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NPOのための、キャッチコピーの作り方――読み手を「当事者」に変えるには?

2019.08.29 

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NPOなどのソーシャルセクターで働く人々にとって、「キャッチコピーをどのように書くか」という問題は、極めて身近な悩みではないでしょうか。

イベント集客やパートナー募集など、言葉を使って人々を動かさねばらならない局面は、毎日のようにやってきます。その時に、名作コピーがパッとひらめく……なんてことは皆無。ほとんどの場合は「わかりにくい」と言われてしまったり、どこかで見たことあるような表現に落ち着いてしまったりします。

企業におけるそれよりも、さらに難易度の高い「NPOにおけるコピーライティング」。その手法について、事例とともに考えていきます。

 

この記事を書いた桂 亜沙美さんのプロフィール

八王子生まれ、南半球育ち、仙台在住のフリーランス。2006年、新卒でNPO法人ETIC.に就職。広報ツールの制作、コピーライティングなどを担う。2010年、デジタルハリウッド株式会社へ転職、広報担当として各種クリエイティブ制作やWebマーケティングに携わる。2017年、結婚をきっかけに東北に移住。現在はリモートワークでコピーライティングやデザインの仕事を受注している。受賞歴は第53回 宣伝会議賞 協賛企業賞 、OL川柳大賞2016 はあちゅう賞など。 FB: https://www.facebook.com/asami.katsura.7

キャッチコピーは、「関係ない」を「関係ある」に変えるもの

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そもそも、キャッチコピーとは何でしょうか。

一般的な定義としては、「消費者の心を強くとらえる効果をねらった印象的な宣伝文句」と言われています。しかしソーシャルの領域においては、もう少し複雑です。

なぜなら、一般企業とは異なり、NPOの活動目的は「社会的使命を達成すること」にあるから。キャッチコピーの役割は単に「商品の購入を促す」ことではなく、「社会を良くするためのコミットを促す」という、より高度なアクションを人々に期待することになります。

往々にして人々は、社会的使命を「自分には関係のないこと」のように感じています。まずはそれを「自分にも関係のあること」だと気づかせることが、キャッチコピーにとっての第一の仕事です。そこからさらにアクションを起こさせる動機づけが必要ですから、言葉に課せられた任務は重いのです。

特定のイシューに対する意識を「関係ない」から「関係ある」に変えること。つまり読み手を社会問題の当事者に変えることが、NPOにおけるキャッチコピーの、最初にして最大の役割と言えます。

読み手を当事者に変えた、キャッチコピーの成功事例3選

では、読み手を当事者に変えるキャッチコピーとは、一体どんなものでしょうか? 実際に、人々の心を動かした広告事例を3つ取り上げます。

 

1.WATER MAN (AC公共広告機構  第三回日米共同キャンペーン/1997年)

参考:ACジャパン  https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=301

 

この作品は、1990年代に国内外で高く評価された公共広告であり、水の汚染による環境問題に警鐘を鳴らしています。

 

「人間のカラダの70%は水でできています。あなたが汚した水は、いつかあなたを汚すことになります。きれいな水を次の世代に。」

“The human body is 70% water. Respect and protect this essence of life. The bodies of water we pollute will someday be our own.”

 

このコピーのポイントは、「人間のカラダの70%は水でできている」というファクトを提示した部分にあります。

人々がなんとなく知っていた事実を、具体的な数字を用いてあらためて表現したことで、現実感と説得力が一気に増しています。「環境のために水を汚さないでください」と言われるよりも圧倒的に、問題の当事者として受け止められるのではないでしょうか。 

キャッチコピーを作る時、このように効果的なファクトを見つけることが突破口の一つになるかもしれません。

 

2.フード・アクション・ニッポン (農林水産省/2009年)

参考:フード・アクション・ニッポン  https://syokuryo.maff.go.jp/fan/

 

