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これから日本の寄付市場が拡大する3つの理由

2014.04.15 

「寄付」・・・僕はこの言葉に対して、つい最近までなにか「胡散臭くてダサい」匂いを感じていた。この記事を読んでくれている方の中にもそういった人は多いだろう。だがもしあなたがいまだにそういった認識を持っているのだとしたら、それははっきりと言って世の中の潮流を捉えきれていない。

なぜなら「寄付」という行為は私たちが生きているこの社会をより良いものへと変えていく大きな可能性を秘めているからだ。そしてそのインパクトの大きさは日々加速している。 NPOが持続的な活動を続けていくには、人々の共感すなわち「寄付」が不可欠だ。「寄付」は間違いなくこれからの時代熱くなるだろう。今日はその理由を3つに分けて説明してみようと思う。 寄付のイメージ画像  

理由その1:既に寄付市場は拡大しはじめている

以下のデータは、すでに寄付市場が拡大しつつあることを示している。 日本における個人寄付額 『寄付白書2013 Giving Japan 2013』日本ファンドレイジング協会、2014を参考に作成 日本の寄付市場を2020年までに10兆円にすべく活動している「日本ファンドレイジング協会」によると、日本における2012年度の個人寄付額は6,931億円。2009年からずっと5,000億円前後で推移していたなか、2011年の東日本大震災を機に一気に拡大したという。 寄付の盛り上がりはすでにはじまりつつあるのだ。  

理由その2:インターネットが寄付にイノベーションを起こしている

この記事の冒頭で、僕は寄付に対するマイナスイメージを語った。「寄付」と聞くと街中で必死に声を張り上げている人をどうしても想像してしまうからだ。それを否定しているわけでは決してない。しかし、なにか急ぎの用で街を歩いているときに、その声に足を止めることは少ない。

このように、従来の寄付という行為には「手間」がかかった。寄付に「手間」がかかってしまうと、その時点でもう終わり。わざわざ一手間かけて寄付をしようという人は、まだまだ少ない。 だが寄付がまったく手間なくできるとしたらどうだろうか。

そして、それは既に実現されている。そう、いまのわれわれにはインターネットがあるからだ。インターネットは生活のあらゆる「手間」を消し去ってくれる。それは「寄付」に関しても同様だ。 インターネットは今後、ますます「寄付」という行為にイノベーションを起こすはずだ。そしてその芽はもう出始めている。いくつか例を紹介しよう。  

(1)大企業の技術が寄付文化を作る、ソフトバンクの「かざして募金」

企業が自身の持つ技術をフル活用すれば社会に与えることのできるインパクトは大きい。そのひとつの例が、かのソフトバンクだ。

ソフトバンクは、2014年3月5日から「かざして募金」というサービスを開始した。これはスマートフォンを、登録先の団体のポスターにかざすだけでその団体に寄付ができるという優れもので、登録団体はすでに約40を数える。 このサービスのすごいところは寄付額が毎月の携帯料金に加算される点だ。寄付をする都度、クレジットカード情報を入力したりする必要が一切ない。あなたは歩くスピードを落とすことなく、ものの数秒で応援したい団体のサポーターになることができる。

ソフトバンクという大企業が、自らの持つ技術で寄付をこれほどスマートなものに変えたことには、大きな意義があるだろう。  

(2)ネットマーケティングのスペシャリストが仕掛ける新たな社会貢献プラットフォーム「gooddo」

「かざして募金」は、寄附にかかる「手間」を大幅に減らした。次に紹介する株式会社セプテー二・ベンチャーズが運営する「gooddo」はそれだけにとどまらない。なんと寄付者はお金をだすことなく、好きな団体に寄付をすることができるのだ。 gooddoキャプチャ gooddo"WEBサイトスクリーンショット 「誰でも、今すぐ、簡単に無料で支援することができるソーシャルグッドプラットフォーム」を自称する「gooddo」。どういう仕組みになっているのだろうか。

まず寄付者が自分が応援したい団体を選ぶ。寄付をするには、gooddo上のその団体のページに掲載されている企業広告をクリックすればよい。すると、その企業がgooddoに支払っている広告掲載費の一部が寄付者が選択した団体に回るという仕組みだ。 寄付者にとっては、何と言っても自らの負担なしに寄付をすることができるというメリットがある。企業にとっては、自社のマーケティングに加え、社会貢献活動に参加しているというブランドイメージの向上にも繋がる。NPOなどの登録団体にとっては、より広い層から寄付を募ることができるようになる。つまり寄付者、企業、寄付先の団体、3者にとってwin-win-winとなるなんとも信じられない仕組みなのだ。

