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自分のエゴと社会貢献は両方あっていい。地方大学生が東京で起業するまでの軌跡—オクリ―山口さん

2020.09.08 

1メイン

 

憧れの有名人からビデオメッセージが届く事業を行っている株式会社オクリー代表取締役の山口諒真さん(25歳)。佐賀大学に入学した当時は「起業なんて全く考えてなかった」そうですが、結果的に大学卒業の翌月には起業を果たしています。現在に至るまでに、どのような物語があったのか、お話をうかがいました。

 

山口さん丸抜き

山口諒真(やまぐち・りょうま)/株式会社オクリー 代表取締役

1994年10月17日岡山県浅口市生まれ。2019年4月 株式会社ガイアックスに新規事業担当として入社。ガイアックス史上最速、入社1週間で新規事業を法人化。現在は、株式会社オクリーのCEOも兼務。トビタテ!留学JAPAN(1期生)、MAKERS UNIVERSITY(1期生)。

偶然のチャンスを逃さない

 

最初のきっかけは、中学生の頃、テレビ番組「情熱大陸」で特定非営利活動法人ジャパンハートの特集を見たことだったそう。ジャパンハートは、「医療が届かないところに医療を届ける」を理念に掲げ、途上国や被災地などで活動する国際医療NGO。団体の活動にとても共感し「こういう人たちと一緒に働いてみたい」と思ったそうです。

 

普通だったらここで終わってしまいそうですが、山口さんは大学1年生の時、ジャパンハート代表の吉岡さんの講演を聞きに行きます。

 

「大学の英語の先生が、宿題をFacebookのメッセンジャーで提出しなさいっていう指示を出したんです。その時初めてFacebookのアカウントを作成したのですが、たまたまFacebookでジャパンハート吉岡医師の講演を見つけました」

 

たまたま登録したFacebookで、たまたま見つけた講演。山口さんは当時佐賀県の大学生でしたが、その偶然のチャンスを流すことなく、飛行機のチケットをとって東京に向かいます。向かった先は、Infinity Ventures Summit(インフィニティベンチャーサミット)という起業家のイベント。

 

「ほとんど起業家の方々の講演で、NPO代表は吉岡医師1人という状態でした。もう何か世界が違い過ぎて。東大や慶應や早稲田の学生起業家もめちゃくちゃたくさんいて。『何だ、ここは!』と衝撃を受けました。起業家っていう生き方があるんだな、というのはここで初めて知りました。

懇親会に参加しても、自分が話せることが何もないんですよね。『何やってるの?』と聞かれても『大学とサークルがんばってます』くらいしか言えなくて。いい意味で焦りを感じました」

 

山口さんは、このイベントがきっかけで、ジャパンハートのインターンの面接を受けることになります。当時を振り返り、山口さんはこう話します。

 

2山口さん

 

やってよかったな、と思っているのは、講演者の人に話しかけに行ったことです。会場の出口ってそんなにいくつもないので、どこから出てくるか分かるじゃないですか。そこで、一番に出口に行って、吉岡医師に話しかけました。そこからインターンの面接につながりました。

純粋にやりたいっていう気持ちももちろんありましたが、キラキラした同年代の学生に出会うことで焦る気持ちもあったな、と思って。

いろんな人のいい話を聞いても、その時は『頑張ろう』と思っても翌日には忘れちゃうんですよね。でも、次の日からインターンの面接が入っていたら、ちょっと変わるじゃないですか。そうやって少しずつ変わってきたように思います」

 

中学、高校と地方で過ごし、周囲に起業家がいたわけでもなかった、という山口さん。人生の扉が開いていった最初のきっかけは、偶然の機会を逃さず、行動にうつしたことにありました。

 

起業家人生を後押ししたミャンマーの経験

 

ジャパンハートのインターンでは、ミャンマーの病院で働いていました。入院患者の方が入院費を稼げるように、病院のベッドでジュエリー作りができる仕組みをつくっていたそうです。

 

3病院

 

「初月から売上は10万円くらいあがりました。しかし10万円はしっかり自分が稼いで寄付すればすぐに達成できてしまうもの。何かすごいことをやりたい、人から評価されたい、そういった気持ちからこの活動をやっているのではないか。自分のエゴと向き合い、葛藤する時間がつづきました」

 

6か月くらい悩み続けた山口さんですが、転機が訪れます。

 

「日にちまでしっかり覚えているんですけど、2014年2月17日です。僕が病院で働く最後の日でした。日本と比べたら設備も整ってない、暗い病室の中で、ジュエリーを作っている場所だけが明るく見えました。めちゃめちゃ楽しそうに、みんなで話しながらお金を稼いでいたんですよね。

 

4ミャンマー1

 

5ミャンマー2

 

それを見て、自分のエゴと社会貢献は両方あっていいんだと思えました。自分がすごいことをやりたいという思いもありましたし、一方で目の前の人の力になりたい、喜んでもらいたいっていう思いもあった。自分のエゴがあっても、本当に喜んでもらえるんであれば、僕はやっていけるという腹落ち感がありました」

 

株式会社オクリーのミッションは、「エンターテインメントと社会貢献の架け橋を創る」ですが、このミャンマーでの光景が元になっています。憧れの著名人からビデオメッセージがもらえるサービス「オクリ―」の収益の5%は、社会貢献活動に寄付されるそう。自分の喜びと他人の喜びの重なりを探しながら、いくつも事業プランを考え、今に至ったそうです。

 

社会性と利益の両立が次なるチャレンジ。その壁に向かい続けるために意識していること

 

山口さんは、起業してから今で約1年。起業してみてどうだったのでしょうか。

 

「『自分がつくりたい世の中をつくる』というチャンスをいただけているのは恵まれているなと思う一方、それを実現していくことの難しさを実感しています。日々もがきながら進んでいる感じです。社会性と利益を両立させることが、今の自分の課題です」

 

事業で利益を上げていくのは誰にとっても大変なことですが、山口さんはその大変なチャレンジに向かい続ける秘訣を次のように語ってくれました。

 

事業レビューのような場に参加し続けるだけで半分は成功する、というのを聞いたことがあります。事業がきつくなると、足が遠のくんですよね。みんなが上手くいってて自分が上手くいってないと参加しなくなる。気持ちは分かるんですよ。でも、そういう時でも顔は出す。次に会うまでに何も進んでないと格好悪いから、何とか前に進めようとするプレッシャーも後押ししてくれます。周りのレベルが高いと、それが“当たり前”になって、自然と自分も高められていきます」

 

常に笑顔で朗らかに語ってくださった山口さん。言葉の一つひとつに嘘がない人だな、と思いました。斜に構えることなく、まっすぐに自分の気持ちや人生に向き合う姿勢に、聞き手の私も初心に帰らせてもらえた時間でした。ありがとうございました。

 


 

※今回のお話は、社会課題解決に取り組む人を応援するオンラインコミュニティ「NEXTA」のイベントにてご登壇された時にお伺いしたものです。

NEXTAは、毎週木曜、21:00~オンラインでイベントを開催しています。次回(9月10日)のゲストは、株式会社SEAM 石根友理恵さん。ご興味のある方は、こちらよりお申込みください。

 

この記事を書いたユーザー
乗越 貴子

乗越 貴子

1982年埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、塾講師、ネットサービスベンチャー企業を経て、NPO法人ETIC.参画。2児の母。志ある人と組織をつなげる求人サイトDRIVEキャリア(http://drive.media/career)で、事務局業務を担当しています。モットーは、「書くことと人をつなげることで、一歩踏み出す勇気を生み出せる人になる」

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