民間企業・団体・行政等が一体となって推進する、国産農林水産物の消費拡大の取り組みである「フード・アクション・ニッポン」。その想いを表現したのがこのコピーです。

 

「子供たちの子供たちも

その、ずーっと先の子供たちも

食べていけますように。」

 

ポイントは、「その、ずーっと先の子供たちも」という表現をはじめとする、読み手の気持ちに合った言葉づかいです。

たとえば「食料自給率向上に貢献しよう」などと言われても、やはりどこか他人ごとに思えてしまいます。それが、子供を育てる親の話し言葉として語られることで、初めて「自分にも関係のあることだ」と気づくことができるのでしょう。

難解な内容を表現する時ほど、読み手の立場や気分を理解して、それに合わせた表現が大切だということがわかる事例です。

 

3.公益財団法人 神奈川県動物愛護協会 (『コピー年鑑2014』掲載)

参考:東京コピーライターズクラブ(TCC) https://www.tcc.gr.jp/copira/id/86300/

 

2014年に東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞を受賞した本作品は、犬や猫の殺処分についての問題提起を行っています。

 

「捨てた日も、散歩と思って

  よろこんで出かけて行った。

 飼育放棄や不妊手術の不徹底などが原因で、

 神奈川県では、年間2,892頭の犬や猫が処分されています。」

 

このコピーのポイントは、書いたことではなく、書かなかったことにあると思います。

「動物を捨てないでください」というメッセージも、捨てられる動物の気持ちも、ここには書かれていません。ただ淡々と、「捨てた人」が見た情景を伝えています。そもそも誰が「捨てた」のか、主語さえも省略されています。

つまり、読み手に対して「余白」を残しているのです。どんな気持ちを抱くかは、その人次第。それが独自の記憶や感情を呼び起こさせ、読み手を当事者に変えていきます。

読み手の気持ちをコントロールしすぎず、極限まで要素を削ぎ落としたことが、かえって本質を浮き彫りにし、言葉の力を強めたと言えるのではないでしょうか。

心を動かすキャッチコピーを作るためにすべきこと

人々の心を動かし、社会問題の当事者に変えるキャッチコピーを作るためには、何をすればよいのでしょうか。

さまざまな手法がありますが、その中でも特にNPOなどのソーシャルセクターに役立つと私自身が考えるアプローチを3つ紹介します。

 

1.たった1人に手紙を書くように、メッセージを洗い出してみる

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社会を変える有意義な活動をしているはずなのに、続けていくうちに「私は何をしているのだろう?」と、混乱してしまうことはよくあります。そんな時にキャッチコピーを書いても、言いたいことが散漫になってしまうだけです。

まずは「本当に伝えたいこと」を、しっかりと洗い出すことが必要です。そのためには、自分が知っている誰か一人をターゲットとして想定し、その人に宛てた手紙を書いてみてはいかがでしょうか。

長くなっても構いません。キャッチコピーを書く上で重要なのは、十分に「書き散らす」ことです。要素を絞り込み、かっこいいフレーズへと言葉を磨き上げるのはその後の行程です。

一人に刺さるメッセージは、多数の人に刺さるはず。まずは、たった一人を想定して、伝え切ることから始めてみましょう。

 

2.カメラを覗くように、さまざまな角度から物事を切り取ってみる

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「自分が何を伝えたいのか」ということを洗い出したら、今度は伝える相手についてよく考える必要があります。

マーケティングにおいては「ペルソナの設定(製品やサービスを利用する架空ユーザー像を具体的に示すこと)」が必須と言われています。NPOにとっても例外ではなく、ターゲットがどんな人であるかを可能な限り詳細にイメージするとよいでしょう。

キャッチコピーを届けたい相手の「年齢」「性別」「職業」「住所」「趣味」「ファッション」「好きなもの」「嫌いなもの」「悩み」「夢」……。自分が制作する映画の主人公を考えるように、生きた人物像を頭の中に描きます。その人が好きそうな本や雑誌を読んだり、音楽を聴いてみたりして、ターゲットの世界観を体験してみることもよいかもしれません。

