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「世界の食糧難、カエルで解決します!」カエルに命を救われた男、“かえるくん”こと橘木良祐さんがつくりたい未来

2022.06.14 

日本各地で梅雨入りのニュースを耳にしますが、皆さんは最近、カエルを見ましたか?

 

初夏から秋にかけて田んぼや川などの水辺で見かけるカエルですが、カエルの脚肉の栄養価は、鶏ささみと同じくらい低カロリーで高タンパクで、実際に中国やフランス、東南アジアなど多くの国で食べられています。

 

そんな食用ガエルの養殖で世界の食糧危機を救いたいと、カエルの帽子をかぶり「かえるくん」として活動する、橘木良祐(たちばなき・りょうすけ)さんにお話を伺いました。

 

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東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」事務局(NPO法人ETIC.(エティック))が、本コンテスト出身の起業家をご紹介する特集です。

>> 特集「やりたいように、やってみた~世界を変える起業家たちの挑戦~」

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橘木さん

橘木良祐(たちばなき・りょうすけ)さん

TOKYO STARTUP GATEWAY2021セミファイナリスト

通称“かえるくん”と呼ばれる。カエル研究→海外放浪→飲食店店主→キャビア養殖→カンボジアでコオロギ養殖拠点立ち上げに関わり、カエル養殖を学んでいる。「世の中全ての人々が栄養のあるものを食べられる社会」を養殖で実現します。

https://twitter.com/kaerukun0519/

宮崎でチョウザメ養殖に携わり、養殖の面白さに気づく

 

宮崎県の小さな村で、チョウザメ養殖と、キャビア加工の仕事をしていた橘木さんは、養殖の奥深さに魅了されました。チョウザメの養殖は、幼魚が成長してキャビアを出荷するまで8年から10年もかかり、しかもオスメスの見分けが困難なため、出荷量のコントロールが難しく、養殖には高リスクだといわれています。

 

「簡単にできないところが面白い、だからこそやる意味がある」と、「難易度の高い養殖」に興味をもった橘木さんは、自宅の空き部屋でカエルを飼い始めます。

 

チョウザメ養殖に携わっていた時の橘木さん

チョウザメ養殖に携わっていた時の橘木さん(写真提供 橘木さん)

 

そして、アカガエルやアマガエルなど、身近でつかまえたカエルを衣装ケースの中で育て、捌いて、食べてみました。

 

「アカガエルのほうが、アマガエルより、深みがあって美味しい」

 

学生時代は研究対象で、いわば「相棒」だったカエルが、現在の関心事である「養殖」と繋がった瞬間でした。

 

カンボジアのカエル養殖場

カンボジアのカエル養殖場にて(写真提供 橘木さん)

 

お金に困って、カエルをつかまえて食べた

 

ではなぜ、橘木さんは、カエルを食べたのでしょうか。そこには、ある原体験がありました。

 

学生時代、カエルの跳躍を研究していた橘木さんは、卒業後、友人がオーナーの飲食店の店長として働きますが、オーナーが変わり失業します。未払い賃金を残したまま友人とは連絡がとれなくなり、ついにお金に困った橘木さんは、東南アジアのタイを旅行した時に見た食用ガエルを思い出し、近くでカエルをつかまえて、捌いて焼いて食べました。

 

かえる串焼き

橘木さんお手製のカエルの串焼き(橘木さんのTwitterより)

 

「カエルが、美味しい」

 

かつて「相棒」だったカエルを食べることで、命の危機を救われました。

 

この原体験と、チョウザメ養殖業の上司から教えられた「養殖は、二度殺すな」の言葉が重なって、橘木さんはカエル養殖の道を追求し始めます。

 

「養殖業は、育てた生き物を加工してお客さんに届けます。この時に命を奪うので一度殺すことになります。もし、まずいものをつくったら、誰にも食べられず捨てられてしまう、それは二度目の殺しになってしまう、それはいけない。殺すのは一度だけ。そういうことだと理解して、育てるからには美味しく、安全に、喜んで食べてもらってこそだと思っています」

 

異世界だった「TOKYO STARTUP GATEWAY」

 