このとんでもない仕組みを生みだしたのは株式会社セプテー二・ベンチャーズ。同社は、インターネット広告やモバイル広告などを手掛ける株式会社セプテー二・ホールディングスの連結子会社である。つまりwebにおけるマーケティングのスペシャリストがその知見を生かして全く新しい社会貢献のプラットフォームを作りだしたということである。 以上の2つの事例のように、これからはビジネスの現場で活躍してきた企業が、その地力を活かして寄付市場に新たなイノベーションを起こしていくであろうことは想像に難くない。

理由その3:政府が「寄付」を社会変革のエンジンとして認めた

■ 納税を寄付にシフトさせる「寄付金控除」

つい先日消費税が8%に上がった。「ちくしょう、消費税なんか上げやがって・・・お酒とタバコ控えなきゃやっていけないじゃんか」なんて思っている方もいるのではないだろうか。でもちょっと待ってほしい。そもそもわれわれはなぜ税金を納めているのかいま一度考えてみよう。

「そんなの当たり前じゃん。採算が合わない、でも世の中に必要な公共サービスを国にやってもらうためでしょ」

その通りだ。しかし、普段からそんなことを意識している人ははたしてどのくらいいるだろうか。 前置きはこのくらいにして話を戻そう。 「寄付金控除」という言葉をご存じだろうか。これは、日本国民全員が何の気なしに行っている「納税」という行為を「寄付」という積極的な行為にシフトさせる魔法のような制度だ。そしてこの制度が寄付という行為を間違いなく加速させていく。

■「寄付」により「税金」が安くなる!?

「寄付金控除」とはその名の通り認定NPO法人(*1)への「寄付金」の額の一部を「控除」(=差し引く)できるという制度だ(*2)。

控除される対象によって「税額控除」と「所得控除」の2つに分けられるが、特にこの「税額控除」が強力だ。 「税額控除」では、あなたが支払うはずの税(所得税等)の額から、あなたが寄付した額の一部(最大で50%)が差し引かれる。ざっくり言ってしまえば、寄付をした分、なんと最大で寄付金額の半分税金が安くなるということだ。この場合、寄付をしている分、あなたの元から出ていく金額は寄付をしていようがしていまいが結果的には変わらないが、寄付をしなければこれまでどおり税として国にいっていたものが、寄付をすれば寄付金としてあなたが選んだ団体に渡ることになる。

■ あなたの選択次第でNPOが社会を変える

つまりあなたは「税として国に納めるか」「寄付金としてNPOに寄付をするか」、どちらかを主体的に選択できるというわけである。 そして前述のとおり税金とは「採算が合わないため民間では行うことのできない公共サービスを国が行うためのもの」であるため、この「寄付金控除」という制度を国が導入したということは、国がNPOを「新たな公共サービスの担い手」として認めたということを意味する。

国では対応しきれていない問題に対して取り組んでいるNPOがあり、市民は国に税を納める代わりにそのNPOに寄付をすることができる。「この問題は、地域の声にじっくりと耳を傾けてスピーディーに取り組まなければいけない」そう思った時にはその問題に取り組んでいるNPOに寄付をする、という選択肢もこれまでより当たり前になる。 この「寄付金控除」により、わたしたちはこれまで以上に寄付という選択肢を選びやすくなり、これは同時にわたしたちの選択次第では「寄付」を「社会変革のエンジン」にすることが可能であり、それを国が認めた事に他ならない。 *1:認定NPO法人:NPO法人のうち、一定の要件を満たし、所轄庁(都道府県または政令指定都市)から認定された法人。税制上の優遇を受けることができる。認定の要件等、詳しくは内閣府のHPを参照。 *2:寄付金控除に関する詳しい説明は内閣府のHPを参照。

「寄付」がこれから盛り上がる3つの理由:まとめ

以上の3つが、寄付がこれから熱くなる理由だ。

市場規模の拡大・技術革新・法制度、これらの要素が組み合わさって「寄付」という社会的ムーブメントが盛り上がっていくのは間違いない。 それと同時にNPO側にも寄付を集めるスペシャリストが必然的に求められる。それがファンドレイザーという職種だ。

ファンドレイザーに関しては、このDRIVEラボでも何度か取り上げているので、ぜひ参考にしていただきたい。

参考記事:今注目の仕事、NPOの経営を支える「ファンドレイザー」とは? by 山元圭太さん(認定ファンドレイザー)  

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梅村 尚吾

1992年生まれ、東京大学文学部英語英米文学科3年。学生インターン。大学受験中にマザーハウスのドキュメンタリー番組で「ソーシャルベンチャー」という概念に出会い、その道を志すように。大学1,2年次はアフリカ渡航などを経験。3年次を休学し、認定NPO法人フローレンスで1年間のインターン。ソーシャルセクターにおけるIT技術活用のインパクトの大きさに可能性を感じ、現在キャリアを模索中。生涯スポーツである水泳のため、スポーツジムに通うのが日課。

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