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発達障害、うつ病などの若者たちの「もう一度働きたい」に応えるビジネススクールとは?キズキグループの新たな挑戦

2019.07.11 

世界を変えていく_タイトル_キズキ02

「僕は、世の中で圧倒的な困難・苦しみを抱えた人が幸せに生きられるような社会をつくりたい」

「キズキ共育塾」を立ち上げた安田祐輔さんが、著書『暗闇でも走る』の中で述べている言葉です。

キズキ共育塾は、不登校や学校を中退した若者たちに学び直しの機会を提供することで、社会に一歩踏み出すことを後押しする場所。安田さん自身の、発達障害、父親からのDV、うつ病など様々な経験を経て抱いた、「何度でも人生をやり直せる社会をつくる」というミッションをのせて誕生しました。

2011年の開校から今年で8年目。東京・神奈川・大阪で5つの校舎を展開し、7月までにはさらに2校舎を開校します。これまで、キズキ共育塾は、累計1,500人の卒業生を大学、専門学校などの次のステップへ送り出しています。

卒業生からは、「キズキに出会っていなかったら、あのままひきこもっていたと思います」「キズキのおかげで、人生やり直そうと思えました」という感謝の声が数々寄せられています。

さらに、2017年からは、一人ひとりの個別支援だけではなく、社会全体を変えることを目指し、さまざまな事業に着手。2019年4月には、うつ病や発達障害などで離職した若者向けの就業移行支援事業「キズキビジネスカレッジ」(東京・新宿区)をオープンしました。

困難な状況にある人々が幸せに生きるために、目指したい社会のために、必要な事業の歩みを一つ一つ進める、キズキグループの新たな挑戦、キズキビジネスカレッジを取材しました。

「障害者の仕事=軽作業」が、全員に合っている訳ではない

キズキビジネスカレッジマネージャーの林田絵美さんは、自身もADHD(注意欠陥多動性障害)当事者です。しかし、働き始めるまで、自身の発達障害に気づいていませんでした。

林田さんは大学在学中に公認会計士の資格を取得し、卒業後は監査法人で働き始めました。しかし、発達障害に由来する様々なトラブルが続出。起きたトラブルと世間で見聞きする発達障害の話を照らし合わせた林田さんは、「自分は発達障害なのでは?」と思い当たり、入社1年後にクリニックを受診し、そこで発達障害の診断を受けました。

林田さん3

難関な公認会計士の試験を突破できる方に、発達障害というイメージは抱きづらいのではないでしょうか。改めて、「発達障害とは何でしょうか?」と尋ねると、林田さんはこう答えてくれました。

発達障害ってわりと誤解されがちなんですが、必ずしもIQが低い訳ではないんです 。ちょっと専門的な話をすると、発達障害の検査におけるIQ検査は、言語性IQと動作性IQに分けて測定されます。発達障害の人は、この2つのIQの“差”が大きい傾向にあるそうです。発達の低さのことではなく、発達の偏りが大きいことを発達障害と呼びます

 

林田さん

「私の場合は、言語性IQが高くて、動作性IQが低いんです。言語性IQが高いと計算したり文章を読んだりという部分は得意な場合が多く、自分も学校の勉強面ではあまり支障がなかったんですよ。学生時代に私が苦労したのは、イベントスタッフのアルバイト。動作性IQが低いと『目で見て運動する事にかかわる能力』が低い事が多く、自分も『お客さんからチケットをもらって、半券をちぎって返す』という作業が、混乱して上手くこなせなかったんです。

 

世の中的には、公認会計士の試験に受かるような人が、チケットの半券を渡すという作業を覚えられないとは思わない。だから、『発達障害です』と伝えても、『そんなことないでしょ』と言われることが多くて、ずっと周囲に言えなかったんです。

 

インターネットを通じて、この悩みが自分だけじゃない、というのを知ったことが、『発達障害の分野で何かできないか』という思いにつながりました。

自分で仕事を選ぶためのスキルを身に付ける

障害者雇用枠の8割前後が袋詰めなどの軽作業やデータ入力などの事務作業になっています。でも、軽作業や事務作業はミスが許されないことが多く、私のように注意欠陥型のADHDをもっていると適性にマッチしないんですね。