橘木さんは、2021年「TOKYO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)」に、「『未来をカエル』カエル養殖による食糧危機の解決」というプランで応募し、セミファイナリストに選ばれました。

 

橘木さんは、TSGを「異世界に転生した気持ちになれる場所」と振り返ります。

 

「僕が住んでいたのは、人口1000人、鹿5000頭、チョウザメ7000匹の村でした。人より鹿に会うことが多い村から、オンラインで違う世界に行く。

実績のないアイデア段階でも、参加者のみんなが僕に、いや僕のカエルの帽子に、ほんの数秒でも興味をもって話を聞いてくれるのが、嬉しかった。自分のモヤモヤを話して、みんなにブラッシュアップしてもらって、自分を深く理解できました」

(2021年のTSGは、コロナ禍のためほぼ全ての行程をオンラインで実施しました)

 

TSGで出会った仲間との飲み会(中央奥が橘木さん)

TSGで出会った仲間との飲み会(中央奥右側が橘木さん、写真提供 橘木さん)

 

カンボジアでカエル養殖に挑戦

 

養殖業が自分の天職だと気づいた橘木さんは今、カンボジアにいます。

 

Twitterで、コオロギ養殖に取り組むエコロギー株式会社代表の葦刈(あしかり)さんの「カンボジアで働くスタッフ募集」というツイートを見てDMを送りました。

 

「葦刈さんは、TSG2016ファイナリストなので、先輩だと思ってフォローしていました。コオロギ養殖に関心あるし、カンボジアならカエル養殖もやってそう!」

 

さっそく下見に行ったカンボジアで、カエル養殖農家を発見し、2022年5月、カンボジアに移住し、コオロギ養殖の実験・加工場の管理人に着任しました。今は、平日はコオロギ養殖、週末はカエル農家のもとで養殖を学んでいます。

 

カンボジアのカエル農家さんと橘木さん

カンボジアのカエル農家さんと橘木さん。

「ここでは捌いたカエルの内臓を食べるナマズも飼育されていて資源循環に感心しました」

 

「2、3ヶ月学んだら、自分で池をつくってカエル養殖を始めます。その後は土地を借りて規模を拡大して、1年後には出荷したいですね。僕にとってもカエルにとっても、カンボジアは良いところです。暖かいのでカエルが早く成長します。4ヶ月1サイクルでカエルを育てられます。日本だと1年1サイクルですから。

最終的には、生き物全部の養殖に挑戦して、美味い、安全なものをつくりたい。だから成果が早く出る今の環境はいいですね」

 

取材中の橋本さん

取材時の橘木さん

 

TOKYO STARTUP GATEWAY 事務局編集後記

 

トレードマークの可愛いカエルの帽子にみなさん最初は目がいくと思いますが、メラメラと心を燃やし、一歩一歩着実にやりたいことに近づいていく姿が印象に残りました。カエルの養殖を求めてカンボジアに行くのを決断した勇気と行動力がとにかくすごいです。橘木さんが養殖された美味しいカエルを食べるのが楽しみです!

 

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橘木さんは、6/18(土)のオンラインイベントに登壇します。

400字からのスタートアップ! (第2回)~TSG参加者が語る「創業準備の超リアル」~

~TOKYO STARTUP GATEWAY2022 プレイベント~

詳細はこちら

https://school.tokyo-startup.jp/sg/349/

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東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」は、7月3日までエントリー受付中です。詳細はこちらをご覧ください。

●TOKYO STARTUP GATEWAY2022 WEBサイト https://tokyo-startup.jp/

●プレスリリース:東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」エントリー受付開始!

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000012113.html

 

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木村静

DRIVEメディア編集長。NPO法人ETIC.広報。 北海道出身。札幌のまちづくりNPOに勤務し、コミュニティラジオ放送、地域情報の取材・執筆等を経て、2008年に上京しフリーランスに。アナウンス・司会、ライター、カメラマン、映像制作、講師、リサーチ、イベントのディレクション業などを事業領域に活動。 2015年〜NPO法人ETIC.に参画。 趣味は、歴史、映画、美術、ガーデニング、読書。

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