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「固定観念をポップに壊す」学校を3回中退したバブリーさんが「ギャル式ブレスト」に込めた思い

2023.06.14 

竹野様トリミング後

 

気付くといつも考えている。どうしても惹かれてしまう……。でも、仕事にするには冒険的で、生活ができるほど収入が得られるかわからない。「本当はこうしたい」けれど、と迷っている。そんな時は一度、この方の物語と言葉に触れてみてはいかがでしょうか。

 

企業や団体のアイデアを生み出す場に、新しいスタイル「ギャル式ブレスト」を提案し、より多くの気づきを提供しているCGOドットコム総長のバブリーさんです。“ギャルマインド”に大きな可能性を感じ、仕事にしたバブリーさんの人生やキャリアの変化についてお聞きしました。

 

この記事は、古い価値観を手放し、新しいキャリアや生き方を選択することで自分が納得できる人生の物語(ナラティブ)を創っていく、そんな越境的・創造的キャリアづくりを目指すトランジション・アクセラレーター「Action for Transition」(略称 :  AFT)の連載記事です。

 

バブリーさんが様々な壁を乗り越えるなかで確信した“ギャルマインド”のチカラが、これからの選択を励ましてくれるはずです。

 

竹野様2トリミング後

バブリー/CGOドットコム総長

人生で3回学校を中退する。高校中退後、移り住んだ大阪でギャルと出会い、価値観と人生が変わる体験をする。2018年8月よりNPO法人ETIC.に参画、2019年にオンラインコーチングプログラム「PLAY!」の立ち上げに携わる。2020年に「ギャルマインドあふれる世の中をつくる」ことを目指し「CGOドットコム」を立ち上げ。「ギャル式ブレスト」を企業に展開する。立教大学卒。2023年春に株式会社リクルートホールディングスを退職以降は、CGOドットコム総長に専念。ギャルをリスペクトしている。

聞き手 : 小泉愛子・川端元維(「Action for Transition」運営メンバー)

子どもの頃から勉強を頑張ることが当たり前だった

 

――バブリーさん自身のことを教えてください。

 

「人生で学校を3回中退しています」と、よく話しています。それに、「ギャルマインドの伝道師、翻訳家」という肩書きでも自己紹介をしています。

 

普段はCGOドットコムの総長として「ギャル式ブレスト」を企業や団体に提供しています。具体的には、「企業のカルチャーとギャルちゃんのカルチャーは違う」ことを前提に、それぞれのカルチャーが出会う場をつくり、新しい価値に変えていく仕事をしています。

サイト

CGOドットコムのWEBサイト

 

――なぜ、肩書きが「総長」なのですか?

 

響きがカッコイイなって思ったんです(笑)。私たちのコミュニティはギャルちゃんばかりだから、総長が一番しっくりくるとも思いました。メンバーには、裏ボスもいます(笑)。面白い肩書きの子がたくさんいます。

 

――「ギャル式ブレスト」はすごく印象的な名前ですが、バブリーさんが大事にしたい価値観や思いも込められているように感じます。

 

「ギャル式ブレスト」には、「ギャルマインド」で固定概念をポップに壊して、世の中を面白くしていこうという思いがあります。振り返ると、幼少期から自分の中にそうしたい思いが潜在的にあったのかもしれません。

 

私は山梨県の田舎で生まれ育ったのですが、子どもの頃から勉強を頑張ることが当たり前だと思っていました。いい大学を出て、いい企業に就職することに対して、私自身、何の疑いも持っていませんでした。

 

でも、ある時、そんな生き方がすごく苦しくなったんです。高校は進学校に入学しましたが、3ヵ月で不登校になり、しばらく家に引き込もりました。でも、知人がいる大阪に行った時にギャルちゃんたちと出会って、自分がそれまでとらわれていた「ねばならない」の固定概念から解放されたんです。それからは、「もっと面白く、楽しく生きたい」と思うようになりました。ギャルちゃんとの出会いは、私にとって大事な体験になっています。

ギャルマインドの3つの軸

 

私の体験は、現実的ではないように思われるかもしれません。でも、「ギャルちゃんとの出会いは、同じように古い価値観にとらわれている人たちの気分もきっと“アゲ”にできるよね」と強く思えました。

 

そうしたら、ギャルちゃんから感じたギャルマインドのパワーをもっと知りたくなって、いろいろなギャルちゃんに会いに行って、話をしました。渋谷駅のハチ公前でギャルちゃんに声をかけて、「いつからギャルになったの?」「どうして自分のことをギャルだと思うの?」と話を聞かせてもらったことも。「こういう時はどうしますか?」とアンケート調査もして、一般の人たちとの言動と比較しながら、ギャルちゃんがどんな力をもっているのかを5段階評価で分析していきました。

 

――どんなことがわかりましたか?

