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福島県沿岸部12市町村でいま起こっていることと、これから起こること(林篤志 X 宮城治男) 〜ふくしまでの新しい起業ミートアップレポート

2018.09.21 180view 

福島の被災地復興には、多くの人たちの参画やさまざまなリソースが投入され、そこでは新しいチャレンジもたくさん生まれていますが、まだまだやるべきこともたくさん残されています。福島の中でも、少子高齢化や過疎化が震災の影響によって加速され、日本がこれから直面することになる社会課題のある意味で先進地域となっているのが、福島県沿岸部の12市町村です。田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村の12の自治体。この地域を、新しい課題解決事業が生まれる「フロンティア」としてとらえ、12の自治体を舞台にして挑戦をする創業希望者をサポートし、また福島と首都圏の起業家たちや現地での応援者とのコミュニティを運営しているのが、フロンティア・ベンチャー・コミュニティ(FVC)です。

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2018年8月28日、福島での起業を考えている方を対象にしたミートアップ(説明会・交流会)が、FVC福島の主催で行われました。当日の様子は、FVCのWebサイトでも詳しくリポートされていますが、本記事ではその中のパネルディスカッションの様子をお届けします。

東北からむしろ新しいことがうまれはじめていること

登壇者は林篤志さん(一般社団法人NextCommonsラボ ファウンダー)と宮城治男(NPO法人ETIC.代表)、モデレータは和田智行さん(小高ワーカーズベース 代表取締役)の三人。

会はETIC.宮城の自己紹介からスタート。ETIC.は、自分で事業をつくってチャレンジする人を25年間応援してきたこと。90年代はITの起業家たちを、2000年以降はソーシャルセクターの領域に舵を切って、NPOやローカルの領域での挑戦を支援してきたこと。社会や地域の課題解決、未来をつくっていくチャレンジを支えてきたことが、宮城から説明されます。東北での活動としては、震災後、和田さんの小高ワーカーズベースなど、被災地の課題解決を担う団体に、右腕となって動ける人材を東京から送り込んできたこと。右腕となった人材が、現地で起業に踏み切っていくチャレンジを支援してきたこと。そんな経験を踏まえて、「東北からむしろ新しいことがうまれはじめていることを感じています」というコメントで終わりました。

続いてネクスト・コモンズ・ラボ(以下NCL)ファウンダーの林氏。全国10の地域でネクスト・コモンズ・ラボという新しい仕組みを展開していること。新しいことが生み出せる余白である地域で、起業という手段を使って未来をつくっていくこと。それをコミュニティの資源にしていく、というスキームについて説明がありました。NCLは、地域おこし協力隊の仕組みを利用して、地域に人を送り込み育成していますが、移住や田舎暮らしを希望するという文脈ではなく、NCLが目指す未来像にどう共感できるか、をポイントにしているといいます。

スクリーンショット 0030-09-20 12.52.46たとえば、南相馬のNCLには、田舎暮らしをしたい人はおらず、南相馬の予測不可能な未来に可能性を感じた人が集まっている。その地域で、新しい未来、新しい経済圏、新しい社会をつくっていこうとするメンバーが集まって、各地でその積み上げをやっている最中だ、と説明がありました。

”なぞベン”がForbesの表紙になる時代

続いてモデレータの和田さんから、地方での起業についての問い。どんな人が移住し、移住によって自分がどう変化し、それが地域に変化をもたらしていったか、という問いが投げかけられます。宮城は、20年前とはまったく状況が変わっているとし、石巻の”なぞベン”を紹介。”なぞベン”とは、”なぞのベンチャー”の略。ふつうのベンチャーの起業というと、新しい会社を軌道に載せるべく、相当の覚悟をもってたくさんのことを犠牲にしながら邁進する…といったイメージがあります。でも”なぞベン”はまったくそういった印象はない。実際、どうやって食べていけているのかわからないような、ベンチャー起業家が増えている、というのです。たとえばファッションデザイナーをしながら、日中は農業、夜はバーで働く、といったように、複数の収入源を組み合わせながら、自由なスタイルで起業する人たち。

石巻=ニューオリンズ説

石巻はそういった人たちの集積点になっているのだそうです。宮城はそれが、「ニューオリンズの街の雰囲気と似ている」といいます。10年前、巨大なハリケーン・カトリーナが上陸し、ニューオリンズは壊滅的なダメージを受けました。その復興のプロセスで、ニューオリンズはソーシャルビジネスのメッカとして、起業率がもっとも高い地域になっていきます。被災したという条件を逆転させ、面白いことを仕掛けようとする人間が集まって、たくさんの起業が生まれる街になった街。石巻にも同じような雰囲気を感じているし、福島でもそういうことが起きつつあるのではないか、と宮城は続けます。前例のない道なき道を行く、セオリーどおりにはいかない世界。しかしそこでは、前述したような”なぞベン”が続々と生まれている。いわゆるベンチャー的なアプローチではなく、多様なソース、いろいろな仕事から収入を得ながらつくっていく、”なぞ”なベンチャー。

