日本だけでなく、世界を舞台に働いていきたい。そんな若者にとってヤング・グローバル・リーダーズから得る学びは多いはず。今回は、先日来日していたヤング・グローバル・リーダーズのお二人から、特別に日本の若者への言葉をいただきました。全3部作でお届けする3本目は、「困難と失敗」についてです。
>>1回目「世界経済フォーラム選出の若手リーダー・YGLが見る、日本の若者像(1)」はこちら。
>>2回目「世界経済フォーラム選出のリーダー・YGLが語る、世界の10年後(2)」はこちら。
人生で起こりうるすべてのことは、すべてが経験であり学習のプロセスである
──Ategekaさんは、失敗についてどう思われますか?
Ategeka 失敗ではありません。学びです。失敗というとネガティブに捉えられがちです。失敗ではないんです。人生で起こりうるすべてのこと、いい悪いに関わらず、すべてが経験であり、学習のプロセスなのです。一度嫌なことを経験すれば、二度と経験したくないと思うわけですよね。失敗ではなく、学びと捉えること。
二つ目は、一人でやろうとするなということ。その過程において、うまくいかないことがあった場合、自信を失い、寂しくなり孤独を感じることがあります。そうなると夜も眠れなくなることでしょう。だから一人で抱え込まないということです。メンターをもち、話しをする相手をもち、辛い時期にいるときは、仲間を傍に感じることが大切です。話すことで、誰かが解決策やアイデアを提示してくれることだってあるわけです。
最後に、例えば、とあるアイデアが成功したとします。しかし、成功までの道のりには、寂しい時期もあり、給料がないときもあり、ストレスを抱え、休みも無いといった過酷な時期も当然あるのです。しかし、そういった苦しい経験などを、起業家の人たちが大っぴらに公開することはありません。世間一般もそういったことに目を向けず、成功事例にばかりを目を向けがちです。誰もこのような過酷なプロセスがあったということを教えてくれません。そうなってしまう原因のひとつに、教育が考えられます。
学校では、いい成績で卒業することや、より良い仕事を得られるための履歴書の書き方を教わります。自分はすごいんだということをアピールするような書き方を教え込まれます。ただ、どのような失敗経験を重ねてきたかということを語れますか? これは難しい質問です。
失敗ということを肯定的にとらえることが日頃からできていないので、難しいと思います。常に成功を目指すように教育で刷り込まれてきたから、それも当然でしょう。
成績の優秀さ=社会で成功するといった概念は、一度壊す必要がある
──最後に日本の若者へ、メッセージをお願いします。
Alemanno 自分が何をすべきかということと、あなたたちが生まれ育った社会システムとのあいだには大きなギャップがあると思います。困惑するのは当たり前です。日本の文化や価値や世間からの期待に答えつつも、自分のやりたいことをするにはどうすればいいのか。日本の教育システムに従っていれば、必ずしも良い社会起業家になれるということでもありません。
どのようにこのギャップを埋めればいいのでしょうか。ひとつは、なぜ日本の教育システムが、日本人の持つニーズからほど遠いものとなってしまっているのかということを理解することです。もう一度、教育のありかたについて考え、変革していくことが大切です。例えば、経験を通した学習といったようなかたちにするなどです。インターンシップの制度をより充実させることも大切です。起業をするために、必ずしもMBAやPh.D.といった高等教育を受ける必要はありません。組織がどのように運営され、機能しているのかといったことを理解しようする姿勢があれば、十分なのです。
もちろんリテラシーというものは必要です。しかし、成績トップになることで社会で成功するといったこれまでの概念は、一度壊す必要があると思います。なぜなら、それは間違っているから。世界における多くの事例がすでに証明してくれています。
優等生でいる必要は無いのです。逆に優等生であることが、創造性というものを蝕んでしまう可能性だってあるのです。言われたことをただやるだけになってしまうだけの人間になってしまう可能性があります。今、何が必要かというと、ロールモデルが必要だと思います。日本人でドロップアウトしたけど、今は有名な社会起業家になっている人といったロールモデルが必要です。彼らの体験や経験をもっと多くの人と共有するべきです。
情熱を育むために、スキルや才能を実践を通して学んでいく
──Ategekaさんからも、お願いします!
Ategeka 同意見です。付け加えるとしたら、もし若い人が自分の好きなことをみつけたとしたら、どのようにしてそれらを育てていくかを考えることが大切です。情熱を形にするプロセスや、それをキャリアにするといったこと。
例えば、サッカーの香川選手です。彼は一筋の光をもたらしてくれるロールモデルだと思います。もし情熱を育んでいくとするなら、そのためのスキルや才能を実践を通して学ばないといけません。簡単なことではないのです。実践を通して才能を開花させていくことです。
その他には、悲劇をいかにパワーとして変えていくかということ。例えば、交通事故で友人をなくしたり、親族を失うといった、強烈な実体験が個人的にあったとき、それをもとに社会の課題に向き合い、他の当事者を救うことができるのです。そして、彼らがそういった悲惨な目にあうことを未然に防ぐことができるのです。そういった強烈な個人の体験は、ときにソーシャルグッドな活動の源泉となるのです。
その他にも、経験に基づくものがあります。仕事、インターンシップなどです。もし食に興味があるとしたら、レストランでまずは働いてみることです。それで自分がどう思うかを感じること。ときにインターンをして嫌いになることだってあるかもしれません。旅という経験に基づく学習方法もあります。他の土地に行って、その土地の人や社会や文化の構造がどのようになっているかを理解すること。それが多角的な視野をもたらしてくれます。ひとつの場所で育っただけでは、世界の他の人たちがどのような考えを持っているかを知ることはできません。旅をすることは自身の才能や情熱を開花させるという意味でも非常に大切な経験なのです。
──ありがとうございました!
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