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#社会政策

ママたちが頼る助産師の石村さんとは?パパも変わる産後訪問

2020.11.11 

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※こちらは、「みてね基金」掲載記事からの転載です。NPO法人ETIC.は、みてね基金に運営協力をしています。

 

「みてね基金」では、子どもや家族の幸せのために活動している団体を支援しています。2020年4月より募集をした第一期では、新型コロナウイルスの影響で困っている子どもや家庭を支援する52団体を選定。国外で行った活動を合わせると、67団体を支援してきました。

 

その中の一団体が、地域のママ一人ひとりを訪問し、産後のSOSに応える「一般社団法人 助産婦 石村」です。代表は助産師の石村あさ子さん。「みてね基金」では、助産師として地域の妊産婦さんを積極的に支える石村さんの温かい想いと行動力に胸を打たれ、採択を決めました。

 

「みてね基金」の支援団体インタビュー第1回目となる今回、石村さんが支援をする中で感じる新型コロナウイルスの影響を受けたママたちが置かれた状況、また寄り添いについてお話を伺いました。

ママたちから信頼されるベテラン助産師

 

妊婦さんだけでなく、産後のママからも頼りにされている助産師さんがいます。

 

一般社団法人 助産婦 石村の石村あさ子さん。

 

江東区で家庭出産のための助産所を立ち上げたのが1994年。

25年以上、助産師として妊婦さんやママを支えてきました。

 

出産と子育てを知り尽くした石村さんのサポートは、ママたちに大きな安心感を与えてくれるようです。

 

産後訪問ケアを希望する声が多く、今では活動のメインになっていると石村さんは言います。

 

「活動全体の78割が産後訪問ケアになります。実は45年前に助産師を辞めようかと思った時もあったんです。家庭での出産が減っていて、体力的にも限界かなと思って。でも、産後の相談が増えていたんですね。応えているうちに、気づいたらここまで続けていました。」

 

相談者の多くは江東区や中央区などの地域に住むママたち。紹介で石村さんにつながる人もいるそうです。

 

「母乳の悩みを持った方もいるし、ただ話を聴いてほしいという方もいます。多いのは産後うつの方です。悩みのもとはまわりから見ると些細に感じるようなことかもしれませんが、お母さんたちにとっては大きなことなんです。」

 

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コロナ禍で産後の相談が深刻に、孤独の中で縮こまるママたち

 

今年の春頃から、新型コロナウイルスの影響で、妊産婦さんたちは緊急事態での妊娠、出産、産後を余儀なくされました。

 

「ほかの病院で産んだ方たちからの産後の相談がたくさん増えました。今は月7080件くらいです。母乳の悩みや産後うつがもっとひどい状態になっているんですね。

 

新型コロナウイルスのことがあって、たとえば妊婦検診も2週間に1回から月1回に減るなどあったようです。妊娠中に受けられるはずの診察や指導が足りないまま出産をして、お母さんになっているんです。病院の助産師さんたちも消毒などに時間を取られていて、お母さんたちは気軽に相談できる人がいません。

 

感染防止対策でお父さんも病院にすら入れないんです。赤ちゃんを迎えに行く時だけです。大事な出産時に会えない。だから、抱っこの仕方がわからない。赤ちゃんの抱き方や沐浴の方法はいつもなら行政の両親学級で教わることができますが、これも感染症の影響で中止になってしまいました。お父さんがまるで不安で、どうすればいいのかわからないんです。」

 

ママたちの中には、病院で母乳マッサージなど受けられるはずの支援を受けられないまま赤ちゃんと一緒に退院する人も少なくないそうです。感染防止のために実家も頼れなくなり、産後の悩みをたった一人で抱え込まなければならない状態になってしまっていたのです。

 

「お母さんたちはみんな孤独の中で縮こまっていました。」

 

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大事な時間を取り戻したい

 

新型コロナウイルスの影響が広がる中、石村さんは感染防止対策を徹底させながら求められるままに産後のママを一人ひとり訪問していきました。その中で「みてね基金」のことを知り、結果、採択決定。無料で産後訪問ケアを行いました。

 

産後の「困った」を抱えたママたち。石村さんはどんな悩みにどう応えていったのでしょうか。

 

「一番多かったのは母乳のことでした。赤ちゃんの体重が増えない、赤ちゃんが便秘をしているといった相談も多かったですね。未熟児で生まれておっぱいに赤ちゃんがうまく吸いつけないまま退院した方もいました。最初は私も正直、無理かもしれないと思ったのですが、できるようになった時はよかったなあと思いました。

