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コロナが行政デジタル化の追い風に。ブロックチェーンによる「価値の再定義」を進めるチェーントープ正田さん

2020.07.03 

新型コロナウイルスは、私たちに新しい働き方・生活様式への転換を迫るだけでなく、人々の意識や世界観をも変えつつあります。先の見通せない激変する環境。経営者たちはどんな思いでこの状況を見つめているのでしょうか。

 

そこで、意外と語られていない「経営者のあたまのなか」を解剖してみようと立ち上がった本企画。第2回は、福岡県飯塚市の株式会社chaintope(チェーントープ)代表取締役CEO 正田英樹さんにお話を聞きました。日本有数のブロックチェーン技術者を擁し、常に時代の一歩先を行く構想を仕掛けてきた正田さんの「あたまのなか」の一端をお届けします。

 

正田英樹さん提供写真ヨコ

 

正田英樹(しょうだ・ひでき)/株式会社chaintope 代表取締役CEO

1999年7月、ハウインターナショナル創業。2015年頃より共同創業者であった故高橋剛、現CTOの安土らと共にブロックチェーンの研究開発を開始し、早期から社会実装に向けた取り組みに注力。2016年12月、ブロックチェーンに特化して事業を進めるべくchaintopeを設立。ブロックチェーンを用いた自律分散型の新たな社会モデルの構築をモットーに様々な分野でのブロックチェーン実装に向けて日々奔走。

山口県光市出身、九州工業大学情報工学部卒。

ブロックチェーンの社会実装を途上国からリバースイノベーションしようとしていたが・・・

――まず、御社の事業内容について教えてください。

 

私が大学を出て福岡県飯塚市で起業した二十数年前は、日本のインターネット黎明期でした。渋谷の「ビットバレー構想」などというのもその頃です。当時は、この革新的技術を使って地方でも個人でもすごいことができる、と言われていました。でもその後の現実は違った。インターネットを利用して成功したのはもともと信頼のある大企業だけだったんです。

 

その理由は、インターネットが持つ2つの弱点でした。ひとつは、ネット上の情報が正しいことを証明する技術がなかったこと。だから国や大企業など信頼のあるところだけが有利でした。もうひとつは、ネットを介して直接「価値」を送れなかったこと。たとえばネットで買い物をするとき、あなたが送っているのは「情報」だけです。「価値」は後からカード会社や銀行の仕組みを通して移転するわけです。

 

それに対して、10年ほど前に登場した仮想通貨のビットコインは、銀行口座を持っていなくても直接ネット上で「価値」を送れる。これを可能にしたのがブロックチェーン(以下BC)という技術です。これを使えば、ネット上で「だれが、いつ、どこで、なにをしたか」を証明できるのです。私たちはこのBCをいろいろな分野に実装することで、新しい社会モデルをつくりたいと考えてきました。

 

いま皆さんは当たり前に銀行口座を持ち、おカネ(貨幣)を価値としてやりとりしていますよね。でも、そういう「当たり前」のシステムを使わずに価値のやりとりができるようになれば、(そのシステム外にいる人にとって)すごく便利になります。たとえばミャンマーでは、スマホは9割が持っているのに銀行口座保持者は26%に過ぎないんですよ。そういう意味では、日本のような先進国よりも途上国のほうが当面BC技術の恩恵は大きいと考えて、私たちはマレーシアに現地法人をつくり、昨年までは東南アジア各地を頻繁に訪れていました。BCを用いた新事業をまず途上国で普及させてから先進国へ“逆輸入”する、リバースイノベーションを目指していたんです。

 

――そこへコロナショックが来たわけですね。

 

実は、コロナショックの少し前に風向きが変わり始めていました。5年ほど前からBCが盛り上がってきて、私たちはベンチャーキャピタルから億単位の研究開発資金を調達していたのですが、この資金が集まりにくくなった。日本は行政も大企業も非常に保守的だから、BCに興味はあっても前例のないことをやるには慎重で、実際に利益が出るまでに時間がかかる。それで、投資家が慎重姿勢に転じてきたのです。そこへコロナショックで、ベンチャーキャピタル(からの資金調達)は壊滅しました。

 

一方、海外事業も課題があって、私たちは途上国でお金も人も技術も先行投資してきたのが、少し息切れしてきた。それで、海外は少し絞って日本国内でできることに集中しようというところでした。

 

――コロナ後の変化はどうですか?

