「社会課題の解決」や「より良い社会の実現」という願いを持つ人、そして実際に行動に起こしている人は増えつつあります。特に近年は、SDGsやESG投資といった概念の広がりとともに、NPOや社会的企業、行政に加え、企業セクターの取り組みも広がっています。
一方で、多くの実践者の方々と対話していると、「こうした前向きな変化が起き、多くの時間・労力・専門知識等のリソースが投入されているにもかかわらず、課題解決への道のりはまだまだ遠い」という悩みを聞くことが増えてきました。
私たちも国内外の様々なリーダーと対話をしてきましたが、こうした悩みは、実は世界共通です。
では、願う社会の実現に向けて、私たちはどうすればいいのでしょうか?
目標とする状態を定め、解決までの効果的な道筋を描くのが困難な複雑な社会課題に対して、世界の先進的な組織ではどのように社会課題を本質的に解決する戦略を立案し、実践し、そして進化させているのでしょうか?
こうした問いを皆さんと共有しながら、ともに進化をしていくために、ETIC.では国際的な人身売買の問題に取り組む組織Humanity united(ヒューマニティ・ユナイテッド)のマネージングディレクターであるフィリップ・サイオン氏を招聘し、2つの勉強会やセミナーを企画しています。
フィリップ・サイオン氏は、昨年夏までは社会変革のための戦略コンサルティングファームである米 FSG 社のマネージング・ディレクターとして、長年フォーチュン 500 企業へのフィランソロピー、CSR、CSV の取り組みに対するアドバイザリーに従事してきました。中東、南米やアジアなど、米国以外の地域におけるコレクティブ・インパクトを推進し、セクターを越えた協働もリードしてきました。
世界各地で、企業、また行政や非営利組織、コミュニティと共に社会課題の解決をリードしてきた彼が今取り組むのは、人身売買や紛争の問題です。元々移民や難民問題に関心があり、昨年8月にマネージング・ディレクターとして招かれ転職しました。
人身売買という、多様なプレイヤーの思惑が絡むシステムを変えようとするヒューマニティ・ユナイテッドの革新的な取り組みは、人身売買以外の領域でも応用することができ、また日本でも活用できることがあると感じています。
(関連記事:昨年フィリップ氏・サイオン氏が来日した際の講演
世界の企業は社会問題とどう向き合っているのか? CSV(共有価値の創造)を実践する企業が心に留めたい3つのポイント)
<ヒューマニティ・ユナイテッドの団体概要>
ヒューマニティ・ユナイテッドは、 eBay の創業者であるピエール・オミダイア氏と妻のパム・オミダイア氏が立ち上げたオミダイア グループの一つの組織です。
オミダイアグループには、ヒューマニティ・ユナイテッドを含めて9つの組織があり、さらに助成や基金、リーダーシップネットワークやフォーラム等の活動があります。様々なアプローチで、ソーシャルインパクトを創出する触媒となるべく活動をしていて、特に焦点を当てているのは、1)勇気のあるリーダーシップの育成、2)社会のガバナンスの構築、3)市民への情報提供と参画促進、4)コミュニティの繁栄です。
グループ全体で多額の金額の営利・非営利の社会的な活動に対する資金援助、投資が行われています。傘下の Omidyar Network の資金提供総額が公開されていまして、2008年の開始時から15億ドル、日本円にして1500億円以上が社会的な活動に投資や助成の形で注がれています。(参考:https://www.omidyar.com/financials)
<ヒューマニティ・ユナイテッドのアプローチ>
NPO/NGO・行政・企業と、社会システムの変容を生み出す
フィランソロピーは、単なる資金援助ではなく、人の暮らしを良くするものだとされ、資金は効果的に使われるように努められています。
ヒューマニティ・ユナイテッドは、複雑な課題にいかに効果的にアプローチするかを追求するため、目の前の課題の解決だけではなく、大局的な見地に立ち、全体を俯瞰しながら構造を見える化します。その上で、課題解決のレバレッジとなる、効果的な介入点を見つけ本質的な策を見いだしていく手法をとっています。
この介入点を見つけ、本質的な策を見いだす方法により、人身売買・強制労働の問題の解決について、多々の調査・議論を経て、戦略の4本柱を導きました。
1)企業が強制労働を減らすためのツールの開発・導入を支援する
2)投資家を啓蒙し、また強制労働に対する企業の取り組み状況を比較し公表する
3)企業のブランドやレピュテーションリスクを、調査とジャーナリズムとの連携、また強制労働に対して注目を集めることによって高める
4)企業の法的説明責任を高める
これらを取り入れ、東南アジアのシーフードビジネスにおける労働問題、カタールのワールドカップに向けたネパール等からの人身売買問題、シリアやソマリアの平和構築等に、様々な組織と連携して取り組んでいます。(参考:ヒューマニティ・ユナイテッドの報告書)
また、更なる戦略のアップデートとして、アメリカ南部の移民の拘束に対して働きかけをしたり、人身売買の元被害者であるサバイバー、NGO、企業、フィランソロピーや政府等にヒアリングを重ね、社会の構造をさらに見える化することで、課題解決のための8つのレバレッジポイント(解決のためのツボ)を導き出しています。(参考:Humanity United サイオン氏の寄稿)
こうしたアプローチは、NPO/NGO、政府、企業が果たすべき役割や義務がどう変化していくかについて大きな示唆を与えてくれます。