 

あとはお父さんに沐浴の仕方や産後のお母さんの接し方をお教えしていました。お父さんが一緒に産後訪問ケアを受けることは大切にしているので、できるだけお父さんのいる時に合わせて会いに行くようにしていました。」

 

パパがいる時に?それはなぜでしょうか。

 

「産後のお母さんは身体がとても疲れています。元気そうに見えてもです。ゆっくりと休ませてあげないと精神的にもくたびれてしまいます。お父さんも頑張っているんですよ。ただ、夫婦の関係が悪化する原因にもなるから、産後、とにかくお母さんが休める環境をお父さんからつくってあげることが大事です。

 

それにお父さんに発散できる人はまだいいけれど、できない人は、頑張りすぎて、うつになってしまう場合もあります。」

 

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「赤ちゃんがかわいくない」といった深刻な相談も少なくなかったと石村さんは言います。

 

「コロナ禍で病院でも十分に休めず、産後も休めず、出産のことをよくわかっている人にもなかなか助けてもらえず。今、症状が悪化していく条件がそろってしまっています。」

 

産後訪問ケアで石村さんは、そういったぎりぎりの状態にあるママの悩みに寄り添い、簡単にできる産後を心地よく過ごすための知恵を伝えていったそうです。

 

「納豆と梅干は食べてねとか、お風呂の時には湯船につかってねとか、早寝早起きしてねとか。今のお母さんたちは知るきっかけさえあれば進んで実践してくれるんですよ。」

 

ママは本来、産後の自分の身体と赤ちゃんを守るための力を持っている。そう伝えるように、その力を引き出すかのように、石村さんはそばで寄り添い、言葉をかけていきます。石村さんに支えられたママたちはどんなに励まされたことでしょう。

 

「今は、妊婦検診など大事な時期に受けなければならない指導が抜け落ちてしまっています。特に赤ちゃんが生まれたその一番大事な時に夫婦が一緒にいられないのは本当につらいことだと思います。お父さんは面会にも行けないのですから。そこを取り戻したい。ほんの少しかもしれないけれど、取り戻せないかと思いながら訪問していました。

 

産後訪問ケアでは、最初は不安でいっぱいだったお母さんたちの表情が和らいでいくのを見るのがとてもうれしかったですね。特にお父さんたちが自信を得ていくのを見るとほっとします。赤ちゃんを抱っこできるようになった、そのことだけでも自信になるんです。」

 

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アンテナを高く張っていれば、育児は楽しくなる

 

「お母さんたちが変化していく姿を見るのが本当に楽しいんです。」

 

そう話す石村さん。「みてね基金」の対象となった「困った母子の産後訪問ケア」は夏の間に終了しましたが、ママたちのもとには今も変わらず訪れています。石村さんの助産所がある江東区を中心に、「一般社団法人 助産婦 石村」の看板を見て立ち寄ってくれたママ、そして周辺にある病院を退院したママからも相談を積極的に受けて、対応しているそうです。

 

「体力が続く限りは、訪問していきたいですね。」

 

最後に、ママやパパにこんなメッセージを送ってくれました。

 

「今はこれまでの中でも、育児が一番大変な時代だと思います。ただ、そんな時でも、お母さんたちにはアンテナを高く張ってほしいです。いろいろな情報に触れられれば、こうやって『みてね基金』で活動した助産師がいることだって知ることができます。ご自分たちの地域にも気軽に参加できる講座や専門家と話せる相談口がたくさんあるんですよ。

 

少しでもいい。アンテナを高く張ってみると、育児は楽しくなるはず。そんなふうに自分がらくになれるようにしてほしいですね。」

 

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取材して感じたこと

 

こんな助産師さんがそばにいてくれたらどんなに心強いだろう。そう感じながらの取材でした。コロナ禍の中でも、不安を抱えたママたちを「大丈夫よ」と広い懐で包み、産後や育児への自信を持たせてくれる。産後のスタートを「つらい」から「安心」へと変えていく石村さんのサポートは、これからも多くのママたちを元気づけていくのでしょう。

 


 

団体名

一般社団法人 助産婦 石村

申請事業名

産後の困りごとを解決する、産後訪問ケアプロジェクト

申請事業概要

新型コロナウィルス感染者の対応で不十分な産後のケアを訪問で行い、安心な育児が出来るよう援助する。

 

 

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新型コロナ
この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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