 

職場環境の変化は大きいですよ。まず、基本的に今の事務所(飯塚市内、福岡市内、東京に複数借りていたコワーキングスペース)はすべて手放し、国内に30人、マレーシアに10人ほどいる社員全員、テレワークに切り替えました。

 

正田さんインタビュ200622

 

実際やってみて、開発部門は基本これでいけるとわかりました。オンラインなら1日6本の会議をやることも物理的には可能ですし、内容も本質的な話だけに絞れて効率がいい。また、リモートワークOKの条件で開発技術者を募集したところ、かつてないくらいの応募があってびっくりしています。決算書類などの保管場所や、集まって勉強会をやるためのスペースは確保しますが、定常的なオフィスはなくす方向です。

 

ただ、問題は営業です。毎週1~2回は東京へ行っていたのがぴたりと止まって、新規案件がまったく進まなくなりました。相手が大企業の場合、若手の担当者とはオンライン会議でよくても、役員クラスはどうしても対面で話さないとダメなんですね。東京では、またどこかで机を一つ借りることになるかもしれません。

コロナは追い風。ブロックチェーンによる「価値の再定義」で地方から新しい社会モデルを

――対面前提といえば、役所のペーパーレスはコロナを機に進むでしょうか?

 

日本の行政のデジタル化の遅れは以前から指摘されてきましたが、今般の特別給付金をめぐるモタモタなどで、もう待ったなしになりましたね。

 

そんな中、私たちは地元の飯塚市との間で、BCを用いて行政文書等の電子化を目指すことで合意しました。たとえば住民票や課税証明書を、窓口に行かなくても電子的に取り出し、暗号化して電子的に送れる仕組みをつくります。ただ電子化するだけでなく、その情報が正しいと証明するためにBC技術が必要となるのです。

 

これは、役場窓口の三密回避に役立つという観点から市に働きかけ、速やかに実現したもので、その意味ではコロナが(行政デジタル化の)追い風になったと言えますね。来年3月から本番に入れるよう進めたい考えです。

 

――他にもBCを使ってコロナ後の社会にどんな仕掛けをしていきますか?

 

たとえば、テレワークになっても判子を押すために出社しなきゃいけないという話がありますね。契約書を交わす、という行為が電子的に実現できる仕組みをBCで作れば、それが不要になります。

 

またBCは、本当の意味で地方分散型の仕事を可能にします。サーバーを必要とするインターネットは中央集権的で、結局は東京に集中してしまう。一方、BCは(バラバラに存在する小さなコンピュータが全体で信頼を担保するので)「中心」がない。だから地方で独自にいろんな仕掛けができるのです。

 

さらに、BCの本質的な意義は、「価値」を再定義できることだと思っています。近代の資本主義社会では、財産(貯金、車、家、土地・・・)を持っている人=「信用力が高い」と評価され、その信用力で資金調達力などが決まります。でもそれでは財の集まっているところ、つまり都市部の人が絶対に有利なんですよ。

 

地方の小さな村で、周りから感謝されるすばらしい事業を行い、多くの人から共感・応援されている人よりも、1億円持ってる都会の人の方が自動的に「信用がある」って、おかしいでしょう。BCを使った独自の仕組みを地域でつくれば、そうした価値観を再定義できる可能性があるのです。これが地方創生につながります。

 

地方創生トークンコミュニティモデル

 

たとえば、自治体と協力して地方創生事業を担う現地の事業者が、セキュリティトークンという電子株券のようなものを発行して、投資家から資金を集め、地元の地銀などが発行する地域通貨で配当を支払う。また、その地域内では、社会の役に立つことをしている事業者への感謝・応援・共感といった「社会関係資本」をBC技術で(後から改ざんできない形でネット上に記録して)可視化する。事業者はその「信用」を元に資金調達ができ、次の行動を起こせる。そうやって、コミュニティ内で価値が循環する仕組みができます。当然これはSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも寄与しますね。

 

――それが実現するためのカギはなんでしょうか?

 

一番のポイントはやはり「人」ですね。信念をもって魅力的な事業を興し、確かな共感を集め、かつ一定の事業収益を確保できる人材。でないと社会関係資本も、投資家からの資金も集められません。志ややりがいだけでは持続できないので、必要なスキルを備えた有能な人材がミドルリスクをとりつつ挑戦できるような環境づくりが大切でしょう。

 

地方自治体が使える最大の武器は「規制緩和」です。今般のコロナ禍を追い風とし、BCで再定義された「価値」に基づく自治体主導の地方創生、地方からの新しい社会モデルづくりに、私たちも貢献していきたいと考えています。

 

 

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この記事を書いたユーザー
中川雅美

中川雅美

神奈川県川崎市出身。東京の外資系企業数社で20年以上、翻訳・編集・広報・コーポレートブランディングの仕事に携わったのち、2014年初から福島県へ。復興庁からの派遣職員として、当時全町避難中だった浪江町役場の広報支援に入る。任期終了後も福島県に残り、現在は福島市を拠点にフリーのライター&広報アドバイザーとして複数の団体を支援中。 ブログ「Life in Fukushima 50歳からの単身地方移住日記」https://lifeinfukushima.com/

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