「社会を変えたい」「社会をより良くしたい」という思いの実現を仕事にするNPOだからこそ、働いていると大きなやりがいを感じるときもあれば、選択に迷うときもあるのが自然なことなのかもしれません。
どうすればいいか判断するときに参考の1つにしたいのが、すでに似た経験を積み重ねた先輩たちの言葉です。彼らはNPOでの仕事を通してどんなことに気づき、先に進む指針としていたのでしょうか。
多様な価値観のメンバーが集まるチームで優先させることは?状況が変化するなかで自分の目的やモチベーションを見失わないために大切にしたいことは?新しい事業づくりで大事にしたい心構えは?
読者の方がこれから経験するかもしれない壁を納得しながら超えられるように。これまでDRIVEメディアで公開してきた記事から、迷いが気づきの瞬間に変わるような言葉をご紹介します。
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※登場する方の役職及び写真は記事掲載時のものです。
自律的に動き、チームメンバーと成長し合う
まずは、多様なチームメンバーとの仕事をよりよい形へ発展させるための考え方を表す言葉です。
「千年建設株式会社」の代表取締役、岡本拓也さんは、かつて企業からNPOに転職し、組織をマネジメントする立場として活躍していました。当時のインタビュー記事では、経験から感じることの一つに、アフリカのことわざ「早く行きたいなら一人で、遠くへ行きたいならみんなで行け(If You Want To Go Fast, Go Alone. If You Want To Go Far, Go Together)」を挙げています。
NPOでマネジメントなどの役職を担い、活躍していた岡本拓也さん
問題を解決するために最適な解を選ぶか、チームのみんなで対話をして納得した解を選ぶか。活動を続けているとこうした問題が発生するのだそうです。その際、納得できる解を選び、信頼できるメンバーの意見を取り合いながら方向性を調整することがあるとのこと。
その理由を、岡本さんはこう話します。
結局のところ、みんなで納得感をもって取り組んだほうが、結果としてうまくいくことが多いという実感があるからです。ちょっと遠回りだったり、危うさがあるように見えても、みんなが腹に落ちている状態で物事にあたったほうが、まわりまわって不思議と良い結果につながることが多いですね。
そういうことを踏まえて、最終的に意思決定します。あとは、その結果をまるごと引き受ける腹を括ることが大切ですね。
また、「みんなで信頼し合い、自律的に仕事をしたほうが人は成長します。それが、組織の成長と社会へのインパクトに繋がっていくのだと思います」とも。
こうした考え方を実践しようとする組織が多いのが、NPOの特徴なのかもしれません。関心のある団体がどんなことを大切に組織として成長しようとしているのか気になる方は、公式サイトなどでその団体が発信することに注目したり、または直接その団体に聞いてみたりしてはいかがでしょうか。
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NPOマネジメントの現場から:「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」SVP東京代表理事、NPOカタリバ常務理事/事務局長・岡本拓也さんインタビュー(4)
義務感ではなく、「楽しい」仕掛けで社会のうねりをつくる
社会課題解決を大きな目的とするNPOが多いなか、自分の目的やモチベーションの源に立ち返ることが出てくるのかもしれません。そういったときは、「こういう考え方もある」と、このお二人の言葉を参考にしてみてください。
まずは、「特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International」代表理事の小暮真久さんです。
特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International代表理事の小暮真久さん
「TABLE FOR TWO International」が展開する主な事業の特長は、対象となる外食や食品を食べることで、開発途上国の子どもたちに給食を届ける仕組みを実現していること。関わる人たちの健康が改善できることを目指してこの事業を広く展開しています。
そんな小暮さんが事業に対する姿勢として語っていたのが、こちらの言葉です。
僕は、「社会貢献が必要だからやる」というより、「楽しいからやる」という仕組みをつくっていきたいと思っています。義務感より、楽しさに訴えていきたいのです。だから、色んな新しいことに取り組んで、興味関心のシェアを拡大していく必要があります。それも、社会貢献の枠の中でTFTが選ばれるというより、デートや飲み会、バイトやSNSでのやりとりといった様々な「楽しい」の中で、シェアをとっていくことが重要です。
「食の不均衡という世界の問題には、大きなうねりをつくっていかなければ変化を与えることはできない」と小暮さん。限られたメンバーで課題解決にアプローチしていくためにも、楽しいと感じることで多くの人を巻き込んでいきたいと話していました。
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「社会貢献の枠を超えて”楽しい”のシェアをとる」TABLE FOR TWO International代表理事・小暮真久さんインタビュー(前編)
「やりたいこと」に時間をかければやりがいも大きくなる
仕事への思いを自分で確かめたいとき、この方の言葉も参考になるかもしれません。LGBTを含めた全ての子どもがありのままの自分で大人になれる社会を目指す「認定NPO法人ReBit(リビット)」で働く井澤さんです。
認定NPO法人ReBitの井澤さん
教師などを経てIT系企業で働いていた井澤さんは、ある時から「自分は、本当はなにがしたいんだろう」と考え、転職活動をしながら自分のやりたいことを探していたそうです。そんななか、ボランティアで参加していたLGBTのイベントを通して、若い当事者の子たちの悩みが時代を経てもあまり変化していないことに気づき、「自分にも伝えられることがあるのでは」と思うように。そんなときに出会ったReBitのビジョンに共感し、飛び込むことを決めたといいます。
