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福島原発事故からの決意。「安心安全なエネルギーの供給」への強い想いと改善し続ける姿勢が前澤ファンドからの出資を引き寄せた チャレナジー清水敦史さん

2024.06.11 

自然エネルギー電力への取り組みは世界規模で行われていて、発電量も増加傾向にあります。ISEP(環境エネルギー政策研究所)によりますと、日本における発電電力量のうち自然エネルギー電力が占める割合は、2022年では22.7%でした。EUに加盟している27か国全体の平均(38.4%)には及ばないものの、年々微増しています。※

 

「風力発電のポテンシャルが高い日本の風土に合った風車を作りたい」と、風力発電の開発に全力を注いでいるのが株式会社チャレナジー代表の清水敦史さん。夢を追うのはエキサイティングなことである反面、時には挫折しそうなほど大きな問題が生じることもあります。それでも夢を追い続ける原動力はどこからきているのでしょうか。起業した時期から現在までを振り返るとともに、今後の展望についてお話を伺いました。

※参照:2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)|ISEP

 

この記事は、現在エントリー受付中の東京都主催・400字からエントリーできるブラッシュアップ型ビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)」出身の起業家を紹介するWEBサイト「TSG STORIES」からの転載です。エティックは、TOKYO STARTUP GATEWAYの運営事務局をしています。

清水 敦史(しみず・あつし)さん

株式会社チャレナジー 代表取締役CEO/TOKYO STARTUP GATEWAY2014ファイナリスト 

1979年岡山県生まれ。津山工業高等専門学校から東京大学工学部に編入学し、東京大学大学院修士課程を修了。2005年、電気機器メーカーに入社し、産業用機器の研究開発に従事。2011年、福島原発事故をきっかけに個人的に再生可能エネルギーの研究を開始。「垂直軸型マグナス風力発電機」を発明し、特許を取得。2014年10月、株式会社チャレナジーを設立。

WEB: https://challenergy.com/

Facebook: https://www.facebook.com/challenergy

 

聞き手:栗原吏紗(NPO法人ETIC.)

きっかけは2011年の原発事故。「エジソンになりたい」想いと相まって起業家の道へ

 

—株式会社チャレナジー(以下、チャレナジー)の事業について教えてください。

 

次世代風力発電機の研究開発を行っています。個人的に風力発電の研究を始め、「垂直軸型マグナス風力発電機」という次世代風力発電機を発明しました。

 

 

これは、プロペラではなく円筒を気流中で自転させたときに発生する「マグナス力」により動作する新方式の風力発電機です。垂直軸型マグナス風力発電機を実用化して世界中に普及させることで、エネルギーシフトを実現すると同時に、新興国の無電化地帯を電化し、全人類に安心安全な電気を届けることを目指しています。

 

—何がきっかけで、自分の心に火が付きましたか?

 

2011年に福島県で発生した原発事故がきっかけでした。とても衝撃的な出来事で、脱原発の道を次の世代に残していきたいという想いを抱いたんです。

子供のころから、エジソンのような発明家になりたいという夢を追いかけてエンジニアになったので、エネルギーシフトを実現するという使命感と、風力発電のエジソンになるという個人的な夢が結びついたことが、事業を起こす力になったと思います。

TSGがもたらしてくれた起業家としての成長とプロジェクト周知の機会

 

—清水さんにとって、TSGはどんな価値がありましたか。

 

TSGを通じて業界や分野は違っても同じく起業を目指す仲間と切磋琢磨し、考え方や行動を学ぶことで新しい視点を獲得し、起業家・経営者として成長できたと思います。

また、ファイナリストに選出されたことによって400名の前でプレゼンを行い、メディア関係者の方々から取材を受ける機会にも恵まれて、垂直軸型マグナス風力発電機を多くの方に周知できました。

 

—最初の400文字を書いた時から、事業アイデアはどう進化・深化していきましたか?

 

事業アイデアがカタチになりました。2016年に沖縄県南城市に1kWの風車を設置し、2018年には石垣島、そして2021年にはフィリピンに、10kWの風車を設置しました。

現在取り組んでいるのは、100kW風車の開発です。大型化することで、島や集落の電力を丸ごと賄うことを目指しています。

また、マグナス風車とは異なる仕組みの「マイクロ風車」の開発にも挑戦しています。

 

「既存のやり方の何が問題なのか」への問いがプロペラのない風車の誕生につながった

 

—マイクロ風車(小型風力発電機)も手がけるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

 

2014年当時は、マイクロ風車の市場はレッドオーシャンだったので、参入は考えていませんでした。転機の一つは、FIT(固定再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が見直されるなどして、既存のマイクロ風車メーカがどんどん撤退していったことです。結果的に、マイクロ風車の問い合わせがチャレナジーに来るようになりました。もう一つは、マイクロ風車の価値が見直されて新たなニーズが生まれたことです。

 

—価値が見直されてどのようなニーズが生まれたのですか?