11月の来日時には、こういった解決策をどのように導いているか、実際にどのようにパートナーと連携して課題解決にチャレンジし、そのインパクトを確かめているのか等々、ヒューマニティ・ユナイテッドでの取り組みについて対話する機会をもちます。
また彼が今までの経歴で、日本企業のCSRとの仕事やコレクティブインパクトの実践等、世界各地で社会課題解決にむけて取り組んできたことを対話し、学びを深める機会を企画しています。
皆さまのご参加、お待ちしております。
<11月のイベントのご案内>
◆コレクティブインパクトや連携事業を実践する、非営利組織・ソーシャルビジネス、行政、企業の実践者向け
「コレクティブ・インパクトを題材とした実務者研修」~実践者同士で学び、 複雑な社会課題の解決に向けて協働のレベルを一段進化させる ~
コレクティブ・インパクトとは、問題にかかわる様々なステークホルダーがバラバラに活動するのではなく、連携し、それぞれの取り組みを相互補完的に進化させていくことで、個々の活動の延長線上にはない課題の解決法を見出す手法です。システムレベルでの本質的な解決を目指します。
「コレクティブインパクトが従来型の協働とどう違うのか/その価値は何なのか」「コレクティブインパクトの考え方・実践から何を学べるか」を対話しながら学び、事業に活かしていきます。
コレクティブインパクトを実践している皆さまはもちろん、志向しながら連携事業に取り組む方も歓迎しています。
日時:全3回:2019年11月6日(水)、11月12日(火)~13日(水)、2020年1月17日(金)
場所:渋谷ETIC.オフィス5階、また都内にて調整中
講師:フィリップ サイオン氏/Humanity Unitedマネージングディレクター
一般社団法人CSOネットワーク 常務理事 今田克司氏
NPO法人ETIC. ソーシャルイノベーション事業部 事業統括/マネージャー 番野智行
参加費:
◆一般(営利企業、行政等) 1名:12万円 2名:22万円 3名:30万円
◆民間非営利組織もしくはそれに準じる社会的企業* 1名:8万円 2名:14万円 3名:18万円
*スタートアップ割引:事業規模 年間1億円以下の組織は、上記より3割引きの参加費でご参加いただけます。
***特定領域奨学金枠:特定領域(子ども関連)の事業に関しては、奨学金枠があります。
申込:以下の申し込みフォームよりお申込みくださいhttps://forms.gle/h5KR1ksCx61anogn8
◆企業で社会的な課題に取り組む方向け
「SDGs/ESG時代に、企業に求められる変化とは? グローバル企業の実践を支えてきた社会変革の専門家に学ぶ」
ヒューマニティ・ユナイテッドが行っている活動の一部、例えばサプライチェーンから強制労働をなくすために企業にツールを渡したり、また強制労働に対する取り組みを公表する活動は、企業に対するアプローチであり、企業と協働するアプローチでもあります。
投資家の社会的な活動に対するアプローチや、制度対応に追われるのではなく、あるべき姿を描き、実践していくことが、持続可能な社会への貢献と自社の事業性をともに高める道となりつつあります。
米国・日本それぞれで、ビジネスと市民活動の両サイドより社会課題に取り組むフィリップ・サイオン氏と川北秀人氏を迎え、企業は社会とどう向き合っていくかを考えます。
日時:11月14日(木) 18:30~21:00(18:15受付開始)
場所:都内にて調整中
ゲスト:フィリップ サイオン氏/Humanity Unitedマネージングディレクター
川北 秀人氏/IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表
参加費:18,000円(当日現金払い)
申込:以下の申し込みフォームよりお申込みください https://www.etic.or.jp/seminar/20191114/
・企業の皆さま向けには、10月にもSDGsに関するセミナーを開催します。
KAIKAイノベーションラボ 実践セミナー『SDGs時代に企業はどう向き合うべきか社会課題を起点とした事業創造の実践』
本セミナーではSDGsを起点としたビジネスの、世界の事例、戦略、取り組みを学ぶとともに、SDGs実践企業の事業内容や、事業を起こすまでの経緯を事例として紹介します。ゲストとして、社会課題解決と競争戦略を融合した経営モデルや、企業とNPO/NGO、政府/国際機関等とのトライセクター連携によるイノベーション戦略を提唱し、著書「SDGsが問いかける経営の未来」を上梓された、デロイトトーマツコンサルティング執行役員藤井剛氏にご登壇いただきます。
また、SDGs実践企業として、竹中工務店まちづくり戦略室 岡晴信氏、NECビジネスイノベーション企画本部長の中島大輔氏をお迎えします。社内を巻き込んでいったリーダーシップとともに、現場での実践事例をお話いただきます。
日時:2019年10月23日(水)18:30~21:00(18:00開場)
場所:City Lab Tokyo (京橋駅直結)
参加費:3000円(税抜)
ゲスト:
・デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 藤井剛氏
・竹中工務店 まちづくり戦略室 岡晴信氏
・NEC ビジネスイノベーション企画本部長 中島大輔氏
申込:https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=151212
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