インタビュー当時は、講師業、事業企画、イベント運営、事務局業務など幅広く仕事を担当していた井澤さん。表に出ることが増え、求められるスキルも高いけれど、仕事にやりがいを感じると話していました。そんな井澤さんが転職を考えている人に向けて語ってくれた言葉がこちらです。
やっぱり、やりたいと思うことをやっている方が楽しいと思います。自分の中で大切にしたいものは人それぞれ。その一つがもし仕事だと思うなら、つらかったり、やりたくないことに時間を費やすよりも、やりがいを感じることに時間を使った方がよいのではないかなと思います。
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一般企業からNPOへ。「LGBTで生きづらさを感じる若い人に、自分の経験を活かしてほしい」【未来をつくる仕事への転職インタビュー:認定NPO法人Rebit】
自分の「できること」に集中し、必要に応じてまわりにも相談を
次に、具体的な支援活動で参考にしたいお二人の言葉をご紹介します。
子どもの支援を展開している「特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル」は、原則18歳で児童養護施設や里親家庭などから巣立たなければならない子どもたちの自立を支える活動をしています。
取材したのは、子どもたちの支援とボランティアをつなぐ業務などを担当している下原さんです。
特定非営利活動法人ブリッジフォースマイルの下原さん
下原さんは、「ブリッジフォースマイル」の仕事をするうえで心掛けたいことについて、次のように語りました。
子どもたちと関わるなかでトラブルも時々起こります。そこで驚かず、臨機応変に動ける力は必要かなと思います。ただ一番重要なのは、支援というものを客観的にとらえながら、自分の限界を認識して、できることに集中することです。いざという時に相談できる相手をたくさん作ることも大事です。
自分の業務について客観視しながら、悩みを一人で抱え込む前にまわりの仲間に相談をする。このことは、子どもの支援だけでなくどんな支援においても視野を広げるきっかけにもなり、まわりや支えたい人に対してよりしなやかな関係性を可能にするのかもしれません。
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社会の強く、しなやかなつながりを作るために。児童養護施設等から巣立つ子どもたちの自立を支えるブリッジフォースマイルの仕事現場に密着
失敗は「気づきのきっかけ」
就労移行支援事業所「働くしあわせJINEN-DO」を運営する「一般社団法人働くしあわせプロジェクト」は、精神・発達障がいの方が、セルフケアで安定就労を実現する取り組みを行っています。支援員として働いている内田さんは、利用者の方に寄り添うプログラムを運営しながら、日常の業務を通して随時プログラムを改善するという徹底した現場主義のもと、定時までの業務時間を濃厚に過ごしています。
一般社団法人働くしあわせプロジェクトの内田さん
判断に迷う時間もないなか、現場主義での仕事が実現できる理由の一つとして、「“失敗を気づきのきっかけにする”文化があるからこそ」と、内田さんは話します。
何かうまくいかない時、『失敗』ではなく『気づきのきっかけ』だねと利用者の方に言います。それは、スタッフも同じです。うまくいかなかった原因について健全な振り返りはするけれど、妙な追求はしすぎない。じゃあ次どうする?というのを常に考えるようにします。
でも、一度利用者さんと信頼関係を失ってしまうと、取り戻すのは難しいです。生身の人間を相手にする仕事なので、そこはすごく慎重に扱っています。
NPOをはじめ、社会課題解決や新しい価値観づくりを目的にした団体・企業では、よく「挑戦」という言葉が使われます。失敗を恐れずに新しいチャレンジを、など。もちろん、場面によりますが、たとえば失敗が許されないことに臨む過程のなかでも、失敗を「気づきのきっかけ」と捉えられると、考え方が少し軽やかになるのかもしれません。
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働くことは、生きること。働く幸せは、生きる幸せ。就労移行支援事業所「働くしあわせJINEN-DO」の仕事現場に密着
前例がない=社会実験。お客さんからの苦情もすべて学びになる
最後に、新しい事業や社会の仕組みを立ち上げるうえでの心構えについて、この方の言葉をご紹介します。
24時間365日の在宅ケアを提供する「特定非営利活動法人ケア・センターやわらぎ」代表理事の石川治江さんです。石川さんは、障がいをもつ友人の手伝いをした体験から、在宅ケアのサービスを立ち上げました。
特定非営利活動法人ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さん
「介護はプロに、家族は愛を」を合言葉に、介護をプロが提供する「サービス」に切り分け、今の介護保険制度のモデルとなる仕組みを創り出した石川さん。社会の変革までも実現した石川さんは、世の中になかったサービスを世に出すまでに、「無い無いづくし」で始まった挑戦を振り返って、こう語りました。
前例がないサービスをどう仕組みにするのか、どう価値を伝えていくのか、相当に苦労したけど、要は社会実験をしていたんですよね。どこもだれもやっていないから、成功するかどうかはわからない。だけど前例がないから、現場の工夫も、お客さんからの苦情も、職員からのクレームもすべてが学び。貴重な機会だったのです。
挑戦に挑戦を重ねた社会実験によって、介護の常識も変えていった石川さんは、これまで多くの社会起業家に「サービスとは何か」を教えてきました。「社会を変える」挑戦の背中を押すように、地道な活動や思いなど多くの学びが、石川さんの言葉には込められています。
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ここまでNPOで働く前に知っておきたい心構えとして、6人の方の言葉をご紹介しました。
目的に向かってスピーディに前進しているとき、ふと立ち止まって自分の目的や気持ちを確かめたくなったとき、納得のいく仕事を進めるための参考にもなれば幸いです。一つひとつの気づきが、みなさんの充実したキャリアや人生につながることを願っています。
そのほか、参考記事はこちら
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