今まで生きてきた中で、消費者として生きていくことしかなかったなあと思って。けど、それでは社会人になったら生きていけないんですよね。お金を生み出すためには、誰かに価値を与えないといけません。それが所謂「ビジネス」なんですけど、僕はその経験を大学生のうちから経験していくのが、自分の人生を考えるにあたって大事だと思っています。僕がこのような活動を行っているのを高校生に知ってもらうためにも、カフェを開きたいと考えました。
休場:私はもともと年の離れた弟がいて、かわいくて、それで教育関係で働きたいと考えていたのですが、ITなどでインターンをして違う世界を見てみたい、と考えてもいて、実際にIT起業家の元でインターンやってみたらその人たちが考えていることに触れてガツン、と衝撃を食らいました。自分と全く違った思考を持つ人たちと出会うことで、自分がそれまで持っていた考え方をさらに一段レベルを上げ、その考えを言語化することでさらに自分の軸を深めることにつながるのではないかと思います。
菅野:自分の場合は、同じように社長を目指している仲間に出会ったことが大きかったです。仲間が本気なら自分も頑張れるし、自分が頑張れば仲間も頑張れると思うんです。休場さんのように目の前にいる人を助けたいという一心でアクティブに活動していき、その中で人との輪を広げていく人って同世代では多いですよね。こうだと思ったら迷いはあっても、動き出すと同じような仲間に出会って前に進めるということはあると思います。
―皆さんが活動していく中で出会ったもので影響を受けたものはありますか?
菅野:僕は「カマコン」で出会った「ゼンブ、ジブンゴト」ですね。「自分事」って、あまり聞きなれない言葉だと思うんですけど。外国で起きているニュースを聞いてもなかなか共感できない、というのはあるかもしれない。けど、例えば駅で困っているお母さんがいたら助けてあげるように、ぼくたちは、結構自然に物事を自分事としてみているんです。
この環境づくりをしているのがカマコンで、みんながやりたいことを述べてから、みんなでブレインストーミングをして、そのアイデアを反対意見なしでどんどん磨き上げていくんです。これは人の話をしっかり聞かないとアイデアをのせられませんから、みんな真剣になって、アイデアを自分事としていつのまにか考えてしまうんです。やっていくうちに勝手に結束が高まって、気が付くと2か月後なんかにはカマコン発のプロジェクトに参加していた、なんてことがよくあります。こういうカマコンが僕は大好きです。
休場:大人の人に出会うとやっぱりいろいろフィードバックをくれるし、学生が知らないこともいっぱい知っているから、世界は広がりますよね。気づくといろんなイベントに顔を出すようになっていました。
内田:うーん、なんだろ。でもやっぱり同世代で語る場って大事ですよね。というわけで、8月に飲み会やるんで、興味ある人はFacebookでつながってください(笑)。
SNSもクラウドファンディングもシェアリングエコノミーも思い立ったら手段として颯爽と使いこなすことができる、デジタルネイティブ世代の大学生たち。学生が何かを思い立った時にプロジェクトを立ち上げるハードルは、かつてより格段に低くなっていることを感じます。
一方、豊富に手段は使いこなせたとしても、同世代の学生達の中には昔と変わらず、「そもそも何をやりたいのか」「自分はなにものなのか」の見つけ方がわからず、悶々としている場合も私たちの知る限りは少なくありません。
また、空気を読むことにもひときわ長けている彼らは、想いやアイディアを内に秘めて、そつなくこなすことや演じることに徹していることも多そうな印象です。
今回、彼らのトークを聞いてみて、「Z世代の覚醒」が、次々に花開いていくには、彼らのポテンシャルや才能を面白がる社会側の変化も同時に必要となるのではないかと感じました。
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