「社会貢献として、自分も何か行動してみたい」
「解決したい社会課題はあるが、何から始めてよいかわからない」
and Beyond カンパニー(アンドビヨンドカンパニー、以下aBC)は、そのような思いを昇華させる一つの場です。aBCは、「意志ある挑戦が溢れる社会を創る」をミッションに2018年に設立された、複数社で構成されるバーチャルカンパニーです。
特徴は「1つの社会課題テーマではなく、複数のテーマに対して賛同した個人・企業が協働できるプラットフォーム」であること。そのプラットフォームが起点になって活動している取り組みが数多くあります。
インタビュイー
白石 章二さん (ヤマハ発動機株式会社技術研究本部フェローNV推進担当)
ヤマハ発動機本社で、技術研究本部のNV(ニューベンチャー)推進担当フェローとして新規事業全般のアドバイザーを行っている。NPO法人おっちラボ理事としても活躍。
新しいことを始めたい森の所有者と、森あそびしたい人を結び付ける「森あそびラボ」について
――森あそびラボは、森を活かしたサービス業を通して地方創生を行っているチームだと認識しています。詳細な活動や現在行っている取り組みをお聞かせ願いたいです。
森林を活用・整備するための法律整備や森林保護に関する税金の創設も行われている一方で、従来の森の役割である木材の生産が、人口減少などにより難しくなってきているという現状があります。結果として、森の使い道が少なくなることによる収入の減少が起こり、山の整備が十分にできなくなっています。
その状況を踏まえて、森あそびラボでは現在次の2つの取り組みを行っています。
① 森あそび事業の発掘・調整を行う
② もっと森を使いたいがアイデアが思い浮かばない森の所有者に、森に関する税制の活用法や森整備に関する啓蒙を行う
今年は助走期間として活動していますが、来年には①②を森あそびラボの本格的なサービスとして提供していきたいと考えています。
――所有者の啓蒙というのは、新しい視点ですね。
日本には小規模な森の所有者が多く、新しい取り組みをしてほしくないと考えている人もいます。一方で、試しに新規事業をやってみるフィールドを提供してくれる所有者の方がいないと、新しい取り組みの実現はできません。
そこで、何か新しいことを始めたい森の所有者と、森あそびを行いたい人を結び付け、コラボレーションできる場所を一緒に作っていきたいと思いました。
森の価値が高まれば、森の売買が生じると思います。地方の銀行なども新たな仕組みが必要になると思うので、最終的なステークホルダーにどのような企業や団体が含まれるかも検討しながら、日々活動しています。
――森あそびラボの活動を行う上で重要な考え方は、森や地域に関わる・関わりたい人々のコラボレーションだということがわかりました。
白石さんの森に対する想い
――白石さんが森あそびラボを設立した理由は何でしょうか。
林業の問題には興味があり、2015年から勉強を始めました。2017年には、とある地域での林業の政策作りをプロボノで始めました。それらの経験から、事業として森をもっと楽しく使いたいと個人的に思いこの活動を始めました。
理事を務めるNPO法人のおっちラボ(島根県雲南市で、「未来に必要な人と仕事をつくりだす」をミッションに活動するNPO)では人材育成も行っており、定常的な事業をつくりたいという話もあり、森あそびラボを通して実現できるのではないかとも思いました。
――白石さんは、森のどんなところに魅力を感じますか。
色々なあそびができることに加え、日本中に沢山あるのが森のポテンシャルだと思います。
また、大陸の東端に位置している日本の森は世界的に見ても特異で、地形も温暖と寒冷が混ざるので林相(生えている木の種類や分布)が様々であるという特徴もあります。整備がされている山は気持ちが良くて保水力など機能も優れている一方で、手入れが行き届かないと災害に弱く、正しく管理することで価値が大きくなる財産です。
データ計測などをして数値で管理する人が現状あまりいないのも、難しい問題です。森の成長や保全には100年単位で取り組む必要があるので、マネジメント上のチャレンジも出てきます。
科学的にも興味深く、マネジメントにも面白さがあるところに、ビジネスとして面白さを感じます。
――森に関連して、白石さんが実現したいことはありますか。
本来持っている森のポテンシャルを、もっと多くの人に知ってもらいたいなと思います。
また、雲南市のおっちラボの方では、森の関与で自治体から給与を得つつ、一方で自ら森を活かした事業をやる、というような職業形態をつくれないか研究もしています。日本は四季があるので、森あそびの様相も季節ごとに変わってきます。そのため、森の管理もきちんとでき、かつ事業を担える人の育成が重要になってくると思っています。
ヤマハ発動機株式会社が取り組む森あそび関連事業・商品とは
