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「甘え上手でわがままな人を育てたい」ー地方の贈与経済の豊かさを可視化するプロジェクトがスタート

2020.08.17 

コロナ禍で活躍の場を失い、孤立しているクリエイターの卵たち。彼らに「あげすぎ」「もらいすぎ」の田舎の豊かさを届け、存分に活動に打ち込んで欲しい。そんな思いを込めた贈与経済の実験が、ローカルベンチャー協議会で繋がった宮城県石巻市の株式会社巻組 渡邊 享子さん、島根県雲南市を拠点にコミュニティナースの活動を展開する矢田 明子さん、NPO法人ETIC.押切 真千亜の3人からスタートします。この記事では、プロジェクトがスタートした背景、描く未来を、3人の鼎談形式でお届けします。

 

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Creative Hubプロジェクトとは

経済的に孤立しがちなクリエイターの卵達を石巻のような地方に集め、使われていない地域資源を活用して彼らの生活を支えながら、彼らが自分たちなりの制作や事業づくりに取り組める環境を提供する仕組みをつくる構想。「アシュラム」と呼ぶ地域の空き家をリノベーションするなどして準備した共同生活の場を提供、その家賃は3年間無償となる。食料、電子デバイス、家電、その他生活に使えそうなものを「ギフト」として寄付者より集め、ギフトバンクという倉庫に格納し、専用ウェブサイトにも公開。基礎的生活資材としてアシュラム入居者にマッチングし、彼らの最低限の生活を支える。アシュラム入居者は、生活の拠点と基礎的生活資材の提供を受けた代わりに、自分の制作物や労働力、その他自分が提供できるコトやモノを、お金以外の形で考えてギフトバンクに返していく。

>> クラウドファンディングページはこちら

https://motion-gallery.net/projects/creative_hub

 

 

<プロフィール>

渡辺さん顔写真

渡邊享子(わたなべ きょうこ)

1987年埼玉県出身。東京工業大学大学院在学中に東日本大震災が発生。研究室の仲間と共に石巻市へ。石巻にボランティアで通い続けるうちに移住。約22,000戸が全壊家屋となった同市にて、廃屋に近い資産価値の低い空き家を運用して、移住してクリエティブな事業を始める人々の支援を始める。2015年合同会社巻組設立。2016年COMICHI石巻のプロジェクトマネジメントを通して日本都市計画学会計画設計賞受賞。その後、2017-2019年 東北芸術工科大学専任講師として勤務。2019年第7回日本政策投資銀行女性新ビジネスプランコンペティションで「女性起業家大賞」を受賞。2021年5月20日をもって合同会社巻組は株式会社へと移行した。

矢田さん顔写真

矢田明子(やたあきこ)

1980年生まれ。島根県出雲市出身。26歳のときに父の死を経験し、看護師を目指して27歳で大学へ入学。大学3年のときにコミュニティナースとして自ら活動を開始。看護師免許を取得後、島根大学医学部看護学科に編入し保健師取得。2014年、人材育成を支援する『NPO法人おっちラボ』を立ち上げ、代表理事に就任。2016年5月より「コミュニティナースプロジェクト」でその育成やコミュニティナース経験のシェアをスタート。2017年4月に『Community Nurse Company株式会社』を設立。同年12月、『日経WOMAN』より「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018」を受賞。『Community Nurse Company株式会社』代表取締役、『株式会社コミュニティケア』取締役、『NPO法人おっちラボ』副代表理事、雲南市立病院企画係保健師。

押切さん顔写真

押切真千亜(おしきり まちあ)