 

防災です。防災意識の高まりが市場に変化をもたらしました。ディーゼル発電機は、非常時に燃料が尽きてしまったら動かなくなりますが、再生可能エネルギーなら、燃料が不要な非常電源としても活用できます。 しかし、これまでのプロペラ型のマイクロ風車は、公園など街中や人に近いところに設置した時に、「騒音がうるさい」、「高速回転して怖い」などの問題が起こっていたんです。

 

防災・安心安全のための非常電源なのに、既存のプロペラ風車では安心安全が実現できない場合がある、という気づきから、マグナス風車同様に、プロペラがなく、低速回転で、静かで、壊れにくい、安心安全なマイクロ風車を開発しています。

 

—風力発電と言うと、プロペラのついた大きな風車というイメージが強いのですが、それを取ってしまおうという発想は画期的ですね!

 

問い合わせやニュースから世の中の流れを把握すると、解決すべき問題が見えてくるので、それを深掘りして、解決策を検証方法まで徹底的に考えます。

 

例えば、最近ニュースで多く取り上げられているのが、風力発電のバードストライクという問題。高速回転しているプロペラに鳥が気づきにくく、巻き込まれて死んでしまう事故が起きており、それが風車設置の反対運動にもつながっています。

 

マグナス風車は、低速回転であることに加え、上下方向の動きがなく、鳥の死角になりにくいので、バードストライクの問題を解決できる可能性があります。バードストライクの被害にあった鷲類を保護している専門家と、共同実証試験をしているところです。

 

「台風の度に石垣島で実験」前澤友作氏も出資した羽根がない“台風発電ベンチャー”の挑戦

【チャレナジー】【未来をここから 報ステ特別編】

 

—プロペラ風車の課題を解決できる新しい価値が生まれつつあるわけですね。

 

日本は、地域によって環境が大きく異なり、課題も多岐にわたります。 例えば寒冷地では、冬場は風車にも雪が積もったり、つららができたりします。プロペラ風車の場合、雪やつららがついた状態で回転すると、回転バランスが崩れて破損したり、アイススローと言って、つららを撒き散らしてしまうおそれがあります。風車が撒き散らしたつららがビニールハウスに当たれば穴が空きますし、万一人に当たれば大変です。

 

チャレナジーが開発しているマイクロ風車は、垂直軸型のため、雪が積もったり、つららができたりしにくく、頑丈な構造のため、雪やつららがついた状態で回転しても壊れにくく、さらに低速回転のため、つららを撒き散らすこともありません。

 

これまでの風車では当たり前だったプロペラをなくすことで、様々な課題を一挙に解決し、「どんな環境でも安心安全な風力発電」を実現できるのです。

特許取得率100%!「特許は狙って取る」が正解

沖縄南城市。台風発電の実証実験場にてMさんと

 

—世界23カ国で特許を取得されたご経験から、特許取得に関する教訓や工夫されていることを教えてください。

 

まずは、技術者自身が特許について理解することが大切です。具体的には、新規性や進歩性の勘所を身につけることです。

また、特許ならではの「文法」も理解する必要があります。発明者が特許について理解していれば、弁理士の先生に発明の重要なポイントを的確に伝えられますし、拒絶理由通知に対しても適切に対応できます。

 

僕の場合、発明の課題、新規性、進歩性と、請求項の案をまとめた資料を自分で作り、それをもとに弁理士の先生に先行文献調査と明細書作成をしてもらいます。

あとは「細部に神宿る」の精神で、明細書は自分でも徹底的にチェックします。

記載不備のチェックはもちろん、実施例や権利範囲についても、発明者の視点と弁理士の視点の両面からチェックすることで、権利が広く、かつ特許登録の可能性が高いクレームツリーと明細書が出来上がります。 強い特許は、特許への理解がないと取れません。まさに「特許は狙って取れ」です。

 

僕は弁理士資格は持っていませんが、これまでの20件を超える特許出願を通じて、特許の勘所が身についたと思います。

もう一つ、たくさんの特許を読むことも大事です。風力発電の素人だった僕が最初にしたのは、風力発電の特許を片っ端から読むことでした。

今でも定期的に特許庁のサイトやGoogle Patentで風力発電関連の特許を読んでいます。まるで読書のように、特許を読むことが趣味と言えるかもしれません。世界中のアイデアの結晶である特許を読むことで、特許の勘所だけでなく、業界の課題や、技術開発のトレンド、ビジネスのヒントも得られて一石四鳥ですよ。