――ヤマハ発動機としては、どのように森に関わっていますか。
ヤマハ発動機としては空から森を計測する事業を始めていたり、森であそぶための商材であるオフロードバイク、四輪バギー、スノーモービルなど山で使うものを作ったりしている点で、森と縁があります。オフロードバイクなどの商材は、使ってもらえればそれだけマーケットも増えるので、会社としてもメリットはあると思います。
――スノーモービルに乗ったことがあるのですが、すごく速くて楽しかったです。
本来スノーモービルは山のパトロールにしか使用していませんでした。しかし、スキーなどをしない方も冬の山を堪能できるように、近年では山を訪れたお客さんにも乗って楽しんでもらえるようになっています。
ヤマハ発動機株式会社のスノーモービル
https://www.yamaha-motor.co.jp/snowmobile/wallpaper/
――今後ヤマハ発動機としては、どのように森あそびに貢献していきたいとお考えですか。
ヤマハ発動機としては森の3Dマップ化を行っています。空から収集した点群データで木の生えている位置、幹の太さ、地形を3Dマップ化するというものです。まだ広く認知はされていないですが、林野庁と仕事をしています。先で述べた、森をデータで科学する、適切な管理を行うという観点に貢献しているのではないでしょうか。
また、森を使って事業をやりたい人は、個人としては社内に沢山います。そのような個々人の想いやモチベーションを森あそびラボの中で開放して、社内外で事業を起こす人が増えれば良いと思っています。自社にいる人にはぜひ、自己実現をしてほしいです。その結果として、森あそびラボの活動もより活発なものになることを願っています。
aBCは「社内の人材の自営業化に貢献する組織」
――白石さんにとってのaBCとはどのような場所でしょうか。
社内の人材の自営業化に貢献する組織だと思っています。自営業者が昨今の日本では減っていますが、自分で何か事業を起こして生きていく力を、自社内外の人に関わらず是非持ってほしいと思っています。企業の中でも新しい事業の芽をつくる人は必要です。そのような人材育成のサポートを行う環境がaBCにはあると思っています。
――どんな企業・個人が参画したら、森あそびラボはもっと面白い活動ができると思いますか。
森の持っている機能を、とにかく多くの企業に知ってほしいという思いが強いです。そのため、特定の業界や企業に門戸を狭めたいという思いはありません。事業をつくりたいと思っている会社や個人が気軽に参画できるような組織でありたいです。
――活動に興味を持っている方に一言お願いします。
勉強会なども随時開催を検討しますので、気軽にお声がけいただければと思います。また、Beyondミーティングに参加するなどして、ぜひ参加のドアを開いてほしいです。
「森あそびラボ 研究プロジェクト」説明サイトはこちら
>> 森あそびラボ!研究プロジェクト – LOCAL VENTURE LAB
2021/9/21開催のBeyondミーティング:https://moriasobi-bm.peatix.com/
編集後記
私たちが普段何気なく目にしたり、訪れたりしている日本の森の特別さや利用可能性を知るきっかけになりました。また、近年SDGsの観点から森林保全などが注目されていますが、保全された森林を、特に観光業として活かすというのは新しい観点だと思います。私たちが生きる時間の長さを超えて、自然を後世につないでいく活動の素晴らしさを、今回、白石さんのお話から考えることができました。
aBCを、起業家精神を養う場とおっしゃていた白石さん。やりたいことの実現のためにヒントをもらえたり刺激を受けたりできる環境は、確かに学びを得られる場だと思います。この記事をきっかけに、興味を持ってくださる方が増えれば嬉しいです。
■ aBC(アンドビヨンドカンパニー)の詳細・資料請求はこちらから
■2021年10月19日(火)開催の「ローカルベンチャーフォーラム2021」にて、ヤマハ発動機白石さんも登壇され、「森あそびラボ」構想についてお話いただきます。
>> ローカルベンチャーフォーラム2021 地域と企業の共創を考える
インタビュアー/相原あい
アビームコンサルティング株式会社(aBC参画企業)に2019年4月より勤務。地方創生に興味があり、社内のSDGs活動では沖縄県座間味村の支援に携わっている。
インタビュアー/荻上健太郎
東京学芸大学教育インキュベーションセンター。本業の傍ら、地域や社会の課題解決のために共創を生み出すコーディネーターをテーマに、複数の企業やプロジェクトに複業人材として参画。2018年12月からaBCの推進メンバーとして活動中。
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