NPO法人ETIC. ローカルイノベーション事業部サブマネージャー 秋田県湯沢市出身。高校入学時から親元を離れ寮生活。寮の仲間とバザーを行いガーナの2人の里子を支援。慶應義塾大学総合政策学部へ進み、政策情報学生交流会の事務局やアウシュビッツ遺品展かまくら代表、NGOカレッジアシスタントなど学外の活動にも忙しく過ごす。卒業後は青年海外協力隊村落開発普及員としてニカラグアへ。帰国後、大学院を経て再び国際協力の道へ。ドミニカ共和国の小規模農家向け環境保全型農業開発プロジェクトで活動中には現地のカーニバルチームにも参画。その後、JICA青年海外協力隊事務局では東南アジアと障碍当事者の海外派遣にも携わる。JICA横浜国際センターでの市民参加協力事業を経て、2012年10月~ETIC.。震災復興リーダー支援プロジェクトでは復興の現場に右腕となる人材を250名送り込む。現在は全国にローカルベンチャーを増やすための広域連携事業等を担当。

コロナ禍で孤立しているクリエイターたちに、田舎の豊かな関係資本で生活を立て直してほしい

 

――この「Creative Hub」構想が渡邊さんの中で生まれた背景を教えてください。

 

渡邊さん(以下、渡邊):新型コロナウィルス感染拡大によって、今までのビジネスモデルだけでは難しい局面がある中で、石巻で繋がっているプレイヤーたちは「贈与」「恩送り」などお金を介さない新しい価値交換のあり方を意識し始めているように感じています。日本、特に都市部では等価交換が当たり前になっていますが、「あげすぎたり」「もらいすぎたり」してもお互いに「ありがとう」と素直に受け取って何となく帳尻を合わせて暮らせるじゃないかと、少なくとも石巻の友人たちは体感し始めているように思うんです。

 

一方で、巻組がこれまで支援してきたアーティスト・個人事業主・クリエイター、それらの卵の大学生たちの中でも現在都会で頑張っている人たちが、留学が中止になったり収入の機会を失ったりと孤立して困っている状況で、「石巻は豊かな関係資本があって支えがあるから大丈夫だよ。こっちにおいでよ」といった気持ちになったんですよ。「あげすぎ」「もらいすぎ」「お互いさま」といった、恩送り・おせっかいが基盤の世界で、いったん自由になったらいいんじゃないかと思ったんです。

 

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株式会社巻組の皆さん。前列中央が渡邊享子さん

 

顔が浮かんで、あげたいからあげる。豊かで不均衡な価値の贈り合い

 

――石巻には、具体的にどのような「あげすぎ」「もらいすぎ」があるのでしょうか。

 

渡邊:「めかぶが余って、なんとなく私(渡邊)の顔を思い出したから事務所に行って勝手に冷蔵庫に入れといたから!」といったこともありました。事務所の鍵を開けておいたら盗まれるんじゃなくて増えていた、みたいな(笑)。先日もインターン生が商店街のおじちゃんから古いタイプライターをもらっていましたし。こうした贈与は日常的なもので、あげる側は見返りを求めているわけではなくて、あげたくてあげている感じです。

 

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インターン生は翌日東京に戻る予定だったそうですが、「事務所に置きたいからもらっていいですか?」と、許可を求める電話が渡邊さんのもとにきたのだそう

 

この不均衡な価値の贈り合いは田舎ならではなのかもしれませんが、石巻は被災地なので、日常が当たり前ではないという感覚が根付いていることも影響しているのだと思います。等価交換でインフラが整備されて、通勤して給料を得るのが当たり前じゃない世界を体験したからこそ、相手の顔を思い出して困っていたら余剰を渡そうという贈り合いが日常的に成り立っているなと思いますね。

 

 

押切:そうした贈り合いは、私の地元の秋田でもありましたよ。ご恩は3倍返しするものだと言われて育ちましたし、何代も前の先祖によくしてもらったからとよくしてくれる人たちも周りにいました。今すぐ等価交換する必要はないから、返せるときに返せばいいというのが地元の考え方でした。

 

渡邊:自分のところで価値が止まらない感覚なんですよね。お互いに顔の見える関係の中で生きているからという理由もあると思うので、もしかしたら都会でも場所によっては普通に行われているのかもしれないのですが、地方の方が顔が見えやすいということだと思います。

 

集まったものを前に、集まった人が自由な発想で使える倉庫を作る

 

――具体的にはどんな取り組みをされるのでしょうか?