背景には、圧倒的に生きるためのコストが低い、地域のメリットがあります。家賃が安い、お店も自由にいじれる、食べ物もおすそ分けでたくさんもらえるといったような、ベーシックアセット(生きるための基本的な資産)がしっかりと土台を支えているのが地域のありかたです。その結果、”なぞベン”の存在が示すように、圧倒的な自由を得ているのが今の起業のシーンだといいます。それに比べると、東京などの都市圏では、家賃やローン、食費などの基本的なコストとリスクが圧倒的に高いため、起業のリスクも必然的に高くなってしまう。

しかし東北なら、一見リスクが高いように見えるけれども、実際はとてもリスクは低いのです。先日発売された経済誌のForbesではなんと、”なぞベン”が表紙になりました。これは一過性のものではなく、「新しい起業の波のうねりのようなものだと考えている」(宮城)。

”清水の舞台”から飛び降りる必要はぜんぜんないこと

これを受けて、林さんは”起業家”の定義が変わってきていると指摘します。確かに、”なぞベン”のようなアプローチを、”起業家”という一括りで語るのはすこし無理があるでしょう。NCLで地域での起業を担うメンバーたちも、いわゆる”起業家”ではない人たちが多いのだそう。それまで起業の経験が無い人やフリーランスで仕事していた人たち。3-400万円くらいの年収で豊かに楽しく暮らせるような人たち。あるいは、NCL遠野でクラフトビールのブルワリーを立ち上げたメンバーはリクルートやユニクロの出身で、自分たちで資金調達にも成功しています。こうした規模も経験が多様なメンバーに共通していることは、「人生のオーナーシップを自分で持てているかどうか。舵取りを自分でできているかどうか」だと、林さんはおっしゃいます。逆に、オーナーシップを持てていない人のパターンとして、東京で働いていて年収が1000万円がありその年収を下げられない人や、”嫁ブロック”で動けない人たち、という例があがりました。

この”嫁ブロック”について、「移住について、家族の理解が得られない」場合はどうしたらよいか? という問いが和田氏から出されると、宮城は一言、「自分の覚悟ができていないから」。家族の反対を言い訳にして、やらない理由にしているだけではないかと。そして今は、そこまで”ブロック”というほど抵抗は強くないのではないかとの指摘です。

そして、移住の”ハードル”についても、それを自分で高くしすぎる必要はないし、いまは選択肢がたくさんあるので、低く、飛びやすいようにいくらでもカスタマイズができるようになっていることを付け加えました。東京でベンチャー企業の役員をしながら、週末は東北でウニの事業に参画する、といったような兼業キャリアはますます増えていくでしょう。週末だけのプロボノも急速に拡大しているし、ETIC.のプログラムYOSOMONは、地域への兼業/副業の募集案件掲載にシフトしています。そしてこのFVCの現地視察ツアーのような催しもある。パートタイムで地域に関わる選択肢はたくさんある。ブロックしている嫁や夫もだんだん慣れていくことができる。清水の舞台から飛び降りるようなそんな大仰なものではないのだ、という示唆あるコメントでした。

自分のビジネスを、人生を、自分でつくっていける時代

ディスカッションの最後は、宮城・林の両氏から、来場の方たちへのメッセージ。

林氏は宮城に、「いま20代だったら南相馬にいって何をします?」と質問すると、「福島、南相馬という場所がもっている力をエネルギーに変えたい」と宮城。福島や南相馬は、震災以降、世界でも名前が知られるようになりました。それはネガティブな要素でもありますが、逆にここから新しい試みがはじまって、これからの世界に受け入れられるようなことができたら素晴らしい。エネルギーでも農業でもいい。そういうチャレンジが生まれたら、応援したいという人が必ずいる、というメッセージです。林氏からは、今は「既存のシステムから逃げて、新しいものをつくっていく時代」だという言葉。いま自分がいる環境やシステムに違和感があるなら、とどまることなくさっさと逃げたほうがいい。そして自分のビジネスだけでなく、自分の人生を、自分でつくっていける時代なのだ、という力強い言葉。いっしょに新しいものをつくりたいと思う仲間が増えているから、清水の舞台からひとりで、ではないのだという言葉で、会を締めくくりました。


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この記事を書いたユーザー

DRIVE編集長・ふっちー

DRIVE編集長・ふっちー

DRIVE編集長/1974年神奈川県生まれ。中央大学総合政策学部にて宗教人類学を専攻。編集/ウェブ・プロデュースを主要業務とする株式会社シンコ代表取締役。

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