 

そのうち、ギャルマインドには大事な3つの軸があることが見えてきたんです。それは、「自分軸」「直観性」「ポジティブ」で、どうすればこの3つの軸を多くの人に伝えられるだろうか?と考えるようになりました。

 

そんな時、たまたま湘南の元ギャル男と知り合ったんです。大企業の社員で、「俺は昔ギャルだったのに、今は上司に忖度して、部下にもコンプライアンスに気を使いながらコミュニケーションしないといけないんだよ」と話していました。

 

彼の話を聞いて、「もしかしたら、みんなギャルマインドを持っていたはずなのに、社会人になると自分の立場に責任を感じることで消していくのかもしれない」と考えたんです。そこで、「サービスにできるかも」と直感が働いて。約3年前、大学生の時でした。

 

――ギャルマインドの力を発見してから、「ギャル式ブレスト」までどう進化させたのですか?

 

ギャルちゃんと企業の方に同じ会場に来ていただいて、「しゃべってください!」と、とにかくお互いが話せる場をつくっていきました。同時に参加者の方たちから「こんな効果がありそう」と意見を集めて、ルールを少しずつ作っていくうちに「ギャル式ブレスト」の型ができあがっていきました。

世の中の不平等さを変えるきっかけをつくりたい

 

――バブリーさんは高校を中退後、大学に進学しています。何かきっかけがあったのですか?

 

やっぱりギャルちゃんの影響が大きいです。私が知っているギャルちゃんたちは、みんな超頭が良いんです。私も、山梨で通っていた高校では、偏差値が高くて優秀と呼ばれる人たちの中にいたけれど、ギャルちゃんたちは力強く生きる力が秀逸でした。

 

でも、先に開かれている道の選択肢が圧倒的に少ないことを知りました。それは育った家庭環境や受けた教育など、彼女たちの責任ではない背景や社会問題が原因にあって。教育格差の問題を知った時には、「ヤバいかもしれない」といてもたってもいられなくなりました。

 

私の両親は、大学進学のお金は出すと言ってくれていたので、「だったら頑張って受験勉強をして、私の人生を救ってくれたギャルちゃんたちに何か還元したい」「世の中の不平等さを変えていくきっかけをつくりたい」と思うようになりました。それが19歳の時で、一念発起して大学に進学しました。

 

竹野様3トリミング後

 

――バブリーさんはギャルマインドをテーマに仕事をつくりました。でも、前例にないことをやり遂げようとするのは簡単ではないと思うんです。なぜ、「ギャルマインドを大事にしたい」思いを行動に変えられたのでしょうか。

 

ある時、ギャルちゃんのことばかり考える自分に気づいたんです。頭の中が「ギャル、ギャル、ギャル」っていっぱいになって。「私は本当にギャルちゃんが好きなんだなあ」と、自分の気持ちに素直になれたことで思い切って決断できました。「うっとうしいなあ」と思いながらも、心の声を違和感として気にしてよかったと思っています。

お金がなくなったらFacebookに投稿して誰かに助けてもらえばいい

 

――やりたいと思うことがあっても、収入や周囲からの目線が自分の素直な声を簡単にかき消すこともあると思います。

 

私の中ですごく印象的だった言葉があります。あるトークイベントで、現株式会社オウケイウェイヴ代表の杉浦 元(すぎうら・はじめ)さんがこうおっしゃっていました。

 

「お金にすごく困ったら、僕はFacebookに『お金がありません』って投稿します」と。「そうしたら誰かが助けてくれるはず」って。私、その言葉を信じているんです。だから、前に進めたんだと思います。

 

杉浦さんが登壇したイベントの記事はこちら

>> キャリアの不安に向き合い、自由に生きるには?―起業家を長年支援してきたPLAY!コーチ陣が語る

企業と“ピース”な関係をつくる

 

――「ギャル式ブレスト」を広めるうえでどんなことを大事にしてきましたか?

 

見た目じゃなくて、中身をみてもらうことです。ギャルマインドの魅力、強みは差別化要素として強く意識してきました。同時に、サービスとして誰かのお役に立てることにこだわってきました。

 

――例えば、ギャルマインドの強みは何ですか?