 

渡邊:巻組は住宅賃貸経営がメイン業務なので、住人の皆さんから家があることで救われ次のキャリアにつながることがあることと伺って、住まいを生活のベースと捉え直すことで何かできることがないのかと考え一定期間家賃無償のシェアハウス「アシュラム」を始めることにしました。さらにアシュラムの入居者や困った人たちに宛てて寄付されたものを保管しておけたり、彼らの制作や発表の場になるような倉庫を作ったらいいのではないかと考え、駅から徒歩5分の、震災以降誰も使っていなかった文房具屋の倉庫を借りました。こうした物件自体がCreative Hubなんじゃないかと感じましたし、一目見てスタッフと「ここだ!」と盛り上がったくらい、かっこいい倉庫なんですよ。

 

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石巻でCreative Hubのギフトバンクとしてリノベーション予定の倉庫。中には文房具など震災前に使われていた資材が

 

矢田:私には作れないから、とりあえず借りました! 雲南市の山の上にある築100年の木造建築の学校を丸々一棟。この校舎を建て直す話が出たとき、元卒業生の地域に住むおばあちゃんたちが有志で2000万円を集めて、潰したくないと山の上に移築した学校なんです。この贈与経済のプロジェクトにぴったりな場所だなと思って。管理人のおじいちゃんたちにもプロジェクト内容を伝えたら、毎日朝ごはんつけてあげるよって言ってくれました。地元のお米と手作り味噌の味噌汁と、おばあちゃんが作った地の野菜のお漬物とかだそう。

 

渡邊・押切:すごい!!

 

廃校

雲南で活用予定の廃校。入り口には「創作研修棟」とあり、まさにCreative Hub

 

渡邊:これら倉庫を拠点に、困っていたり頑張っている子がいることに対してどんなギフトが集まるか実験できることが楽しみです。オンライン授業になったけれどパソコンがない子のためにパソコンが寄付されてもいいかもしれないし、画材や廃材がきてもいいかもしれないし、情報でもいいかもしれない。足りないものがあることを知って集まってきた物たちは、欲しい人が持っていけるような仕組みにしたいです。活用イメージは欧米のクリエイティブリユースの拠点で、毎週ドネーションしているのですが、集まったものに対して集まった人が自由に想起して貰っていく様子がおもしろいなと思っていて。

 

あとは、例えば蟹があるとCreative Hubのホームページに掲載したら、「蟹が欲しいから手伝いにいきます!」といったことがあるといいですよね。そうしたことが豊かだと思う人たちが地方に集まってきてくれたらいいし、富める人も貧しい人も来てくれたらおもしろいなと思います。

 

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渡邊さんがもらったという、立派な蟹

 

青梅

最近矢田さんがもらったという大量の青梅。このように地域の食材が集まってくる

 

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メンバーが描くCreative Hubの使われ方イメージ

可視化されていないだけ。ときには貨幣経済よりも力強さを発揮する贈与経済

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プロジェクトの拠点は、石巻(東)と雲南(西)と渋谷。それぞれに得意を持ち寄った3人が、協力し合って進めていく

 

――矢田さんと押切さんは、なぜこのプロジェクトを一緒に進めることにされたのでしょうか。

 

矢田:享ちゃん(渡邊さん)が好きだからね(笑)。あとは、彼女が語るリアルは地方にはすごくあって、信頼や利他性を行為に移したことで生まれた価値を体感している人はたくさんいると思うんです。正直数百万円の融資を得た人よりも贈与経済で支えられている人のほうが結果的に形にしていくことが周囲ではざらに起きていて、これは地方の共通項だなと。私の関わる事業も、地域の人たちから金銭的サポートよりも贈与経済で押し上げられてきたという実感があって。一方で、それは可視化されているわけではないので、このプロジェクトでそこを可視化していけたら色んなものが次々と生み出されるだろうなということが実感として分かったんです。でも享ちゃんは、都会の人にこの構想を話したら「クレイジーですね」って言われたことがあるんでしょう?