やるべきことをやり続けた結果、思いも寄らない縁を引き寄せた

 

—市況に合わせてニーズのある風車の開発に取り組み、狙って特許を得られたお話を聞くと、合理的で戦略的に考え行動することが成功の秘訣だと感じました。

 

そうですね。ただ現実には合理性や戦略だけでは成功できません。「運や縁を味方につける」ことも、成功するためには不可欠の要素と考えるようになりました。「諦めずに頑張っていれば、いつかいいことがある」というニュアンスに近いですけど。1kW機の沖縄県南城市での実証試験は、チャレナジーの新聞記事を読んだMさんという方からご連絡をいただいたご縁で実現しましたし、2年ほど前には、前澤ファンドから12億円の出資を受けました。

 

前澤友作さんが宇宙から帰ってきて受けたインタビューの中で、「地球を守ろうと思いました」っておっしゃったじゃないですか。その後に、地球を守るスタートアップを探して見つけたのが、チャレナジーだったそうです。前澤さんの方から連絡をいただき、最終的に出資していただいたのですが、この出資がなかったら、チャレナジーは存続していなかったかもしれません。これもご縁としか言いようがないですね。

 

意義を信じて13年間続けてきた風車の開発ですが、開発面や資金面などで思うように行かないことも多々ありました。例え迷いが生じたとしても、信念に従って、やるべきことをやり続けることが、結果的に最善の道だったのです。

 

「沖縄で台風発電の実証試験をしたい」という想いを語った記事がMさんの目に留まったのも、10kW機開発の奮闘が前澤さんの目に留まったのも、やるべきことをやり続けた結果でした。成功した起業家は、何かしら救いの手を差し伸べられたターニングポイントの経験があると言われますが、僕もまさにそれをいくつか体験したと思います。

 

—運を味方につけるには、うまく行かない時にもあきらめずに続けることなのですね。

 

研究開発の分野においては、ネットとリアルの両方から情報を収集することも大切です。現場で現物を見ることで、既存のやり方の何が課題なのかを肌で感じることができます。

 

出張の際には、近くにある風車を調べて見学に行くことがあるですが、ある時、「騒音の発生が殆どありません」と謳われている小型風車を見学していたら、近くに住んでいる方に関係者と間違えられて、詰め寄られたことがありました。「騒音のせいで、雨戸を閉めないと生活ができない」と。やはり、ネットで入手可能な情報だけで判断せずに、現場で、現物と現実を、自分の目で確認することが大事です。

「このためなら人生を捧げてもいい」ことに出会えたら迷わず400文字で表現してみよう

 

—TSGにエントリーを考えている人へ、起業に挑戦する人への応援メッセージをお願いします。

 

僕はTSG1期生ですが、当時のファイナリスト10人のうち何人が、今も事業を続けられているだろうかと考えることがあります。おそらく、片手で数えられる程度でしょうね。ファイナリストに残ったとしても、成功するとは限りません。逆にファイナリストに残らなくても、2期生以降でも、僕より先に成功している人がいるはずです。

 

僕の場合、今も事業を続けられているのは、信念を持って、走り続けているからだと思っています。 僕の自作の座右の銘は「七転八倒九起十駕」です。

七転び八起きするつもりで起業しましたが、実際には七転八倒でした。八起きのつもりが八倒になると、株主や社員、家族など、周囲から色々な意見が出るかもしれません。それは時に、自分にとって厳しい意見かもしれません。でも自分が人生をかけてやり遂げると決めたことであれば、信念を貫くことが大切なんです。諦めずに九起きするのです。

また、「駑馬十駕」という故事成語があります。これは「足の遅い馬でも、十日走れば、名馬が一日で走る距離に到達できる」という意味です。

 

僕には、「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全なエネルギーを供給する」という信念があります。この信念があるから、自分自身も十駕できるし、信念に共感した投資家に出資をしてもらえたのだと思います。

「そのために自分の人生を捧げてもいい」と思える課題を見つけ、人生をかけて解決すると決めた時に、覚悟が信念となり、事業が人生の一部になっていきます。

単純にお金を稼ぎたいからやっているわけではなく、成功する確信があるわけでもない。自分の人生の目的だからやるのです。

 

原発事故以降、僕と同じように、多くの人がエネルギーシフトの必要性を感じているはずです。僕が原発事故の直後に風力発電の開発を始めたのは、卓越した先見性があったからではありません。人生を捧げる覚悟を決めたのが早かったのだと思います。

 

皆さんも、信念を持って、道なき道を走り続けて、自分の夢を追いかけて下さい。TGSは、そのスタート地点になると思います。「人生を捧げてもいい」と思える課題を見つけたら、ぜひエントリーしてみてください。

 

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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