 

一番に、相手の方の気持ちや場の雰囲気をほぐすことです。

以前、企業さんが「ギャル式ブレスト」を導入してくださった時、みなさん最初からコミュニケーションの取り方がわからない様子で、大きくとまどわれていたんです。「ギャル怖いです」みたいな雰囲気から始まって(笑)。

 

でも、ギャルちゃんたちが少しずつ気持ちをほぐしてくれました。そうしたら、企業の方々からポンポンポンっとアイデアが出るようになったんです。10分くらいの間に100個くらい、しかもすごく面白いものばかり。ギャルちゃんたちもびっくりしていました。

 

アイデアがたくさん出た後、ギャルちゃんたちが「みなさん、やっぱ頭の中ギャルだわ」と発言したんです。そうしたら、企業の方は「僕もギャルなんですか?」と笑顔になって、場が和みました。シナジーがどんどん生まれていくのをみんなで共有できた時間でした。面白かったですね。    

 

バブリー竹野さん写真候補②

 

バブリー竹野さん写真候補①

「ギャル式ブレスト」を通して多くの人のコミュニケーションをサポートしている ※写真は記事の企業とは関係ありません

 

――ギャル式ブレストをこの数年展開してきて、変化を感じることはありますか?

 

企業さんとの関係性が変わりました。最初は、ギャルちゃんがギャルマインドの先生のような立場でしたが、最近、「教える」「教わる」の関係性を越えて、お互いが「理解し合い」「学び合う」関係性になっていることに気づいたんです。一緒に“ピースな関係”をつくっているような手ごたえを感じています。

 

なぜ企業の方たちがご自分たちのアイデアに十分な納得感をもてないのか、それはコミュニケーション不足や、組織の文化・体質に根本的な問題があると思っています。

 

私たちが提供できるのは、問題の根っこのこんがらがった部分をほどいて柔軟な考え方や行動ができるようにサポートすること。企業の方がもつスキルとギャルちゃんたちのスキルをどう活かしあうかが大事です。このことは今後もっと突き詰めていきたいです。

 

――バブリーさんが大事にしてきた「固定観念をポップに壊して、面白い世の中にしたい」思いが「ギャル式ブレスト」の効果としてより表れてきているように感じます。

 

たしかに自分自身の変化もこの数年で感じています。あるとき、体調を崩したのをきっかけに、初めてチームを頼ろうという気持ちになったのですが、そうしたら全員が助けてくれました。「ギャル式ブレスト」のサービス作りも、それまでは私中心に動かさなきゃと思っていたけれど、今はチームで「ギャルとは」の議論から始めて、作っています。

 

封筒トリミング後

渋谷のオフィスに、“総長バブリー”あてに届いたバブリーさんへの封書

 

チームには、ギャルマインドをもった10人くらいのギャルちゃんがいて、18歳くらいから30代までいろいろなギャルちゃんが一緒に仕事をしています。

 

みんなのギャルマインドを込めた「ギャル式ブレスト」は、世の中に“ピース”なインパクトを生み出せると信じています。

10年後も「弱い総長」でいたい

 

――バブリーさん自身は、例えば10年後、どんなふうに思われたいですか?

 

「狂ってるなあ」と思われたい。狂い続けたいんです。どんなに良いサービスも、真面目になりすぎると世の中には伝わらない。変革を起こすためにはユーモアが大事だから、私は、「あの人は変わってる。こんな年齢になってもそうだから、バブリーって呼ばれてもおかしくない」って妙に納得される人になりたいです。

 

あとは、引き続き、まわりに支えられながら成長したいです。以前は、リーダーや起業家に対して「強くなければならない」と思い込んでいたけれど、体調を崩した時にみんなに支えられたことでそうではないと考えが変わりました。

 

自分ができないところは仲間がカバーしてくれる。サービスもみんなが一緒に作ってくれる。そう実感できて、リーダーが弱くても、チーム一人ひとりの強みで補い合えば壁も乗り越えられると思えました。だから、10年後も「弱い総長」でいいかなと思っています。

 

――自分が大事にしたいこと、やりたいことがあってもなかなか一歩を踏み出せないという方がもし近くにいたら、バブリーさんはどんな言葉をかけますか?

 

「あなたは何をしたいの?」と自分自身に問いかけて、聞こえた心の声を消さないでほしいです。「生活はどうするの?」「周りはこんなことを言ってたよ」と、かき消す声もあるけれど、自分の人生は一度きりだと思ったら、少しでもいいから動いてほしい。後悔しないはずだから。

 

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越境的・創造的キャリアの挑戦者たちにインタビューした記事はこちら

>> トランジション・アクセラレーター「Action for Transition」(AFT)

バブリーさんの関連記事はこちら

>> ギャルは私の救世主―「ギャル式ブレスト」仕掛け人・バブリーちゃん【#PLAYな人々】

 

 

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。