 

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島根県雲南市を拠点に、コミュニティナースの活動を展開する矢田明子さん

 

渡邊:そうなんだよね。よく言われるのが「何のために寄付するんですか? 寄付を受けた人はどうなるんですか?」で。リターンを作らないと寄付なんて集まるはずがないというのが市場経済の前提なんですよね。

 

矢田:全然クレイジーじゃなく事実としてあって、豊かなものだと思っているんだけれど、想像がつかないんだろうね。まずは実感している人たちで、可視化していければいいよね。

 

渡邊:そうそう、課題意識よりは純粋に可視化がおもしろそうだなと思っているんですよね。

 

押切:私は2人が始めたところに後から合流しました。3月ごろ世界中からおよそ1800人もの青年海外協力隊員たちが帰国するというニュースを聞いて、これからきっと経済や雇用が一層悪化して、非正規雇用者を含め意欲と能力のある母集団が市場にあふれることになるだろうと危機感を覚えたんです。その一方で、これまで出会ってきた地域の事業者さんたちのあり方を考えると、それぞれ転換は求められても、地域の人々の暮らしに直結するゆえに単純に首を切るような生き残り方はありえないだろうと思って。そうした人の暮らしが守られる事業のあり方がもっと広がっていけばいいし、市場にあふれた人材を地方につなげていったり、セーフティーネットも作っていかなくてはと思っていたときに2人の話があって。

 

今回、都市部がどれだけ災害に弱いかも、地方が都市部に生きる人たちのセーフティーネットになっていることも多くの人が実感したのではないかと思うんです。これからは仕事も、誰かがきちんと準備して募集されるようなものではなくて、コミュニケーションの中から生まれるということがどんどん起こりそうな気がしています。

 

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渋谷のNPO法人ETIC. で、ローカルイノベーション事業部でサブマネージャーをつとめる押切真千亜

 

有限の資源を奪い合うのではない、無限の資源を作り合う実験

 

渡邊:最近贈与経済について考えながら、巻組が扱う“おもしろい不動産”って何なんだろうと改めて考え直していたんです。一般的には不動産の価値は立地や年数で決まるのですが、巻組はできるだけ立地が悪くて直す余地がある物件を格安で購入して、修繕・運用するビジネスモデルです。それなのに、先日一般的な不動産屋さんでも流通しそうな好条件物件の相談をいただいて、最初は今買い取る体力がないからとお断りしたのですが、それでも巻組に話を聞いてもらいたいとおっしゃってくださった大家さんがいらっしゃったんですよ。そのときに、私たちが商材にしてきたのは「地域のためにこの物件を使ってほしい」という大家さんの善意と贈与だったんだと気づいたんです。

 

矢田:すごく共感します。私たちの業種は不動産でもないのに、先日は大きな古民家と裏山をもらってほしいというお話をいただいてしまって。裏山は、管理が想像つかなくてどうしようかと思っていたけど、普段から何かあれば手伝うよと言ってくれている地域のおじちゃんたちに声をかけてみたらいいのかな。

 

渡邊:仕事ができそうな山があって、仕事が欲しそうな人がいるなら、とりあえずマッチングしてみたらいいと思う。巻組でも最近扱い始めた物件の裏山が雑木林で困っていたんだけど、山の上に住んでるおじちゃんから「草刈り得意だから、とにかく自分にやらせてくれないか」と急に電話がきて。大家さんは後々請求されたらどうしようと警戒していたけど、実際やってもらってみたら本当に草を刈りに来ただけでした(笑)。

 

震災後のボランティアの中にもニートの方が多くいらっしゃって、とにかくやれることがあって役に立つのならって貯金を切り崩しながらやってきた人が多かった印象があります。ただ役に立ちたくてこれだけ人が動くのかって驚きましたね。今都会では交換するのが当たり前で、そしてそれが価値平等であるのが当たり前だという強迫観念に囚われ過ぎていて苦しくなっているところはあるんじゃないかと思います。

 