そして、まるでカメラを覗くように、さまざまなアングルで主人公を写しながら、言葉の切り口を考えていきます。ズームインして主人公の心の葛藤にフォーカスしてみたり、空の上から俯瞰で主人公の立ち位置を見つめてみたり、あるいは主人公の横に落ちている石ころの目線から語ってみたり。目線を変えていくことで、新しい切り口が次々と見つかるのではないでしょうか。

それから、言葉の断片として「コピーのようなもの」を、たくさん書いてみましょう。よく100個アイデアを出すと良いと言われますが、可能な範囲で大丈夫です。美しい言葉である必要はないので、できるだけ多く案を出してみてください。

 

3.素敵なコピーに触れながら、言葉を磨きあげていく

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要素を洗い出し、さまざまな切り口で整理したら、最後に言葉を磨きます。

言葉を足したり、逆に引いたり、句読点のリズムを変えたり、漢字をひらがなに変えたり、比喩を使ったり、ダジャレやオノマトペを入れたり……。最も読みやすく、伝わりやすい表現を探してみてください。

とはいえ、なかなか素敵な表現にたどり着くのは難しいもの。そんな時は、自分の中の表現の引き出しを増やすことが役に立ちます。日本に数多ある名作キャッチコピーに触れて、素敵な言葉づかいを吸収してみるのはいかがでしょうか。

名作コピーの事例が掲載された本を読むこともおすすめですし、無料で閲覧できるWebサイトもありますので、ぜひ参考にしてください。


 

・ACジャパン 広告作品アーカイブ

https://www.ad-c.or.jp/campaign/search.php

 

社会問題を扱う公共広告の作品を検索できます。コピーだけでなく、動画やキャンペーンなどのソーシャルな企画についても学べます。

 

・東京コピーライターズクラブ(TCC)コピラ

https://www.tcc.gr.jp/copira/

 

実際に使用された広告の中から優秀作品を選出した「コピー年鑑」を発行しているTCC。その受賞作品を検索できるサイトです。キーワードで検索をかけられるので、自らのテーマに添った広告事例を参照してはいかがでしょうか。

 

・AdGang

https://adgang.jp/

 

海外・国内のお洒落でナイスな広告・クリエイティブの事例データベースです。世界で話題になっている最新の広告事例を学ぶことができます。社会問題の解決に挑む内容も、数多く見ることができます。

おわりに

たかだか一行を書くために、膨大な作業量と時間を要するコピーライティング。でも、その労力は決して無駄にはなりません。

NPOなどのソーシャルセクターが、そもそも「何のために存在するのか」という本質的な問いを実直に追求できるのがこの一連の作業であり、定期的に棚卸しするプロセス自体に価値があるのではないでしょうか。

その結果、もし名作キャッチコピーが生まれれば、今よりもっと広く、力強く、共感とアクションの連鎖を広げていくことができるでしょう。生み出した言葉が良い意味で「一人歩き」して、社会を変える一助になれば何よりです。

 

【参考文献】

「名作コピーの教え」/鈴木康之(日本経済新聞出版社)

「テーマで学ぶ 広告コピー事典」/グラフィック社編集部(グラフィック社)

この記事を書いたユーザー

桂 亜沙美

桂 亜沙美

八王子生まれ、南半球育ち、仙台在住のフリーランス。2006年、新卒でNPO法人ETIC.に就職。広報ツールの制作、コピーライティングなどを担う。2010年、デジタルハリウッド株式会社へ転職、広報担当として各種クリエイティブ制作やWebマーケティングに携わる。2017年、結婚をきっかけに東北に移住。現在はリモートワークでコピーライティングやデザインの仕事を受注している。受賞歴は第53回 宣伝会議賞 協賛企業賞 、OL川柳大賞2016 はあちゅう賞など。 FB: https://www.facebook.com/asami.katsura.7

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