 

今は、障害があるというだけで仕事が限定されてしまう現状があります。本来、仕事の内容は実際の能力を見て判断するものではないかと考えています。私が注目したいのは、その人の可能性です。『この人はもしかしたらプログラミングもできるかもしれない』、『英語の翻訳家として独立できるかもしれない』。こんなふうに想像しながら利用者さんと接しています」

キズキビジネスカレッジ外観

キズキビジネスカレッジ外観

キズキビジネスカレッジの特徴は、マイクロソフトオフィス、マーケティング、会計、英語などの多様な専門スキルを学べること。さらに、就職先や働き方を決める際には、インターンシップを取り入れることで、自分にあった仕事内容や環境を見極め、選べるようにしました。また、社会福祉士による「自己理解講座」を用意しているのも特徴の一つ。利用者が自分の特性をより深く理解し、困った場面に直面したとき、自分自身で解決できる方法を見つけられるようサポートしているそうです。

働くことは、自己実現であり、自己決定の場を得ること、と、林田さん。どんな仕事で、どんなふうに働くか、利用者さんが自分で選んで決めることを大切にしていると言います。

発達障害を取り巻く就労移行支援事業の変化と、新しい未来

キズキビジネスカレッジの利用者や面談希望者の中には、軽作業や事務作業に就くための就労支援が「自分に合っていない」という悩みを抱かれて問い合わせされる方もいるそうです。

その理由のひとつには、就労移行支援事業が比較的新しい福祉サービスのため、発達障害の方が求めるかたちに追いついていけていない現状があると考えられます。

就労移行支援事業は、2006年(平成18年)に施行された障害者自立支援法(現障害者総合支援法)に基づいて始まったものですが、対象者は、「身体または精神に障害がある」ことで長期にわたって職業生活を営むことが著しく難しい方などとされていました。発達障害の方は含まれていなかったのです。発達障害の方が就労移行支援事業を利用できるようになったのは、2010年(平成22年)に障害者自立支援法が改正されてからです。法律が制定されてから、事業所は増加の一途をたどってきました。

出典:「障害者の就労支援施策の動向について」厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉課寺岡 潤

出典:「障害者の就労支援施策の動向について」厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉課寺岡 潤

 

発達障害の方も障害者の対象に含まれることが法律で明示されたことを背景に、発達障害と診断を受ける人も増える傾向にあります。

 

出典:「発達障害者支援法の改正について」厚生労働省より

出典:「発達障害者支援法の改正について」厚生労働省より

発達障害の方のための就労移行支援事業所も都心部で作られるようにもなりました。その内容は様々ですが、一般的にはパソコン操作やビジネスマナー講座など利用者の適性に応じた仕事や職場に就けるようなサポートを原則としています。しかし、発達障害の方が就労移行支援事業を利用できるようになったのはまだ最近のため、知的障害や身体障害の方のためのプログラムが多く、発達障害の方に合ったプログラムが確立されているかどうかについては課題があるようです。

そのなかで、キズキビジネスカレッジは、発達障害やうつ病で離職した若者の「もう一度働きたい」に応える就労移行事業所として設立されました。専門性の高いスキルに特化することで、仕事の選択肢を増やすことを実現しようとしています

 

障害者自立支援法の制定しかり、今の私たちが生きている今の世の中は、より住みやすく、良い世の中になるように、声をあげて行動してきたたくさんの人によって作られています。

たった一人の声は小さいかもしれませんが、積み重ねた先には、新たな未来があります。

キズキビジネスカレッジの仕事が、生きづらさを抱えた人たちにより細やかな支援を届け、また一つ「何度でもやり直しができる社会」が近づくことを、心から楽しみにしています。

 

<参考資料>

八木俊洋「就労移行支援事業の現状と課」(PDF)

「株式会社キズキ」の募集要項の詳細はこちら!

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