押切:今回の実験はSDGsにも直結しているように感じます。一人勝ちとか、自分たちだけが安全に生きられるといった幻想はないし、世界中が繁栄していなければ自分の平和も繁栄もないといった相互依存の世界観。

 

渡邊:限られたパイを奪い合う話ではなくて、そもそも限られていないし、お金を払えない人は別の形で提供したらいいし、資源が余っている人は好きなだけ払ったらいい。そうしたら世界が平和になるとと思うんですよね(笑)。それなのに全員を同じ土台に載せて等価交換をしなきゃいけないとなると、途端に平和じゃなくなってくる。

 

矢田:有限の資源を奪い合うとは反対に、この実験は無限の資源を作り合う感じに近いよね。贈与経済のあり方で人が関わり合っている限りは、資源は無限。

 

渡邊:そういえばこの前知人が言っていたんだけど、ヒラメが大漁で値段下がっていた時期に近所の人にヒラメをお裾分けしても、いつもと同じように喜ばれると。それが米になって帰ってくるときもあるし、何も帰ってこないこともあるけど、ヒラメはヒラメでいつでもおいしくて、流通させようとしない限りヒラメの価値は絶対なのだと。この実験はそういう話なんじゃないかなと思ったんですよね。そうした次元において、何か有限のものを奪い合う必要はないんですよね。人材もそういうことなんじゃないかなと。

 

矢田:すごく分かる。あとは、おじいちゃんにこれを手伝ってよと役割を見出すと、労働力を提供したうえに魚を持ってきてくれるとか。挙句この家をやる! みたいなことも起きる(笑)。

 

渡邊:あるある、くれすぎるというか(笑)。それはおかしいことじゃないんだよね。

 

矢田:おじいちゃんたちを見てると金銭的な見返りを別に求めていなくて、喜ばせたいとか、あげることによっておじいちゃんたちの中にもなぜか喜びが生まれているんですよね。

 

押切:それが実感としてわかると、人に頼ることもできるようになるよね。

 

渡邊:そうそう、本当にそう。

 

甘え上手でわがままな人が増えればいい

 

――このプロジェクトを通して、支援したクリエイターの人たちにこんな風に幸せになってほしいといったビジョンはありますか?

 

渡邊:私自身は、甘え上手でわがままな人を育てたいと思っています。困ったときに「今何も持っていないんで困っています」と言うことができて、相手がしてくれようとしていることを素直に受け取れる力、そして自分の違和感を無視しない力を育んでほしいです。これらが組織型社会でタブー視され過ぎていて、生きづらくなり過ぎていると思うんです。

 

矢田:生きることに対する自己責任論が強すぎるなと思いますよ。特に学生ら若い子たちと会うと、迷惑をかけちゃいけないという感覚が強すぎるなと感じます。この世に生を受けた時点で迷惑も心配もかけてないわけないじゃないですか。思考も振る舞いもそう思い込める範囲で生きているということなんですよね。

 

だから迷惑の定義を、「煩わしいが嫌ではないもの」に落とし込みたいなと思います。迷惑をかけることへの恐れは、根本的には「嫌われたくない」という気持ちだと思うので。そこの定義が変われば、迷惑をかけることがもうちょっとカジュアルになるんじゃないかなと。

 

押切:そこが解放されると、感情的にも解放されますよね。人間性がやっと保たれる、取り戻せる。

 

矢田:それを可視化するのが、この実験なんだよね。

 

渡邊:貨幣経済を否定するというわけではなく、自立して持続的に生きていけるあり方のオルタナティブを示せるといいですよね。来てもらう子たちにはお金じゃない方法で家賃を払ってほしいと伝えるつもりで、そうすると自分は何を拠出できるか真剣に考えるので、それが自己分析になって次のステージにつながると思うんです。贈与する方も、金銭的な寄付ではないので何なら贈れるのか必死で考える時間を持ってもらえることが価値なのかなと思います。

 

――ありがとうございました!

 

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桐田理恵

1986年生まれ。学術書出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2018年よりフリーランス、また「ローカルベンチャーラボ」プログラム広報。